五等分の花嫁と約束と   作:無限の槍製

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幸村隼人の秘密

人の呼び名を簡単に変えられない(意識しないと変わらない)


第3話 五等分の生徒

 

「お茶です幸村さん!」

 

「ありがとう四葉ちゃん。ていうか俺がいてもいいのかな…」

 

「五月から名前以外のことは聞いてますよ!勉強を教えてくれる優しい人だって!あと唐揚げもくれるって言ってました!」

 

俺は唐揚げ屋さんじゃないんだけどなぁ。

今現在この中野家のリビングには俺と中野家の四女、リボンちゃんこと中野四葉がお茶を飲みながら風太郎の電話が終わるのを待っている。

 

「ま、全く問題ありません!こらこら押すんじゃないよ!全く困った生徒たちだ!ハハハハハッ!」

 

「ああいう状況って他人だから笑えるんだよね。当の本人は絶対笑えないんだよね」

 

「上杉さん、顔が引き攣ってますね……」

 

電話を切った風太郎は項垂れながらソファに座った。相当ダメージがあるみたいだな。それもそうか。担当する生徒とは喧嘩するし、担当が1人だけと思ったらまさかの五つ子、5人も生徒がいるのだ。お兄さんなら家庭教師やめてるかも。

 

「はぁ……みんなどこ行ったんだ…」

 

「他のみんななら自分の部屋に戻りましたよ」

 

「お前は…四葉だったか……ってか何でお前は逃げないんだ?」

 

「心外です!上杉さんたちの授業を受けるために決まってるじゃないですか!怖い先生が来るかと思って嫌だったんですけど、同級生のお二人なら楽しそうです!」

 

「え?ちょっと待って?俺も家庭教師になってない??」

 

「この際だ!お前も俺の手伝いをしてくれ頼む!!五月もお前には心を開いてるみたいだし!」

 

「普通にタダ働き求めるのやめなさいよ…というより心開いてるっていうか、アレが普通のクラスメイトの接し方でしょ??風太郎が一言多いだけなんだって」

 

「くっ、正論過ぎるッ」

 

「と、とにかく!他のみんなを呼びに行きましょう!」

 

何故か俺まで巻き込まれてしまった。お兄さん、付き添いだけのはずだったのになぁ。

仕方ない、部屋から引っ張り出すぐらいは手伝うか…

 

「手前から五月、私、三玖、二乃、一花の順ですね」

 

「まさか5人集めるところから始めるとは……」

 

「中野ちゃんなら大丈夫でしょ。あの子真面目だし、流石に家庭教師と生徒の立場になればねぇ?」

 

「そうですよ!余程のことがない限り協力してくれますよ!」

 

 

 

「嫌です。そもそも何故同級生の貴方なのですか。この町にはまともな家庭教師はいないのでしょうか」

 

「………」「あれー……」

 

「まあまあそう言わずに中野ちゃん。お金払って家庭教師雇ってるんだから……ね?」

 

「教わるなら幸村君から教わります!あなたからは教わりません!!」

 

初手、中野五月、勉強拒否。

ここまで嫌われてるとなるとかなり大変だな風太郎……俺としては頼られるのは嬉しいし勉強を教えるのも別に構わないのだが、風太郎と比べると俺も成績は下だ。教わるなら風太郎の方が絶対にいい。

 

「落ち込むな少年。中野ちゃんは俺からも説得続けてみるから」

 

「すまん……もしダメそうなら…ホントに頼んでもいいか…?」

 

「まあ、出来る限りはお兄さんに任せなさい」

 

「あはは…5人もいれば1人くらいこうなりますよ。上杉さんの嫌われ具合は凄かったですけど…」

 

「次行こう!次!次は三玖ちゃんだっけ?」

 

「はい!三玖は私たちの中でも一番頭がいいんですよ!」

 

中野三玖。ヘッドホンをつけた女の子だ。頭がいいとなると風太郎とも気が合うんじゃないかな。

 

「嫌。なんで同級生の貴方なの?この町にはまともな家t「わかった!さっきも聞いたそれ!」

 

「中野ちゃんと一緒の文言が飛んできたねぇ」

 

「つ、次行きましょう」

 

中野三玖、勉強拒否。

次に向かうのは中野二乃。なかのにの、って名前の響き可愛いね。俺らのことストーカー呼びしてたけど大丈夫かな…

 

「部屋にもいないってどういうこと!?」

 

中野二乃、不在。

まさかこの短時間で部屋からもいなくなるとは。三玖ちゃんといい忍者の末裔かなここは??

