五等分の花嫁と約束と   作:無限の槍製

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中野三玖の秘密

『幸村』隼人の後輩に猿渡『佐助』というだけで若干テンションが上がっている。


第22話 八つのさよなら⑤

 

「よお」

 

「おはよう2人とも」

 

「おはようございます幸村君」

 

朝早くから学校に集まった俺と風太郎と五月ちゃん。この時間となると登校する生徒もあまりいないのだが、朝練をしている生徒は意外とたくさんいる。

例の陸上部も現在朝練中だ。

 

「しかし驚きました。幸村君が元陸上部だったとは」

 

「江場と馬が合わなくてね。オレ、アイツキライ」

 

「幸村君がそこまで言うとは…」

 

「俺も興味がないからあまり知らないが、なんか凄いんだろ?」

 

「あなたはもう少し他人に興味を持つべきです…」

 

「確かに足は速いけど、正直に言ってそれだけ」

 

「お前がそこまで言うのか…」

 

何より気に入らないのがあの性格だ。他人の意見を無視して自分の意見を押し通そうとするあの性格。四葉ちゃんじゃ断れないと思う。いや現に断れてないからこうなってるのか。

 

「頼むから喧嘩するなよ?」

 

「しないって……多分」

 

「おい!」「ちょっと!?」

 

なんとか高校に入学出来て、1年から頑張ろうと思って入部した陸上部で早々にアイツと問題を起こしそうになって辞めたのだ。今でも自分を抑えられるか心配だ。

 

「いたぞ」

 

「あらまあ、ご丁寧に四葉ちゃん取り囲んじゃって。人気者だなぁこりゃ」

 

朝練中の陸上部を発見した。部長の江場を筆頭にぞろぞろと歩いている。この調子だと振り回してそうだなアイツ。

 

「来週はいよいよ駅伝大会本番だ。中野さんがいなければ参加できなかった。走りの天才を頼りにしてるよ」

 

「お前が天才とは世も末だな」

 

「上杉さん!?五月に幸村さんまで!」

 

「久しぶりだね幸村」

 

「相変わらずだな江場」

 

「あんたが部長か。期末試験があるのに大会の練習なんてご立派だな」

 

「うん、大切な大会なの。試験なんて気にしてらんないよ」

 

「あ?試験なんて?」

 

だからと言って大会如き、なんてことは流石に言えない。大会にかける思いというのは他の部員も少なからず持っているのだがら。だけど試験を大切に思っている部員もいるはずだ。その思いを無視することが許されないことなんだ。

 

「わー!大丈夫です!ちゃんとやってますよ!」

 

「四葉…無理してませんか?」

 

「うん大丈夫!」

 

「もういいかな?まだ走っておきたいんだ」

 

「…まあ、四葉がそう言うなら止めねぇよ」

 

「ちょっと、いいんですか?」

 

「俺も一緒に走ろう。それなら邪魔じゃないだろ」

 

上着を脱ぎ捨てた風太郎が立ちはだかる。まさか走りながら勉強を教えるっていうのか?無茶するなぁまったく。

 

「俺も走る。久々に運動が必要と思ったんでね」

 

「俺の真の力を発揮する時が来たようだな」

 

 

 

 

 

「死ぬッ!!」

 

「やっぱりこうなったか」

 

軽い流し程度の走りでもインドア派の風太郎には地獄のようなものだろう。もうだいぶ冷えてきた頃だというのに汗だくだ。あと5周残ってるぞ?

 

「上杉さん、もうやめたほうが…」

 

「まだだ……まだ…」

 

「いいから戻ってろよ。あとは俺がやるから」

 

「す、すまん……」

 

風太郎、脱落。いやなんとかついてこれただけ立派だ。

 

「さぁて四葉ちゃん、今度は俺から問題タイムだ」

 

「ど、どうぞ!」

 

「フランスのルイ14世が造営した宮殿は!」

「ベルリンの宮殿!」

「残念!ヴェルサイユ宮殿!」

 

「『走れメロス』の著者は!」

「太宰龍之介!」

「混ざってる!太宰治!」

 

「周期表4番目の元素は!」

「すいへーりーべー…ベリウム!」

「惜しい!ベリリウム!」

 

全部微妙に間違えている。だけどそれなりに自信を持って答えれている。もう少しだけ詰めれば赤点回避は簡単だろう。

 

