少し前までテスト1週間前はまったく勉強していない。
「よぉ、集まってもらって悪いな」
中間試験から数日後。俺と風太郎と五つ子は図書室に集まっていた。勿体ぶるつもりはない、中間試験の報告だ。
「早速で悪いが、答案用紙を見せてくれ」
「見せたくありません!」
答案用紙を見せることを拒否したのは意外にも中野ちゃんだった。二乃ちゃんあたりが拒否しそうと思っていたけど、その二乃ちゃん本人は頬杖をついて黙り込んでいる。
「テストの点数なんて他人に教えるものではありません!個人情報です!断固拒否します!!」
「中野ちゃん……その口ぶりだと」
「はぁ……なんだ知ってるのか……ありがとな、だが覚悟はしている。見せてくれ」
五つ子たちが答案用紙を机の上に出す。それぞれの点数は、
中野一花
国語 19 数学 39 理科 26
社会 18 英語 28 合計 130
「私は数学だけ。今の私じゃこんなもんかな」
中野二乃
国語 16 数学 24 理科 28
社会 14 英語 43 合計 125
「国数理社が赤点よ。言っとくけど手は抜いてないから」
中野三玖
国語 25 数学 29 理科 24
社会 68 英語 21 合計 167
「社会は68点。その他はギリギリ赤点。悔しい」
中野四葉
国語 31 数学 09 理科 19
社会 22 英語 18 合計 99
「他の四科目はダメでしたが国語は山勘が当たって30点を超えました!こんな点数初めてです!」
中野五月
国語 29 数学 22 理科 58
社会 22 英語 23 合計 154
「合格ラインを超えたのは一科目…理科のみです……」
「そうか……隼人、お前は」
「え、俺も出すの??」
幸村隼人
国語 90 数学 38 理科 52
社会 66 英語 40 合計 286
「なんか社会難しくなかった?」
「それより数学と英語をなんとかしろ……」
「そんなこと言うなら風太郎も……いやいいわ。どうせ全部100なんでしょ!」
「ああ。それにしても短期間とはいえあれだけ勉強したのに30点も取ってくれないとは……改めてお前らの頭の悪さを実感して落ち込むぞ…」
それでもみんな最初の全員合わせて100点の頃に比べたら確実にレベルアップしている。多分それは風太郎も実感しているだろう。でもみんながこの点数となると……
「三玖、今回の難易度で68点は大したものだ。隼人に勝ってるんだぞ。今後は姉妹に教えられる箇所は自信を持って教えてやれ」
「え?」
「四葉、イージーミスが目立つぞ勿体ない。お前は勉強に対して前向きなんだ、このまま続ければ隼人に追いつける。焦らずに慎重にな」
「了解です!」
「一花、お前は一つの問題に拘らなさすぎだ。最後まで諦めなかったら隼人をもっと引き離せれるぞ」
「はーい」
「二乃、お前は最後まで言うことを聞かなかったな。でもお前なりに頑張ってくれたんだと思う。英語は隼人に勝ってるしな。だけど油断すんなよ」
「ふん」
「五月、お前は本当にバカ不器用だな!一問に時間かけすぎて最後まで解けてねぇじゃねぇか!!」
「は、反省点ではあります……」
「自分でわかってるならいい。次から気をつけろよ。隼人からもコイツらになんか言ってやれ」
風太郎からの評価が終わったと思ったらまさかの俺!家庭教師じゃない俺が評価してもいいものだろうか……いや、これも教えた者としての責務か。
「じゃあ手短に。みんなお疲れ様。勉強のせいかは絶対に出てる。これからも続けていけば俺なんか追い越せるよ」
「そういえば赤点取ったから隼人さんの好みの女性が分からずじまいですね」
「フータロー君との馴れ初めもね」
「なんだそれ」
「風太郎は気にしなくていいから。とにかく!俺から言えるのはみんな100点取れる素質はあるんだ。諦めないでね。俺との約束だ」
「隼人はテストが終わるまでの臨時だし、俺は他のバイトで来れなくなる。俺たちがいなくても勉強しろよ」
「フータロー?他のバイトってどういうこと?来られないって…なんでそんなこと言うの?私は「上杉君、父から電話です」
三玖ちゃんの言葉を遮るように中野父からの着信が入る。これで風太郎が報告すれば家庭教師生活は終わる。
「上杉です………つきませんよ、ただ……次からコイツらにはもっと良い家庭教師をつけてやってください」
「風太郎…なんとかならn「ちょっと貸しなさい」
試験結果を伝えようとした風太郎から携帯を奪ったのはまさかの二乃ちゃんだった。
「パパ?二乃だけど。一つ聞いていい?なんでこんな条件を出したの?………私たちのためってことね。ありがとうパパ…でも相応しいかなんて数字だけじゃわからないわ」
確かに中野父も娘を預ける親としての責任があるのだろう。相応しいかどうかを判断するなら数字、赤点回避が1番の判断基準だ。
「……あっそ、じゃあ教えてあげる。私たち五人で五科目全ての赤点を回避したわ」
「「!?」」
嘘じゃないわ、と伝えて二乃ちゃんは電話を切った。いやはや思い切ったねぇ。
「一花ちゃんは数学、二乃ちゃんは英語、三玖ちゃんは社会、四葉ちゃんは国語、中野ちゃんは理科……確かに五人で五科目赤点回避だ」
「そんなのありかよ…」
「嘘はついてないわ。でも結果的にパパを騙すことになった。多分2回目は無いわ…次は実現させなさい」
どうやら、風太郎と五つ子たちの付き合いはまだまだ長くなりそうだ。
◇
「風太郎、ちょっといいか」
中間試験お疲れ様会ということで風太郎の奢りで駅前のファミレスに向かう途中、
「なんだ、今更奢れって言われてもお前の分は奢らないからな」
「それはいいよ。それよりだ……いや、回りくどい言い方は面倒だ。家庭教師の補佐、もう少しやるよ」
「え……いいのか?」
風太郎が驚くのも無理ないだろう。元々テストが終わるまでの期間限定で風太郎が頼んできたのだ。それを俺自らが延長しようって言ってるのだから。
「ここまで来て1人で引き返すのも……なんか嫌だからな。それに風太郎は中野ちゃんの担当を俺に任せたってのに、俺は中野ちゃんに30点以上を取らせることが出来なかった。このままで終わりたくない」
「俺は助かるけど…お前だってお前の勉強があるだろ」
「両立させてみせるさ。それに数学と英語なら一花ちゃんと二乃ちゃんに教わるって手もある」
「生徒から教わるってお前な……でもその手はありだな。五つ子たちで得意科目を教え合う……早速組み込んでみるか」
『テストの後の勉強が大事だけど、直後じゃなくてもいいな』って言ってた張本人がもう家庭教師モードだ。随分板についてきたな。
「言っとくが、タダ働きだぞ」
「教え子がいい点取ってくれるのが教える側としての報酬だろ?」
「似合わないセリフ吐きやがって……まあなんだ…これからもよろしくな」
「頑張ろうぜ、上杉センセー」
ここからは俺も教える立場としての責任が伴う。絶対に五つ子にいい点を取らせる。約束する。
今回は短めですが、これにて中間試験終了!五つ子たちのテストですが隼人が少しの間教える側に立ったこともあり多少点数アップしています。そして隼人が本格的に補佐につきます。
次回から林間学校です。四葉ファンの皆さんごめんなさい。『嘘』はありません!作者が腹を切ってお詫び申し上げます。