◯◯◯◯があって今にも死にそうなんだがどうすればいい?   作:電脳図書館

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第二十話となります。偶々ですが、切りのいい数字で過去編入れて良かったです、基本過去編の二話はシリアス路線で行きますが前編はタイトル見ても分かるように比較的軽めなのと長くなってもアレなので基本的に過去編はダイジェスト的な感じで進みます。


ボスに意気揚々と挑んだら呪殺貫通即死をくらって死んで急に過去編が始まったんだがどうすればいい?

これは前世の狩谷が晩年辿った人生の一部にして、早すぎた終着点。そして自身が犯した罪の記録。とはいえ彼にとっては心に深く刻まれ忘れていない記憶を悪戯に呼び起こされた無意味な走馬灯。もう終わってしまったお話だ

 

「全く、それを第三者視点から見せられるなんて嫌がらせというか悪趣味というか」

 

走馬灯を見せて来る神様でもいるんなら後でボコすと密かに思っているものの、まるで逃げるのは許されないとばかりに走馬灯から顔を背けようとする素振りを見せることは無かった。

 

 

 

「兄さん聞いているのか?」

 

「ん、ああ悪い考え事してたわ」

 

少し小洒落たカフェでマイペースに緑茶を飲んでいると弟こと誠人から声が掛かる。そうだった相談があるとここに呼び出されたんだったな

 

「しっかりしてくれよ…」

 

「悪い悪い霧衣が海外の行った穴埋めと人員の補填やら引き継ぎやらがようやっと終わったばかりだから疲れが出ていたみたいだ」

 

「お疲れの所すみません」

 

呆れている弟に代わり頭を下げて来たのはつい最近弟の婚約者として紹介され、年内に結婚する予定の優里さんだ。弟よりも若くて美人な女性でしかも弟の努めている会社の役員の娘さんらしく紹介されたときはよくこんな美人さんと婚約出来たなと驚いたものだ。

 

「気にしないでくれ、それで要件は?」

 

「実は私、ストーカーされているみたいなんです」

 

彼女曰く少し前から社内どころか帰り道にすらずっと見ているような同じ視線が付き纏われている感覚がするらしい。最近では写真を撮られているようなシャッター音も聞こえるらしい

 

「また重いのが…彼女のご両親と警察には?」

 

「勿論伝えてあるし、通報もしたけど警察の方は巡回強化はしてくれるそうだが実害がないと動けないらしい」

 

「撮られた写真の現物もないしな・・・まぁ取り敢えず一人にはして置けないよな」

 

「ああ、だから俺のマンションの部屋に今は退避してるんだ」

 

聞いていただけでも段々とエスカレートしているのが伺える。恐らく自宅も把握されているだろうし、別の場所に移れるのなら移った方がいいだろう。

 

「妥当な所だな・・・会社じゃなくて俺に相談して来たということは」

 

「・・・恐らく社内の人間の犯行だと思う」

 

「やっぱりそうか」

 

社内からストーキングしている以上そうなるよな、優里さんの表情も沈んでいる。身内にストーカーされているのはより怖いし、心苦しいことだろう

 

「ストーキングされている時間帯は分かるか?」

 

「それは勿論」

 

「ならお前が会社内でそれとなく『昨日その時間に何をしていたか』を聞いてこい。短期間でやろうとすると怪しまれるから一度話したら日数を置けよ?日常会話の中に紛れ込ませろ」

 

「・・・分かった」

 

少々難しい注文だが弟は受けてくれた。社内の人間の犯行なら結婚の話も知っているはず。エスカレートがピークに到達するのは結婚式直前だ。せめてそこまでに容疑者を絞りたい所だが・・・

 

その話し合いから2週間、ストーカーの件は会社では上層部しか知らない為情報を得るのに苦労した様だが集めた情報を照らし合わせて見ると・・・一人怪しい人物が上がった。

 

「大原仁志 45歳 独身。ストーキングがあった時間帯は料亭で取引先の接待をしていたか、誠人は外面を気にして八方美人に振舞うからな。グレーゾーンの接待を上司に直接聞くことはないと踏んだか」

 

