俺は当時の親父が担当していたキングのお母様もとい、グッバイヘイローから親父がどうしてあんなに天才だった理由と親父がしでかした事を聞かされた。
「……さっきの話は本当に本当なんですか?」
その事の重さに耐えきれずに彼女に問うが帰ってくるのは無言で首を縦に振るばかりだった。
「そう、なのか……。そら眼がいいわけだよ」
尤も。
貰った加護は洞察力を補う目と頑丈な身体だけらしく、あの無尽蔵かと思うぐらいの知識は親父自身の努力して手に入れたモノだという事実に少し安堵した自分がいた。
「……ごめんね、私のトレーナーが馬鹿なことしてしまったばっかりに。もし貴方が良ければでいいのだけど……何か身の回りで変わった事とか起きてるのなら教えてほしいの」
グッバイヘイローは罪滅ぼしとまではいかないけどね、と付け足して俺にそう言った。
あの事を言うべきか? いや、それはダメだろう。
「……特にはないかな。強いて言えばこの前寝不足だったのをキングに叱られたぐらいでこれと言った
結局俺はもしものリスクに怯えて誤魔化すように答えてしまった。
そして凄い冷ややかな昔を思い出せるような目つきで俺を訝しむように見つめてきてる……やっぱりバレたか?
「……そう、ならいいわ。あと肝心なことを聞き忘れていたわ」
「な、なんでしょうか……?」
その圧に思わず敬語で返事してしまった。
絶対これバレてるよどーしよう、肝心なこととか言ってるけど肝心なことと言えば……
「うちの
そういう事か、そりゃあ元々娘の調子が気になってこっそり来たんだから当たり前だわ。
気を遣うべきか悩んだが半端な誤魔化しは直ぐにバレるから素直に伝えることにした。
「流石貴女の娘さんなだけあって優秀です。ただ……距離適性に関して、特にクラシック三冠はダービーまではこのままトレーニングをこなせば何とかやっていけはしても三冠の最期……菊花賞に関しては現状のまま行けば勝率は一割あればいい方です。それに脚質と距離適性を考えれば最も合うのは短距離からマイルが一番彼女の適正にはあっていると思います」
「……でしょうね、私は生憎長距離は苦手だったし。それにしてもまだデビュー前なのによくあの子の適正が短距離からマイルって気が付いたわね、どうやって気が付いたのか参考までに教えてほしいわね?」
「……簡単なことですよ、併走や走り込みのデータを片っ端から比較していけばある程度は絞れますから。一か月もあれば十分です」
本音を言えばそのおかげでまだ調子が治りきってないんですがね……
「……だからって調子崩してちゃ意味ないでしょうがバカちんが!!」
「あいたぁ!!?」
ばれちったと思ったとたんにごんって思いっきり振りかぶって頭をぶったんだけどこのウマ娘!! かち割れそうな痛みで頭を押さえる俺をよそに彼女は何か考え込む素振りをしてる。
「……とりあえず、娘が元気そうでよかったわ。そ、れ、と!」
ずんずんと俺に寄りながら彼女は言う。
「寿命削るような無茶はもうしちゃダメよ?」
それじゃそろそろ帰るわね~とグッバイヘイロ―は手を振りながら応接間を愉快に笑いながら退室していった。
夕暮れ時の静かな廊下。
彼女は『彼』の後継者と話を終えて静かに応接間を閉じ、顎に手を当てながら独り呟く。
「……あれは紛れも無く『彼』からの遺伝体質、かつあの尋常じゃない集中と洞察力。三女神に愛された男から本物の天才の息子が生まれるなんてね……尤も、
その瞳はかつてトリプルティアラを手に入れたころを彷彿とさせる鋭い目つきだった。彼の後継者を汚すことは許せないと獰猛な笑みを薄っすらと浮かべながら。
「ふう……、嵐みたいな人だったな、グッバイさん」
まさかあんな滅茶苦茶なこと聞かされるとは思わなかったけど。
あの時に死ぬことが決められていた事だとは思いもしなかった、だとしたら何故母まで死なねばいけなかったんだろうか?
…気にしたって仕方ないや。そうだ、この後たづなさんに機材の申請お願いしなきゃいかんじゃん! と思い出した俺は早歩きで職員室まで戻ってからたづなさんに機材貸出許可証を貰いに行くことにした。
ぼちぼち職員室に戻り近くにいた先輩トレーナーに尋ねる事にした。
「失礼いたします。新人トレーナーの舞踏勇です、たづなさんはいらっしゃいますでしょうか」
「たづなさん?あの人なら今理事長室にいるよー」
「そうでしたか…ありがとうございます!」
そう言って頭を下げた俺は急いで自分のデスクにしまってある機材貸出許可証の紙をくしゃらないようにファイルに突っ込み理事長室に向かった。
少し経って理事長室前、すーはーと息を整えていざノック。
カン、カン、カンと三回ノックし、立ち入る。
「失礼いたします、新人トレーナーの舞踏です。こちらにたづなさんがいらっしゃると聞いてお伺いしたのですが、現在いらっしゃいますでしょうか?」
「おお!!舞踏トレーナー!ちょうど君の事で話があった所だ」
そう言って出迎えてくれたのは若くしてこの学園の理事長を務めている秋川やよい理事長。一体何の話なんだ?
「実は先ほど君が対応していたグッバイヘイロ―が先ほどここを訪ねてきてな…端的に言おう。この後、君は君の担当でありキングヘイローと併走してほしい」
「…はい?」
理事長から告げられたあんまりにも滅茶苦茶なお願いに俺は絶句するしかなかった。
いくら何でもそれはおかしいよグッバイさん。
今後深堀りしてほしい話は?
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勇の親父の現役時代の話
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勇の幼少期
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砥山トレーナーとミホノブルボンのお話
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勇のトレーナー養成学校時代
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サンちゃん(サンデー)の話