◯◯◯◯があって今にも死にそうなんだがどうすればいい? 作:電脳図書館
私の生まれは・・・まぁお世辞にも良かったとは言えないだろう。私のお母さんは厳密にはこの世に居ない。アルケミスト社が入手した太古の遺産『ロストマトリクス』。かつて存在したダークエルフの王族のDNAと力が込められた宝玉なのだそうだが正直なんでそんなものを昔のエルフが残したのかはよくわかっていない。悪魔として呼べる言わば現代のエルフにも話を聞いたが『何かそんな王国が大昔に魔界にエルフの種族ごとにあったらしいですね。とはいえ全部滅びましたけど、今はその末裔がそれぞれ生きてるくらいですよ。しかも断絶した血筋も多いですし』とのことだ。
悪魔換算で大昔である、数百年単位では利かないだろう・・・え、私がそのダークエルフの王族と関係があるのかって?うーんあるような無いような?という微妙な所だ。ロストマトリクスがあった廃城の様な遺跡で採取されたエルフ・・・正確にはウッドエルフのDNAを元に足りない分を人間のDNAで補完して作られたクローンだ出来損ないだけど。いや何でダークエルフの遺跡で採取されたDNAがダークエルフじゃないねんとか、そもそも何故魔界の王国の遺跡が人間界にあるんだよとか言いたいことは沢山あるがまとめると『ロストマトリクスの元になったダークエルフの王族と何らかの関係があったウッドエルフの出来損ないのクローンハーフウッドエルフ』という私自身から見ても意味が分からない肩書だ。もっとも赤子の頃を私はそんなこと分からなかったのだけど。分かっていたのはエルフの最大の特徴の一つである魔法を使えないということだけだ。MAGやMP、魔力をエルフ故の感度の高さで感じることは出来ても肝心の魔法が使えなければほぼ意味を無くす。
其の為『エルフでありながら魔法が使えないとは』『出来損ないめ』『廃棄処分にするべきでは?』などと周りから常に言われ、その度に部屋の隅に縮こまって泣いていた。
『なぜ出来損ないで生まれて来てしまったのか?どう生きればいいのか?』その疑問が胸の中に渦巻いていた。
作成者である斑鳩に全ての事情を説明されたのは私が五歳になったときのことだった。彼女はずっと出来損ないの私を育ててくれる優しく常に堂々とした女性・・・そういう印象だった。
「ごめんなさい・・・本当にごめんなさい!貴女を自分勝手に作り出して」
斑鳩曰く彼女と伊砂は朱雀の卵子を元にしたデザイナーベイビーらしい。求められたのは研究者としての才能で幸い二人共その才能には恵まれていた。しかし斑鳩はとある絵本を呼んで外の世界に興味を持ってしまった。だが二人は研究所から外に出られず入って来る情報も限定的でその環境は彼女の好奇心を高める結果になってしまう。その欲求が限界を超えるのは意外と早かったらしい。彼女は任されていたウッドエルフのクローン研究で失敗すると分かっていながら私を作り出すことでお払い箱になることを狙ったのだとか。直ぐに脱出するつもりだった用だけど秘密裏に外の世界の情報を集めた結果フリーでは野垂れ死に、勢力に所属仕様にもメシア教という外からの情報が限定されている研究所の中でも良く噂を聞きき、デカい組織だが碌でもない勢力と認知されている勢力がアメリカの大半を握っていると知り、逃げ出すことなんて出来なかったらしい。
謝罪しながら涙を流す斑鳩に告白されたことには驚いたが別に彼女を拒絶する程では無かった。だって出来損ないだと分かっていた私を見捨てずに育ててくれた何よりその・・・。
『お、お母さんのこと大好きだから///』
顔を赤らめ抑えていた私の気持ちを斑鳩に伝えた。絵本を呼んでくれたこと、教えるのは下手だったけどそれでも頑張って勉強を見てくれたこと、一緒に食堂でオムライスを食べたこと、私を避けていた伊砂を私の部屋に連れ込んで三人で遊んでくれたこと。最初は愛情を持ってくれては無かったのかも知れない、でも今は愛情を注がれていることは幼いながらにも分かっていた。そして研究所は窮屈ではあったがそれでも楽しい思い出があると言ったら泣きながら抱きしめてくれた!これがお母さんのぬくもりなんだと実感することが出来た。
