悪役は敵足りうるか 作:プロポリパレン
「ご機嫌いかが? 市民諸君」
町中のテレビ、巨大広告のモニター、携帯端末の画面が切り替わる、備え付けのスピーカーから音声も流れ始める
「ハ、ハ! 初めまして、手間をかけるが手を止めて俺の話を聞いてくれると嬉しい……まあ聞いてくれなくても話はするんだが」
街を歩く人は一瞬立ち止まり、モニターを見るが直ぐに日常へと戻ろうとする、その顔はどれもこれも「ああまたか」と言うような呆れ顔だ、そのうち数人は何処かへと電話をかけ始める
「リサーチャー! 装置の準備は出来てるよな? ……あぁ、起動しろ」
その瞬間、人々の視界に霧がかかる、それも通常のものではなく異常な黄色い霧だ。そこでやっと人々は危険を感じ、その原因を認識する
霧の発生源は至る所にある、それはマンホールや路地の奥から生まれている
「ハ、ハ、ハ ……話を聞く気になってくれただろうか?」
画面の向こうの男が呟く、そこで人々は男の顔をきっちりと認識するだろう、男は顔を何かで覆っていた、覆った上で、覆面越しでもわかるほどに、サプライズが成功したかのような満面の笑みを浮かべていた。
「今この街に蔓延しているガス、それは毒だ、いや、化学兵器とでも言おうか、安心したまえ吸う事で死んだりしないし、なにかの病気を悪化させることも無い、効果はただ1つ、このガスの範囲外、つまり街から出れば死ぬ、それだけだ」
「もちろんこの街の人間はヴィランに慣れているし、ヒーローに守られている、だから見てもらおうか。……レックス! モニターを切り替えろ!」
画面が暗転、女性が映る、その女性は錆び付いたパイプ椅子に縛りつけられて「違うそれじゃない! 隣の……それだ」
再び暗転、街の中と外を繋ぐ橋を映したモノが次々と映る、街の内側は黄色い霧に包まれており、中を窺い知ることは難しいだろう
橋の上、街から外へ出る車が映る、車の中はピントが合わず見ることが出来ない、橋を真っ直ぐ走る車は橋の中腹で止まってしまう
止まった車にカメラが近づいていく、カメラはドローンなのか車の前に回り込むように中のモノを映した。
車のガラスは紅く染まっている、ペンキの詰まった何かが中で破裂でもしたのだろうか、カメラが近づくほど鮮明に映っていくそれは
「そこまでだ、もう充分だろう? この街から外に出ればどうなるか! 理解頂けた、と思いたいな? ハ、ハ!」
暗転、画面が男に切り替わる
「もちろん特効薬も用意してある、当然だ」
男が錠剤を取り出す、それは時計をモチーフにしたような模様が彫られており、色も分けられている
「さて、本題に入ろう。5人だ、5人のヒーローに位置情報を送ってある、そこにはこの特効薬を保管して置いておいた、但し、そこには俺たちヴィランがいる、後は分かるだろう? 俺たちを倒して、特効薬を手に入れれば見事ゲームクリアって訳だ」
「おっと! 言っておくが薬を置いてある場所には爆弾が仕掛けられていてな? 位置情報を送られてないヒーローが行けば薬は……ドカン! 木っ端微塵って訳だ、勿論ヒーローが複数人で向かってもドカン! 」
「ちなみに作った特効薬のうち、ガスに効くのは5分の1だ……頑張ってくれよ? 間違えたものを散布すればこのガスは即座に致死性100%の劇物に変わる、死の街の完成って訳だ、ハ、ハ、ハ!」
男は笑う、大声を上げて、見せびらかすように嗤う
「あァ、改めて自己紹介をしておこうか、俺の名前は……ローグ、悪役だよ」
暗転、全ての画面は元に戻り、日常へと戻る、
街に立ちこめる黄色い霧を除いて