まぁ八方美人として振舞っているストレスを発散する為に良く俺含めた家族にちょっとしたことでキレて当たっていたものだ。社会人になってからは流石に両親に対しては減ったが俺に対しては変わらずマウントを取って来た。因みに俺達が勤務するそれぞれの会社は大体同じ規模で俺が課長、あいつが部長という肩書きだ。日頃からやれ課長より部長の方が大変だとネチネチ言ってきているが長い付き合いの俺達だからいいが優里さんや生まれて来る子供に当たらないか心配だ。

 

「そういえばこの前そう言った注意をした時に言いよどんでいたな。せめて当たるのは家族までにして置けと言い聞かせて来たが結婚して変わって欲しいもんだ」

 

その後俺が取引先と料亭双方と顔見知りだったので連絡を取り嘘であることが判明している。まぁそもそもあそこは弟が良い接待先は無いかと聞いたときに教えた店だ。加えて取引先の幹部の一人は俺が嘗て色々と仕込んだ問題児の部下達の一人なので証言の信憑性は高いだろう。この情報は上層部と警察に伝えたが家宅捜索の前に失踪したそうだ。部屋から例の写真も出て来ているからほぼ黒だろう。そしてここは捕まるまで結婚式は延期に・・・したかったのだが

 

「何?予定を変えない?」

 

『そうだ。ちゃんと警察が式場周囲を見張っていてくれるから』

 

「だとしても捕まえるまでは延期をしておくべきだ」

 

『良いんだ!兎に角予定通りこのままで行く』

 

「・・・ならちょっとそっちの会社に行っていいか?少し気になることがあってな」

 

『何言ってんだ!もう犯人が分かったからもういいだろ!向こうに親御さんに心配させて式を延期させるわけには』

 

電話を掛けて来たと思ったらそう捲し立てる弟に違和感を持つ。性格は少々悪いがここまでバカではないはずなのだが。向こうに知られたら不味い事でもあるのか?浮気はあり得ないし、向こうが出して来た結婚の条件もそう難しいものじゃないはず。精々遺産の相続などを混乱させない様に・・・まさか

 

『まさか誠人・・・お前もう(・・)子供がいるのか?」

 

『!?』

 

息を飲む弟の声がスマホ越しに聞こえる。あいつデキコンだったのか。優里さんは社会的に見て良い所の出なのでそういうことに厳しい。今時デキコンにゴタゴタ言うなと思う奴もいるだろうが社会的地位の高い家が其処ら辺に厳しいのは世間体だけでは無くもし結婚前に何かトラブルが起きて別れた場合遺産相続などで『実は子供が出来ていた』というあからさまにゴタゴタの元になることを防ぐための意味合いも大きい。それに弟は誠実さをかわれて婿となる為間違いなく心証は悪くなってしまうだろう。

 

「もう婚姻した後だから本来なら問題はないが、婚姻したは一週間前、結婚式は一か月後・・・婚姻後に身ごもったのならまだ一か月後ならお腹周りや妊娠によって現れる症状はそこまでじゃないし、決まりは守った以上どうこう言われる筋合いはない。でも結婚式を急かすということは現在進行形で症状が出ているな?」

 

『そ、それは・・・』

 

言い淀む弟に内心舌打ちをしてしまう。今から症状が出る様なら延期をしてしまえばもはや手遅れだ。いつ捕まるかは分からない事に加えて逮捕後も式場側と連携してどれだけで急いでも式のプログラム、料理の手配、招待客の手配を再度行うことになり一、二か月はまず間違いなく掛かる。その頃には目に見えて妊娠しているのが分かる。そして病院に行けば当然プロの医者が妊娠した期間を特定してしまう。恐らく妊娠が発覚したとき行った病院は口止めをしていると思うが、別の病院に行かされたりすれば発覚することだ。

 

「こうなったら俺も一緒に謝りに行ってやるから『そ、それはダメだ!』・・・そんじゃどうするよ」

 

『だ、だってバレてしまったら折角今まで気づいた信用や会社の地位だって!』

 

「落ち着け!お前は優里さんを上に上がる道具として見ているのか?違うだろ!」

 

『っ!そ、そうだ決してそんなことはない!』

 

慌てて否定する声がスマホより響いてくる。別に弟は根っからのクズではない、ただここぞという時に優柔不断で無意識に人を自分に有用な物として捉えそれを言動に出してしまうことがあるのだ。そのことは本人も自覚していてそういう言動はしない様に気を付けている。しかしここ最近イレギュラーの多発でボロが出て来てしまっている様だ。

 

「そうだ。愛しているなら尚のことちゃんと謝った方がいい、幸い優里さんも同意の上ならまだいい訳も」

 

『・・・』

 

スマホ越しの弟が黙る・・・え?

