五月の初夏特有のやや暑めの日差しが雲の切れ間から差し込む午後3時。
周りを見ればレースに勝つために己の力を伸ばさんがために走りこむ生徒が数多く見受けられる。
放課後のトレセン学園は一般的にはウマ娘がトレーニングする時間であり、多くの生徒が自身を鍛えるための数多くのトラックや施設が備わっているためトラックを利用している。
もちろんトレーナーである俺と担当のキングも例にも漏れず、今は坂路でスタミナアップのトレーニングを行っている。
「はあああぁっ!!」
ドスッ、と此方に聞こえてくるぐらい強く踏み込みながら坂を全力で走り抜けていくキングをストップウォッチ片手に見ながらじっと考える。
……キングの目標はクラシック三冠だ。
デビュー戦まで約五か月あるとは言え、先週までの体を慣らす程度のトレーニングでもわかるぐらいにキングの適正距離は短距離寄り。
だとしても、俺はキングの夢を叶えてやりたい。
正直に言ってキングの足を引っ張ることだけは出来るだけしたくない、キングが手伝うと言ってくれたのはありがたいが本当に猫の手を借りたい時以外は自分のやるべきことは自分の力だけでやるべきだろう。
そうこうしている内にキングが坂路から戻ってきた、考え事はしてたがちゃんとストップウォッチは押しているから問題なし。
「ぜぇ……はぁ、どうだったかしら……?」
ストップウォッチには平均値よりもやや早いタイムが記されていた。
「いい感じですよ。ただ、やはり終盤にかけてフォームがやや崩れているので、今度から走る前に体幹トレーニングをしてからやってみましょう。」
「なるほどね、確かに最後の方はどうしてもスタミナが持たないからどうしても崩れてしまってからとても参考になるわ。それじゃ、あと五分休憩したらもう一本行くわよ!」
キングはそう言って流れ落ちる汗をタオルで拭っている。
「ねぇトレーナー」
「なんでしょうかキング?」
ふとキングがなにか聞きたげに俺に問い掛けてきた。
他になにか聞きたいことがあるのだろうか?
「貴方から見て、
……どれくらいの距離まで、か……正直に言うべきか、気を遣って誤魔化すか悩んだがちゃんと伝えることにした。
「……現実的に考えると2500までならそのままトレーニングを続ければ
俺が本心から思っている事を伝えると、彼女は機嫌をよさげに耳をぴょこぴょこさせて返す。
「そうね、私自身何となくだけれど、そこが現状のまま行った先の限界だと思うわ」
良く分かってるじゃない、と言いながら何故かキングに撫でられてしまったが、不思議と心地よいのは気のせいだと胸の内にしまっておく、ただほかの生徒に見られているかもしれないので勘弁してほしい。
キングにわしゃわしゃと撫でられていると何やら後ろから視線を感じたため振り向くと、じーっと不思議そうに表情を変えずにこちらを見つめているウマ娘が近付いて来た。
「こんにちは、キングヘイローさん、キングヘイローさんのマスターさん」
「あら、こんにちはミホノブルボン先輩」
どうやら目の前にいるのは
「こんにちは、ミホノブルボンさん。それで……さっきこっちを見ていたみたいだけど、何か気になることがあるなら言ってほしい」
「はい、単刀直入に言います。先程の会話を失礼ながら聞いてしまったのですが……わたしで良ければお手伝いをさせてはくれないでしょうか」
それは願ってもみない申し入れであった。
ミホノブルボンは元々はスプリンターでありながら坂路のトレーニングにより菊花賞も二着に食い込み、『スタミナは努力で補える』を有言実行した実力者である。
そんな彼女からサポートを受けれるというのは渡りに船であった。
「こちらからも是非ともお願いしたい。頼んでもよろしいでしょうか、ミホノブルボンさん。キングも問題ないか?」
「ええ、問題ないわ」
「承認。これからよろしくお願い致します。
こうして坂路の講師のミホノブルボンを獲得し、その後の坂路でキングをみっちりしごいてもらった。
UA2000突破!
誠にありがとうございます。
今後深堀りしてほしい話は?
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勇の親父の現役時代の話
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勇の幼少期
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砥山トレーナーとミホノブルボンのお話
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サンちゃん(サンデー)の話