◯◯◯◯があって今にも死にそうなんだがどうすればいい? 作:電脳図書館
無事にメシア教勢力を一掃した俺達。俺達の班が取り敢えず拠点を回って天使の召喚陣を見つけると折紙が手早く停止させる。その捜索中に幾つか気になる物を見つけたが、どんなセキュリティがあるかは分からない、折紙もメシア教の魔術は兎も角科学技術まではそこまで詳しくないので他の班の到着を待って調べ物の専門家である二亜の力を頼ることになった。
「頼むぞ二亜」
「了解!ラジエルお願いね」
【ラジエルの書】のスキルを使用してメシア教の物品を解析していく。毎度思うが便利過ぎないかこのスキル、一神教関係以外では大分制限が強いみたいだが。
「うーん見た感じ魔法の力の増幅装置みたいだね。この五つの缶に接続させているみたい・・・あ、やっぱり魔術だけじゃなくて科学的なセキュリティもあるみたい」
「やっぱりか解除方法は分かるか?」
「問題なしだよ!・・・ただ機密保持の為なんだろうけど科学的なセキュリティは正しい順序で開閉しないと"内部を高温で焼く"ってことみたいなんだ。普通に爆発とかデータ消去とかじゃダメだったのかな?」
二亜が首を傾げているが確かにそれの方が手っ取り早く隠蔽出来る気がする。とすると爆発やデータ消去では隠滅出来ないものになる訳だが・・・まさか!?
「二亜その缶の内部をもっと調べてくれ!」
「うん勿論そうするつもりだけど・・・え?これって・・・人の脳?」
「・・・やっぱり生体パーツが組み込まれていたか」
生体パーツなら爆発やデータ消去では処分方法が不十分だから。俺達転生者が自分の身体の素材はカグツチの炎で個人情報を消去しているようにそのパーツの一欠けらでも残ってしまえば色々探られてしまうだろう。だが流石に炭化させられてしまえば探るのは難しくなる。
「正確には大脳みたいだけどやっぱりって?」
「恐らくこいつらは【トラポート】などの転移スキル持ちの霊能者だろう・・・この缶は機械的にその能力を使わせる感じか?それは増強装置で力を高めて転移陣を展開していたというところか」
脳の一部しか使用していないのを見るに一部の能力だけ使用できる感じなのだろうが、それでも機械的に魔法やスキルを行使出来る恩恵は大きい・・・無駄に技術力があるところが過激派は厄介だ。
「そんな、まるで人を道具みたいに・・・!」
「道具、なんだろうな。過激派共にとっては」
二亜が顔を歪ませる。過激派の外道さを良く知る彼女でもメシア教に身を置き続けている彼女にとって辛いものがあるのだろう。しばらく動く様子が無かった二亜だが再び【ラジエルの書】を開いていく。
「どうした?」
「せめて犠牲になった人達を供養したくて、個人情報だけどせめて家族がいたら返してあげたいんだ」
「・・・そうか」
そうして調べて行くが結果は芳しくない。
「予想はしていたけどあまり詳しくは調べられなかったね。性別と歳、名前くらいなら分かったけど」
「まぁターミネーターと違ってこういう加工をするなら信者は使わないだろうな。敵を捕らえて使う方がよっぽど効率的だし、こう言ってはあれだが勿体なさすぎる」
一神教以外では精度が下がるスキルなので一神教に属していない人物を調べるとその精度も低下する。忠実な信徒を脳缶に加工するのは無駄も良い所なのである程度予想していた結果ではあった。
「狩谷殿、二亜殿調査は終わったでしょうか?折紙殿からお話があるようです」
「オリリンが?何だろう」
「分かった戻るぞ」
命の言葉を受けて俺達が皆の元に戻ると折紙がターミネーターとタイラントを調べて難しそうな顔をしている。・・・あっちも厄ネタがあるのか。
「戻ったぞ折紙、こっちも碌でもない報告があるが・・・そっちも碌でもない報告がありそうだな」
「うん、まずは情報交換」
折紙の要望通り全員で一度集まって報告をし合うことになった。こちらの報告に皆一様に顔を顰めていたが、ヤタガラスの皆曰くこう言った脳缶は数年前から確認されていたものらしく後処理の仕方も心得ているというのでお任せしたのだが・・・。
「ターミネーターがメシア教過激派の信徒じゃない?タイラントもか?」
「残留MAGの匂いから少なくともメシア教を始めとした一神教に属していた人達では無いみたい・・・タイラントは良く分からない。複数の匂いが混じっている」
「複数?」
「ちょっと待って調べて見る・・・何これ」
二亜が信じられないような目で【ラジエルの書】を見ている。俺と折紙も覗いて見るがそのページに書かれていたのは性別と歳、名前が複数人混線し螺旋に渦を巻いている。
「折紙これってもしかして」
「うん、このタイラントが作られる過程で複数人の人間が掛け合わされている」
「・・・そうだよねやっぱり」
「だが利点はなんだ?ここまでのコストを掛けてターミネーターの強化版を出したところで・・・それになぜ頑なにメシア教どころか一神教以外の、異教徒が素材にされているんだ?これじゃメシア教過激派の純粋な勢力は天使共だけだぞ?」
「天使だけ・・・ニア、ここにいた天使も調べて。ソロネも含めて」
「う、うん」
折紙が何か思いついたようで先程の俺と同様二亜に指示を出す。慌てて調べ始めたが先程違い天使達の情報は深く探れたようだ。
「あれ?この天使達ソロネを解放してテンカイを確保するってことを考えていたみたいだけど事前に作戦とか考えていないみたい」
「え、どういうこと?全くのノープランで戦ってたってことか?」