 

「お前・・・まさか一方的に?」

 

『ち、違う!!確かに言い出したのは俺からだが最初は渋っていたけど最終的には同意してくれた!それも一回だけだ!』

 

「・・・」

 

今度はこちらが黙ってしまった。弟にレイプする度胸はないし、言った通り最終的には同意したのだろう。しかし言うまでもないが最初から互いに同意して行為を行ったのと、相手が渋っていたにも関わらず行為を迫って折れさせて行ったのとでは聞いたときの印象など雲泥の差がある。こんなの相手が一般家庭出身でも親御さんから反発され離婚届けを突き付けられるというものだ。家族で懸念していた結婚相手や子供にストレスの発散としてイライラをぶつけることよりもひどい行為をしてしまっている。

 

「こ、このバカやろう!何でお前は頭いい癖にこうなんだ!」

 

つい絞り出すように愚痴が漏れた。とはいえこれくらい言わないとこっちが頭に血が上りそうだったのだ

 

『・・・バカだと?』

 

「いや、どう考えてもバカ」

 

『ふざけんな!五年早く生まれただけで偉そうに説教しやがって!お前俺より下の課長だろうが!そもそも一回で妊娠するなんておかしいだろ!!ちゃんと避妊具も使って危険日も避けてたのに!」

 

「危険日なんぞ気休めだアホ!避妊具も絶対じゃないだろうが!保健体育で学んだこと忘れたか!」

 

弟の暴走が始まった。大人になってからは無かったことなのでいい加減治ったかと家族一同安心していたのだがどうやらただ溜め込むのが上手くなっていただけのようだ。弟は子供の頃から誰かに上から目線で対応されると激しくストレスを溜め込みイライラを他者にぶつけてしまう悪癖があった。これが兄や両親だけなら良くある話だが弟の場合は学校の先生、校長、先輩、職場の上司、社長、助言をしてくれるご老人など明らかに立場が上の人達が善意で言ってくれることでもストレスを溜め込んでしまう。昔そうなったときに言っていた『上から目線の人間は誰であろうとムカつく』を地で行っているのだ。

 

『取り敢えず結婚式は予定通り行う!向こうの両親に言って見ろ自慢の婿と問題児の部下を抱える弟よりも格下の兄のどっちの言うことを信じるか何て火を見るより明らかだぞ!』

 

さらっと嘘言います発言をして電話を切られた・・・この分だとしばらく時間を置かないと話すことも出来ないな。

 

「くそ、こうなるんだったら爆弾を調整するんじゃなくてもっと昔に無理矢理にでも解体するべきだったか?いや、しかし必要以上に踏み込めば何やらかすか分からないし・・・!」

 

弟を爆弾に例え頭を抱えながら唸る。この騒動で一時的にとはいえストーカーの件が薄れる程の衝撃を受けたがそのせいで収集した証言を見た時に思った違和感が頭の奥底に押し込まれてしまった。

 

 

 

「まぁこの時に思い出して対処しても誠人は取り合わなかっただろうな」

 

頭を抱える前世の自分を見て苦笑する。今思い出しても問題児だった部下達を指導する方がまだ楽だったなと思う。

 

「でも・・・もしここで確信を掴んでいれば、もっとマシな結果になったんだろうか?」

 

その問いに答えられる者は誰一人していないのだろうけど。




読了ありがとうございます!今回女神転生要素が皆無の回でしたね!あともう一話でいつもの雰囲気に戻りますのでご安心下さい。因みに主人公が考えていたように無理矢理爆弾を解体しようとすれば弟は自殺していました。しかも家族全員巻き込んでの心中という爆発を高確率で起こすのでマジでストレスを調整しながらの現状維持が最善手だったりします。本当折紙を可愛がる訳です。まぁでもその数十年のお陰でコミュ力が上がって仕事と今世に活かせてよかったね(棒)。
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