五等分の花嫁と約束と   作:無限の槍製

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中野一花の秘密

姉妹や風太郎、隼人に「タマコ」を真似されて複雑な気持ちになっている


第28話 スクランブルエッグ①

 

男幸村隼人はとても悩み考えていた。

春が近づいてきている3月の某日。春休み真っ只中、温泉旅館で短期バイトに励む俺は頭を痛めていた。

 

それはスイーツしか作らない真田でも、他の女性従業員達との会話が弾みすぎて業務が進んでない高梨ちゃんでも、風呂場で滑って体を強打し早々にリタイア気味になった佐助のことでもない。

 

あの日…期末試験が終わり祝賀会を開いたあの日…俺が二乃ちゃんを迎えに行ったタイミングのこと。

 

『好きよ』

 

あれってどういうことなのぉ!!!!?!?

え、嘘、マジなの??パニックになりすぎてあの日以来二乃ちゃんとまともに顔を合わせられてないし話も出来てない。つまり返事を返せていない。

こんな事高梨ちゃんに言ったらアイアンクローが俺の頭を破壊するのは間違いない。

だけど俺はあのタイミングですぐに返事を返せるような人間じゃない。先延ばし先延ばしにして今日までやってきてしまったのだ。

 

「あぁ……」

 

「さっきからシケたツラしてんな。そろそろ客来んぞ。ジイさんと変わって来い」

 

「え?あぁ、もうそんな時間か……次のお客さんは…上杉……3名……」

 

3名の上杉となると心当たりがある。それと俺が休憩中に入館した中野6名もなんとなく心当たりがある気がする。まあこんな山奥のお化け屋敷みたいな旅館にみんなが来るとは思えないけど。

 

「すいません、時間来たんで交代します」

 

「………」

 

受付の中野さんと交代する。初日から思った事だがこの人声が小さい。お爺さんだから仕方ないレベルを超えている。そういえばこの人も『中野』だな。

 

「………いやまさかね」

 

「わぁ、お化け屋敷みたい」

 

「やってるよな……?」

 

「いらっしゃいまぁ………風太郎!」

 

「隼人!?お前ここがバイト場所だったのか」

 

入館したのは俺の知ってる上杉3名、風太郎にらいはちゃん、勇也さんの上杉家御一行だった。

 

「隼人、あいつらの部屋って何処だ?」

 

「あいつらって誰よ」

 

「五つ子だ。あと中野父もいるが」

 

「………」

 

中野6名、知り合いでした。対戦ありがとうございます。

 

◇ーーーーー◇

 

「それじゃおやすみ〜」

 

「おやすみー」「おやすみなさいッス!」

 

もうすぐ日が変わる夜11時半。高梨ちゃんも自分の部屋に戻り俺たち3人も寝る支度をしていた時、

 

「ん……」

 

「どうした幸村」

 

「ヤバいな……」

 

「な、なんかあったんスか!?」

 

「……トイレ…ッ!」

 

「なんだクソか」

 

春が近づいているとはいえまだ夜は冷える。そんな中冷たいジュースを飲めばお腹にダメージがいくわけで。最近考えすぎなところもあってよりお腹にダメージが出てる気がする。

 

「はぁ……色々考えすぎ…だとしても考えないといけないことだし…」

 

部屋とトイレは少し離れている。廊下は中庭を覗け月明かりもよく差し込む。あまり暗さを感じないいい設計だ。

そんな中庭に彼女はいた。

 

「あれ、五月ちゃん?」

 

 

 

 

 

「やっほ、こんな夜中に何してるの」

 

「幸村君!私は上杉君を呼んだのですが…」

 

「あら、そうだったの。っても道中風太郎の姿は見てないな」

 

五月ちゃんは中庭で1人風太郎を待っているようだった。この後に風太郎が来るなら…なんで少し思ったが、旅館とはいえ真夜中に1人にさせるのは気が引ける。

 

「あ、そうそう。二乃ちゃん、俺のこと何か言ってなかった?」

 

