好きなおにぎりの具は鮭
「………ん…」
一瞬見知らぬ天井という新世紀な朝を迎えたかと思ったが頭が覚醒した今ではちゃんと四葉ちゃんの部屋だと認識できる。
「ゆ、幸村さん!?お、おはようございます!!」
「ああ……おはよ〜………お?」
再度確認しよう。俺は昨日四葉ちゃんの部屋に泊まった。そして今目の前で着替えているのは四葉ちゃん。ここは四葉ちゃんの部屋。何もおかしくはない。
おかしくないけどこの状況はマズイでしょ!
「「わぁぁぁぁぁぁ!!?ごめんなさぁぁぁぁぁぁい!!!!!」」
急いで部屋から出る。朝からご利益のあるものを見たけど下手したら寿命が一気に0になっていたところだった。
「何よ朝からうるさいわね」
「ああ…ごめんね二乃ちゃん。あとおはよ」
「結局泊まったのね。まあいいわあんた朝はどうするの」
「朝……朝は白ライスと味噌スープ」
「変な言い回しね……食べるのか食べないのかを聞いてるのよ」
「え、食べていいの?やったー!」
「しまった。聞くんじゃなかったわ」
リビングに向かうと二乃ちゃんが人数分の朝食を用意していた。朝は二乃ちゃんが用意してるのね。朝から手が込んでるねぇこれ。
「凄いねこれ…いや凄……え、凄くない?」
「語彙力無くなってるわよ。いいからさっさと食べて帰んなさいよ」
「凄いこの、なんだろ、卵…たまご……たまごぶわーって………美味しい!!」
「昔の五月みたいな反応ね」
とにかくおいしい。朝からこんな豪勢なものを食べられるとはやはりお嬢様だ。
「朝は二乃ちゃんがいつも作ってるの?」
「前に当番制にしたことがあるわ。一花は出前を取ろうとして、三玖は論外、四葉はフィーリングで作るし、五月はご飯1人三合も炊こうとしたのよ」
「なるほど、二乃ちゃんが料理上手な理由がわかったよ」
「二乃ー!三玖探してくるねー!」
「あんた、まったくパンくらい食べて行きなさいよ!」
「ありふぁふぉー!」
バタバタ足早に階段を駆け降りた四葉ちゃんにパンを咥えさせ送り出す二乃ちゃん。いいお母さんになりそうだ。
「三玖ちゃんいないの?」
「朝起きたらいなかったよ」
「おはようございます二乃、幸村君」
次に階段を降りてきたのは一花ちゃんと中野ちゃん。2人ともしっかり着替えて偉い!俺ジャージのままなんだけど!!申し訳ない!
「上杉君は」
「まだ寝てるんじゃないかな?」
「あ、五月ちゃん髪の毛ハネてるよ」
「え、本当ですか!?」
「まったく、シャンとしなさいよ五月。ほらジッとして」
中野ちゃんの寝癖を直す二乃ちゃん。こうしてみるとホントに仲の良い姉妹なんだけどなぁ。やっぱり俺たちが介入したせいで分断されちゃってる感あるなぁ。そこはホントに申し訳ないと思ってる。
「そうだ!ちょうど三玖もいないし五月ちゃんの髪変えてみようか」
「え…マジ?あいつに私たちの区別なんてできるわけないでしょ」
「ハヤト君はわかる?」
「うーん、喋ってくれたらわかる」
「それは誰でも分かるでしょ」
「ちょっと!私で遊ばないでください!!」
時間にして3分ぐらい。三玖ちゃん(中野ちゃん)が完成した。確かにパッと見分かんないな。まだ髪色と、中野ちゃんと三玖ちゃんの場合は目の開き具合でなんとか分かる感じかな。
「どうなると思う?私は気づくと思うけど」
「気づかずに五月を怒らせる」
「混乱してとりあえず部屋から追い出す、かな」
そして中野ちゃんが風太郎の寝ている三玖ちゃんの部屋に向かい部屋をノックする…前に風太郎が起きてきた。
「ど…どうした五月」
「わかるんですね……」
「よ、用がないならもういいかな!?着替えるから!」
「ええっ!?………もう結構です!」
