変装用のサングラスが大量にある
「なんだここ……」
「学問の神様が祀られている神社さ。前田君、君の成績は見るに堪えないのだから深く祈りたまえ」
「んだとコラァ!」
「お前らうるせぇ!!」
「神社で騒がないの」
修学旅行1日目。自由時間の今は風太郎、前田、武田、そして俺の4人で各々が行きたい場所を順番に巡っている。因みに次も神社。
「神社なんて初詣ぐらいでしか行かないから、なんか新鮮だよ」
「まあ確かに好き好んで神社に行く奴は、神社マニアかよっぽど追い詰められて神頼みするやつぐらいだろうな」
「しかし、前田君が行き先を神社にしても何も言ってこなかったのは意外だったね」
「んだとコラ?神頼みしちゃダメだってのかコラ?彼女が欲しいって祈ったらダメだってのか!?」
「それを口にした時点でダメな気がするなぁ」
因みに神様にお願い事する時は自分の名前と住所を伝えるといいらしい。そんなの知らないよねぇ、となんとなく風太郎に聞いてみたけど『いや知っているが』みたいな反応された。
そうこうしてる間に次の目的地に到着した。
「うお!なんだコレ!」
「千本鳥居。名前に千本とあるけど実際は千本以上あるみたいだよ」
「すげーねぇ。写真では見たことあるけど、実物は壮観ってやつだ」
「隼人は京都初めてなのか?」
「いや来たことはあるけどここは初めて。流石に清水寺とかそこら辺は行ったけど」
鳥居と鳥居の間から日の光が差し込んでくる。天気がいいのもあって結構幻想的というか。
「千本鳥居を抜けた先に奥社奉拝所がある。おもかる石で有名だな」
(なんだろ、おもかる石って)
「んだよおもかる石って」
「知らないのかい?簡単に言えば願い事をしたあとに石を持ち上げる。それが予想寄り軽かったら願いが叶うんだ」
「逆に予想より重いとその願いを叶えるのにはまだ努力が必要ってわけだ」
「へー」
「お前も知らなかったのか隼人……まあ俺らの目的は一番上だからな。まだまだ登るぞ」
稲荷山登頂コースとも言うべき、てっぺんへと向かうのが今日の目的だ。どうせなら一番上まで行こうぜ!と自称『旅行にそこまで浮かれてませんけど?』マンこと上杉風太郎君による提案だ。正直上まで行ったら足爆発しそう。
◇◇◇◆◆◆
「け、結構長いわね……」
「足が痛くなってきました……」
「もー!みんな遅ーい!」
私達五つ子はフータロー君達の班を追いかける形で千本鳥居を歩いていた。偶然を装うつもりで少し距離を空けながら歩いてたんだけど、やっぱり男の子達は歩くのが早いね。
「まったく…あの子は気楽でいいわね…」
「四葉は昔から動くのが好きだからね。二乃も四葉から体の動かし方教えてもらったら?」
「私より三玖が教わるべきでしょ…」
三玖は四葉に手を引かれながら登っている。側から見たら介護だね…
「でもハヤト君も元陸上部でしょ?辞めたにしても走るのは好きだったんじゃないかな?」
「甘いわね一花。相手が好きなものをこっちが好きになる必要なんてないのよ。確かに同じ趣味があれば楽しいけれど、もしその趣味が自分と合わなかったら。無理にその趣味に合わせることでストレスを抱え込んでしまったら本末転倒よ」
「確かに。一理あるね」
「それはそうともう少し体力は付けるようにするわ。あんなことやこんなこと…色々と必要になりそうだし」
しまった。二乃は随分と『先』を見ているのかもしれない。もうそんなところまで考えているの!?
「わ、私も運動をした方がいいのでしょうか…」
「五月は……どうなのかしら」
「餌付けされてるイメージはあるよね」
「確かに」
「な!?餌付けなんてされてません!!幸村君が唐揚げをあげる、と言っていますからありがたくいただいてるだけで!!」
「それを世間では餌付けって言うのよ」
食堂でみんなでご飯を食べる時、ハヤト君はカレーと唐揚げをよく頼んで『はい五月ちゃん、これあげる』『ありがとうございます!!』ってくだりをもう何回もしてるし何回も見てる。五月ちゃんが幸せそうに食べる姿は確かに可愛いけど。
「決めました!修学旅行が終わったら幸村君か四葉にトレーニングをしてもらいます!もうムキムキになりますからね!!」
「出来ないことは言わない方がいいわよ。それにもしもし本当に筋肉モリモリのマッチョになったら……ちょっと引くわ」
「まあ確かに凄いことなんだけど…ちょっと、ね?」
「それにコレを触れないのはちょっと勿体無いわね」
二乃が五月ちゃんのお腹をぷにぷにとつまむ。五つ子の中で一番お腹を触って気持ちいいのが五月ちゃんだ。もしかしてハヤト君は五月ちゃんのお腹が気持ちよくて…!?
