不屈の王は守りたい   作:霜月優斗

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長らくお待たせしました!!!!!


不屈の王は守りたい⑪

 これは私が現役だった頃の事。

 私がティアラ路線で走っていた時、彼がまだデビュー四年目ぐらいの頃だったわ。

 彼は何時も大量の書類と格闘しながら私や後輩のサンデーサイレンス(サイちゃん)の面倒を見てくれていたわ。

 不器用だけどまっすぐな人だったわ。

 

 あれは何気ない日のこと。

 

「ねぇ、あんたは何時もその山のような書類書いてるけど、苦しくないの?」

 

 私がそう言ったら彼は苦笑しながら大丈夫だと言った。

「僕がやりたいからやってんだから苦しいことはないさ。それにお前らが自由に走ってるのを見れれば僕はそれで十分だ」

 もちろん勝ったらなおのこと嬉しいと付け足して彼はにこやかに笑った。

「へぇ? そりゃあうれしいこと言ってくれんじゃねぇか! そんじゃあもっとはじけてや──」

「んーでも学校の備品をぶっ壊すのはやめような~サンちゃんや。主にキミが()()()()するからこうして僕が書類書かなきゃいけないんだから……」

「うっ、しょうがねぇだろ! あれはゴアのやつが煽って来たからであってな……って誰が! サンちゃんだ!!!」

 

 そして何時もすぐに調子に乗って彼に止められるサイちゃんことサンデーサイレンス(静かなる日曜日)、私とサイちゃん、トゥインクルシリーズからドリームトロフィーリーグに移籍したデヴィルズバッグ先輩、サザンヘイロー先輩の四人が所属するチーム『リゲル』の日常。

 

 海外仕様のチャイムが校内に鳴り響き、そろそろ帰宅する時間であることを生徒たちに告げている。

「お、そろそろ帰る時間か。そんじゃあなートレーナー!!」

「おう、また明日なーサンちゃん」

「サンちゃん言うなッ!」

 ドスドスと音を立ててサンちゃんは寮に戻っていきました、もう少し素直になれるといいのだけど。

 

「お疲れトレちゃん! またねー」

「ん、ちょっち待ってくれ」

 不意にトレーナーさんが私を呼び止めた、何か用なのかな? 

「どうかしたの、何か用事なの……?」

「大したことじゃないさ、ただ……いずれ訪れるであろう事についてお願いをしたくてね」

 あたしのトレーナーはどこか神妙な表情を浮かべながらあたしにこう言った。

「何時か、僕の息子がトレーナーになったときに伝えてほしい事がある、恐らく僕はその時にはきっといない筈だからね」

 

 衝撃だった。この人は何を馬鹿なことを言っているの? 

「はぁ? あんた疲れてんじゃないの、あの書類の山が原因ってなら手伝ってやらん事もないわよ?」

 あたしはあんまりにも目の前の男がおかしな事を抜かすもんだから突っぱねるように拒否した。

 

「気持ちは分かる、だが時間があまり残っていないんだ。頼む」

 何時もじゃ見られない必死の表情にあたしは気圧されてしまった。

 

「……なんであたしなん?」

「それは……()()()()()、お前とトレーナーになった息子が話しているのを」

 バカなのか? ぶっとぶタイプのモノで決めたの? 

「そんなアホなことでどう信じろっていうのさ? だいたいさっきあんたはなんで自分は未来では死んでいるみたいな言い方だったけど……そういうエスパーなタイプじゃないでしょあんたは?」

 あたしが問いただすと首を縦に振って肯定した。

「そうだとも、僕にはそう言った怪異は見えないとも。ただ……僕が新人トレーナーになりたての時にある契約を三女神としたんだ、信じられないだろうけどホントなんだよ」

「……あんたバカぁ?」

 あたしはこの大バカを殴ればいいのか? 怪異は見えないって言っておきながら実在するかも分からない三女神と何を契約したというの。

「ホントに契約とやらをしたのなら証拠ぐらいは出せるわよね?」

「……まぁあるにはある、僕の手に重ねてくれないか」

 彼がそう言うので渋々その大きい手の上に重ねる。

 

 『貴女も見てみる?彼が私たちと何を契約したのかを』

 ふと耳元でどこか懐かしげな声が聞こえた瞬間、彼が見た記憶と情報が濁流をもって押し寄せてきた。

 トレーナーがデビュー間もない頃、人がいない時間に彼はこっそり三女神像に『願って』しまった。そして幸か不幸か、彼の魂には私と()()ものを持っていたが故に彼女たちは答えてしまった。

 

 彼女らは彼の純粋な願いに心惹かれてしまったらしく、彼に『全てを視るための目』と『強靭な肉体』を与えてしまった、そして身勝手にも三女神達は代価として自身の寿命を固定し、『いつか生まれるであろう息子の運命』さえ捻じ曲げた、最後に彼女らは彼に「君には息子が生まれる、そして君と同じようにトレーナーになる」と彼にある映像、いやホログラムを映した。

 現れたのは彼の面影が色濃く残っている青年と、立派なご婦人になった担当(未来の自分)の姿だった、そこでやっと濁流の様に押し寄せていた情報は収まった。

 

「……あんた何考えてんのよ、あんな馬鹿なことして。いつか生まれるかもしれない子供にまでツケを払わせて。ほんっとバカみたい……」

「……バカだとも、将来僕は恨まれるだろう、そしてこの事実を決していつか生まれるであろう彼に伝えることができないのだから」

「……今日は帰るわね。お疲れ様、トレーナー」 

 私もトレーナーさんと別れてチーム部屋から寮に帰った。

 

 それからしばらくの月日が経って、私はトリプルティアラを戴冠したけれど、その話はまた今度。

 

 

 結局、彼が引退するまでに手に入れたG1の数は三十五。途中で私がクラシックG1をとってから更に彼の評価が上がったのもあるけれどチームに加入を希望する子が後を絶たなかったわ。

 僅か十一年であそこまで活躍するとはこの頃の私は思ってなかったし、この後にあんなことがあるとは思っていなかったわ。 

 

 

「……これが貴方のお父様が背負ってきた責任と罪の重さよ」

 

 俺は自分の親父が自分が思っていたよりもとんでもない天才であった事に驚いたが、それと同じぐらいとんでもない事をしでかした人である事を知らされたショックで言葉が出なかった。

 

 




三か月もお待たせして申し訳ございません。
現在まで就活などの問題で多忙なためなかなか筆を執る機会がありませんでしたが、そろそろ目途が付くかもしれないので今後はゆっくり再開していく予定です。

因みに勇くんのお父さんの中にある因子は勇の姓名が関わっています

今後深堀りしてほしい話は?

  • 勇の親父の現役時代の話
  • 勇の幼少期
  • 砥山トレーナーとミホノブルボンのお話
  • 勇のトレーナー養成学校時代
  • サンちゃん(サンデー)の話
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