たまにbとdを間違える
「聞いてくれ隼人。この3日間で分かったことがある。あの5人は極度の勉強嫌いで俺のことも嫌いっぽい」
「……1日しか関わってない俺が言うのもアレだけど、やっと気づいた?」
「ぬぁぁぁ!!考えないようにしてたのに!!」
自信満々で『明日からは大丈夫だ』なんて言っておきながら何なんでしょう。とりあえず話は聞いてみよう。
「俺はとりあえず五つ子全員にテストをさせたんだ。俺が決めた合格ラインを超えた奴は金輪際関わらないことを条件にな」
「それまた大きく出たねぇ。風太郎のことだから、点数のいい奴の面倒は見なくていいって算段かな?」
「馬鹿正直に全員を教えるより、赤点候補の奴に教えてやればいいと思ってな。まあ、俺のその考えも甘かったんだが」
そう言って風太郎が渡してきたのは一枚の紙。やけにバツの多いそれには第一回実力テストと書かれている。
一花 12点
二乃 20点
三玖 32点
四葉 8点
五月 28点
「……合格ラインは30点か?「50点だ」
これは中々凄いものを見た。多分教科はごちゃ混ぜなんだろうが、それにしても凄いな。
「四葉ちゃん、8点も取れてるね。大きな前進じゃない?」
「8点じゃ喜べないだろ………そうだ、お前もちょっと解いてみてくれ」
「えぇ…朝からお兄さんにテストさせないでよ」
「いや、もしかしたら俺が出した問題が実はかなり難しい部類かもしれない」
そんなことはないと思うけどねぇ。全25問の100点満点だから1問4点か。それなら適当にやっても50以上は取れそうだな。
「68点……お前、英語と数学はホントダメだよな」
「数学はヤマカンが当たらないからねぇ」
「幸村君にも苦手な科目があるのですね」
横から覗いてきたのは中野ちゃんだった。風太郎がいたら寄ってこないと思ってたけど、案外そんなこともないんだね。
「俺がいたら寄ってこないと思ったぞ」
「私はただ幸村君がテストをすると聞いて見に来ただけです」
「1問目の答えを覗き見るな未復習者め!」
「な!?あの時はたまたま忘れていただけです!
「すえはるかた、ね……1問目の答えがどうかしたの?」
「今朝、コイツらと丁度出くわしてな。その時に俺がいなくても勉強は出来るって言ったもんだから、復習したと見て聞いたんだ。厳島の戦いで毛利元就が破った武将を答えよ、ってな」
確かに答えは陶晴賢だ。1555年に安芸国厳島で毛利元就と陶晴賢との間で行われた合戦。毛利元就はこの時陶晴賢より軍は少なかったが、その頭の良さをフル活用して陶晴賢を討ち取った。いや、正確にはそのあと陶晴賢は自害したみたいだけど。
「俺は歴史のゲームとか漫画を読んだことあるから多少は知ってるけど、でも正直分かんないよねぇ。名前の画数多いし。長宗我部元親とかそういうところ出してもらわないと」
「そうですよ!問題に悪意があります!」
「悪意のある問題を出すのが先生だ。それを見越して勉強しろ」
「ぐうの音も出ない」
「ちょっと幸村君!負けないでください!」
「因みに本多忠勝ってガンダムだったんだよ。知ってた中野ちゃん?」
「え!?つまり、ロボットなんですか!?」
「ンなわけあるか!!」
「もー!幸村君!!!」
◇ーーーーー◇
食堂
「私は幸村君が本当に頭が良いのか分からなくなりました」
「だから俺は風太郎ほど頭良くないって。平均だよへーキン」
「むぅ……そういえば上杉君は」
「風太郎ならやることがあるって言ってたけど……風太郎が気になる?」
「そ、そんなんじゃありません!」
そういえば三玖ちゃんが〜とか1問目の日本史がどうとかボソボソ言ってたな。確かにテストの結果表を思い返せば1問目の陶晴賢を正解してたのは三玖ちゃんだけだったけど。そこからどうするつもりなんだ…?
「お兄さんとしてはもう少し風太郎のこと気にしてやってほしいけどねぇ」
「幸村君は私にどうしてほしいんですか」
「俺もあんまりガミガミ言わないし、この際少し気にかけるだけでいいんだよ。そしたら、嫌いなりに付き合い方っていうのが分かるもんだからさ。はい唐揚げあげる」
「嫌いなりの付き合い方ですか……唐揚げいただきます」
1番デカいの持っていったな。まあいいけど。
生きているうちに嫌いなやつと巡り合わない、なんてことはないんだ。今後の人生のためにも嫌いな人との付き合い方っていうのを知ってほしいねぇ。大事なことだよ?割とね。
「あー!五月と幸村さん!」
「やっほー2人とも」
「一花ちゃんに四葉ちゃんじゃん。どうしたの2人とも」
「いやーお昼一緒にどうk「いやーたまたま見かけたから声かけただけだよ〜!そういえば四葉!英語の宿題帰って来たんでしょ?」
「あ、そうなんですよ!見てくださいこれ!全部間違えてました!あははははは!!」
「こらこら、0点ではしゃがないの。この前のテスト8点取ったんだから、宿題が出来ないってことはないんだよ。千里の道も一歩からってやつさ」
「ふむ、幸村さんは褒めて伸ばすタイプとみました。まあテストの英語の部分は全部間違えてたんですけどね!」
確かに、最後の方の2問しか正解してなかったな。それも国語。文系っぽい雰囲気してるから英語の飲み込みも早そうだけど。
「ほらそろそろ行くよ四葉。五月ちゃんの邪魔しちゃいけないからね」
「ちょ、一花!!私と幸村君そういうのじゃ」
「じゃあねハヤト君。五月ちゃんを泣かせないでね」
「もーー!!一花!!!」
◇ーーーーー◇
中野ちゃんと別れた後、先生からの頼まれごとを終えて1人図書室に来た。今朝の毛利元就と陶晴賢が気になって伝記物でも無いかと探しに来てみたのだ。ていうか陶晴賢の伝記ってあるのか?
