悪役は敵足りうるか   作:プロポリパレン

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[1]-ボルト

 

「いや罠でしょ」

 

 街に存在するヒーロー事務所、その1つにそのヒーローはいた

 

「確かに位置情報は来たし、他のヒーローも送られてるのを確認もした、だけどさ? 相手はヴィランだよ? 本当のことを言ってるかどうかなんて……」

 

 彼のヒーロー名はボルト、電気をエネルギーとして自分を変化させたり雷を操作することが出来る最速のヒーローである

 

「全て事実だったそうだ、ジャッジマンが確認した」

 

「ジャッジマンって……[真贋把握]のジャッジマン?」

 

「そうだ、彼がこの動画を見て、嘘はないと判断した」

 

「……つまりこの霧をどうにかしないと市民が危険なのには変わりないって事? でもこの街には"彼"が居る! スーパーヒーロー"ファースト"が居るだろう?」

 

「映像の途中で差し込まれた女性、あれは誰だと思う?」

 

「話をそらさ……まさかあの人重要人物だったりする? しかもファーストに関係してる……それが誘拐されたんならファーストが対応せざるを得ない、だから今ファーストはこの街には居ない?」

 

「君の頭が良くて助かるよ、一昨日記録媒体がとある上院議員の家に送られてきた、一緒にメモも添えられてあった、これだ」

 

『ファースト後見人の上院議員殿、

 貴方の娘は預からせてもらった、場所はここから一番遠い場所だ。

 ファーストならすぐに分かるだろう? 、勿論、彼女は安全さ! 

 君が助けに来る限りは、な? ハ、ハ、ハ!』

 

「……なるほど、そして今ファーストが居ないこの街でローグは事を起こした、と」

 

「そういう事になる、罠なのは百も承知だ、だが行かなければ市民へ甚大な被害が出るのは確実だろう」

 

「分かってる、じゃあ……行ってきます」

 

 Bzz! と音が鳴ると既に彼は居ない、指し示された場所へと向かったのだろう

 

 ──────

 

「ここが指定地点か、廃工場ってのはまぁ……戦いやすくていいかな」

 

 まずは生体反応を探る、空間とそれ以外の電位差をさぐって……誰も居ない? いや、すごく小さな反応が多数、虫か! 

 

『まズは……初めましテと言っておこうカな? ワタシはインセクター、蟲を操るヴィランだヨ』

 

「ワオ、虫のヴィランが相手? 参ったな……」

 

 虫の羽音で声を再現してるのか、なら恐らく異形系ヴィラン、容赦は要らなさそうかな

 

「相性が良すぎる」

 

『それはそうだろウ、位置情報を送る相手はこちらが選んでいるのだかラ』

 

 情報で見た事もないヴィラン、これが初とは思えないほど手馴れている? 情報を引き出さないとかな、よし、煽ろう

 

「それは知らなかった、もしかして僕のファンだったりする?」

 

『そもそもローグはヴィランに声をかけたのではなイ、願いを持つものを集めただけダ、一人例外は居るがな』

 

「願い?」

 

 煽りを無視されるとは思わなかったな、でもこのヴィランがローグに集められたのは確定っぽいね

 

『話す必要を感じ無いな、それにヴィランは最期に全てを話す物だろう?』

 

「……それもそうだね、君を倒してから聞くことにするよ」

 

 時間稼ぎもしない、周囲の生体反応は500~……わかんないな、まあ最大でも小動物程度だし人間の反応は無し、問題ないかな

 

『倒す、倒すねエ。出来るものならやって見たまエ、ワタシの能力は虫ダ、街中の虫を相手に勝てる物なラ』

 

 問答無用、いや既に話はしてるけどね。

 初手全力制圧放電、リチャージは必要だけど……反応は残ってないかな? 

 

「こんなので終わっちゃうなんて、やっぱり相性が良すぎるね、もっと別のヒーロー読んだ方が良かったんじゃない? ……なんて、もう答えらんないか」

 

 情報を引き出せなかったのを上司に怒られるかもな、やっちゃったなあ。 ……? 

 

『いいヤ? まだ終わっていないとモ』

 

 その瞬間、地面の柔らかな土の下、錆び付いた配管の隙間、コンクリートの罅等のありとあらゆる空間から虫が這い出てくる

 

「うわぁキショい!」

 

 チャージは溜まってないから雷霆は無理! てなるといや待て待て待て待て多い多い多い多い! 

 

「どんだけ操れるんだよ!」

 

『ワタシの能力は蟲ダ、ワタシ自身を蟲へと変化さセ、その蟲が触れた虫も支配下に置ク、そうして群れをワタシ自身へと変換していル』

 

「にしても際限無くない……?」

 

『無いナ、そもそも限界を感じたことが無イ』

 

 これはマジで街中の虫を相手にしなきゃ行けないかぁ……? 

 

『さテ、仕込みも使わせて貰おうカ』

 

 地下にいる虫を使っているのか、地面から3m程の長さの金属の棒が6本、僕を囲むように生えてくる

 ……あ

 

「まずいなそれ……もしかして」

 

『君の予想通り避雷針だヨ、虫よりは金属の方が吸い寄せられル、そしてここは廃工場、金属は大量、君にとって一番戦いづらいフィールドだろウ?』

 

「はぁ……確かに、さっきみたいな放電は避雷針があれば吸い寄せられるからなぁ。……始末書確実だしこれだけは使いたく無かったんだけど、仕方ないよね」

 

 人差し指を立て腕を天に挙げる、深呼吸して、空間の電子を感じ取る。

 

『……? 何をしていル?』

 

 無視して感覚を拡げる、ソラにある電子を操作する、避雷針で地面に流れた電子を操作する

 

「一つ聞きたいんだけどさ、お前の蟲って全部ここに居るの?」

 

『…………そうダ、私が操作できる三万四千二百六十五体、全てこの近辺に集めていル、お前を倒すためにナ』

 

 今やってるのは新人の頃、ヒーローらしい必殺技を作ろうと思って練習した物だ、雷ってのは実際は上から下じゃなくてしたから上に流れるんだっけ、なら地面の電子を自分に纏めてソラの電子を拡散して薄くすれば……なんて軽い考えでやって、出来てしまった必殺技

 

「それなら良かった……こういうの、コトワザでなんて言うんだっけ」

 

 あの時は確か外でやってたんだけど訓練所の機械が全部イカレちゃって怒られたんだよなあ……まあここなら街から離れてるし問題ないでしょ! 

 

『何をしているのかは知らないが避雷針もある以上ワタシを倒すことは──』

 

 空は快晴、日が少し傾き始めた時間帯、青い空に異変が起こる、いや、異変を起こす

 

「ああそうだ、[晴天の霹靂]、だっけ」

 

 轟音、空気中の電気抵抗を破壊する音、上からか下からかなんて分からないけど、周囲の生命反応は限りなく少なくなった、自分の耐性ごとブチ抜いた僕と、もう一人くらいの反応……? 

 もう一度探る、インセクターがいた位置に人間の反応? さっきは虫の集合体としか感じなかったのに……

 

 そこには、落雷に焼け焦げ炭化した状態の人型の何かがあった

 

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