悪役は敵足りうるか 作:プロポリパレン
「あれ? 姉さん? ……何やってんの?」
送られてきた位置情報は森林公園、この街の大体真ん中にあって、昔のヴィランが暴れたらしくて建物が森に呑まれている、けどそれはそれで雰囲気があるとかでそのまま活用されたりもしている場所だ
「来たか、リトルミダス」
そこに何故か姉さんがいた、確かに、この街で生まれ育った僕ら姉弟にとってはよく行くところだった、けど
「ちょっと辞めてよ! 俺はリトルミダスじゃなくて黄金王(キングオブゴールド)! 砂を操るヒーロー[サンドマン]のサイドキック! そうだろ?」
「……そうだな、ヒーロー[黄金王]」
「いやヒーローじゃなくてサイドキックだよ! まあいいや、なんで姉さんがここに居るの? 姉さんもあの映像見たんでしょ? 俺ここに特効薬あるって送られてきてさ、ヒーローが複数人で来ればドカン! なんだよ? だから俺一人で来たんだけど」
「お前はいつも、予想のできる真実から目を逸らす」
「もしかして姉さんも位置情報送られてきてたのか! なら安心だよね! 姉さんと俺を合わせたら最強だし! ……ところでヴィラン見なかった? ここにいるってなってるんだけど」
「私は見てないな、ずっとここで待っていた」
「姉さんも見てないんなら……あぁ! もしやヴィランも恐れをなして逃げたんだな?」
「話を逸らすな、現実を見ろ、ローグは嘘をついていない、ここには、「やめてよ」
「やめてくれよ、そんな話聞きたくもない、ここにいるのはヒーロー二人、俺と、姉さんだ、そうだろ?」
「違う「違わない!」
「姉さんは俺の憧れで、ヒーローとしての先輩で、俺のヒーローなんだ……だから!」
Pipipi……
会話を遮って通知音がする……メッセージ? 誰だよこんな時に
『ごめんごめん! アドバイスしようと思って忘れてた!
特効薬はこんな感じの機械に入ってるよ! まずはそれを探してみたら?』
それと一緒に送られてきた写真には見覚えがあった、何故なら……姉さんがさっきから寄りかかってる金庫が、それと同じ形をしてたから
「どんなメッセージが来たかは知らんが、どうやら理解出来たようだな? 右足を引いている、本気を出す時の癖が出ているぞ?」
姉さんが俺を呼び出したヴィラン……?
「嘘だ……姉さんがヴィランだなんて嘘だ……そうだろ?」
「嘘じゃないさ、それにお前がいつも言ってるじゃないか、『ヒーローはいつも勝つんだ』って、そうだろう?」
言葉が出ない、ただ息が出ていくだけ、何か、なにか反論しないと、姉さんはヴィランなんかじゃないんだから
「黄金王、お前はまた新人のサイドキック、ヒーローにすら慣れていない子供だ、それがいきなり街中を巻き込むヴィラン犯罪に呼び出される? ……そこから疑うべきだったんだよ、そうだろう?」
「それは……」
「私は知っている、そうやってサイドキックとして出てきたヒーロー擬きが、燻ったまま消えていくのを」
姉さんの言葉は何だか責めるような、諭すような、でも強い口調で
「私は知っている、才能あるヒーローが周囲の塵共に足を引っ張られて蹴落とされていく様を」
それは、訓練生の時から感じていた、1位の奴を5位以下のやつが手を組んで引きずり下ろす、ヒーローを目指せないくらいに心を折って、訓練校を辞めていく子を何度も見ていた
「私はお前にそうなって欲しくない。ヒーローになるんだろう? ならまずは……悪に堕ちたヒーローを討伐する、なんてのはいいと思うんだ、そうだろう?」
でも……それでも
「俺は……そうは思わない、ヒーローは、諦めない物で、目指す物で、誰かを踏み台にして上に立つのなんて、間違ってる! そうだろ!?」
「ああ、そうだな」
えっ
「お前はそう言うと思っていた、ヒーローがヒーローを踏み台にするなんて間違ってるんだと、だから私はここに居るんだよ……ヴィランとして、ヴィラン因子を隠し続けた、市民を欺き続けたヴィランとして、ここにいるんだ」
「姉さんにヴィラン因子……? そんなわけ」
その瞬間俺に砂が襲いかかる、いつの間にか周囲が砂場になって……!
「煩いぞ、黄金王、やっぱりお前はリトルミダスだったか? 私の能力は砂だ、砂を操り、砂になる」
そういうと姉さんは砂をまとって、大きくなっていく
『お前に、私が倒せるかな? 倒さなければ……この街を全て砂漠にでもしようか』
ああ、クソ! やめてくれ!