 

「まだ一花がいます!一花が……………」

 

「何その間!不安しかない!」

 

「驚かないでくださいよ…?」

 

中野一花。この五つ子の長女であり一番大人びた雰囲気を纏っている。確かに『お姉さん』と言った感じだ。

 

「……ここに人が住んでるのか…?」

 

前言撤回。目の前の汚い部屋、通称汚部屋を見て考えを改める。一花ちゃんは『お姉さん』ではなく『ダメなお姉さん』に変更だ。

 

「人の部屋を未開の地扱いしないでほしいな〜」

 

「布団が喋ってる…」

 

「よくこの短時間で寝られるね一花ちゃん。隣のクラスの野比くんにも勝てそうだね」

 

「もー…この前片付けたばっかりなのに」

 

散らかった部屋には本や衣服、下着まで落ちてる。これ俺ら入って良かった?ダメだよね?大丈夫?

 

「ったく、いいから居間に戻るぞ」

 

「あー、今すぐはダメダメ。服着てないから照れる」

 

「なんでだよ!」「なんでぇ?」

 

「ほら、私って基本寝る時裸じゃん?「いや知らないよ」あ、ショーツは穿いてるから安心して「うーん、お兄さんが思うにそういう問題じゃないかなぁ?」

 

四葉ちゃんに服を渡されモゾモゾと着替える一花ちゃん。うーん、まさか彼女との初会話でこんな状況になるとはこの李白の目をもってしても分からなんだ。

 

「お前なぁ少しは片付けろよ。この机なんて最後に勉強したのはいつのことやら」

 

「もー勉強勉強って。せっかく同級生の女の子の部屋に来たのにそれでいいの?」

 

「風太郎、考えなおせ。このままでいいはずがない」

 

「そうだな。でもお前が考えてることと俺が考えてることは絶対に違うぞ。それより一花はさっさと着替えて居間に来い」

 

これ以上は身が持たないと判断した風太郎は足早に部屋を出ていく。確かに時間は有限。生着替え中だがお兄さんも退散しよう。

 

「!?三玖…」

 

「あら、三玖ちゃん。どうしたの?」

 

「フータロー、ハヤト。聞きたいことがあるの。私の体操服が無くなったの。赤のジャージ」

 

部屋から出てすぐに三玖ちゃんから尋問される。それより何気にこの子下の名前で読んだな……俺が言えた義理じゃないか。

 

「俺たちは見てないぞ。なあ?」

 

「赤いジャージなら目立つだろうしね。そこの汚部屋なら埋もれてるかもしれないけど」

 

「冗談じゃない…そんなことしてたら明日になっちまう」

 

多少オーバーだけど、まあこの汚部屋からジャージだけを探すとなると確かに日が暮れる可能性はあるね。

 

「前の高校のジャージでいいんじゃない?」

 

「ナイスアイディアだけど下着姿で男子の前に現れないで一花ちゃん」

 

「あんな学校の体操服なんて捨てた」

 

「勿体ねぇ……なんか恨みでもあんのかよ」

 

瞬間、その場の空気が少し変わった。これは知らず知らずに風太郎が地雷を踏み抜いたと見える。爆発に巻き込まれる俺のことも考えてよねぇ〜。

 

「おーい、そこで何やってんの?」

 

「二乃ちゃん?」

 

「クッキー作りすぎちゃった。食べる?」

 

「二乃…今それどころじゃ「あ!!あのジャージ!」

 

「二乃が三玖のジャージ着てたのか……」

 

救世主だ。この場の空気を変えてくれた救世主だ。というか三玖ちゃんのジャージの件も解決してしまった。姉妹だから勝手に借りたりするのかな。

 

◇ーーーーー◇

 

「よぉし!これで4人だな!五月はいないが始めてしまおう!まずは実力を測るためにも小テストをしよう!」

 

恐らく中野ちゃん用に作ってきたであろうプリントを一花ちゃん、二乃ちゃん、三玖ちゃん、四葉ちゃんに配る。

 

『いただきまーす!』

 

その4人は絶賛クッキー食べてますけどね!

