魔法戦記リリカルなのはBLAZBLUE   作:生粋の名無し

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どうも、生粋の名無しです。

どうにか続きを作れましたが、語彙力が皆無なせいで文章がひどい有り様で申し訳ありません。

キャラ崩壊を起こしているところがあれば、誤字報告や、感想欄で違反にならない程度に教えていただくと幸いです。


第一話 新たな人生

「なんなんだよ…訳わかんねぇ…」

 

 右手に掴んでいた鏡を机の上に置いたラグナは、ベッドに腰かけると苛立たしげに頭をかきむしる。

 鏡に映った自分をみた直後は、混乱した挙げ句「なんじゃこりゃあぁぁぁぁ!?」と叫びかけたが、何とか声を飲み込み、代わりに今のような状況に至っていた。

 

(まさか、『蒼の繭(エンブリオ)』の中か──いや、それはありえねぇ。確か『蒼の繭』は、大勢の人間の魂を使って『蒼』へと干渉し、『蒼炎の書』を生み出すための『窯』のような存在だったハズだ。ならあの時──俺が『蒼の境界線』へとたどり着き、『蒼の魔道書』が『蒼炎の書』になったことでその役目は終えている。──ならここは、一体何処なんだ…?)

「ハァ…一体どうなってやがんだ…」

 

 お手上げとばかりにベッドに仰向けで倒れ、そんなことを呟いたラグナ。その直後──

 

 

 

 

 

「ラグナ、もう朝よー!」

 

 

 

 

 

 ノック音と共に、扉の向こうから聞き覚えのある──とても懐かしい声が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

(『シスター』か!──いや、でも俺の知ってるシスターよりか声が若い気が──)

「ジン達はもう起きてるのよー!早く起きなさーい!」

「っ!」

 

 聞こえてきた女性の声にどこか違和感を感じたラグナだったが、彼女が弟の名前をあげたのを聞き、急いでベッドから飛び降りると、扉のハンドルに手を掛ける。

 

(わり)い、シスター。起きてはいたんだけど、ちょっと寝惚けててさ…」

 

 そんな言い訳を話ながら扉を開くと──扉の先には、修道服を身に纏った一人の女性が立っていた。

 そして顔を上げ──件のシスターの顔を確認したラグナは動きを止める。

 

 

 

 

 

 自分の知っている彼女に比べると少しばかり大人びているが、そこにいた女性は紛れもなく──前世で災厄に対抗するために過去から引き上げられ、彼に戦う理由を与えてくれた──彼のことを『勇者』と呼んだ少女だったのだ。

 

 

 

 

 

(『セリカ』──!)

 

 ベールの下から茶色の髪を覗かせる目の前の女性──『セリカ=A=マーキュリー』を見たラグナは驚くと共に、彼の中で全てが繋がる。

 

 前世の彼の中にあった幼少期の記憶は、全てを失ったあの日以外朧気で、シスターの顔を思い出そうとしても常に彼女の目元に影がかかっていた。

 だが前世のラグナは、戦いの最中彼女(セリカ)に様々な場面で、幾度となくシスターの面影を重ねていた。

 更にいえば、前世でラグナの剣の師匠だった獣人──『獣兵衛』がラグナ達三人を教会に連れてきた時も、ラグナはシスターと初対面のハズなのに、シスターは何故か、最初からラグナのことを知ってるような口ぶりだった。

 

 そして今、こうして目の前にいるセリカを見れば、記憶の中のシスターの顔から影が消え、目の前のシスター(セリカ)と記憶の中のセリカ(シスター)、その二人の顔が重なる。

 

 

 

 

 

──ラグナ自身、本当は薄々気づいていたのだ──

 

 

 

 

 

──自分達を育ててくれたシスターの正体は、セリカなのだということに──

 

 

 

 

 

「おはよう、ラグナ。──どうしたの?ボーッとしちゃって」

「っ──な、何でもねぇよ。まだ少し寝ぼけてるだけだ」

 

 全てが繋がり、驚きと納得で感傷的になっていたラグナだったが、シスターに顔を覗き込まれたことに驚き、顔を背けて目元に力をいれる。

 

「大丈夫なの?兄さん…」

「!」

 

 そして、顔を反らした視線の先には、金髪碧眼の少年少女──幼きラグナの弟妹達が、曲がり角から顔を出してこちらを覗いていた。

 

