◯◯◯◯があって今にも死にそうなんだがどうすればいい? 作:電脳図書館
アズール曰く俺の深層心理の中らしい、静止した幻想の世界でベンチに座って待っているアズールの元に戻る。
「お帰り、何を持ってるの?」
「焼き鳥」
レジ袋の中から焼き鳥の袋を取り出して見せて見る。
「・・・さらっとコンビニで焼き鳥をかっぱらって来たのね」
「ここは俺の深層心理なんだろう?俺の世界で現実じゃないのならいいだろう」
「まぁそうね。でも自分の死体が目の前にいるのに食べられるの?」
「本物の死体じゃないし、大切な人の死体とかなら兎も角所詮俺の死体だし。食べる?」
「割り切りの良さは今世も変わらずなのね。一本貰うわ」
「ほい」
一本渡して俺の死体の身ながら一緒にモグモグと食べながら聞きたいことを聞くとしよう。
「で、今回はそもそも何がどうなってるんだ?別に忘れてた過去を思い出すイベントでもないし」
「それは私が話せていること?それともこの世界のこと?」
「両方」
「ならまずは私が何故急に喋り出したのかを話した方が良さそうね」
こちらとしてはどっちも知りたいので順番はどうでもいいのだが、わざわざそう言うということはもう一方の話にも関わることなのだろう。頷いて先を促す
「そもそもの始まりは言うまでもなく私を創った時にマスターの血肉と竜の因子を持つ悪魔の素材を使った事よ。その時点で私の本霊となる悪魔は確定したといってもいいわね」
「竜系の悪魔なのか?」
「元々は竜とは関係ない悪魔よ?ただ長い年月で人間の認識によって姿が歪められて姿は竜になってしまったけど種族は邪神よ」
「そっちか」
「ええ、竜と並んでマスターと相性の良い種族ね。最初は造魔を通して干渉しようとしたのだけど造魔にはカグツチの力、マスターの身体と魂はあの天使の加護で守られてるお陰で干渉出来なくなっていたから手間取ったわ」
本霊からの干渉は確かカグツチの力を用いた術式のファイアウォールで防いでいたはず。俺の本人のへの干渉は折紙の加護が防いでくれていたのか。
「あれ?確か素材した俺の一部は個人情報とかは消去してるんじゃなかったっけ?」
「そこはそれほど関係ないわ。ただ単にマスターの個人情報を消去だけでは私との縁を切るのに足りないというだけよ。まぁ前者二つの守護のせいで元々本霊の意識が強く出す予定で送り込んだ分霊に機能不全が出てしまったのだけど」
「ふむ、喋れなかったのはそういうことか。だが今は思いっきり干渉しているだろう?」
「そこが大変だったのよね。機能不全のお陰で先ほどまで自身の本霊が何なのか分からなかったわ」
困った様な顔を浮かべるアズールの話で今までと雰囲気などが違っていたことに納得が行く。記憶喪失的なことだったのだろう。
「でも何で今干渉出来てるんだ?」
「いくつか理由があるわね。一つ目はレベルが上がって私自身が強くなったこと、二つ目は長い間契約して共に過ごしたことで元々高かった私とマスターの霊的親和性がさらに高まったこと、三つ目は造魔としての私が試作作品だったことね」
「んー一つ二つ目までは分かるが三つ目の理由はどういうことだ?確かに試作品でもカグツチのファイアウォールは正常に起動しているはずだが」
「そうね、確かに完璧に作動していたわ・・・もっとも正式名称にまで試作と名付けたのは失敗だったわね。試作とは不完全という意味、例え完璧なシステムだったとしても何らかの改善点、不備が生まれてしまうものよ」
「うっげー、そこ突いて来たの?こっわ!?」
マジかー、ロボチキニキとか○○試作機とかっていう名前の響き好きそうなのに可哀そうだな。というか他にも作ってんじゃないか?