「あれ、日本史が丸々無い…」
日本史の本がごっそり無くなっていた。こんなに一度に借りられることある?そんなブーム来てるなら乗り遅れる前にこのビッグウェーブに乗るしかないんだけど………目の前に犯人がいた。
「どうした風太郎。そんなに日本史の本持って」
「隼人か…ッ丁度いい、少し持ってくれ」
「パワー無いのに一気に持ちすぎでしょ。っていうかどうしたのこんなに」
「ちょっと三玖にしてやられてな……なあ隼人。お茶に鼻水入ってる逸話って何か知ってるか?」
「お茶に鼻水??なーにそれ」
「知らないよな……俺も知らなかったんだ。あと少しで三玖を堕とせたのに!」
言い方が最早悪役だ。ただでさえ目つきが悪いのにまったく。
とりあえず携帯で調べてみるか。えーっと、『お茶 鼻水 逸話』っと。
「検索したら1番最初に見つかったよ。この逸話知ってるとは凄いね三玖ちゃん。お兄さんにも教えてほしいくらい」
「マジか………さすが文明の利器、いんたーねっとだ」
そう言いながらも目線は本に向いている。こりゃしばらくは本の虫だな。
「答え聞くか?」
「まだ探し始めたばっかりだ。何処にも答えがないなら聞く」
「りょーかい。あんまり無茶するなよ風太郎」
「無茶なんてしねぇよ」
そんなこと言って……今朝死にかけの顔で登校してきたの何処の誰ですかって話だよまったく。
◇ーーーーー◇
「あら、三玖ちゃん」
「ハヤト…何か用」
放課後、校舎の中、三玖ちゃんに、エンカウント。クラスも違うし今のうちに聞いてしまおうか。
「風太郎となんかあった?」
「別に……フータローの知識はその程度なんだって口にしただけ」
「随分ストレートに言ったね。そりゃああなるわ。それで『石田三成と大谷吉継』のことでいいのかな?」
「……フータローから聞いた?それと知ってたの?」
「風太郎から聞いたんだ。ぶっちゃけお兄さんも分からなかったから携帯で調べたよ。よく知ってるね」
「そういう歴史のゲームしたり漫画読んだりしてるから」
ゲームや漫画も意外と馬鹿にできない。得られる知識は一定量は必ずあるものだ。ある意味では親しみやすい教科書とも言えるのかもしれない。
「フータローに答えは教えた?」
「いや、まずは自分で探すってさ。ああなった風太郎は止められないぞ〜?止めたら止めたで不機嫌になるしね!」
「勉強虫…」
「まあそう言わないであげてよ。そんでもって、風太郎がリベンジにきたら受けてあげてほしい。その時は家庭教師としてじゃなくて、上杉風太郎として見てあげてね」
「どういう…」
「風太郎も男で、男は決まって負けず嫌いなんだよ。それじゃね」
「ちょっと待って」
おっと花京院はクールに去れないみたいだ。呼び止められるとは俺も罪な男だぜ。
「ハヤトにも言っておく。私が武将好きなのは…他の姉妹には黙っててほしい」
「……分かったよ。深くは聞かない。秘密は1つくらい持ってる方が楽しい人生が送れるってね」
「なにそれ」
「ハヤト・ユキムラの言葉だよ。それじゃ、今度こそ幸村はクールに去るぜ」
◇ーーーーー◇
風太郎が本の虫になってから2日後。
「わぁ、どうしたのその荷物」
「わお幸村さん。今は先生から頼まれて理科室に荷物を持って行くところです」
「そんなダンボール積んで危ないよ。ほら貸して」
「すみません。流石の私もちょっと危なかったです」
放課後、大きなダンボールを3つも積み上げて歩いてる四葉ちゃんと出会った。これから中野ちゃんと図書室で勉強することになってるが、流石にこれは見過ごせない。
「すみません助かりました!」
「いいよこれくら……い……ッ!」
積み上げられたダンボールで分からなかったが、今四葉ちゃんの持ってるダンボールは1つだけ。そしてそのダンボールの上に、乗っている。乗っている。これはよろしくないですねぇ。
「??どうかしm「いやなんでも」
「そうですか?それじゃあ早く終わらせましょう!私もこの後上杉さんに宿題を見てもらう予定にしてるんです」
「今日は家庭教師の日じゃないって聞いたけど?」
「私が頼んだんです。姉妹の中では1番バカなので!」
「そうかなぁ…」
「あれ?上杉さんじゃないですか。ちゃんと前向かないとダメですよ」