「だから大丈夫だって。──おはよう。『ジン』、『サヤ』」

「おはよう兄さん!」

「おはようございます、にいさま!」

 

 二人をみたラグナが気分を切り替えてそう伝えると、(ジン)(サヤ)が笑みを浮かべながら角から身を乗り出した。

 

 なおその際、前世の弟を思い出したラグナは一瞬、「ニイサァン!!」と叫びながら危ない笑みを浮かべて襲いかかろうとするジンを幻視し身構えかけたが、屈託のない笑みを浮かべる彼を見て前世のジンではないことを理解し、内心安堵の息をついた。

 するとその時──

 

 

 

 

 

「おっはよー!らぐなおにいちゃん!」

「ぐほぉ!?」

 

 

 

 

 

 弟妹達の背後から現れた小さな影が、走って近寄ってきたかと思うと、ラグナに勢いよく飛び付いた。

 その際、飛び付いてきた影の頭頂部がちょうどラグナの鳩尾付近へとぶつかり、痛みでバランスを崩したラグナは抱きつかれた勢いも相まってそのまま廊下に倒れる。

 

「いっつつ…」

 

 倒れた際に頭もぶつけたのか、後頭部と胸元に残る鈍い痛みを我慢しながら、ラグナは自分の懐へ飛び込んできた影の正体を確認するために身体を起こす。

 

 ラグナに突撃してきた影──先程の高い声から少女と思われる人物は、顔は彼の胸元に埋めているため確認できない。

 だがラグナには、その少女の声に視界に入っている今の自分と同じ脱色されたかのような白髪、そして『ピンッ』とたったアホ毛に見覚えがあった──

 

 

 

 

 

「テメェ──『ν(ニュー)』か!?」

 

 

 

 

 

 ラグナがその名を呼ぶと、抱きついていた少女が彼の胸元から顔を上げ──赤い瞳を輝かせながらパーッと笑顔の花を咲かせ、すぐにまた顔をラグナの胸元に埋めた。

 

 そう──前世で幾度も刃を交え、一度は彼の手で命を奪った敵であり、そして最後には救おうとした少女──『ν-No.13-(ニュー・サーティーン)』が、ラグナの胸元に抱きつき、まるで甘える猫のように頬を擦り付けていたのだ。

 

(てかちょっと待て。今、こいつ俺のこと「おにいちゃん」つったか!?)

「こーら!ニューったら、ラグナが困ってるでしょ?」

 

 セリカがラグナに抱きついているニューに注意している横で、突然のことに混乱しているラグナ。

 しかも先ほどニューが発していた言葉が彼の戸惑いを加速させているなか、更なる追い討ちが彼を襲う。

 

 

 

 

 

「おはよう、ラグナにいさん」

 

 

 

 

 

 三人(ラグナとセリカとニュー)のやり取りを見てあわてふためく二人(ジンとサヤ)の背後から、これまた再び見覚えのある──顔つきや瞳の色、髪型までニューと全く同じで、しかし髪の色だけはジン達とお揃いの金髪の少女が現れたのだ。

 

(『Λ(ラムダ)』…テメェもかよ…!)

 

 新たに姿を見せた少女──前世では身を呈する形でラグナの命を救い、彼に力を託して一度消滅した少女──『Λ-No.11-(ラムダ・イレブン)』が、先程のニューと同じく自分のことを『兄』と呼んだことで、ラグナの脳は限界を迎えようとしていた。

 

「ほーら!そんなにくっついてたら、ラグナが着替えられないでしょ?今日はこれからお出掛けなんだから、ラグナもおめかししないと!」

「あっ!──は~い…」

 

 一気に押し寄せてきた情報を処理できず頭を抱えているラグナをよそに、セリカがラグナからニューを引き剥がす。その際、ラグナと離れたことに寂しそうな表情を浮かべたニューだったが、セリカの言葉を聞いて首根っこを捕まれた猫のように大人しくなる。

 

「あん?出かける…?」

「兄さん、忘れちゃったの?──昨日、この間シスターさんが見つけた喫茶店に行こうって、皆で約束してたじゃないか」

 

 ニューが離れたことで一息つきつつも、セリカの話を聞いて首をかしげていたラグナに、近寄ってきたジンが答える。

 

