それはある朝だった。
私が還暦を迎えた日。
「そろそろ一人立ちを考えなきゃダメだぞ?俺も旅がしたいんだからな?」と、鞍馬さんが言った。
「私も付いていく!」と私が話したが鞍馬さんは首を縦に振らない。
「何でよ!?私が悪い子だから?もっと良い子になるから!だから!見捨てないで!」
「見捨てるんじゃない。置いていくんだ。また、会える日まで、待っておくといい。」
私はシュンとしながらも頷いた。そんな私を見て鞍馬さんは…
「しょうがないなぁ…これをあげよう!」と、碧い首飾りをくれた。
「それを持っておけばいつでも俺と話が出来るぞ!」
…嬉しかった。
鞍馬さんから、いや、師匠から初めて貰ったものだ。
プレゼントなんて貰ったことがなかった。だからこそ嬉しかった。
私は…本当は…師匠の事が…す…す……す………す…好きなんだ。
でも、師匠には連れの鬼の女性が居る。
どういう関係かは分からないけど、とても深い関係のようだった。
だからこそ、羨ましかった。だからこそ、聞いた。
「彼女は師匠の何ですか?」と。
すると返ってきたのは想像と全く違う言葉だった。
「喧嘩友達かな?」
…なんじゃそりゃあと思った。
「もっとこう…結婚相手とか…そう言うんじゃないんですか?」
「告白なら毎日のようにされてる。逆に毎日のように断ってる。」
「なんで!?」私は驚きだった。毎日告白されてるのに意識もしない。全くもって理解不能だった。
「こいつに常識を求めちゃダメだよ…パチュリー」と、彼女にも言われた。
「逆に何で貴女はフラれても平然としてられるですか!?」
「照れ隠しだと思ってるし…しかも、押しまくればなんとかなると思う。」
ダメだ。この人ダメだ。脳筋の人だ。
「じゃあ、出発は一週間後だから、今日は一緒に風呂に入ってやろう!」
「何でよ!?変態!」私は顔から火が出そうだった。
「昔ははい喜んで!って言いながら一緒に入ってたのに…」
「今じゃあ大人の女性なのよ!?」
「パチュリーはパチュリーだよ」
「そうだけど!」
「じゃあ一緒に入るのはやめておくか?」
「……入る。」
「分かった。」
────────────────────
「ふぅ、ヌルイなぁ…」
現在、私は師匠と湯浴みをしている。顔は真っ赤っかだ。対する師匠は平然としている。
私ってそんなに魅力ないかな?胸も結構大きい方なんだけど…?お湯に浸かれば浮くぐらい有るんだけど?
「て言うかこのお湯で温いってどういう事?」
このお湯結構熱い。私はすぐにのぼせそうだ。
「のぼせるんだったら早めに出ておけよ。」
師匠はこころが読めるらしい。ある程度は。私のこの想いも読んでくれないかな?そうすれば幾分かマシになるのに…。なのに師匠はどうしても読みたいときにしか読まないと決めているらしく私のこころを読んでくれない。
もう楽になりたい。この想いを吐き出したい。だけど、この想いを吐き出してしまったらもう後には戻れない。だからこそ胸の奥に封じ込める。
そんなことを考えていたらのぼせてきてしまった。「お、おい!大丈夫か!?」と、師匠の声が聞こえてきた。
だが、その前に体が言うことを聞かない。とうとう私は倒れてしまった。
────────────────────
起きた場所は、布団の中だった。
隣には師匠。
私は顔を真っ赤にして蹴りつけるが、蹴っても私が貧弱すぎるのか、傷一つつかない。
こりゃ、バーサーカだの狂気の天狗だといわれるわけだ。