「二乃ですか?そういえば最近幸村君のことを聞いてくるようになりましたね。姉妹の中では私が1番付き合いが長いですし」

 

「ああ、そう…」

 

「二乃と何かあったのですか?」

 

「ん!?いや大丈夫大丈夫こっちの話だから!それより五月ちゃんは?こんな夜中に風太郎を呼び出すなんて只事じゃないと思うんだけど……」

 

「そうですね……幸村君にも知ってもらった方が良いかもしれませんね。他の姉妹のことなんですが」

 

五月ちゃんの話によると最近4人の様子がおかしいようだ。一花ちゃん、三玖ちゃん、四葉ちゃんは妙にソワソワしており、二乃ちゃんは俺のことを知りたがっている。特に二乃ちゃんなんかは俺や風太郎のことを嫌っていたのにどういう風の吹き回しなのか、と。

 

「(二乃ちゃんはともかく…)いや、ちょっと分かんないな…直接聞いてみたりとかは」

 

「身内の私より幸村君の方が適任かと…」

 

身内だからこそ聞きにくいこともあるだろう。それなら俺や風太郎が適任かもしれないが……まずは俺が二乃ちゃんのことを解決した方がいいよな。絶対。

 

「分かった。俺の方から色々聞いてみるよ。とりあえず今日はもう遅いし部屋に戻りな。風太郎が来たら俺から説明するよ」

 

「ありがとうございます幸村君。それにしても約束した時間ギリギリになっても来てくれないなんて」

 

「まあ風太郎も家族の時間ってのがあると思うからさ。明日の朝また連絡してみてよ」

 

「分かりました。そうしてみます。幸村君も早く寝てくださいね。私の予想だと上杉君は来ないと思いますので」

 

「なんだかんだ来るかもよ〜?5分ぐらいすぎて息切らしながらね」

 

「だといいのですが」

 

五月ちゃんと別れた俺はしばらく風太郎を待つ事にした。結局風太郎は来なかった。

 

◇ーーーーー◇

 

次の日

 

予定通り朝ご飯の準備を手伝い、銭湯の掃除をして、館内の掃除をして……かれこれ3時間ぐらいの睡眠となった。あの後部屋に戻っても中々寝付けなかったのが痛い。

 

「隼人」

 

「あ、風太郎か……ふぁぁ…」

 

「デカい欠伸するなよ…それより、五月から例の件聞いたぞ」

 

「ああ、アレね。どうする?二乃ちゃんは俺の方から聞いてみるけど」

 

「なんで二乃だけなんだ?」

 

「えぇ!?いやそれは…ほら、風太郎よりは嫌われてないから」

 

「ぐ…それもそうだが……俺はこれからあいつらの部屋に行く。どうせ大したことない悩みだ。二乃のも解決してきてやるぜ」

 

大丈夫かなぁ。俺はこのまま受付の手伝いだから風太郎について行けないけど……佐助に頼んで交代してもらうか?

 

色々考えているうちに風太郎はその場を去り、俺は受付業務の手伝いに入ることになった。

 

それから20分ぐらい。

 

「あら、こんなところで会うなんて奇遇ね」

 

「やっほー頑張ってるー?」

 

「………?????」

 

俺は疲れてるのだろうか。俺の目の前に五月ちゃんが2人現れたのだ。

 

「あ、ハヤト君って私たちのこの状況知らないんじゃない?」

 

「ちょっとした事情よ気にしないで」

 

「あ、ああ一花ちゃんと二乃ちゃんか………二乃ちゃん!?」

 

目の前の五月ちゃん風二乃ちゃんは悪戯な笑みを浮かべ俺の耳元で、

 

「よく分かったわね。偉いわ」

 

と囁いてきた。悪魔である。眠気マックス、脳はパンク寸前のところに投与された麻薬、いや魔薬である。俺をぶち殺すつもりなんだろうか。

 

「二乃ちゃん、お兄さん今仕事中だから…」

 

「そうね。一花と朝風呂に行くつもりだったし、また後でねユキ君」

 

「ブッ!?」「えぇ!?」

 