結果、風太郎は中野ちゃんに気がついたけど追い出した。それで怒らせて中野ちゃんは部屋に戻ってしまう、だった。
「あーあ、やっぱり怒らせた」
「風太郎って感じはするけどね…」
◇ーーーーー◇
その後三玖ちゃんが朝から図書館に行ったと言うので風太郎と一花ちゃんは図書館へと向かった。
中野ちゃんはまだ整理がつかないようで、とりあえず家で俺が勉強を教えることになった。二乃ちゃんは部屋に戻っている。
「ここはね……中野ちゃん?」
「……えっ……ああ!すみません!」
「うたた寝とは珍しいね。もしかしてあんまり寝れなかった?」
「いえ、そんなことは……」
「うーん、じゃあちょっと休憩しようか。俺も小腹空いたし。コンビニ行くけど何か欲しいものある?」
「それなら私も「いいからいいから、中野ちゃんは休んでて。欲しいものがないならお兄さんのセンスになるけどいい?」
「…でしたらおにぎりを……」
「お任せあれ」
流石に中野ちゃんだけに買ってくるのもなんだし、二乃ちゃんにも何か買ってこよう。
「二乃ちゃん、コンビニ行くけど何かいる?」
「それなら何か甘いもの買ってきて。あんたのセンスに任せるわ」
「りょーかいお嬢様」
出て行ったついでにそのまま帰れ、なんて言われると思ったけどそんなことはなかった。流石に頼むだけ頼んで締め出すなんてことはしないか。
「それじゃ行ってくるから…………素直になるんだよー中野ちゃん」
「え?」
中野ちゃんはキョトンとした顔をしていたけど、まあここいらが丁度いいタイミングというものだ。俺はメールで風太郎に一言、
『急げよ意地っぱりカテキョー』
と送った。
◇ーーーーー◇
それからしばらく経って、
「わぁぁぁぁぁ!!起きろお前らぁぁ!!」
風太郎の怒号で目を覚ました。体が痛い。あとなんか重い。お腹の上になにかが乗ってるような……
「あれ…中野ちゃん……中野ちゃん起きて…」
「………ん…」
「モゾモゾしないで…お兄さんのお腹は枕じゃないのよ……それより下にいっちゃダメダメ!」
「………!!ご、ごめんなさい幸村君!!」
慌てながら起きる中野ちゃん。それに合わせて他の姉妹も目を覚ました。
昨日俺たちは中野家で効率度外視で一夜漬けを敢行、そのままリビングで寝落ちをしてしまったようだ。
「なあ隼人。確認だがうちの学校は8時半登校だよな」
「そーだね。テストの時はそっから15分後に開始だ」
「あの時計、壊れてるとか…ないかな?」
8時15分。7時15分ではない。おっとこれはタチの悪い夢かな?
「急げ遅刻だ!!」
そこからのみんなの行動はとても早かった。他の姉妹が部屋に戻って着替えている間に俺と風太郎はリビングで着替え、机に散らばった姉妹たちの勉強道具も片付ける。
「風太郎、先に行ってエレベーター呼べ!」
「分かった!」
降りてきた姉妹たちに勉強道具を渡して家を出る。エレベーターもちょうど来てくれたみたいだ。
「お前ら確か車通学だったよな。これなら間に合いそうだ」
「江端さんはお父さんの秘書だから」
「……つまり、車は無し?」
「お父さんが家にいたら良かったのにね」
それはそれで俺と風太郎が気まずい。それにしてもここから走りとなるとギリギリだな。
「みんな遅いよー!」
「四葉ちゃん早くない!?」
「今はテストが大事だ!俺らに構うな!行け四葉!!」
あっという間に姿が見えなくなった四葉ちゃん。足早いねあの子。
「あー、やっぱメイクしたいわ。スッピン見せたくないし」
「他の姉妹がバンバンスッピンだろ!」
「スッピンでも可愛いから、たまにはスッピンもいいんじゃない!?」
走りながらメイク道具と睨めっこする二乃ちゃん。オシャレ上級者は意識が違うね!今は走るのに集中してほしいけど!