『ありがとう・・・絶対いつか、絵本のようにカナリアを外に連れ出して見せるから。この籠から青空を自由に飛べるようにして見せるから!』
『うん!その時は斑鳩と伊砂・・・お母さんとお姉ちゃんを背中に乗せて飛んであげる!』
お母さんと結んだ約束。名前の由来になった鳥の様に青空を飛ぶことがその時から私の夢になっていて、それを叶えるためなら何でもすると誓った。
だから
『身体も成長しましたね。では廃棄処分か、我々の実験に協力するか。好きな方を選ばせて差し上げます♪』
二人のお母さんの問の答えに私は生きることを選んだ。もっとこのぬくもりを感じていたいから、一緒に美味しい物を食べたり、勉強したり、遊びたいから。
実験にもただ耐えて来た。エルフの対魔法防御力、生きながらの半解剖、対物防御力、、薬による感覚器官の活性化と副作用、戦闘、過剰ストレスによる精神への負担、魔法では無く物理的な炎、電気への耐久度、麻薬投与とその経過などの実験を散々行わされた。でも斑鳩、お母さんの顔を曇らせたくないと傷一つなく回復してくれること相まって実験のことは伏せていた。でも流石に疲労が隠せなくなった頃伊砂が私の異変に気付き止めようとしてくれたが・・・残念ながらお母さんと違いこの会社が唯一の居場所だと思っている彼女は逆に実のお母さんである朱雀に逆に追い詰められ実験の手伝いをさせられてしまう。泣きながら私の実験を手伝う彼女を見ると胸が締め付けられた。そして私に配慮してくれたのか私を使って行う予定だったという人間・獣・悪魔との性交実験を止めてくれた。それだけでも私は嬉しいとお礼を言うと泣きながら抱きしめてくれた。お父さんは違うとのことだがやっぱり姉妹なだけあってかお母さんと同様に抱きしめられるととても安心出来た・・・斑鳩がお母さんなら伊砂はまるでお姉ちゃんのようで。一歩引いた所にいても何かと気にかけてくれて世話を焼いてくれた優しくて厳しいお姉ちゃんだ。私達三人の穏やかとは言えないけど、楽しい日々が出来るだけ長く続いて欲しいと願っていた。
でもそれはある日を境に唐突に砕かれた。
『おお!やもやこの異端の研究所にエルフがいようとは・・・どうも混ざりものの様ですが正しき心の持ち主であることは分かりますよ!人間では無い故聖女には出来ないでしょうがテンプルナイトには十二分でしょう!』
ある日アルケミスト社の本社がメシアの襲撃を受けた。もともと異端として目を付けられていたが、過激派の勢いが増したことによって実行された異端狩りの標的にあったようだ。その襲撃で私は天使にメシア教の施設に拉致されてしまったのだ・・・そこで見た光景は話したくない。私自身かなり非人道的なことをされて来た自覚はあったが元居た研究所の方が例えお母さん達を抜きにしてもはるかにマシだったのだから。生きながら死んでいる人ですらなくなったモノを見て最初に思い心配したのはお母さん達の安否だけだった。私自身の結末は分かり切っていて心配すらしなかったと思う。少なくとも私が見たモノより悲惨なことになることくらいは予想がついていたからだ。
頭に装置が取り付けられる。魔法の技術の一つなのかも知れないが科学的な方法で改造するのかと場違いなことを考えていた。もっともその余裕は直ぐ無くなり頭に様々な知識が流れ込んで私の認識を歪めようとしてくる。
『う・・・!』
だがこの程度なら耐えられる。伊達に日頃から実験に使われて訳じゃない、この手の認識を歪めたり、過度なストレスを与える実験も耐えて来た。お母さん達のことを思い出しながらじっと耐えれば乗り越えられない辛さじゃない!