ふと四葉ちゃんの横、といっても四葉ちゃんが窓側を歩いてるから外になるんだけど、そこを風太郎が走って行こうとしていた。珍しいな風太郎が汗だくなんて。
「隼人に四葉か……ん、四葉?」
「はい!この後宿題を見てもらう四葉ですよ!」
「………すまん、落ち着いて聞いてくれ。そこにドッペルゲンガーがいる。お前もうすぐ死ぬぞ」
「ええええっ!?死にたくないです〜!!」
外を見ると確かに少し離れた場所に四葉ちゃんがいた。うそん、そんなことあるぅ?……っとちょっと待って、
「あの四葉ちゃん、なんか髪長くない?」
「リボン取っちゃいましたね」
「ヘッドホンを付けて……お前三玖だろ!トリッキーな技使いやがって!」
四葉ちゃんのドッペルゲンガーの正体は三玖ちゃんでした。姉妹だからこそ出来る技……そうしたら四葉ちゃんも二乃ちゃんとかに変装できるのかな。1人が出来るから他の姉妹も出来る的な。やっぱり忍者なのでは?
それよりなんであの2人追いかけっこしてるんだろ。風太郎も体力無いのに大丈夫かな。
「仲良しですね」
「二乃ちゃんあたりに見つかってストーカー容疑で通報されて逮捕されなきゃいいけどね…」
◇ーーーーー◇
「お待たせ中野ちゃん」
「いえ、事情は四葉からメールで聞いていたので問題ありませんよ」
待ち合わせより少し遅れて図書室に到着した。そういえば中野ちゃんの連絡先知らないな。今後風太郎との仲が改善されなかった場合を見越して連絡先を交換するべきか。
いや、変な理由つけるよりダイレクトに聞いた方が
「そういえば幸村君の連絡先知りませんでした。よければ連絡先を交換しませんか?」
「是非お願いします」
「じゃあ私のも交換しましょう幸村さん!」
「是非お願いします」
幸村隼人は美女2人の連絡先を交換した!!
この連絡先は大事に使わせてもらいますとも。
「それじゃあ早速やろうか。四葉ちゃんはどうする?」
「いえ、私みたいなバカが一緒だと五月が集中出来ないでしょうし」
「四葉、そんなことは「四葉ちゃん、さっきもそんなこと言ってたけど、それはちょっと違うな」
「え…どういうことですか?」
「多分風太郎も気づいてるだろうけど、この前のテスト。点数はまあ……この際置いといて、注目なのは正解した問題が誰1人被ってなかったってこと。例えば中野ちゃんが正解した2問目は他の姉妹は不正解。四葉ちゃんが正解した23問目は他の姉妹は不正解だったんだ」
「そうだったんですね!」
「そこまでは気がつきませんでした…」
「あの凄まじい数のバツの分、正解のマルがよく目立ったよ。多分今頃風太郎も可能性が見えてるんじゃないかな」
五つ子だから1人ができることは他の4人もできる。俺はそう思うな。
でもこの答えを導き出すのは生徒、この答えを教えるのは家庭教師の仕事だ。俺が出来るのはヒントをあげるぐらいだよ。
「可能性ですか…」
「今は分からなくても、いつか分かるよ。それこそ勉強みたいにね」
「おお!なんかそれっぽいですね!」
「照れるな〜よせやい」
「私もなんだかやる気が出てきましたよ!五月!頑張ろう!」
「その前に、ライスはLじゃなくてRだ。お前はシラミを食うのか」
「わあ、Rなんですね!って上杉さん!?」
四葉ちゃんの宿題を指摘しながら現れたのは汗だくの風太郎と三玖ちゃんだった。2人ともずっと追いかけっこしてたのかな。三玖ちゃんタイツ脱いで生脚魅惑のマーメイドじゃマイカ。
「三玖、貴女…」
「フータローのせいで考えちゃった。私にもできるんじゃないかって」
「出来るさ。さっき伝えた通りだよ」
「……責任、取ってよね」
「任せろ」
これはこれは。いつの間にか進展したみたいだな。あの大量の日本史は無駄じゃなかったわけだ。お兄さん感動で涙出そう!
「それより三玖、貴女タイツは…」
「…………ッ!」
「え、今恥ずかしがる!?俺の眼の前で脱いだのに!?」
「風太郎」「上杉さん」「上杉君」
「な、なんだよ」
「「「最低(です)」」」
何はともあれ、頑張れ風太郎。信頼構築、あと4人だ。
ウォォオォォォンォォン!二乃の出番が作れないッ!これは由々しき事態だ!
次回は原作5話の内容になるので少しは二乃が出てくれる!もう少し出したいッ