ウマ娘 for Answer 【ウマ娘+フロム・ソフトウェア】   作:なんJお嬢様部

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続きました。
《中央》に来る前の主人公の過去がわかるよ!


月光の陰るとき

 私の母ーーといってもウマ娘としての母だーーと父の二人は、とても愛情深い人物だった。彼女は《地方》の《レース》のスターとして人々に愛され、彼女のことを見出した《企業》のトレーナーと恋に落ち、そして私が生まれた。

 私は、二人の唯一の子どもとして、その愛を一身に受けて育った。元より前世の記憶があることで、他のウマ娘よりも器用に生きられた私は、幼い頃から神童として持て囃された。それが、さらに私が可愛がられる要因となったのは言うまでもない。

 

 二人は私の太陽だった。二人から放たれる愛という名の光を浴びてこそ、ムーンライト(わたし)は輝くのだ。

 

 そんな、順風満帆だったウマ娘としての生に陰りが見えたのが私が12歳の時。母が、原因不明の病で倒れたのだ。父はあらゆる手を尽くして母の病を治療しようとしたが、それも虚しく母は衰弱する一方だった。

 私も、前世の知識を総動員してなんとか母の病の原因を突き止めようと努力した。しかし、私の知りうるありとあらゆる病の中で、彼女のそれと近しい症例のものは存在しなかった。

 そこで私は、思い至った。母の病の原因は、私の世界にはなかった《企業》の技術がもたらしたものではないかと。

 若き日の母は、《企業》の広告塔として、《企業》の先端技術の詰まった《装備》をよく身に着けて《レース》に臨んでいた。そこに使われた技術に、何かウマ娘の健康を害するものが含まれていたのだ。そうすれば、人間だった頃の私の知識で分からなかった、病の謎にも説明がつく。母の病気は、《企業》によって生み出された新種の病だったのだ。

 

 私はそれとなく、そのことを父に伝えると、彼は刹那驚いた表情を浮かべたが、すぐに覚悟を決めた表情になって、書斎へと入り中の資料を漁り始めた。

 そして、手提げかばんからはみ出るほどの資料を両手に抱え、父は自分の雇い主である《企業》へと向かい……二度とは戻らなかった。自分の務める《企業》の本社ビルの屋上から、その身を宙へと躍らせたのだ。

 屋上の縁に揃えられた靴と、パソコンで打ち出した遺書が見つかったことから、父の死は自殺として処理された。だが、あの愛情深き父が、病身の母を残してこの世から去るはずがない。

 

 《企業》の闇に触れてしまった父は、他ならぬ《企業》の手によって消されたのだ。

 

 一人残された私に、できることは何もなかった。母の夢見た親子二代の《レース》ウマ娘として、私が活躍する姿を見せることだけが、私にできる全てだった。正式な《レース》に出場する前の野良試合で、私は連戦連勝だった。元々、他のウマ娘よりも早めに体を鍛えていたことと、前世からの頭脳によって組み立てた戦術はおいそれと破られるものではない。母のいる病室に駆け込んで、勝利の報告をするたびに母は笑った。その笑顔だけで私はいくらでも走ることができた。

 

 そして、月日は流れて《地方》《レース》のデビュー戦。待ちに待った、親子二代の《レース》ウマ娘の夢が実現するその日。

 母は死んだ。

 《レース》に勝利した私が、息を弾ませて病室に駆け込んだときには、母は既に物言わぬ屍となっていた。

 呆然としたまま葬儀を終えて、火葬場で焼かれた母の骨は、病の影響で脆くなっていたのだろう。燃え殻をどんなに掻き集めても、骨壷の底に僅かにしか残らなかった。

 その夜、私よりも小さくなった二人を祭壇に祀り、ウマ娘として生まれて初めて私は泣いた。涙を流すことは今までにもあったが、それはいわゆる処世術としての涙だ。心の底から悲しみに震え、流した涙はこれが初めてだった。

 朝の光が窓から指す頃には、ついに涙も枯れ果てた。そして、それと入れ替わるように私の奥底からある感情がふつふつと湧き上がってきた。

 

 ーー憎悪だ。

 

「《企業》め……絶対に、絶対に赦すものか……! 私が、私が全てのウマ娘の頂点に立って、貴様らのやってきたことは全て徒労だったと思い知らせてやる!」

 

 私はふらふらと立ち上がると、全身を照らす朝日に向けて、あらん限りの声で叫んだ。陽の光を浴びて、私の中の憎悪は、狂える月光のように燦然と輝きを放った。

 

 ーーこの日、私は、再びこの世に生まれ落ちた。近い未来、《狂るえる月光(  The Lunatic  )》の名を冠することになるウマ娘、ムーンライトとして。




はい、というわけで主人公の過去でした!

……なんかすごく暗くなってドン引きですわね!(他人事)
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