『ふむ、祝福(天使の羽根)を与える為に正しい志を享受する装置なのですがエルフの魔法に対する耐性を込みでもここまで上手くいかないのは妙ですね・・・ああ、なるほど記憶の奥底にある親しい者との愛情。それが自身の変容を拒絶しているのですか・・・』
『幻滅・・・した?』
死ぬにしてもせめて私のまま死にたい。このまま幻滅して殺してくれれば
『素晴らしい!!!』
『正しき教えを知っても尚揺るがぬ愛情!なんと素晴らしいことか!!人間やエルフという種族の問題ではない!並みの存在では即座にその愛情を捨て去ってしまったでしょう!!勿論異端に抱く愛情は罪深い!ですがその気高さは我々の一員となり真の祝福と救済の対象となるには十分でしょう!!』
天使は歓喜に震えた様の笑みを浮かべこちらを見下ろす。天井が吹き抜けになっているので青空を背に微笑むその姿はまさしく神話の一ページに相応しい光景だが私にはそれがとても薄気味悪く映った。
『ではその記憶を消去しましょう』
『は?』
今なんて・・・?記憶の消去?
『異端にこれほどの愛情を抱けるのです。異端の記憶を消去し、正しい教えを齎しせばより正しい、崇高な愛情を我らが主に抱くことでしょう!!』
『ま、まってそれだけはやめて!』
『ご安心を、苦痛は一瞬ですから』
初めて身体が震えた今までの記憶、思い出が奪われる。それは私が人間でもエルフでもないモノになったとしても
『いやいや!せめて記憶だけは、思い出だけは奪わないでよ!!』
泣きながら懇願するが天使は笑みを崩さず手を翳す。その瞬間私の心が何かに犯される感覚を感じた。徐々に心に浸透するその感覚は奥まで到達させてはならないと本能が告げていた。
『ああああああああああーーーーーー!!!!!』
その感覚が怖くて仕方なくなって、大切なものが犯されていく苦痛に耐えられなくて。
天井に見える青空に手を伸ばす。その青空は皮肉の様に雲一つ無くそこにあって、私の夢を約束を思い出させた。
『約束・・・守れなかったな』
意識がもう戻れない闇に沈んでいく、瞼が閉じ暗闇しか感じられない。私の意識はこの闇に包まれ消えて行く・・・はずだったしそう思っていた。
『え?』
その闇を神々しい光によって切り裂かれるまでは。
『な、なんだあの光の柱は!?』
闇が晴れ天使の叫びで意識が有り得ないはずの浮上を果たす。天使の驚愕に満ちた顔が見ている方向に視線を向けると東の空に太い光の柱が天を貫く様に現れていた。その光は先ほど闇を切り裂いたものと同質のもので、美しいのにまるで何かが滅んだことを連想させた。
『こ、これは・・・まさか私の本霊である大天使様になにか、グハ!?』
天使の表情が苦悶の表情に変わる。そしてその身体が解れて消えていく
『ば、バカな!?大天使程の高位の本霊を滅ぼすなど出来る訳がない!それにまだ私は使命を果たして、ぐあああああああああああああーーーーー!!!』
等々身体を保てなくなったのか天使は私の目の前から消滅した。私はただ唖然とその姿を眺めているだけで何があったのかまるで理解が出来なかった。その直後部屋のドアが吹き飛んだことで我に返るとそこにはボロボロになってもこちらに走ってくるお母さんの姿が霞む目にもはっきりと見ることが出来た。ただ私を抱き留めてくれたお母さんの肌が一瞬やけに黒かった気がしたが心労と安心感で今度こそ私は意識を手放した。
その後アルケミスト社はアメリカから撤退し日本に拠点を移すことになる。そしてあの日に起こったことがとある組織に所属する"神殺し"であることを知り、更にその当人と出会うことになる。
まぁもっとも
『あ!?自動販売機の底に500円玉落とした!俺の腕じゃ太くて入らないんですけど!?』
『何やってるのよ狩谷』
『いやお前が連れを連れて来るまで暇だから飲み物を飲もうと思ってたら小銭が!』
『えっと・・・手伝いいる?』
『え、いいの!?ありが・・・え、エルフ!?!?』
研究所の廊下で地べたに這いつくばっていた人がそうだとは思わなかったけど。
「で、色々基礎を教わりいざ本格的な修行に入ったと思ったら文字通りぶっ飛ばされてここまで来たと」