「──あ…あー、そうだったな!悪い悪い、すっかり忘れてた」

「もう、兄さんったら…」

 

 笑ってとぼけるラグナにジンがため息をつく。

 そんな弟に苦笑を浮かべたラグナは、ゆっくり立ち上がり彼の頭を優しく撫でると、部屋へと戻り着替え始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから数分後、着替えを終わらせたラグナとシスター達は教会の前にいた。

 そんなラグナの手には紙の地図が握られており、山の中腹付近及び町中と思われる場所の二ヶ所に赤い丸がつけられている。

 

「地図は持った、と…シスター、財布は?」

「はーい!ちゃんと持ってるよ」

「うっし!それじゃ、シスター。アンタは絶対、俺より先には行くなよ?ジン達より後にもだ。そんでジン。もしシスターが変な方角に行こうとしたら、全力で引き留めろ。いいな?」

「うん、わかった!」

 

 ラグナの真剣な表情を見て、ジンが力強く頷く。

 ラグナがそこまで真剣に言い聞かせているのには、理由がある。

──もし、本当に今ここにいるシスターが、自分の知るセリカであり記憶にあるシスターと同じ人物であるなら──彼女は途轍もない方向音痴のハズ──一秒でも目を離せば、いつの間にか視界の中から消え去るほどには。

 

「もう!ラグナは心配しすぎだよ。今から行く喫茶店はここからそこまで離れてないんだから、迷ったりしないよ」

「…これがアンタじゃなかったら、俺だってそう思うんだがな」

 

 前にもしたことがあるやり取りをしながら、ラグナはシスター達の先頭をきって山を降り始める。

 

 歩き始めてから更に数分後、まだ幼いサヤ達三姉妹に合わせて林の中をゆっくりと歩いていると、ラグナが唐突にジンに問いかけた。

 

「…そういやジン。今って何年の何月だっけか?」

「え?どうしたの急に」

「いや…どうも寝惚けてるにしては、記憶が混乱しててな…寝てる時に頭でもぶつけたのかもな」

 

 首をかしげるジンに、ラグナが頭をかきながらそう伝えると、ジンより速くシスターが食いついた。

 

「え!?大丈夫なの、ラグナ?どこも痛いところとかない?」

「だから、大丈夫だって言ってるだろ?──でも、もしそれでも心配だってんなら、これから俺がする質問に答えてくれねぇか?もしかしたら、混乱が収まるかも知れねぇからさ」

 

 心配そうに頭に触れてくるシスターの手を、照れ臭そうにしながら軽く押し退けつつラグナはそう話す。

 

「うん、わかった!ラグナがそれでいいって言うなら、私、何でも答えるよ!」

「悪い、シスター。助かる…」

「僕も手伝うよ!まずは、今日がいつなのかだったよね?」

 

 笑顔で賛同したシスターに頭を下げると、話を聞いていたジンも話に入ってきた。

 そんな二人を騙すようなやり方に少し罪悪感を抱きながらも、ラグナは抱いている疑問を質問という形で問いかけ始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すまねぇな、二人とも。少し思い出せてきた」

 

 質問を始めてから更に数分後、ラグナはなんの疑問も抱かずに答えてくれたジンとシスターに礼をいうと、脳内で話を整理する。

 

(今は、2000年の6月──場所は日本の海鳴市ってところらしい──俺とジン、サヤ…そして、ニューとラムダは血の繋がった兄妹で、一年前にあの教会の前に捨てられていたところを、シスターが拾って今まで育ててくれていた、か…)

 

 二人から聞いた話を纏めたラグナは、自分の中で一つの結論を見つける。

 

(もしかしたら、この世界は──俺が救った『可能性』の一つなのかも知れねぇな)

 

 ラグナがそう考えた一番の理由は、年数だ。

 前世のラグナが戦い抜いた世界、そこで彼が覚えている最後の西暦は──2200年。つまり今、ラグナがいるこの世界とは200年の差があるのだ。

 一度、境界を通って過去の時代に飛んだのではないかと考えもしたが──それは、ある一つの情報によって打ち消される。

 

 先ほどの質問の際、ラグナはもう一つ、あることを聞いていた。それは──『自分達の名前』。

 当初、その質問をした際は二人からかなり心配をされたが、なんとか聞き出すことができた。

 