「ふぅ…幸村さん最後までついてきましたね!凄いです!」

 

「はぁ…喋りながら走るのってしんどいね……もう無理…」

 

「無理しちゃダメですよ。私は大丈夫ですから」

 

疲れから膝をついてしまう。少し前ならここまで疲れることはなかっただろうけど、やっぱり適度な運動は必要だな。

 

今後のためにもう少し、鍛えないとな。

 

◇ーーーーー◇

 

結局今日は四葉ちゃんを陸上部から引き抜くことができなかった。二乃ちゃんも今日は休んでいるみたいだし…というより今のホテルから別のホテルに移ったみたいだ。

 

正直合わせる顔がないんだけど…でも俺が原因だからこそ二乃ちゃんのことを途中で諦めるわけにはいかない。

 

「よお、幸村」

 

「真田…相変わらず甘いもの食ってるな…クレープ似合わねぇ」

 

「うるせぇ」

 

街をブラついている俺に声をかけてきたのは真田だった。甘いの好きなんだよなぁコイツ。確か作るのも得意だったよな。

 

「景気の悪い顔してんぜ?腹でも壊したか?」

 

「簡単な問題じゃねぇの。そういやお前ってテストとかどうしてんの」

 

「どーいう意味だよ」

 

「いやだってバカじゃん」

 

「ああ、そういうことか。赤点取ったら提出物でカバーしてるぜ!」

 

他の学校だとそういうカバーが出来るのか。つまり真面目に過ごしていれば留年することなく卒業は出来ると。

 

「お前は高梨に勉強教わってたよな。今でも勉強してんのか?」

 

「今は教える立場だよ。補佐だけど」

 

「はぁ!?お前が!?マジかよやっべぇな」

 

「今はそれで困っててなぁ……教え子が5人いるんだけど、そのうちの2人が喧嘩して家出しちゃってさ。オマケに更にその1人と喧嘩……っていうか俺が全面的に悪いんだけど、喧嘩しちゃってさ」

 

「ツッコミどころだらけだな。それで結局何に困ってんだよ」

 

「その2人を仲直りさせる方法。お互い譲らなくてさ」

 

真田はクレープを食べながら頷いている。コイツなりに考えてくれてるのか。ありがたい。

 

「クレープうめぇわ」

 

「考えてくれてないのか」

 

「ンなもん、お互いにごめんなさいすりゃあいいんだよ。難しく考えすぎなんだっての。どうせ先に謝りたくないーとか言ってんだろそいつら。だったら同時に謝らせたらいいじゃねぇか」

 

「…そういうもんか」

 

「そーいうもんだ」

 

もっと簡単に考えれば良かったのか。先に謝りたくないなら同時に謝ればいい。あの2人のことだから僅かなズレも指摘してきそう……いやそこまで子供じゃないはずだ。そこは2人を信じよう。

 

「アドバイスサンキュ。機会があれば今度美味いシュークリーム食わせてやるよ。そこらの店より美味いぞ」

 

「お、マジか。やったぜ〜」

 

◇◇◇◆◆◆

 

私は今、二乃が泊まっているホテルでハサミを持って立ち尽くしている。

 

まず私は二乃と話がしたくてこのホテルに来た。ホテルにはフータローやハヤトも来ていたみたい。

そこで二乃は好意を抱いていた信繁という人がハヤトだったことを知ったみたいだ。

正直信繁って名前だしハヤトと関係があるのかと思ってたけど、まさか本人だったとは。

 

変装して騙してたことを二乃は怒っていたけど、それは私たちがフータローやハヤトにしていたことと一緒だ。

 

それから二乃はハヤトから『5人でいてほしい』と言われたみたい。フータローが私たちのために頑張ってくれてたのは知ってたけど、ハヤトも私たちのことを考えてくれているんだと思った。

 

だけど二乃は戻りたくない、昔と違ってすれ違いも多くなってストレスが溜まる、一緒にいる意味がわからないと言った。

だけど私は昔と違って、一人一人が違う経験をして足りないところを補え合える、だから違っててもいいと思う。そう二乃に伝えた。

 

そして二乃は、

 

「過去は忘れて今を受け入れるべき、いい加減覚悟を決めるべきなのかしらね」

 

と私にハサミを渡してきた。

 

「どういう意味?」

 

「……我ながらドラマの見過ぎよね………さようなら、信繁君」

 

◆◆◆◇◇◇

 