「そうだね…今のうちに触っておいた方がいいかも」
「もー!!2人してお腹を触らないでください!!」
◆◆◆◇◇◇
「ううっ…俺はもうダメかもしれない…」
「食い過ぎなんだよお前」
「だってさー!旅行だよ!?食べなきゃ損だよ!」
「五月みたいなこと言いやがって…」
四ツ辻で軽く食事を済ませるつもりが口にしたもの全部美味しくてついいっぱい食べてしまった。体を回復させるための食事も摂りすぎると体に毒ということを学んだ。
現在俺と風太郎は三ノ峰を歩いていた。武田と前田は別のルートから頂上を目指している。つまり競走中だ。なのに俺のお腹はずっと悲鳴をあげていた。四ツ辻でトイレ行っておけばよかった。
「あとどれくらい?」
「もうすぐ三ノ峰を越えるぐらいだから、頂上の一ノ峰まだまだあるぞ」
「お兄さんの旅はここまでだ。ご愛読ありがとう」
「勝手に終わるな。これでも左の道よりは距離が短いんだぞ」
「ハッハッハッハッハ!!みっともないな幸村ぁ!!」
腹痛のせいかついに俺を馬鹿にする幻聴まで聞こえてきた。更に幻覚まで見えてきたようだ。
まさか目の前に知り合いがいるなんてこと、
「久しぶりだな幸村!元気にしてたかぁ!?」
「夢じゃなかったかー」
「知り合いか?」
いきなり大声で声をかけてきたのは
「正直金輪際関わりたくなかった」
「お前にそこまで言わせるのか……」
「ここであったが100年目!今の弱りきったお前なら!俺の拳1発で倒せる!」
「卑怯者め。まさかとは思うけど俺が腹痛にならなかったら出てこなかったな?」
「確実に勝てるチャンスを伺うのも戦の基本だぁ」
握り拳にハァ〜と息を吹きかける近藤。見た目通りのゴリラパワーのアレに殴られたくない。腹になんか当たってみなよ。上と下から同時に出るぞ?
それはそうと……
「お前、そんな状態で喧嘩するつもりか?」
「確かに」
近藤は右腕を怪我していたのか包帯を巻いていた。多分骨がいっちゃってるやつ。まあ去年の年末に俺が喧嘩した奴らとやりあって骨が折れたんだろうね。やられたみたいなこと言ってたし。
「ハンデだ!お前如きに勝つのに右腕はいらない!」
「腹痛を狙ってた奴のセリフとは思えないな…」
「第一喧嘩しないっての。修学旅行中だぞ?なんで好き好んでお前と喧嘩しなくちゃいけないんだよ」
「そんなこと言ってお前ぇ!中学の時は修学旅行中に喧嘩したじゃないかぁ!!」
「デカい声で言うなぁ!?知れ渡っちゃうからやめろぉ!?」
「あれ?上杉さんに幸村さんじゃないですか!」
目の前のゴリラとは違う可愛い声が後ろから聞こえてきた。振り返ると三玖ちゃんを背負った四葉ちゃんが立っていた。人1人背負ってここまで登ってきたのに汗ひとつかいていない。凄いパワー、まるで……
「………いや、なんでもない」
「?何がなんでもないんですか?」
「それより、あの人はフータロー達の知り合い?」
「お、お前ぇ!!こここ、こんな可愛い子達と知り合いなのか!?」
動揺する近藤を見て少し引いている三玖ちゃん。いきなり知らない奴が大きい声で動揺してたら怖いよね。お兄さんも怖いと思うそれは。
「俺の学校にはそんな可愛い子はいないのに!!」
「フッフッフ。なんなら家庭教師ですが!!」
「くっ!今回はお前に勝ちを譲ってやる!覚えてろよぉ!!」
「覚えねぇよ。さっさと帰れ」
なんだかよく分からないが近藤は泣きながら登って行った。最悪また会うじゃんこれ。なんか嫌だな。
「なんだか元気な人でしたね」
「無理に褒めなくていいよ。アレはただのバカだよ」
「ハヤトがそこまで言うの珍しい」
「そう?まあお兄さんが昔ヤンチャしてた頃の知り合いだからかな。自然と口も悪くなっちゃうのは」
「それよりさっさと登るぞ。無駄に時間を食った」
「そうですね。私達一花たちと勝負してるんですよ!どっちが早く登るかって!」
「俺達と考えること一緒なのかよ……」
◇ーーーーー◇
「はぁ、初日なのにくたくただな…」
夜のホテルのロビーにて、1人くつろいでいた。もうそろそろ先生が巡回に来て寝ろよと形だけの声かけをする。どうせ消灯時間を過ぎても起きてる人は起きてるし、先生もそれは分かってるはず。
それでも先生は声をかけなくてはならない。形だけだとしても。それが先生のやるべきことだからだ。
「ここにいたのですね幸村君」
「あらら、こんな時間にロビーで寛いでぇ。中野さんは悪い子ですね?」