「最近学校の入り口に生徒指導の先生立ってなかった?」
「怖そうな先生だし遅刻したらテストどころじゃないかも」
冗談じゃない。俺も少ししか手伝えてないけど彼女たちは頑張ってたんだ。それなのに遅刻してテスト受けれませんでしたからの赤点解雇コースは流石の俺も納得がいかないね。
「も、もうダメです……」
「諦めないで中野ちゃん!」
「いいえ…もう限界です……お腹が空いて力が出ません…」
「………コンビニ寄ろっか」
◇ーーーーー◇
風太郎と中野ちゃんがおにぎりを吟味している間、俺と二乃ちゃんは外でパンを食べていた。
「あんた、あの2人に何吹き込んだのか知らないけど」
「うん」
「まあ……あいつと五月が仲良くしてるのはちょっと気に入らないけど………五月が辛そうにしてるのは見てられなかった…あいつと五月が仲直りしたの、あんたのおかげなんでしょ」
あの日以来2人はそれなりに距離を近づけた気がする。俺がコンビニから帰ってきた時なんか風太郎が中野ちゃんに普通に勉強を教えていたのだから。やっぱり仲良しが1番だね。2人とも素直になれてよかったよ。
「仲直りしたのは本人たちがこのままじゃいけないと思ったからだよ」
「……あっそ、じゃあそういうことにしといてあげるわ………ありがと」
「……まさか二乃ちゃんかお礼の言葉を聞けるとは」
「お礼くらい言うわよ!てか一花と三玖は何してんのよ!」
話題を変えたいのか一花ちゃんと三玖ちゃんに話を振る。2人は少年と話をしてるみたいだ。
「迷子みたい」
「ママとはぐれちゃったのかな〜?お姉さんたちにお話聞かせて?」
「
まさかの英語!!不味いな…俺も話を聞いてやれる可能性が限りなくゼロに近い。こんな時に役に立たないな俺!!
「時間無いわよ。どうすんの」
「風太郎はまだレジだ。こうなりゃ一か八か俺が」
「
「今、ホスピタルって言わなかった?」
「ホスピタル…中央病院なら近くにあるけど」
「うーん……
頷く少年。一花ちゃんの英語が通じたのだ。まさかこんなタイミングで勉強の成果が発揮されるとはね。風太郎の教えがちゃんと生きてる証拠だね。
「無事お母さんの元に届けられてよかったね」
「うんうんよかったね。ところで君たち何か忘れてないかな?」
少年を無事お母さんの元に届けられたが、残念なことに風太郎が見せた携帯には8時33分の文字が映し出されていた。
「ど、どうしましょう!」
「言っとくけど、あんたたち2人もおにぎり選ぶのに時間がかかってるんだからね!」
「それについてはすまん……だが俺に案がある」
そう言うと風太郎は誰かに電話をかける。風太郎のアドレスとなると…四葉ちゃんか?
「四葉か?もう学校に着いてるか?いやいい、そのまま学校にいてくれ。ああ、任せろ」
「フータロー君、どうするつもり?」
「四葉が学校にいるのは確認できた。一度登校した生徒なら生徒指導も厳しくいえないだろ。そこでだ……お前たち全員、四葉のドッペルゲンガーになれ」
「フータローとハヤトは?」
「俺たちは……まだアテがあるよな」
「アイツか……任せな」
◇ーーーーー◇
「あ、良かった!みんな入れたんだね!」
「フータロー君がドッペルゲンガー作戦を思いついてくれてね」
「でも、肝心のフータローとハヤトがいない」
「あの2人、自信満々って雰囲気だったけど、入れたのかしら」
「心配は無用だ」
俺たち2人のことを心配してくれているところに俺と風太郎も合流できた。5人とも何故俺たちが廊下を歩いてきたのか、不思議そうな顔をしている。
「隼人の後輩に頼んで裏ルートから入ったんだ」
「猿渡佐助って名前だ。俺の名前出せばみんなのことも助けてくれると思うよ」
「幸村に佐助……真田十勇士みたい…」
確かに他にも9人ぐらい頼れる後輩がいるけど、今はそのことは置いといて。
「あと俺がお前らに伝えられる事は1つだけだ。努力した自分を信じろ」
「全員力を出し切ろう。約束だ」
「いい点とって2人を驚かせよう!」
「手は抜かないけど、あんたたちの為じゃないわよ」
「ここまで頑張ってきた。全力を出し切る」
「みんなでまた笑顔で会いましょう!」
「死力を尽くしましょう!」
『頑張るぞーっ!おーーっ!!!』
努力と絆の集大成。中間試験・中間試練本番、ついにスタートだ。
やはりこの物語はどっちかというと『幸村隼人』の物語になりますので原作での名場面が書かれないことがあると思います。今後もそのような場面があると思います。ですので原作を買ってください!!!この物語を読む前に原作を読もう!!!!隼人のシーンは名場面の裏側でもしかしたらこんなこともあったかも程度に考えてください。
途中の一花と少年の英語のやりとりはGoogle先生を頼ったので多分あってると思います!私自身英語がダメなのでなんとも言えません!
次回、中間試験・中間試練、完!!