次の日。風太郎から四葉ちゃんが陸上部の土日の合宿に巻き込まれたことを聞いた俺は風太郎、五月ちゃん、一花ちゃんと合流していた。今度こそ四葉ちゃんを陸上部から解放するために。

 

しかしこんな時でもトラブルは付き物らしい。

 

「え、どうしたの三玖。助けてほしい?」

 

「おいおいこんな時に何やってんだよ…」

 

「どうする。陸上部そろそろ出そうだぞ」

 

「どうしましょう。直接お願いしに行きますか?」

 

「………そうだ、良い作戦を思いついたぞ。一花、三玖を連れてきてくれ。隼人は少し時間を稼いでくれ」

 

「どうするつもりだ?」

 

「コイツらの得意技を使う」

 

 

 

 

 

「よお江場。朝から元気だな」

 

「誰かと思えば幸村。昨日の今日でまだ中野さんを引き抜こうとしてるの?」

 

風太郎に言われた通り時間稼ぎをするために陸上部の、いや江場の前に立ち塞がる。なんならコイツには言いたいことがあるからちょうど良い機会だ。

 

「それもあるが、お前に一つ言いたいことがある」

 

「何かな。急ぐから手短にしてくれる?」

 

「お前、他人の意見聞いたことあるのかよ。確かに駅伝はお前にとって大事な大会だろうけど、他の子には期末試験が大事な子だっているんだぞ」

 

「そんなわけないよ。だってみんな期末試験より駅伝大会の方が大事だからここにいるんだよ」

 

「お、落ち着いてください2人とも!幸村さんも私は大丈「四葉ちゃんは少し黙ってて」…ア、ハイ」

 

「テメェは自分の意見を押し付けてるだけだろうが。テメェの一方的な押し付けをするんじゃなくて、ちゃんと他の奴の意見も聞いてやれよ!」

 

この期末試験期間で痛いほど味わった。約束を破った俺が五月ちゃんに一方的に押し付けようとしたさよなら。約束を破った俺にはそうするしか脳がなかったが、二乃ちゃんは少しは考えろと怒ってくれた。

 

一方的な意見も誰かの言葉で変わったりする。だけど江場は自分の意見を一方的に押し付けるだけで誰かの話を聞きやしねぇ。

 

「四葉ちゃんのためだけじゃない。この陸上部のためだ。お前みたいなスカポンタンに付いてきてくれる奴らのために言ってるんだよ俺は」

 

俺の言葉が江場に届くとは正直思っていない。だけど何も言わないと何も始まらない。

 

「痴漢だー!痴漢が出たぞー!」

 

「え、痴漢…?」

 

「あ!ちょっとそこの人!止まりなさーい!」

 

「(準備できたか)言いたいこと言ったし、俺は帰らせてもらうよ」

 

いきなり現れて好き放題言っていなくなる。側から見ればただの変人だが、正直もう関わることもないだろうし、俺は別にいいかな。

 

 

 

 

 

「捕まえましたー!」

 

「ぐぇーッ!」

 

「さぁ観念して…って上杉さん!?」

 

合流出来たタイミングでちょうど四葉ちゃんタックルで捕まった風太郎。痛そうだな。

 

「ど、どうして痴漢なんて…」

 

「う、うっそー!お前を誘き寄せるための嘘でしたー!!」

 

「え、私を?何のために……幸村さん」

 

「君の代わりに五月ちゃんが退部を申し込んでる」

 

四葉ちゃん本人が断り辛いなら代わりに五月ちゃんが断ればいい。変装してね!という作戦だ。髪の長さや五月ちゃんの性格を考えると正直不安ではあるが。

 

「戻らないと…私はへっちゃらですから」

 

「お人好しもいい加減にしなよ。どっちも大切なのはわかるけど、今の自分が1番大切にしたいのは…なんなの?」

 

「私は……でも「隠れろ!様子がおかしい…」

 

風太郎が咄嗟に四葉ちゃんの口を塞ぎ、俺も隠れる。どうやら五月ちゃんが上手くいっていないようだ。

 

「わ、私は四葉ですよー。このリボンを見てください〜」

 

「うん、似てるけど違うよ。だって髪の長さが違うもん」

 

クッソ!よくよく考えたら分かることをアイツに当てられるのが妙に腹立つ!何でそれは分かるのに他の部員の意見を聞けないんだ馬鹿野郎!!

