五等分の花嫁と約束と   作:無限の槍製

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幸村隼人の秘密

得意科目(5教科)は国語


第5話 踏み込む余地

 

「あれ、三玖ちゃん」

 

「ハヤト。ここのコンビニ使うんだ」

 

「今日はたまたまね。ちょっと本屋行ってだんだけど、目当てが無かったからとりあえずコンビニでおにぎりでも買って腹ごしらえして図書館行こうかなって」

 

休日である今日は少し羽を伸ばして街中の本屋に行っていた。目当ては漫画の新刊と毛利元就の伝記。なんか気になって普段行かない本屋に行っちゃったよ。で結局無いし。

 

「三玖ちゃんは……抹茶ソーダ?なぁにそれ」

 

「美味しい」

 

「まあ好きなんだろうからそんなにカゴに入ってるんでしょうけどね」

 

抹茶ソーダが8本くらいカゴに入っている。いくらなんでも飲みすぎな気もするけど……まあ1日で飲むわけじゃないだろうし大丈夫か。

 

「二乃がジュース買ってこいって言うから」

 

「二乃ちゃんも飲むんだコレ。俺も買ってみようかな」

 

「オススメ。あと二乃は多分飲んだことない」

 

「え?」

 

「前に私が間違えて二乃のジュース飲んだから、その代わりに買ってる。何本かは私のだけど」

 

多分二乃ちゃん的にはその時三玖ちゃんが飲んだやつを買ってきてほしいんだろうけど……新しい味を開拓するチャンスだな!

 

「いいと思うよ!!」

 

「じゃあフータローがもうすぐ来るから」

 

「今日は家庭教師の日か。頑張りなよ」

 

「ハヤトは?」

 

「え?」

 

「ハヤトは来ないの?家に五月いるけど」

 

なんだろう。俺は中野ちゃんの家庭教師になったのかな?いつの間に?まさか中野ちゃんが勝手に言ってる??いやそんなバナナ。

 

「まあ勉強なら学校でも教えられるし。中野ちゃんも1人で勉強する時間が欲しいだろうし」

 

「………一花の言った通り…」

 

「ちょっと待ってそれはどういう意味ですか??」

 

「教えてあげない」

 

風太郎との武将しりとり(後から風太郎から聞いた)を経て三玖ちゃんはなんだか雰囲気が変わったような気がする。なんだかんだで仲良く出来てるじゃないか風太郎。

 

「じゃあ今日は来ないってこと?」

 

「その言い方だと他の日は行くみたいになるけど……まあお呼ばれしたら行くよ」

 

「分かった。じゃあ今日はさよなら」

 

抹茶ソーダをレジに持っていく三玖ちゃん。俺もさっさと手軽に食えるやつ買って図書館行くかぁ。

 

「ん、電話……風太郎?あい幸村さんですよー」

 

『隼人、自動ドアのセンサーって貧乏人は反応しないのかな』

 

いきなりの風太郎。オートロックの存在を知らないのだろうか。いやいやそれなら今までどうやって部屋に入ってた。

 

「……五つ子のところのマンションでしょ。オートロックだから部屋番入れたら中野家に繋がると思うけど」

 

『部屋番?知らねぇ…』

 

「あー、今三玖がコッチにいるから聞こうか?」

 

『なんでそっちにいるんだよ……隼人は知らないのか?』

 

「知らないよ。本来風太郎が知っておかないとダメなことだよ?お分かり?」

 

『それもそうなんだが……そうだ、お前も来てくれ。今日はやっとまともに勉強出来そうなんだ。お前も五月を見てやってくれ』

 

「五つ子の家庭教師は風太郎でしょうが……わかったよ、とりあえずそっちに行くよ」

 

風太郎からの電話を切り抹茶ソーダとレジ横の唐揚げ5個入りを6つ買ってコンビニを後にする。今日の休みは五つ子と過ごすことになりそうだ。

 

◇ーーーーー◇

 

「やっほーマンションの門番さん」

 

「何やってるのフータロー」

 

「よぉ……9月でも暑いな…」

 

マンションの門番と化した風太郎は暑さで若干やられていた。何分いたのか知らないけどもう少しこういうところをしっかりしてほしいところだ。

 

「フータロー、オートロック知らないんだ」

 

「部屋番入れたら繋がるんだろ?知ってたけどな!!」

 

じゃあそこで何をしていた、って思ってるんだろうなぁ三玖ちゃん。他人にはあまり弱みを見せたくない風太郎。そこも直したほうがいいと思うな!