 

「おいし〜これ何味?」

 

「あ、ホントだ。二乃ちゃん料理上手だね」

 

「当然よ!この家の台所事情はアタシが握ってるんだから」

 

「それよりジャージ、今すぐ脱いで」

 

家庭教師が目の前にいて尚且つプリントをやれと言っているのにこの自由度。これは中々の強敵だねぇ風太郎。あ〜クッキー止まらな〜い。

 

「上杉さんご心配なく!私はもう始めてます!」

「よーし!名前しか書けてないがいいぞ!」

 

「クッキー食べたら眠くなってきた」

「お前はさっきまで寝てただろ!」

 

「三玖、体操服見つかったんだからやってくれよ!」

「勉強するなんて言ってない」

 

「ねーねーせっかくだし幸村も一緒に遊びに行かない?」

「絶対ダメ!!」

(俺は問題無いしむしろウェルカムだけどね)

 

風太郎はツッコミが似合う。様になってるとはこの事だ。

しかしここまで来ると風太郎が少し可哀想だ。少しぐらい手伝ってやれればいいんだが。

 

「俺ちょっと中野ちゃんに声かけてくる」

 

「ああ、すまん頼む」

 

なら俺が出来る事をやろう。これくらいしか出来ないけど。

 

「中野ちゃん。今ちょっといいかな?」

 

「幸村君?どうかされましたか?」

 

部屋から顔を覗かせたのは眼鏡をかけた中野ちゃん。風太郎が隣にいないか警戒しているみたいだ。

 

「ごめんね勉強してた?」

 

「ええ。今日の授業の復習を。それより下が少し騒がしいですが」

 

「今二乃ちゃんが作ったクッキー食べてt「なんで呼んでくれないんですか!今から休憩に入ります!頭を使うとお腹が減りますので!ええ!」

 

中野五月、部屋から飛び出す。

いやまさかクッキーで釣れるとは思ってなかった。嫌いな人よりもクッキーか……クッキーに負けたねぇ上杉殿。

 

「あれ」

 

「あら風太郎寝てるじゃん」

 

中野ちゃんを追ってリビングに戻ると風太郎が寝ていた。おいおい家庭教師が寝るなよ。

 

「っても、不自然だわなこれ。生憎お兄さんは近年のハーレム主人公みたいな難聴じゃなくて、むしろ耳は良い方なんだよ。家庭教師いらないからってここまでする二乃ちゃん?」

 

「何?やっぱりキミもそっち側なの?」

 

「いやいやまさか。僕は家庭教師なんて柄じゃないし、今日も風太郎の付き添いで来ただけだよ。クッキーもご馳走になったしね。でもね…………風太郎は二乃、お前ら生徒のために時間を割いてここに来てんだ……それを忘れないでね」

 

寝ている風太郎を担いで荷物をまとめる。コイツホント軽いな。まあ毎日焼き肉抜き定食食ってたらこんなもんか。

 

「待ってください」

 

「中野ちゃん?」

 

「彼を送るの、私もついて行きます」

 

◇ーーーーー◇

 

「風太郎。おい風太郎!」

 

「!?……えっ」

 

「家、着いたぞ」

 

俺たち3人を乗せたタクシーが風太郎の家に着いた頃には外は真っ暗だった。暗くなるの早いねぇ。

 

「な、なんで??」

 

「いいからさっさと降りるぞ。すいません代金は」

 

「4800円になりますね」

 

「流石タクシー……すいません1万d「大丈夫です。カードで」

 

俺が諭吉を出そうとしたら中野ちゃんがカードで払ってくれた。カード払い……恐ろしい……

 

「なんで五月まで…」

 

「貴方を送ったついでに買い物です。それより、一泡吹かされましたね。これに懲りたなら私たちの家庭教師は諦めることです」

 

「中野ちゃん…」

 

「それは出来ない」

 

「……何故そこまで」

 

「あ、お兄ちゃん!」

 

風太郎と中野ちゃんの会話に後ろから飛び入り参加してきたのは風太郎の妹のらいはちゃんだった。

俺自身、風太郎と友達やらせてもらってる分、家の事情を少しは知ってるし、ここの親父さんとも仲良くさせてもらってる。

 

「隼人さんこんばんは!あ、その人女の人って生徒さんでしょ!」

 

「なんでもない人だ!帰るぞ!」

 

「よかったらお二人ともウチでご飯食べて行きませんか?」

 

「え?いいの?」「えぇ!?」

 

「それは…ほら!このお姉さん忙しいらしいから!」

 

「ダメ…ですか?」

 

誰もらいはちゃの頼みからは逃れられない。

 

 

 

 

 

