不屈の王は守りたい   作:霜月優斗

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不屈の王は守りたい⑮

 あの仕組まれた併走が終わった併走が終わった後、トレーナーにあの時の事を問い詰めたわ、そうしたらトレーナーは戯言や幻聴かもしれないと継ぎ足して、併走中に『声』が聞こえたと言ったわ。

 彼が言うには自分にはウマ娘と同じ『()()』があると言っていたけれど……正直急に彼が『因子』だとか良く分らないスピリチュアルな事を言うとは思わなかったわ。

 納得なんて出来る訳がないわ、……けど、確かにあの変わりようを見たら否が応でも腑には落ちるわ。

 人間の身体でありながら並のウマ娘と同じ、いや、遥かに凌ぐ速さで私の背後に追いついてきたのだから。

 

『…ハハッ、面白れぇ!オレが()()()()雰囲気だなぁ!!』

 

 ……そしてその『因子』がトレーナーの身体を乗っ取って爆発的な加速を見せてきた時、アレは私の姿を見て『知ってる』と言った。

 彼が言うのことが本当なのだとしたらあれは文字通り『向こう側』から流れてきた、()()()()()()()ウマソウルなるものなのかしら……考えても考えても次々謎が湧いてくるわね。

 そういえば昔、お母様が誰かと電話でそんな感じの事を話していたような気がしたけど、まぁ気のせいよね…。

 私はこの事を棚に上げ、何時にも増して疲労が溜まった併走の疲れを癒す為にお風呂へ向かうことにした。

「ウララさん、そろそろお風呂の時間よ~」

 少し落ち着きがなさげなウララさんに風呂だと呼びかけると首をこくこくと頷いた。

「うん!わかったー!!」

 トテトテと楽しげに準備するウララさんを待ってから、彼女の手を繋いで大浴場に繫がる通路を歩いていると、話し声が聞こえたから耳を澄ましてみる。

 

「ねぇねぇ、今日の()()見た?」

「アレ?……ああ、キング先輩がやってた併走?確かにアレは凄かったね…色々と。」

 どうやら今日の授業後にあった例の併走についての話らしい。

 あれだけ騒ぎになれば当然よね……、終わってから観客席の方を見たら埋まってたわけだし。

「それな!!キング先輩の伸び脚も凄かったけど何より……」

「うん、あのトレーナーさんの事だね。アレは誰がどう見ても異常だった」

 

「……ウララさん、少し待っていて貰える?すぐに済むから」

「?いいよー!」

 

 みんなこの話題で持ち切りなのは分かってはいても、私のトレーナーが異常呼ばわりされるのは聞いていて正直あまり気分が良くないわ。

 そう思った私は、自然と彼女たちに近寄っていた。

「……ねぇ、ちょっといいかしら?」

 自分でもビックリするほど低く出た声に驚いた彼女たちは恐る恐る私の方に振り返った。

「え、あっききキング先輩!?こ、これはその…すみません。聞いてましたよね……」

「ええ、聞こえていたわ。ただ、噂になるのも仕方ないから()()は許してあげる。私もアレにはびっくりしたからね。」

 但し、と付け加えて続ける。

「次やったら……ね?」

「――――はっはいぃぃ!!」

 私がほんのちょっと()()すると蜘蛛の子を散らすようにぴゅーっと走って行ってしまった。

「……?どうしたのキングちゃん?」

「なんでもないわ、ウララさん」

 

 その後はいつも通りにお風呂に入浴したわ、ウトウトするウララさんを起こしてだけど。

 

 

 

 お風呂から戻ると、ここ最近は日常になっているメールもといLANEの通知。

 相手はもちろんお母様だ、用件は今電話できるか?のシンプルな一文。

 大丈夫、と返信してから電話がかかってくるのにそう時間はかからなかった。

「はい、もしもし。こんな時間にどうしたのお母様?」

 

「ちょっと聞きたい事があったのよ、貴方のトレーナーさんの事でちょっとね…」

 

 私のトレーナーで聞きたい事?一体何かしら。

「……何を聞きたいのよ、トレーナーの事で」

 

「彼の人間関係について知ってる範囲でいいのだけれど教えてくれないかしら?」

 出来る限りでいいからと付け足してお母様は言う。

「知ってる範囲ね……、大したことは知らないけれどそれでもいいかしら?」

 

「ええ、聞かせて頂戴」

 

 私は知りうる限りのトレーナーの人間関係をお母様に話したわ。

 

「……成程ね、ありがとうねキング」

 

「いいわよ別に、それで?私のトレーナーの人付き合いを調べて何する気なのかしら?」

 

「そのことで貴女には話しておかないといけないわね……」

 端末の向こうから一呼吸置く音がして、お母様は今日彼に会った事、そして彼の身に起こっていることを教えてくれた。

「そう……一つ言っていいかしら?」

 

「なにかしら?」

 

「こっちに来てたのなら顔を出しなさいよっ!?」

 

 端末越しに聞こえてくる笑い声に大声で叫びそうになるのを堪えた。

 まったく……お母さまは一対何を考えているのかしら?

 

「だって私が来るって知ってたら貴女練習に身が入らない事なんて目に見えてたもの」

 小さい時もそうだったもの、とお母様は懐かしそうに言う。

 

 確かに!!あの頃はそうだったわよ、ええ!!

 貴女に頑張っている所、私も貴女みたいに強いって所を見せたくて見栄張って空回ってけど!!

 

「まったく、どうだった?私のトレーナーに会った感想は」

 私が呆れながらお母様に聴くと、どこか懐かしむ声で言った。

 

「そうね……あの人によく似た優しい目をしていたわ……」

 

 それからもお母様と彼についての話をして夜は更けていった。

 

 

今後深堀りしてほしい話は?

  • 勇の親父の現役時代の話
  • 勇の幼少期
  • 砥山トレーナーとミホノブルボンのお話
  • 勇のトレーナー養成学校時代
  • サンちゃん(サンデー)の話
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