 

 

 

 

 

中野家の部屋に入ると一花ちゃん、四葉ちゃん、中野ちゃんが勉強の準備をしていた。やる気満々じゃん良かったねぇ風太郎。

 

「おはようございます上杉さん!幸村さんも来てくれたんですね!」

 

「ゆ、幸村君!?どうしてここに!?」

 

「このマンションの門番に呼び出されたのよ。はい、みんなに差し入れ」

 

「わあ!唐揚げでs「さあ!早く勉強を始めましょう!幸村君お願いします!!」

 

中野ちゃんのやる気が凄い。そして俺はもう逃げられないらしい。差し入れ入れたら帰ろうかなって思ったのに。そしてこのやる気を風太郎に対して向けたらもっと良かったのに。

 

「そうですね!唐揚げは勉強が終わった後に皆さんで食べましょう!さあ上杉さん、今日は準備万端ですよ!」

 

「私も見てよっかな」

 

「約束通り、日本史教えてね」

 

「よーし!やるかー!」

 

今日はみんな従順だ。風太郎の努力が実を結んだのだろう。優しく接すれば理解しあえるんだろうね。

 

「なーに?また懲りずに来たわけ?」

 

「二乃…」

 

2階から見下ろしていたのは二乃ちゃん。あの子だけは相変わらず反発してるみたいだなぁ。

 

「先週みたいに途中で寝ちゃわなきゃいいけど」

 

「あれはお前が……ンンッ、二乃も一緒に勉強を「死んでも嫌」

 

「………」

 

「まあまあ。二乃ちゃんもとりあえず差し入れぐらいは食べる?」

 

「今は揚げ物の気分じゃないからいいわ。五月にでもあげて」

 

中野ちゃん、今いいんですか!!って顔したね?すぐに顔戻ったけど視界に入ったからね?さっきも団子食べてたよね?

 

「あ、そうだ四葉。バスケ部の知り合いが大会の臨時メンバーを探してるんだけど。あんた運動できるし今から行ってあげれば」

 

「え、今から!?でも今日は上杉さんと約束が……」

 

「なんでもこのままだと大会に出られないらしいのよ。頑張って練習してきただろうに、あーかわいそう」

 

「すみません上杉さん!困ってる人をほっといてはおけません!」

 

「ええぇっ!?」

 

中野四葉、バスケ部の助っ人のため外出。断れない性格なんだろうなぁあの子。

それにしてもこのような手段で勉強を妨害するとは。中々頭キレるね二乃ちゃん。

 

「一花も2時からバイトじゃなかった?」

「あー忘れてた」

 

「五月もこんなうるさいところより図書館の方が集中出来るんじゃない?」

「それもそうですね。行きましょう幸村君。唐揚げは図書館への道中にいただきます」

「え?俺も行くの?ちょ、ちょっと!?」

 

一花ちゃんと中野ちゃんも二乃ちゃんによって部屋から出て行くことに。そして俺も中野ちゃんに引っ張られて出ていくことになった。ごめんね風太郎、頑張って〜。

 

◇ーーーーー◇

 

「ちょっと中野ちゃん、あれで良かったの?」

 

「元々自習をするつもりだったので問題はありません。それに二乃はただ理由もなくあんなことをする子ではありません」

 

図書館に行く道中、唐揚げを食べる中野ちゃんは二乃ちゃんには何か理由があると言う。確かに理由無しであんなことするとは思えないけどさぁ。

 

「私の予想でしかありませんが、多分二乃は私たちの居場所を守ろうとしているのかもしれません」

 

「居場所?」

 

「二乃は口が悪い時がありますが家族のことを1番に思ってます。二乃はきっと大事な家族の居場所に幸村君や上杉君が入ってくるのが許せないのだと思います」

 

「まあ、誰だって大事なところには踏み入ってほしくはないからね。二乃ちゃんの気持ちも分かるよ」

 

「だからああやって幸村君や上杉君に当たりが強いのだと……私も上杉君に対しては当たりが強いのであまり二乃のことは言えないのですが…」

 

二乃ちゃんの俺たちに対するあの態度は姉妹達への愛情とも言えるのか。姉妹達を大事にしてるからこそ俺や風太郎みたいな部外者には入ってきてほしくないと。

 

「でもまあ、家庭教師を雇ってしまった分、風太郎にぐらいは優しくなってほしいかなぁお兄さんは」

 

「……幸村君はどうしてそこまで上杉君と私達を仲良くさせようとするのですか?」

 