「まぁ他にも要因はある訳だし、それを満たした私も本霊との接続が正常に戻るのに時間が掛かって今日漸くって感じだったから流石にそうそうないと思うけど報告して置いた方がいいかもね。」
「作戦終わったら報告するか・・・造魔に干渉出来た理由はそれとして俺自身に干渉出来たのは何でだ?いくら本来の力は無いとはいえ、折紙の加護にそういう隙は無さそうだが」
「そっちはもっと簡単。彼女の加護が防ぐのはあくまでマスターに悪意があったり害そうとする力が主よ。エジプト神話で
俺を指刺して、俺の主観が大きいな要因だと語る。なるほど、俺が悪意を司るアズールを愛していることが加護の効力を弱らせていたのか。主観の違いを無くそうとしていた策のデメリットってことか
「とはいえそれらを用いてマスターに干渉しようとしても、彼女は常に傍にいることですぐさま妨害を行える。戦闘中でも例外じゃないし、それじゃ意味がないわ・・・だから彼女が唯一動揺し、一つのことに集中する機会を待ったのよ」
「・・・俺が死ぬことか。今回が今世では初めてだったしな」
「そう、彼女普段の真顔が崩れて慌てて【サマリカーム】を唱えてたわよ?慌てていたと言っても心の動揺というだけでスキル行使自体にミスは無かったからそこは流石といった所ね」
折紙が動揺か。リカーム系があったとしても初めて、しかも目の前で兄妹が殺されれば普通はそうなるが元天使である義妹が動揺するとはな。精神性も人間に近づいているということなのか
「ということは俺はもう蘇生しているのか?」
「その途中段階ね。ほら内と外では経過する時間も異なるとか良くある話でしょう?」
「確かに割と良く使われている設定だよな。察するに俺のことを知りたくてわざわざ深層心理にまで覗きに来た感じか?」
「ご明察、思っていたよりも面白いことになっていて有意義な時間だったわ」
流石は邪神というべき悪趣味な一面を垣間見て苦笑してしまう。そのまま焼き鳥を食べ終わると近くのゴミ箱に櫛や袋を捨てるとクルリと彼女が振り返る
「でも一つだけ分からない、いや隠されていることがあったわ・・・5年前。そう彼女の両親が死んだ日のことよ」
「何?」
5年前、弱体化していたとはいえ折紙が天使の力を使わなかったことは気になっていたが、やはり何かあるのか?
「マスターはほとんど何も覚えていないのでしょう?」
「ああ、あの時は俺の家にも被害は飛び火して一人留守番していた俺は負傷・・・病院で目覚めたときには既に終わっていて・・・」
「ええ、そこは私も見たから知っているわ。でもそれってちょっとおかしくないかしら?」
「え?」
「だってそれじゃ"鳶一家を襲って来た悪魔"を撃退出来る存在がいないでしょう?」
「・・・」
それはそうだ。俺と折紙以外で悪魔を撃退できる可能性がある者なんてあの場にはいなかった・・・だが折紙は天使の力を使わなかった・・・俺も怪我で意識がない為悪魔を撃退することは出来ないはず。というより俺は何でその時襲撃して来た悪魔が"撃退された"と考えていたんだ?
「撃退"した"はず・・・した?したって何だ?それじゃまるで」
頭を抑える。記憶にない赤色の光景が瞳に映る。まるで前世の様に、前世よりも凄惨に・・・俺は何かを忘れているのだろうか?
「そうよ、その違和感を忘れないで。あの天使は確かにマスターを思ってはいるけど・・・同時にそれはマスターを縛り付ける鎖。それを破るか、破らないかはマスター次第ね」
破るか、破らないか。信じるか信じないかと言うことか・・・なら答えは決まっている。
「隠し事があることは知っていたさ。隠し事がある奴は一見他人を信用していないと思われることが多いし本人もそう思っている。だけど心の底ではそんな自分でも信じて欲しいと、虫がいいと分かっていてもだからこそ理解して欲しいと願っているもんだ」
隠し事をする時のあの悲しそうな表情を思い出す。前世からそうだが千差万別な問題児をよく抱える俺だったが昔からその手のことを隠すのは下手な奴らばっかだった。
「折紙が信じて欲しいと願うなら俺は信じ、手を伸ばそう。それが兄貴として、愛した者としての義務であり責務だ。それだけは揺るがない」
妹を含め信じて欲しいと願うなら俺は手を伸ばそう。裏切られたら俺が責任を取れば良い、何より愛すると決めて置いて途中で放り出すことなどあってはならないのだから
「縛られていたとしても愛するものを信じる・・・混沌よりの私としては不満はあるけどその道に後悔がないことを祈るわ」
ダメだこりゃといわんばかりに苦笑する彼女に少し申し訳無さを抱いてしまうな
「だが忠告は感謝するぜ、案外気遣い出来るんだな。作品ごとにえらく扱いが違うけども」
「それは言わないで!初期までは中々良い見せ場があったのに段々出番が減らされてⅤなんか台詞無くてほぼ番犬扱いじゃないアレ」
