原石達の軌跡・輝かぬ石など一つもない   作:kazuya2009

3 / 21
※2022/06/10現在、第二話で登場するオリジナルウマ娘の名称について競走馬登録はございません。


第二話・担当ウマ娘たち

 トレーナー室に戻ると、担当するウマ娘たちが楽しそうに談笑していた。

「あ、トレーナーお帰りー 可愛い娘いた?」

 そういうのは一番手前のパイプ椅子に座る一般的な鹿毛の髪でショートヘアが似合うウマ娘。カントリークライシス。愛称はリークだ。

 四年前、何やら俺の噂を聞いて指導してほしいと来た物好きなウマ娘。ダート適性があり、マイル、中距離が得意なウマ娘だ。俺が担当する現役ウマ娘の中ではシニア級ニ年目の最年長にしてエースでもある。

 ちょっとだけ軽い雰囲気を持つが、意外と真面目。

 戦績は十五戦十勝、ニ着三回、三着二回。連対率は驚異の八十パーセントだ。

 中央だとフェブラリーステークス、チャンピオンズカップ、根岸ステークス、武蔵野ステークス。地方交流戦だとクラシック級でジャパンダートダービー、シニア級になってからは東京大賞典、川崎記念、かしわ記念を制覇してる。他に帝王賞ニ着。南部杯ニ着。と、俺の自慢のウマ娘の一人だ。

 ダートの重賞を取りまくる事から、二つ名にダートハンターと名付けられた。本人はえらく気に入っている。

「リーク、それじゃまるでトレーナーさんがナンパをしに行ったみたいじゃない」

 カントリークライシスの正面に座って呆れてるのはジェネラルブレイン。愛称はジェネス。芦毛のロングヘアーとモデル並みのスタイルで男性ファンからの受けがいい。

 彼女は担当トレーナーがついてない頃に俺が仮トレーナーとなって指南をしたのがきっかけで、そのまま俺が担当トレーナーになった。

 芝の千八百メートル以上を得意とする。戦績は十一戦三勝ニ着三回。主な勝ち鞍はきさらぎ賞、プリンシパルステークスだ。しかし東京スポーツ杯ニ着、弥生ニ着、皐月賞四着、日本ダービー五着、神戸新聞杯ニ着、菊花賞四着、有馬記念四着。

 この間はシニアになっての初GⅠに天皇賞・春を走って三着と勝ち切れないも、なかなかの実力を持っている。マイル戦こそ千八百メートルしか走れないが、長距離まで走れる能力が高いウマ娘だ。思わぬ原石を磨けて俺としても満足である。

「トレーナーさん、ナンパはダメですよ! トレーナーさん優しいからみんな勘違いさせちゃいますからね!」

 そういうのはジェネラルブレインの隣に座るブラッドスプラッシュ。愛称はブラス。名前は物騒だがこの中では一番優しいウマ娘だ。黒鹿毛のセミロングで少し背が小さいことにコンプレックスを抱いている。実は何気に三人の中で一番胸が大きい。カントリークライシス、ジェネラルブレインの二人が本人よりこの事実を気にしている。

 俺が去年スカウトしたウマ娘で、極端に能力が低いわけでは無いが去年のメンバーでは少し物足りないレベルだった。現在一番の若手。クラシック級真っ只中だ。芝とダートの両方に適性があり距離も今のところ短距離から中距離をそつなくこなせる。戦績は七戦二勝ニ着一回三着二回。ニ勝はデビュー戦とプラタナス賞。共同通信杯三着、スプリングステークス三着、皐月賞八着、プリンシパルステークスニ着。日本ダービー七着だ。

 トップクラスには届かないもクラシックの大舞台である二大レースに出走出来た。堅実で地道に努力を続けられる健気なウマ娘である。

 そんな三人に苦笑いをしながら俺は自分の席に座りながら言う。

「お前らがいるのにこれ以上可愛いウマ娘を探すのはちょっと贅沢だろ?」

 軽口叩きながら俺はミニノートを取り出した。

 三人を見ると三人とも顔を赤くしてるのが本当に可愛いじゃないか。

「そ、そういうことさらって言うの反則だから!」

「そうよ、そ、そんなこと言われちゃったらわたし達どんな顔していいのか」

「ふふふ、可愛いって言われちゃった〜」

 一人だけ素直に喜ぶ。ブラッドスプラッシュ。

「まあ、冗談はともかくだ。今日のメンバーならアドバイス程度でどうにかなりそうだ」

 ジェネラルブレインの世代の時は最大十二人仮トレーナーとして指南をして、ジェネラルブレインは残ることを望み、他のウマ娘たちは、めでたく担当トレーナーが付く、もしくはチームへの加入が出来た。

 去年はブラッドスプラッシュをスカウトして正式なチームメンバーとして迎えたが、一時期仮トレーナーとして彼女以外に八人程面倒を見ていた。

 結果としてブラッドスプラッシュ以外は引き取り手のトレーナーが現れて彼らの元で今はレースに挑んでいる。

 ちなみにブラッドスプラッシュをスカウトしたのは能力より性格がうちのチームに合いそうだったからだ。

 