「そりゃあ、仲良いほうが楽しいじゃん?勉強するにしても何にしてもね」

 

「そういうものでしょうか……勉強は真面目にするものでは」

 

「たまには肩の力を抜くのも大事ってこーと」

 

そうこうしているうちに図書館に到着した。二乃ちゃんのことに関しては風太郎が問題解決するのが1番なんだろうけど、多分1番苦戦するだろうからなぁ。手伝えることがあるなら手伝うか。

 

◇ーーーーー◇

 

時は流れ、

 

「最低」

 

ドスの効いた中野ちゃんの声が目の前の惨状に向けて浴びせられる。

 

 

 

 

 

遡ること数十分、

 

「あ、抹茶ソーダ置いてきちゃったな」

 

「いつも三玖が飲んでいるやつですか?あれ美味しいんですか?」

 

「いや俺も飲んだことなかったから。飲まず嫌いもダメかなって思って買ったんだけど…ごめんちょっとお邪魔してもいいかな?」

 

「問題ありませんよ。ちょうど今から帰れば二乃はお風呂に入ってると思いますので、抹茶ソーダを取るくらいの時間はあると思います」

 

図書館で勉強を終えた俺と中野ちゃんは中野家に戻ることになった。抹茶ソーダは三玖ちゃんの好物だし置いて帰っても飲んでくれてると思うけど、一応自分で飲むためにお金払ってるからなぁ。

 

「結局風太郎は授業できたのかな」

 

「どうでしょう。二乃があの調子だと上杉君が追い出されてるか、三玖と喧嘩してるかのどちらかですね」

 

「三玖ちゃんと喧嘩?仲悪いの?」

 

「なんと言いますか、性格が反対なんです。それで口論になることがたまに」

 

「まあ今は三玖ちゃんが風太郎側に付いてると言っても間違いじゃないからね。二乃ちゃんにとっては嬉しい状況とは言えないだろうね」

 

「……気になってきました。急ぎましょう」

 

少し早歩きになる中野ちゃん。よくよく考えたら風太郎が追い出されても三玖ちゃんからしてみれば勉強の邪魔をされたわけだから二乃ちゃんに噛み付く可能性があるのか。

 

確かにちょっと急いだほうがいいかも。

 

 

 

 

 

で、急いで戻ってきたら。

 

「不法侵入ー!!」

 

「ち、違う!俺は取りにきただけだ!」

 

「と、撮るって何をよ!?」

 

風太郎がバスタオル姿の二乃ちゃんを押し倒してる状況に出くわしたのだ。それを中野ちゃんが携帯で撮影して一言、

 

「最低」

 

とここに繋がるのだ。

 

 

そして更に時は流れ、今現在裁判長に俺と一花ちゃん、原告の二乃ちゃん、原告側弁護士の中野ちゃん、被告人の風太郎、被告側弁護士の三玖ちゃんで裁判が行われていた。

 

「裁判長、被告は家庭教師という立場でありながらピチピチの女子高生を目の前に欲望を爆発させてしまった……この写真は上杉被告で間違いありませんね」

 

「被告人、前へ。判決、死刑」

 

本当にダメだよこれは。ベジータに投げ飛ばされて消し炭にされても文句言えないよ。

 

「おいちょっと待て隼人!なんでお前がそっち側なんだ!」

 

「いやお兄さん…裁判長だって状況がよく分からないザマス。こんなけしからん事をする奴はウマキックの刑に処すしかないザマス。ねえ一花裁判長」

 

「たいへんけしからんザマスねぇ」

 

「一花!俺は財布を忘れて…」

 

「……」

 

「さ、裁判長…俺は財布を忘れただけなんです………ていうかなんで裁判長が2人もいるんだ…」

 

バイトから帰ってきてすぐにこの茶番に乗っかってくれる一花ちゃんはノリがいい。アドリブとか強そうだよなぁこの子。

 

「裁判長、この男は一度マンションから出たと見せかけて私のお風呂上がりを待っていました。悪質極まりない犯行に我々はコイツの今後の出入り禁止を要求します」

 

「うんうんこれはよくないザマスねぇ。どう思いますハヤト裁判長」

「出入り禁止ならもうここから出れないザマス」

 

「意義あり。フータローは悪人顔してるけどこれは無罪。私がインターホンで通した。録音もある。これは不運な事故」

 

「録音あるなら決着じゃない?」

「確かにそうなんだけどね。三玖の言う通りだとしてもこんな体勢になるかな…?」

 

