「はぁ〜バイトも終わったね〜!温泉入ってから帰る?」
「あ、幸村何処行った」
「兄貴なら用事があるからちょっと出てくるって早めに出て行ったッスよ」
◆◆◆◇◇◇
「確かに話がしたいって言ったけどさ……なんで混浴なの!?」
「あら、ここ以外に落ち着いて話ができる場所があるのかしら?」
「探せばあると思うなぁお兄さんは!?」
翌日。俺と二乃ちゃんは話をするために2人で会うことにした。その場所がまさかの混浴なのは置いといて。
「それで、話って何よ」
「……では単刀直入に。二乃ちゃんが言ってたことだけど「タンマ。やっぱり今はいいわ」
「えぇ……理由聞いとこうか」
「……気持ちの準備ができてなかったわ。その導入だと答えは決まってそうだし。やっぱりライバルは強敵ね」
そう言って二乃ちゃんは温泉から出て行こうとする。
「今は答えようとしてくれたことに感謝するわ。正直あの時聞こえてなかったんじゃないかって思ってたんだから。私のこと、しっかり考えてくれたんだって嬉しくなったわ」
「それはどうも」
「あと、諦めたわけじゃないから。むしろこれからが本番って思ってるわ。覚悟しておくことねユキ君!」
「あはは…3年はもっと大変になるな……」
◇◇◇◆◆◆
「………二乃、どうしたのですか?」
温泉に遅れてやってきた二乃は私の隣に来るなり口元まで温泉に浸かってブクブクし始めました。
「色々な人が入っているのですから、その……衛生上良くは」
「五月!」
「は、はい!?」
「あんたは私に内緒にしてること、無いわよね?」
いきなり立ち上がった二乃は私に聞いてきました。二乃に隠していること……
「…あったとしても、知られたくない、言いたくないから内緒事なんですよ」
「…それもそうね。でもね五月。ボケッとしてるとあっという間に食べられるわよ」
「た、食べ!?え、バイキングの話ですか!?」
「…………少し同情するわ」
苦笑いをする二乃の表情を見て不安になってきました。私、何か料理を見落としていたんですかぁ!?
◆◆◆◇◇◇
温泉から上がった俺は3人と合流して中野さんへ挨拶に向かった。長かったようで短かった短期バイトもこれで終わりだ。案外いい経験になったと個人的には思う。
「今更だけど忘れ物とか無いよね?」
「隼人が朝風呂行ってる間に確認したから無いよー。もう1人で先に入るなんてさー」
「朝風呂入るなら俺も行きたかったッスー!」
「確かに、最後ぐらいさっぱりしたかったな」
「ごめんごめん。次からはちゃんと言うからさ」
「次ってもう今から帰んだろ!」
まさか俺の分の荷造りまでしてくれていたとは。二乃ちゃんが出て行ってからしばらくゆっくりしてた俺がいけないんだけど。
この時間中野さんは受付にいた。そしてそこにはもう1人いた。
「あれ、風太郎?」
「お前ら。そういえば短期バイトも今日までか」
「ああ。それで挨拶に来たんだけど…取り込み中だったり?」
「いや。俺の方はもう大丈夫だ。色々世話になったな」
風太郎がその場を離れ旅館の外へと出ていく。外では上杉家と中野家が集まっていた。
「中野さん、短期バイトお世話になりました」
「お世話になりましたッス!!!」
「色々経験出来て勉強になりましたし、何より楽しかったです!」
「世話になったな爺さん」
「………」
相変わらず表情の動きが無いから生きてるか死んでるかも分からないレベルだ。耳をすませばなんとなく聞こえはするんだけど……今は何も言ってないよな…?
「…若いの」
「……みんな若いんですけど……」
「さっきのにも伝えたが、孫たちはわしの最後の希望だ。零奈を喪った今となってはな」
「……俺が、いや俺たちが、彼女たちを導きます。いや導きますってなんか偉そうだな…」
「ま、話のウマはあったな」
「確かに!話をしてて楽しかったッス!」
「次はみんなで来ようか!その時は中野家のお爺さんとして、みんなで思い出作りましょう!」
「とにかく!俺たちに、任せてください」
これにて俺たちの短期バイトは終わりを迎えた。最後にバイト組、上杉家、中野家、そして中野爺さんを含めて写真を撮った。その後に風太郎は何かあったらしいが…それは置いといて。
こうして俺たちの2年生生活も終わりを迎えたのだった。
◇ーーーーー◆
「あなたは新郎を、病める時も健やかなる時も、富める時も貧しき時も、夫として愛し敬い慈しむことを誓いますか?」
「はい、誓います」
「それでは指輪の交換を行います」
「あ」
式場に間抜けな風太郎の声が響く。アイツ指輪持ってきてもらったのに受け取ってないな?
こんな結婚式前代未聞だぜ。
「えー…気を取り直して、それでは誓いのキスを」
誓いのキスか……そういえばアイツが初めてキスしたの、俺が短期バイトで入ってた時だったな。まさか5年前に初キスした相手と結婚するとは、タイムスリップして教えても信じないだろうなぁ。風太郎も俺も。