 結果、自分のこの世界での本名が──『ラグナ=マーキュリー』であること。

 更に弟妹達も、当たり前ではあるがラグナと同じ名字で、そしてシスターの名前が──『セリカ=A=マーキュリー』であることを知る。

 

(200年も前に、同じ顔で同性同名の奴がいたなんて話、ありえるハズがねぇ。教会にしてもそうだ。──なら可能性としては──俺がいた世界によく似た、まったく別の世界──ってのが、可能性としては(たけ)えだろうし、何よりその方が納得がいく)

 

 そこまで考えたところで、ようやく林の中を抜け、海鳴市の景色が視界に広がる。

 

 

 

 

 

 最初に目に写ったのは、人の手により舗装されたコンクリートの地面──その上を走り、目の前を通りすぎて行くいくつもの鉄の乗り物たち。

 

(確か、『自動車』ってやつだったか?)

 

 ラグナは記憶の中に埋もれていた情報を引き出す。

 前世では、移動手段に飛空艇が主流となっていたため、自動車やバイクなどはヴィンテージ品として、金持ち達の間で取引され、鑑賞用として扱われるのが殆どだった。

 なので、前世で指名手配されて追われる身だった彼には縁がない存在で、噂に聞く程度だったが、初めてこうして実物を目にし、しかも実際に動いている所を見て、流石のラグナも興味を隠しきれず、行き交う車を目で追いかけてしまう。

 

 次に視界に入ったのは、建物や人で活気づく海鳴市の町並み。

 前世では、100年前に現れた大災厄──『黒き獣』と呼ばれる存在によって、多くの土地は荒れ果ててしまい、その地から逃げるようにして人々は階層都市と呼ばれる物を作り、ほとんどの人類がそこで暮らしていた。

 そのため、大地に数多の建物を築き、その地で多くの人々が過ごしている今の光景は、ラグナにはとても新鮮だった。

 

 最後に写ったのは、雲一つない綺麗な青空と──太陽の光を反射して輝く美しい海。

 前世の海は、『黒き獣』によってほとんどが消滅してしまい、世界中を旅してきたラグナすら目にすることはできなかった。

 だが、この世界では海が当たり前のように存在している。

 その景色は、ラグナに感動を与えると共に、彼の考えを確固たる物にさせた。

 

(本当に、違う世界に来ちまったんだな…)

「どうしたの?またボーッとしちゃって」

 

 自分の世界や他の世界を救うために自らが招いた結果とはいえ、少し虚しい気分になっていたラグナだったが、シスターの声を聞いて我に戻り振り返る。

 そこには、心配そうに見つめるシスターと、自分と同じように外の景色に瞳を輝かせる4人の弟妹達の姿があった。

 

「い、いや…ほら、海鳴市の風景を見るのって、俺達は初めてだと思うからさ。ちょっと、感動して…」

 

 心配して話しかけてきたシスターにそう伝えると、彼女は一瞬だけ気の抜けた顔を浮かべ、すぐに優しい微笑みに変えた。

 

「そっか…そうだよね。ラグナ達は一年前(あの日)から、ずっと教会にいたんだものね」

 

 そう言ってシスターは、たった今下りてきた山の方向を見て「もう一年か…」と、懐かしむような表情で呟く。

 だがすぐにその表情をやめると、今度は満面の笑顔を浮かべた。

 

「よし!じゃあ今日は、ラグナ達が初めて外に出たお祝いに、喫茶店でパーッと盛り上がっちゃおう!」

 

 シスターはそう言うと、ラムダの手を引き、ラグナの忠告も忘れて海鳴市へ向けて歩き出す。

 

「あっ、おい!だから俺より先に行くんじゃねえって!」

 

 そんな彼女に呆れつつも、ラグナとジンは妹の手を取り追いかけた。




現時点では、ラグナは4歳、ジンが3歳、ラムダ・サヤ・ニューの素体三姉妹は1歳半くらいという設定です。
本文では書かれてませんが、ラグナ達が林の中を歩いていたときは、ラグナがサヤ、ジンがニュー、シスターがラムダの手をつないでいます。

※2023/7/3:改めて良く計算したところ、この時点での兄妹達の年齢は、ラグナは5歳と3ヶ月、ジンは4歳と4ヶ月、ラムダは3歳と9ヶ月、サヤとニューは3歳と6ヶ月でした。大変申し訳ありません。

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