一花ちゃんが携帯の画像を見ながら首を傾げる。流石に俺がバスタオル姿の二乃ちゃんの画像をマジマジと見るのもそれはそれで別の裁判が起こりそうだからやらないよ。

 

「うーん……ん?あそこの散らばってる本、あそこの棚から落ちたやつ?」

 

「本……もしかして、棚から落ちた本から二乃を守った…?この画像もよく見ればそうとも受け取れますが、違いますか?」

 

ここで名探偵中野五月が登場した。なるほどそういうことなら風太郎が二乃ちゃんに覆いかぶさったのも納得がいく。

 

「ありがとう五月、その通りだ」

 

「お礼を言われる筋合いはありません。あくまで可能性の一つを提示したまでです」

 

「凄いね中野ちゃん。国語の勉強が活きてきた?」

 

「茶化さないでください幸村君!」

 

「ちょ、ちょっと!何解決した雰囲気だしてんの!?適当なこと言わないで!」

 

二乃ちゃんからしたら合法的に風太郎を追い払って2度と干渉できないようにする絶好のチャンスだ。そりゃ物にしたいんだろうけど、

 

「風太郎に押し倒す度胸なんて無いし、今回はお互いの不注意ってことで終わりにしない?」

 

「二乃もそうカッカしないの。私たち昔は仲良し五姉妹だったじゃん」

 

「ッ……昔はって………私は…」

 

唇を噛みながら二乃ちゃんは部屋を出て行った。本当に悔しいんだろうな。大事な居場所に異分子の俺や風太郎がいても他の姉妹は追い出そうとしない。中野ちゃんですら風太郎を追い出そうとはしないのだから。

 

「はぁ……風太郎、財布が見つかったなら早く帰りな。らいはちゃん待ってるだろ」

 

「あ、ああ。騒ぎになってすまなかったみんな。今日はこれで失礼する」

 

「俺もそろそろお暇……抹茶ソーダ…」

 

「冷蔵庫で冷やしてる。多分いい感じに美味しい」

 

「ありがとう三玖ちゃん」

 

抹茶ソーダを受け取り今度こそ中野家を出る。先に出た風太郎はエレベーター前で待っていてくれた。

 

「これからどうするおつもり?」

 

「時間が解決してくれないものか…」

 

「二乃ちゃんはねぇ、何かアクションが無いと関係は変わらないよ。中野ちゃんもね」

 

「…少し前から思ってたんだが、お前が五月を名前で呼ばないのって」

 

「まぁねぇ……まだ引きずってる」

 

「あれは別にお前が悪いわけじゃ「だとしても、やらかしたのは俺だ。ケジメは俺がつけなきゃいけねぇんだよ」

 

 

 

 

 

「あ」「あ」

 

マンションを出てすぐのところに二乃ちゃんは座り込んでいた。俺と風太郎が出たのを確認すると急いで立ち上がりマンションに入……ろうとして間に合わなかった。

 

「チッ…使えないわね」

 

「えー……」

 

「鍵も持たずに出ちゃって、勢いよく出た手前中の3人に開けてもらうのもバツが悪いとみた」

 

「うるさいわね!あんたたちの顔なんて見たくないわ!」

 

「そこまで言うなら仕方ない。行こうぜ風太郎」

 

「あ、ああ…」

 

風太郎とその場を離れる。二乃ちゃんはそれでもその場に座り込んだままで動かない。

 

「……悪い隼人」

 

「1人で帰れるから心配しなさんな」

 

小走りで二乃ちゃんの元に戻る風太郎。上杉風太郎という男はなんだかんだ優しいのだ。初日に薬を盛られようが、勉強する時間を潰されようが、変態扱いされようが、風太郎は彼女達と向き合うだろう。

 

確かに風太郎にとっては生活がかかった仕事だから嫌でも向き合うのだろうが、それでも風太郎の根っこにはお節介精神が根付いてるんだろうね。

 

「……あ、もしもし中野ちゃん?二乃ちゃんなんだけど、今マンションの玄関のところにいるから……鍵忘れたみたいで。うん、タイミング見てさりげなく中に入れてあげて」

 

お前がお節介焼くなら俺だって焼かせてもらいますよ。少しずつ寒くなってるんだから外に出たら風邪ひいちゃうしね。

 

「そういや………もうすぐ花火大会か」

 

来たる9月30日、花火大会が近づいてきていた。

 




こうして1巻分の話が終わりました。次回から2巻、花火大会になります。隼人の過去が少しだけ明らかに?
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