「寛いでいるのは幸村君じゃありませんか!」
声をかけてきたのは五月ちゃんだった。今日はどうやら後ろから美女に声をかけられる日のようだ。
「他の子達は?みんな寝た?」
「二乃は他のクラスの人の部屋に遊びに行って、一花と三玖と四葉は部屋にいます。三玖は疲れてしまったのかもう寝ていますよ」
「で、五月ちゃんはこんな時間まで夜更かしと」
「それは貴方もですよ。たまに遅い時間まで幸村君の家の明かりがついているの知っているんですからね?」
「え?ホント?いやなんか恥ずかしいな」
「あ!いえ!その!別に毎日覗いてるとかそういうのではないんですよ!?ただふとした時に外を見ると明かりがついているな〜と!」
「分かってる分かってる。五月ちゃんが覗きなんてしないってことぐらい」
全くもう!とふくれながら横に座る五月ちゃん。消灯時間が近い夜の自由時間であっても、真面目な五月ちゃんは部屋の外に出る時はキチンと制服に着替えるんだろうなぁ。
「どうでしたか1日目は。幸村君と上杉君は稲荷大社、上まで登らなかったらしいですが」
「ああ、うん。お腹壊してね……登るより降りた方がトイレ近いと思って降りたの……ハハ…」
「そ、そうだったのですか……そういえば一ノ峰でおかしな人を見かけました。私達の顔を見るなり『おわぁぁ!!ここにも美人だぁぁ!!』って。そのまま降りていきましたけど」
「………それは京都に現れる
「なんですかその悟りを開いたような笑顔は…」
「まあそこからは武田達と合流して…ぼちぼちいい時間だったからホテルに帰ってきたよ。五月ちゃん達は?」
「私達も似たようなものですね。上で合流してそのままホテルまで帰りました。そういえばホテルに帰る時に三玖が少し残念そうな顔をしていましたね」
そういえば…三玖ちゃん、風太郎のためにパン作るんだって言ってたな。作ったパンを修学旅行中に食べてもらうんだって。自由に昼飯食べれるのあのタイミングだけだった気がするんだけど……
「ちょっと申し訳ないことしちゃったかな…」
「何か知っているのですか?」
「うん、実は……」
ここでふと考える。もしかしたらパンのことは他の子には内緒にしてるんじゃないか?もしそうだとしたら、ここで五月ちゃんに俺が勝手に伝えるのはちょっとまずいな。でもなんとか手助けはしてあげたいし……
「実は……そう!三玖ちゃん、風太郎と昼ごはん一緒に食べる約束してたんだよ!でもほら、俺が腹痛で風太郎連れて降りちゃったから」
「なるほど、そうでしたか。確かにお昼ごはんは大事ですからね。それにしても上杉君も先に約束があるならそちらを優先しても良かったのでは…?」
「まあそれはそうなんだけど…結局は兄さんの腹痛のせいだから。あとで三玖ちゃんには俺から謝っておくよ」
「そうですか?なんでしたら私から幸村君が謝っていたとお伝えしても」
「いやいや、謝るのは面と向かってやらないとね!アハハ…」
五月ちゃんの顔がムムムと険しくなっていく。こういう時は大抵鋭い感で突き刺してくる時だ。
「幸村君、何か隠してますね?」
「いいえ?お兄さん何も隠してないヨ?」
「いいえ、そういうふざけて惚ける時は何か隠してる時です」
ほら、ホント鋭いんだから。
「まあいいです。言いたくないから秘密ですし。私も無理に詮索しません」
「アハハごめんね〜修学旅行終わったら教えられると思うから」
「無理に言わなくてもいいですよ。ただ、本当に困ってる時はちゃんと言ってくださいよ?」
「あー、はい…なるべく」
「絶対です!」
「はい!絶対!」
たまに押しが強くなるのも五月ちゃんの良いところだ。その勢いが俺や風太郎、他の姉妹達の力になる。まあたまに勢い余ってすってんころりん、なんてこともあるけど。
「さて、時間もいいことだしそろそろ戻りますか」
「そうですね……あ!そういえば」
「どうかした?」
「幸村君に相談したいことがあったんでした!でももう時間も遅いですし明日に…」
「いやなんか気になるじゃん。とりあえず言ってみてよ」
「はい……実は、盗撮犯が私達のことを撮っているようで……」
「………???」
おっと、これは予想以上にとんでもない相談だぞぉ?
近藤青斗 こんどうあおと
喧嘩っ早いゴリラ。ゴリラは森の賢者だが、近藤はただのバカ。
隼人とは中学の時に知り合っている。
出番は少ないと思いますが修学旅行が終わった後も登場予定です
シスターズウォーが無い修学旅行。では誰の戦争があるのか……