「はは、俺もやってて『え、割と序盤から姿見えてたのにこんだけ?』とか思ったもんだ」
「本当よ。その様子じゃ私の本霊がなんなのかは答えなくてもいいかしらね」
「あーでも様式美だしやって置こうぜ?そろそろ時間みたいだしな」
自分の身体が発光を始める。普通なら不気味だが折紙の気配を感じるので【サマリカーム】が効いてきたのだろう。それを察してか彼女も頷いて居住まいを正す
「私は【造魔 アズルニール】、本霊は【邪神 セト】。改めてコンゴトモヨロシク」
「ああ、よろしくな」
「よし、続きだ。折紙【サマリカーム】ありがとう。作戦だが」
『生き返って早々まだやる気だこの人!?』
「え?」
「え?じゃないわよ!普通蘇生して起き上がった思ったら急に次の作戦を話し出すとか怖いわよ!?」
「状況を説明する間も無かったな。見ていたのか?」
「いやいや、常識的に考えろよ死んでたら今の状況なんて分からんだろ」
「まぁそれはそう「ちょっと前世の自分の死体を見ながら焼き鳥喰ってただけだ」・・・常識とは???」
周りが宇宙猫の様な表情をしているが幹部の皆様方が戦闘をしている中ショッカーや戦隊物の上級戦闘員程度(自称)の存在である我々がサボる訳も行くまい
「俺とスパルトイ、イリナ、ゼノヴィアは前衛でダメージを与えつつ幹部の支援、白織は動き回って敵にデバフは掛けてやれ。他は折紙以外火力支援だ!」
「・・・私は補助と回復?」
「うん、お前が火力支援に回ると支援とかいって核爆弾ミサイル撃つようなもんだからな。敵も吹っ飛ぶがこっちの前衛も吹っ飛ぶ」
「むー」
折紙は不満そうだがマジでやめてくれ。過去にそれで俺とスパルトイは死を覚悟したことがあるんだから
「作戦は決まったか!!ならこっちに早く加勢を頼む!」
前方で戦っている神父ニキから催促が来た。パンパンと手を叩いて気持ちを切り替える
「了解だ神父ニキ!俺の【メキド】を目くらましに【イタコ祖霊】に再度アタックだ!気合入れ直せ!」
「調子を崩した奴が良く言うわ」
「はい、そこ本当のこと言わない!という訳でいくぞ【メギド】!」
再びアタックを掛ける為にパッシブスキルを山盛りで派手にぶっ飛ば「カリヤ」ん、どうしたんだ?
「それ【メギド】じゃない、【メギドラ】」
『・・・え?』
「何かあったかってまてまて!?!?ぐはぁ!?」
『あ』
「し、神父ニキー--!?!?」
熟練度が上がって【メギド】だと思って発動した【メギドラ】に神父ニキが巻き込まれて吹っ飛ばされた
『・・・』
「・・・折紙、神父ニキの回復を頼む。前衛組は突撃!!」
『ご、誤魔化した!!無理矢理話を切って誤魔化したよこの人!?』
「うぉおおお神父ニキの仇は討ってやら!!!」
「いや、まだ死んでないし、お前のせいであろう!!」
言動や行動はぐだぐだだが陣形は如何にか保ったまま突撃を行う我らが前衛組、後で神父ニキには土下座しようと思いつつ駆け出していく。さて【イタコ祖霊】には申し訳ないが空気を換える為にちょっとボコられて貰おう。アズールの説明を巫女さん、ロボキチニキにするだけでも頭が痛いのだ。取り敢えずぶん殴る奴をぶん殴ってから色々考えよう・・・現実逃避では断じてない
「こっちに帰って来てそうそうトラブルとかマスターらしいわね」
「はは、問題児がどうとか良く言ってますが本人も相当ですよね」
「あれだな、類は友を呼ぶとはこのことだな」
「自業自得・・・ん?」
「どうしたのかしら?」
『・・・シャ、シャベッターーーー!?!?』
よって後衛組の叫び声も一旦無視である。
その後どうしようもない貫通即死で何度か死にながらも全員の頑張りもありどうにか【イタコ祖霊】を沈めることに成功した!・・・まぁその後神父ニキへの謝罪と折紙にアズールの件での尋問(セトだと言ったら凄い顔された)、巫女さんへの説明(セトだと言ったら凄い顔された)の方がよっぽどラスボスだったと感じるとは本当この世界命が軽いなと再認識した作戦だった。
読了ありがとうございます!次でこの章も終わりです。次の章からはようやっと本家様と同じ時間軸でのお話に入れると思います。
アズールの扱い
アズールについては狩谷的には今まで一緒に戦って来たことと忠告もしてくれたということで折紙の次くらいには信頼しています。ただもし人類の敵になるなら容赦なく殺すと決めています。組織的にもトップの巫女さんにそのことをそのまま伝えましたが、当然懐疑的な人もいました。しかし試しに加護の幻術系の防御を切った上で巫女さんの幻術でアズールが人類を裏切ったと思わせたらどういう行動を取るのかと折紙、アズールの協力の元テストをしたらマジで速攻で首を取ったので観察していた懐疑的な人たちもドン引きさせて黙らせることに成功したりしてます。アズールはその後蘇生されましたが「本当に敵となった瞬間首を取られて全く反応出来なかった」とアズール所か本霊のセトや巫女さんもビビらせたとのこと。