 

「あんなにやる気のあった中野さんがそんなこと言うはずないもん。中野さんは五つ子って聞いたよ。あなたは姉妹の誰なのかな。幸村と何か繋がりがあるわけ?」

 

「あのアマ……」

 

「上杉さん!幸村さんが怖いです!」

 

「落ち着け隼人、ここで出ていったら逆効果だ!」

 

正直このまま五月ちゃんを回収して4人で立ち去りたい気分だった。でもそれは色んな方面に迷惑がかかるからなぁ。

 

「すみません!お待たせしました!」

 

五月ちゃんと陸上部の元に四葉ちゃんが現れた。いや違う。だって本物は隣にいる。

 

「あはは、ちょっとした五つ子ジョークですよ」

 

「何だ冗談だったのね。でも笑えないからやめてよ。中野さんの才能をほうっておくなんてできない。私と一緒に高校陸上の頂点を目指そう」

 

「アハハ。まあ私が辞めたいのは本当ですけど」

 

まさかの発言。いやあれが五つ子の誰かならこの作戦の意図は分かっているはずだからあの発言は間違いじゃない。むしろ江場にダメージを与えられているからこっちからしてみればスカッとしている。

 

「調子のいいこと言って私のこと考えてくれないじゃないですか。そもそも前日に合宿を決めるなんてありえません。マジありえないから」

 

「はい……ご、ごめんなさい…」

 

あの圧力。俺の予想が正しかったら……

 

◇ーーーーー◇

 

「ふぅ、間に合ったみたいだね」

 

「お前が三玖を連れてきてくれたおか…って三玖!?」

 

「私は何もしてない」

 

「やっぱりあの子…」

 

「あ、ハヤト君はわかった?私がホテルに着いた時、ハサミを持って三玖が立ち尽くしてたの。詳しくはわからないけどきっと、何か気持ちの変化があったんだね」

 

俺たちの元に戻ってきた五月ちゃんと、リボンを外して元の髪型……とは違うね…

 

「やっぱり、二乃ちゃんだ」

 

「あんた、私だって分かったんだ」

 

「まあ、これだけ明るいところなら、ね」

 

「ふん、言うじゃない」

 

あれだけ長かった髪の毛をバッサリと切った二乃ちゃん。気持ちの変化か……

 

「まさか二乃がそんなにサッパリいくなんて、もしかして失恋かなー?」

 

「ま、そんなとこ。言っとくけどあんたじゃないわよ幸村」

 

「え、あ、はい」

 

俺を指差す二乃ちゃんはどこか清々しい表情で四葉ちゃんの元へ歩み寄った。

 

「四葉、私は言われた通りにやったけど、こんな手段取らなくても本音で話し合えば彼女たちも分かってくれるわ。あんたも変わりなさい。辛いけどいいこともきっとあるわ」

 

「…うん、私行ってくる!」

 

四葉ちゃんは陸上部の元へと歩いて行った。二乃ちゃんのおかげで江場も話を聞くようになってくれてたらいいけど…いや、気にしすぎるのも良くないか。

 

「あとはお前らだぞ二乃に五月。さっさと仲直「ほーらフータロー君、私たちはこっちだよ」

 

「期末試験の対策練ろ」

 

「お、おいお前ら!」

 

風太郎は一花ちゃんと三玖ちゃんに連れられその場を離れた。だけど俺は2人に伝えたいことがある。

 

「2人とも、お互い先に謝るのが嫌なら同時に謝ろう!そうすれば「幸村、あんたってホントお節介よね」え?」

 

「少しだけ、感謝してるわ。ありがと」

 

「私もです幸村君。あなたや上杉君がいなかったら、私たちは仲直り出来ませんでした」

 

「………」

 

「何ボケっとしてんのよ。補佐としての仕事をやりなさい」

 

「帰ったら試験対策、頑張りましょうね」

 

「………うん、頑張ろうね」

 

どうやら彼女たちはそれぞれ答えを見つけたようだ。色々トラブル続きの期末試験週間だったけど、なんとか残る障害を期末試験だけにすることができた。

 

さあ、もう一踏ん張りだ。

 




八つのさよならももうすぐ終わりが見えてきました。やっぱり隼人目線の話が多くなるのでどうしても端折ってしまう場面が出てしまいます。そんな時は原作を読もう!ヨシ!!

次回はどこまでいくかなー。テスト終わりまでいくのかなー?
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