「まさか風太郎が女の子を連れてくる日が来るなんてな!!お?この牛乳消費期限1週間前じゃねーか!危うく飲めなくなるところだったぜ…」

 

「親父…」

 

風太郎の家に上がらせてもらうなりこれだ。親父さんの上杉勇也さんはこういう人だから半ば諦めてるけど。流石に消費期限は気にしてほしい。

 

「もうすぐ出来るからねー!お兄ちゃんが予定より早く帰ってきたから間に合わなかったよ。でも量はいつもより多いからたくさんおかわりしてね!」

 

「らいはちゃんは良いお嫁さんになりそうだねぇ」

 

「らいはがいない生活……考えたくない…」

 

「そうだお兄ちゃん、家庭教師どうだった?」

 

まあ聞くよねそれ。家庭教師に限ったことじゃない。テストや運動、バイトなどなど初めてやったことに関して『どうだった?』って聞くのは普通のことだ。まあ睡眠薬飲まされて帰ってくるのは普通じゃないと思うけどね!

 

「それに関しては「勿論ベリーバッチグーよ!な隼人!!」

 

「そうだね。この先が楽しみではあるね」

 

「そーなんだ!安心したよー。これで借金問題も解決だね」

 

「らいは、お客さんの前だぞ」

 

「あ、ゴメン」

 

◇ーーーーー◇

 

「今日はご馳走さまでした」

 

「すいません、俺までご馳走になって」

 

「気にすんな!俺らとお前の仲だろ隼人!風太郎、2人を通りまで送ってやんな」

 

「ああ」

 

カレーと卵焼きをご馳走になった俺たち。中野ちゃんは4杯目で行くかどうか迷ってたな。

 

「五月さん……お兄ちゃんはクズで自己中で最低な人間だけど……良いところもいっぱいあるんだ!だから…その……」

 

「私からも一言いいですか」

 

「え?あ、はい」

 

「頭を使うとお腹が空きますから、よろしければまた来てもいいですか?」

 

「!!はい!その時もご馳走しますね!」

 

 

 

 

 

中野ちゃんが帰るためのタクシーを待っている間、なんとも言えない空気が流れていた。

 

「勘違いしないでください。貴方の事情は察しがつきましたが協力は出来ません」

 

「そうかよ。別にお前が気にすることじゃない」

 

「勉強はしますが教えは乞いません。私達のために時間を割いてくれているとはいえです。貴方の手は借りたくありません」

 

「ホント嫌われてるな風太郎。あと中野ちゃん、俺から見ても風太郎は勉強出来るし教えるのも上手だ。家で教わるなら俺からがいいって言ってたけど、俺じゃ成績アップは約束出k「そうか!!それで良いのか!!条件は卒業だけなんだ!!五月サイコー!!」

 

突然風太郎が声を上げた。秘策が思いついたような顔してるけど。

 

「明日同じ時間にまた行く。他の4人を集めておいてくれ」

 

「………分かりました。それでは」

 

丁度タクシーが来て中野ちゃんが乗り込む。俺はここから歩きだ。自転車通学したいなぁ。

 

「幸村君、貴方に言い忘れてました」

 

「え?俺?……ンンッ、この隼人ちゃんに何か御用かな?」

 

「幸村君、貴方は自分を卑下してませんか?貴方の教え方はとても分かりやすいんです。貴方が自分で思っているより凄い人なんです。だからどうか、自分を下げないでください」

 

「俺は卑下なんかしてないよ。これが俺なんだから」

 

「そう…ですか……では、これで失礼します。おやすみなさい」

 

最後、中野ちゃんの顔が少し寂しそうだったのは気のせいだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

「今日は迷惑かけたな隼人。明日からは大丈夫だ」

 

「そうか。まあ俺にとっちゃ他人事だからこんなことしか言えないけど、頑張れよ」

 

「おう。お前もまたらいはのカレー食いに来いよ。らいはも喜ぶ」

 

「そうだな。俺もカレーは好きだし、またお邪魔するよ」

 

「そうしてくれ………それじゃ、またな」

 

「ああ、またな」

 

 

 

こうして俺はあの五つ子達との邂逅を終えた。きっと五つ子全員と関わることはないだろう。あんな可愛い子に囲まれるのは悪い気はしないけど、向こうからしたら俺の印象も悪いだろうし。

 

「はぁ、昔の言葉遣いは改めないとなぁ」

 

後悔80%で俺は家路についた。

 




次回は原作3話の内容になります。三玖の貴重な生脚魅惑のマーメイド回です。
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