昨日の夜にトレーナーの事でお母様と話していてふと気付いたわ。
お母様は凄く口下手で不器用だけど、不器用なりに私を心配してくれていた。
私がお母様と同じように孤独になって欲しくないからってあんなこと言っていたなんてほんと不器用、まぁ私はその不器用なお母様の愛娘なのだけれど。
全く……こんな事に気づけないなんて私もまだまだだと思い知ったわ、
心配そうに何度も聞いてくるものだからお母様に言ってやったわ。
『私を誰だと思って? 私は偉大なグッバイヘイローの愛娘、キングヘイローなのよ?』
──だから、安心なさいな。
私はどれだけ負けようと絶対に首を下げない。それが一流のウマ娘なのだから。
そうして私はお母様との電話を終え、いつもよりほんの少し遅く眠りに着き、ちゃんと早起きしたわ。
……すこし遅刻しそうになって焦ったのはここだけの話よ。
「ふあぁ……」
朝のSTが終わったと同時につい欠伸を零すとクラスメイトのセイウンスカイさんが珍しいものを見るように話しかけてくる。
「おやぁ? あのキングが寝不足かなぁ?」
「ええ……すこし復習していてね……」
「真面目ですね~キングは、そう言えば最近トレーナーさんとは調子どう? 上手く行ってる?」
「そうね……今のところ
私がそう言うとスカイさんが不思議そうな表情をしている。
「キングは、ってことはトレーナーさんになんか起きたの?」
「ええ、新人さんだからたづなさんから結構直しをくらってるらしいわ。まぁ新人さんにしては頑張っていると思うわ、……本人には恥ずかしくてまだ言えないけどね」
「……ほほーう?」
私がごまかすように言うと何故かスカイさんはニヤニヤしている、何かおかしなこと言ったかしら……?
ジリジリとスカイさんが近寄って囁く。
「キングってトレーナーさんの事好きでしょ」
「すっ!?……あくまでも私はトレーナーに期待しているだけよ! それに……」
だから、私が支えないと。
「私は新人でありながら私の為にあれだけ努力できるトレーナーを支えたい、それだけよ」
私がそう言うと、何故かスカイさんが顔を真っ赤にしていた。
「そ、そうなんだ……無自覚だけど、トレーナーさんのこと好きだよね……」
どうやら揶揄うだけのつもりが思ったよりも本気の回答だったからか、らしくなくあわあわとスカイは口をパクパクしながら呟く。
「ええ。それはそうと、スカイさん……今日こそ体育の併走に付き合ってもらいますわよね?」
有無を言わさぬ笑顔でセイウンスカイに問うキング。
さすがにこの状況からすっぽかすのは無理と判断したらしく、スカイさんはがっくしと項垂れる。
「え、えーと……うん、わかったよ。このまま逃げたらキングに何されるかわからないし……」
「あら、よく分かってるじゃない」
こうしてにっこりして言えばスカイさんはちゃんと約束してくれるのが分かったところで一限目の予鈴が鳴ったので授業に集中するために切り替えた。
「「起立、例、ありがとうございました」」
午後の授業の終礼と共にチャイムが放課後になったと知らせている。
私は直ぐにトレーナー所に駆けていった。
トレーナー室に着くなり私は今後の予定をどうするかを話すことにしたわ。
「こんばんはトレーナー、今日からのトレーニングはどうしようかしら」
「やぁキング、そうですね……まだデビューまで五か月ありますから、一か月はスタミナトレーニング、その後はスピードと仕掛けのタイミングを重視したトレーニングとかはどうでしょうか?」
「そうね……って貴方、また寝てないでしょ?」
「き、気のせいだと「なわけないでしょうこのへっぽこ! こちらに来なさい!」はい……」
昨日のお出かけのおかげで幾分か顔色がいいものの、やはり睡眠不足なのは変わらないので彼の隣に座って彼の頭を私の膝に乗せる。
俗に言う膝枕である。
「あの……キングさん?」
「……貴方が寝れてなさそうだったから、し、仕方なくよ!? 一流たるもの、ちゃんと休養も疎かにしてはダメよ?」
「うん……」
(凄く心配かけてしまった……あいつからの着信拒否しておくかな、辛くなるだけだし)
「わかればよろしい。それで? 何時も平均何時間ぐらい寝ているのかしら?」
「うーん……4時間から6時間?」
「……なるほどね。それは書類で寝る時間が潰れてるのなら手伝うわ」
ほんとこの人は……私が守らないときっと無茶をし続けて、いつか潰れてしまうのではないのかしら……
「いいのかい……デビュー戦まで五か月しかないんですよ……手間がかかるのは俺が悪いからなのに」
「いいの! 一流たる者、支え合って当然よ。だからひとりで無茶はだめよ?」
「そこまで言うなら……お願いしてもいいかい、キング?」
「ええ、なにかしら?」
「この態勢でいいから……少しだけ撫でてくれるかい?」
「もちろんよ」
お願いされたように彼の頭をそっと撫でる。
ほんっと……どうしようもないほどに真面目で、ボロボロの状態でわたしの為に頑張るなんて……おバカ……
少しの間私は彼を膝枕しながら撫でた。
「……ありがとう、これで元気出ました」
ゆっくりと起き上がり、顔色が良くなった彼は言う。
「そう……それじゃ、トレーニング行くわよ!!」
トレーナー室の扉を開けると初夏の風と太陽が広がっていた。
通りすがる傭兵さん、はにちさん、評価誠にありがとうございます
m(_ _)m
今後ともこの物語を楽しんで頂けたら幸いです。
今後深堀りしてほしい話は?
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勇の親父の現役時代の話
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勇の幼少期
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砥山トレーナーとミホノブルボンのお話
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勇のトレーナー養成学校時代
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サンちゃん(サンデー)の話