「はい、そうです。飛びたいとは願ってましたがこういうことじゃないんだけどな・・・」
大きな川を背に私に同情の視線を向けるおじいさんに苦笑を漏らす。前言っていた「何か俺の指導ってスパルタとか言われるから優しいって言われるのって新鮮だわ!」とかは教わっていたのが基礎の段階だったからなんだなと遠い目をしながら考える。
「ネオベテルはおかしい奴らばかりじゃしな」
「知ってるんですか?」
「あやつらリカーム系や蘇生アイテムがあれば修行で死ぬのは普通とか思っとるからな。頻繁に構成員がこっちに来ては蘇生待ちでくつろいどるわ」
「えぇ・・・」
溜息を吐くおじいさんを見て今度はこちらが同情してしまう。
「ということは先生も?」
「うむ、覚醒して間もなくの頃は良く待ち時間に将棋とか一緒に指したわ。まぁ神殺しとなってからは魂はあやつの義妹に掌握されているから死んでも来ておらんがな」
「は、はぁ。えっとそれで私は蘇生出来るんですよね?」
「出来るぞ。お主の場合は自らの異能によってじゃがな。さて、空から降って来てワシにぶつかって来た理由は聞けたからのそろそろ始めるとしよう」
「お願いします」
おじいさんが立ち上がると私にいつの間にか取り憑いていた【魔獣 ケットシー Lv11】が現れる。私は今までこの異能のことは知らなかったけどずっと見守ってくれていのだろう。
「ありがとう。もう大丈夫だから」
ケットシーの頭を撫でると嬉しそうな顔をして頷いておじいさんの元へ向かう。
「いままでご苦労じゃったな。では『戦いに倒れたる者よ 案ずるな また新たな光が 汝を護らんがため やって来る……』」
おじいさんが改まった口調でそう言うと川の中から新しい悪魔が現れる。
「『さあ 陸へ戻られい 再び立ち上がった時 汝は光の力もて 生まれ変わるのだ……』」
悪魔、いや守護霊が私に取り憑く。
「これからよろしくね・・・お世話になりました」
「よいよい、これから長い付き合いになりそうじゃしの。後注意事項は忘れない様に」
「はい!それじゃ行ってきますカロンおじいさん!」
「うむ!狩谷によろしくじゃ、達者での!」
おじいさんに見送られ三途の川から現世に帰還する。ちょっとふらつくけどまだ身体は動く
「お帰り。カロンに会えたか?」
「うん!お陰で私の異能のことが良く分かった。ってせめて一言言ってよ先生!びっくりしたよ!」
「いやーこの方法が簡単だったからつい。一応カロンの元に行けるように念じて殴ったから大丈夫だとは思っていたけど」
「え、それでいけるの?」
「"神殺し"の認識の力の応用でいけるいける」
そこまで便利使い出来る能力なのかな神殺しって?でも先生本人が言ってるしな。
「まぁ取り敢えず身体の回復は済んでるみたいだし、仕切り直しといこう。見せて貰うぞ"ガーディアンシステム"の力を見せて貰おうか」
「言われなくとも!力を貸してケライノー!」
【妖鳥 ケライノー Lv22】
「鳥か、らしいじゃないか」
先生の笑みにこちらも笑みで返す。まだ模擬戦は始まったばかりだ!一発はまともに当ててやる!
読了ありがとうございました!カナリアは青空を飛ぶ(物理的衝撃)。うん、やっぱ主人公を半分ギャグキャラにしてよかったよ。シリアスだけじゃ自分のメンタルとか文章とか持たない!
ガーディアンシステム
概ね原作と同じ仕様だが、原作主人公の様にアビリティ補正のみの場合とパートナーの様に魔法などを継承できる場合もありますが原作と違う部分もありますが主人公仕様の場合はアビリティ補正の計算は途中までは変わりませんが算出される補正値をそのまま加えるのではなくそこから元々のステータスにプラスになるなら×2、マイナスになるなら÷2になる仕様です。そうじゃないとパートナーの仕様の下位互換になってしまいますしね。
「新しいガーディアンの数値-元々の数値÷2」だったのがプラスの場合「新しいガーディアンの数値-元々の数値÷2×2」マイナスの場合「新しいガーディアンの数値-元々の数値÷2÷2」という感じ。
この世界では主人公の仕様をアビリティ補正特化型、パートナーの仕様を魔法継承型と分けられます。