言葉の暴力である。次から次へと俺に向けてパワーワードが投下される。HPゲージが5本あっても10本ぐらい削られた気分だ。

 

「ハハ……ハハハハハハ…」

 

「アハハ……は、ハヤトくーん?大丈夫ー?」

 

完全に白目をむいた俺と苦笑いをする一花ちゃんを置いてお肌ツヤツヤ元気ハツラツ二乃ちゃんは温泉へと向かっていった。

 

◇◇◇◆◆◆

 

「痒いところはございませんか〜?」

 

「もーここまでしなくてもいいのに」

 

「せっかく女優の体を洗えるのよ。今のうちに堪能しないと」

 

二乃に朝風呂を誘われた時は物珍しいこともあるのだと思った。昔は5人で入ったこのお風呂も2人だと妙に広く感じる。

 

「それで、なんで私なのかな?」

 

「あら、やっぱりお見通しなのね。一花の話が聞きたくなったのよ。ほらあんたってたくさんされてるらしいじゃない。告白とか」

 

やっぱりかー!

さっきのハヤト君に対する態度でなんとなく分かった。ううん、あの期末試験が終わった時ぐらいから五月にハヤトさんの事を聞いているのは知ってた。その頃からもしかしてって思ったけど……

 

「こんなこと他の子には言えないわ…私好きな人ができたの」

 

うん知ってる!さっきのを見たら誰でも分かると思う!!

 

「出会いは良くなかったわ。でも気づいちゃったのよ。あいつが好きだって」

 

二乃の顔はそれこそ三玖と同じ、恋する乙女と言った感じ。姉として嬉しいし、応援したい……だけど何処か『よかった』と安心してしまってる私がいる。最低だよこんなの。

 

「つい先日告白しちゃったけど、それが正解だったか自分でもわからない。多分あいつも困ってるんだと思う。そこで聞きたいの。告白されたら多少意識したりするのかしら」

 

「私の意見としては、やっぱり告白されても告白した人をどう思ってるかで変わってくると思うんだ」

 

「付き合いの長さとか…かしら?」

 

「うん。二乃も会って1日2日の人に告白されても嬉しいって思えないでしょ?」

 

「…………多分」

 

「私の場合はね、意識することはなかったよ。だって相手のことをよく知らないのに意識も出来ないよ」

 

「それもそうね……」

 

二乃は真剣に話を聞いてくれている。もう少し手助けが出来たらいいんだけど。

 

「二乃はどうしてその人が好きになったの?」

 

「…あいつは私の大切なものを壊す存在として現れたわ。だけどあの夜、王子さまみたいなあいつを別人と思い込んだまま好きになっちゃった。そして理解したわ。私が拒絶していたのは彼の役割であって彼個人ではなかった……そこからはもう歯止めが効かなかったわ」

 

「二乃らしいっちゃ二乃らしいね……じゃあ、もし同じ人を好きな人がいたらどうする?その子の方が自分よりずっと彼のことを想ってるとしたら?」

 

「それは……そうね、悪いけど蹴落としてでも叶えたい、そう思っちゃうわ」

 

二乃は本気だ。愛の暴走機関車になりかねない程に本気だ。

そして私は二乃から答えを得ようとしている。他の人ならどうするんだろうって、模範解答を欲している。自分で解くことが大事だって、常日頃から彼に教わってるはずなのに。

 

「そうだわ!あんたもうキスシーンとかしたのかしら!?」

 

「ななな、何をするつもり!?」

 

「いいじゃない姉妹なんだから!」

 

「姉妹だからダメなのーーッ!!」

 




今回からスクランブルエッグになります。
原作と違って二乃が隼人に告白しているので原作ほど一花が苦しい思いをしないと思います。その分他に回ってくるかもしれませんが、コチラもオリキャラというお助けキャラがいますから。多分大丈夫です。多分。

スクランブルエッグは隼人視点の話が多くなるので原作みたいに⑧まではいかないと思います。8巻ってほぼスクランブルエッグなんですね。専門料理本みたい。
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