 今日メモを取ったウマ娘たちのデータを登録するために俺はパソコンを起動させた。

 起動を待っているとカントリークライシスが安心したように言う。

「まあ他のウマ娘のライバルが増えないようで、あたしは一安心だよ」

「全くよ。トレーナーさんは女ったらしだから」

「でも、みんな好きになってくれるのはわたしとしては嬉しいかな」

 三者三様に言いたいことを言う。……。ブラッドスプラッシュだけ好意マックスだから返って俺が照れるが。

 ジェネラルブレインが立ち上がると何も言わずに俺のコーヒーカップを取ってコーヒーを淹れだす。こういう気が利くところが男性ファンを増やすんだろう。

「ジェネス、抜け駆けはずるいよ!いつもいつもあんたばっかり!」

 コーヒーを自然に淹れだしたジェネラルブレインに文句を言うカントリークライシス。こういう自然に出来てしまうジェネラルブレインに対抗心を出してしまうのだ。カントリークライシスは。

「わたしより先にコーヒー入れればいいだけじゃない」

 で、ジェネラルブレインはカントリークライシスの突っかかりについ反発してしまう。

「あたしは気が利かないからって言いたいわけ?」

 コーヒー、一つで火花を散らす二人。

 ポイント稼ぎにならないから、こんな不毛な言い争いはやめろと言っているのだがなかなかに収まらない。

「俺をコーヒー、一つで落とすつもりかお前ら二人は」

 喧嘩になりそうだから、敢えてため息交じりでいった。

 いや、本当にコーヒー、一つで俺をどうこうするつもりが無いのは分かっているんたが。

「いや、別にトレーナーを落とそうって魂胆はなくて、あたしだってトレーナーにコーヒー入れてあげたいって」

「わたしはお世話になっているから、これくらいしかお礼できないなって思って。特にレース以外だと」

 言い訳のような本音を言う二人。

 その気持は嬉しいんだが。

「え? え? それじゃ、わたしはトレーナーさんに何も恩返しが出来てない!?」

 天然なブラッドスプラッシュは一人で落ち込んでしまう。

「こうやってブラスを落ち込ませることにもなるから、こんなことで言い合いはしないでくれ」

 俺がそういうと、はーいと返事が二人から返ってきた。素直なのは良いがすぐに忘れて争うから頭痛が絶えない。

 そうこうしているうちにパソコンは起動を終えていた。

 ジェネラルブレインが俺の前にコーヒーを置いてくれる。

 甘い香りのコーヒーだ。俺がリラックス出来るようにと香りの良い豆を使ってくれてるらしい。

「トレーナーさん、何人くらいメモしてきたのかしら?」

「今回は五人かな。今年のウマ娘たちはなかなかに優秀そうだったからな」

 答えながらウマ娘データベースにアクセス。

 メモしたウマ娘たちの名前を入れて簡単なプロフィールを確認。担当トレーナーが付いていないことも確認する。

「トレーナー。今年もたぶんメモした子達以上の子を面倒見ることにならない?」

 カントリークライシスがいつものことのように呆れながらいう。

 彼女の言うことも最もだなと思いながらデータベースで参考資料に登録されてる各距離のタイムと一ハロン毎のラップを確認しながら、一人ずつデータをダウンロードしていく。

「その可能性なら十分あり得るが、来たら来ただ。俺がメモした五人は最悪一人でもトレーニングして次回の選抜レースで誰かにスカウトされてもいいようにと考えてる」

 俺が声掛けたからと言って素直に従うとは限らない。中には頑固に気になっているトレーナーの師事やチーム加入を望むものがいる。成績に関係なくだ。だがトレーニングメニューと直すべき指摘箇所を添えれば自分でも次に繋げることは可能だ。もちろん誰も担当が付かないようなら遠慮なく来るようにと添えるのだが。

「トレーナーさん、優しいもんね。わたしもトレーナーさんに貰ったトレーニングメニューと直すところの指摘のおかけでちょっと直せばいいんだって自信になったの覚えてるもん」

 ブラッドスプラッシュが胸に手を当てながらいう。

「そういうことだ。さて、データの登録作業するからちょっと集中するぞ」

 全員分のデータのダウンロードが終わり、データを自作ツールに取り込む。

 今日ノートにメモした内容を追記するわけだが、入れて貰ったコーヒーを飲みながら作業をする。

 甘い香りをさせながら苦味もある。おかげで作業も捗るな。

 このツールはローカルに落とした各ウマ娘のデータを取り込み、データを編集。学園がトレーナー毎に用意してくれてる専用サーバーへデータ登録出来るものだ。

 ツールを使わないと実はもう少し面倒くさい。

 登録が終われば、あとは支給品のデバイスで、いつでも登録したウマ娘毎のデータ確認と蓄積が行える。

 ちなみに俺の作業してる間、邪魔にならないように三人は談笑の続きをしていた。

 ……。

 …………。

 ………………。

 これで最後のデータ編集と登録は終わりか。

「とりあえずデータの新規登録は終わりだな」

 登録を終えるとコーヒーも持ちながら三人がいるテーブルへと向かう。

「さて、待たせたな。じゃあ三人の次のレースについて話し合おうか」

 そういうと俺は三人が次に出走するレースについて話し合いを始める。

 彼女らがトレーナー室にいたのはそれも理由にあったからだった。




※連対が二着までなのをうっかり三着までと勘違いしてカントリークライシスを連対率100パーセントとしてたので80パーセントに修正しました。
※7/25 ジャパンカップダートがチャンピオンシップに名称変更されていたのを気が付かず両方存在してたので修正。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。