「ノープランと言うか復活したソロネに作戦とかは任せてたみたい」
「うーん?それってソロネの奴復活してそうそう「この異界を攻略してテンカイを確保する任務で参りました!あ、作戦や指揮とかはソロネ様が頑張って下さい!」って言われたってこと?」
「そう、見たい」
「えぇ・・・」
つまり大仕事終えて長期休暇を取ってた人が休暇が終わり、久々に出社したら後輩共に「あ、先輩!また大仕事が入ったんでプラン作成や調整その他もろもろよろしくお願いします!俺達は何も考えないですけど責任は先輩持ちで!」とか言われたような感じだよな・・・うっわ、ちょっとソロネに同情するわ。
「ニア、カリヤちょっとこっちに」
「「ん?」」
折紙が周囲の仲間から話す様に物陰に俺達を連れ込む。
「ニアそのラジエルの力今までどれくらい使った?」
「どれくらい?私の理想のシキガミを手に入れたいから大体の任務で使って来たよ?専用の依頼も回されて結構ホクホクだったんだけど」
「・・・ごめん私の想定が甘かった」
「折紙?」
唐突な謝罪に俺と二亜が困惑する。しかしその困惑を吹き飛ばす一言が呟かれた。
「これは多分、ニアの【ラジエルの書】の対策だと思う」
「え・・・私の対策?」
「な!?二亜の能力がバレたのか?まさかあのバルパーの奴が」
「違う。ニアの存在がバレた訳では無いと思う・・・あの計画を率いていたバルパー・ガリレイ一味は過激派からも離脱していた。それに自分の研究に固執する彼がニアのことを過激派に話す可能性は低い。でも何度もピンポイントで情報を抜かれ続ければそれを可能とする何かがあると考えても不思議じゃない」
「それで対策か。だが情報を抜く方法を特定しないと対策なんて出来ないだろう?疑うならスパイとかじゃないか?」
「ニアのスキルはいつでもどこにいても調べられるものじゃない。調べられる範囲が決まっている以上調べる対象の現場かその近くいなければならない。それはメシア教過激派の上層部を介さない現場の判断すら読んで裏を掛けたり、知れたりすることも出来るけど」
「逆に・・・知り過ぎた?上層部も知らないような現場の判断にも即座に対応したり、知られてしまっていることに気付いた奴がいたのか!?」
二亜の【ラジエルの書】は一神教関係の情報収集能力としては一級品だ。実際作戦中に奇襲を掛けようとした過激派部隊を見破って返り討ちにしたり、現場の判断や作戦を調べ上げ逆算で上層部の目的を看破したこともあると前に自慢する様に語っていたことを思い出した。
「そしてメシア教過激派の工作の中には関係の一般人を裏で操ったり、煽ったりしてテロ行為をさせるケースもある。でもそれらは【ラジエルの書】の仕様上深くは探れない、あるいはその手の依頼は受けてすらいないのかも知れない。そこから生じる対応の差も見破られたのだとしたら」
「情報を調べたり、探る、知る手段自体はオカルト的な手段でも占術、託宣、幻視、未來視etc。どれも100%確実とはいかずとも有効な手段であることも間違いない・・・そして【ラジエルの書】がそうな様にこの手の能力は対象が絞られたり、限定して行使すれば精度は高くなる!」
「恐らくその手の能力で敵対者がメシア教或いは一神教に特化したものを開発した可能性に行きついた可能性は高い。でもカリヤの言う通り具体的にどれかを特定しないと有効な妨害は難しい。ならいっそのこと」
「最初から情報を抜かれるのを前提で・・・メシア教以外の"何も知らない"駒を使えばいい」
「それじゃ、最初私が過激派の情報を探っても曖昧な情報しか手に入らなかったのもそういう?」
先程から気分を悪そうにしていた二亜の顔が今ではこおりついてしまっている。そして折紙が頷き話を進める。
「流石にメシア教過激派に繋がるものを全て使用しない、というのは現実的じゃない。ターミネーターの技術もそうだし今の技術じゃタイラントという例外を除いた彼らでは臨機応変な判断が下せない以上天使もいるから。それに今回はソロネに作戦を立案させていた以上バレる可能性もあったことも考えるとまだ試作運用段階なのだと思う。多分あの脳缶や増強装置を運んだのはタイラントだろうし」
「なるほど、何でこの大軍見逃してんだ住職とか思っていたが・・・Lv60台の隠密での侵入は気づけねぇか。結界も対悪魔の奴はあったけどタイラントは人間判定だったからな」
「今回の目的はタイラントの作戦遂行の精度、戦闘力、知性のテストと脳缶を使った転送陣、天使達が大雑把な命令しか下されていない状況でどう動くかのテストとか複数の試験を兼ねていたのかも知れない。もしかすると将来的にタイラント個人で作戦の立案、指揮を行えるようにすることも計画しているのかも」
「・・・」
俺と折紙が話している中殆ど喋らないでいた二亜は顔を青くしている。お気楽そうに見えるが責任感もちゃんと持っている彼女のことだ。今回改造された被害者のことを考えて自分のせいだと思っているのだろう・・・巫女さんへの報告は後回しだな。
読了ありがとうございます!二亜に重めの精神的負担がのしかかりましたがいつぞやの様に次回狩谷がメンタルケアに挑みます。自分で書いててこれケア出来るのか?と思ってしまいますが・・・まぁ何とかします。因みに狩谷達も魂を回収してクローン体に定着させて再利用してるとかは分かっていないというか、想像すらしてません。回収する術式は発動後自動消去しているのもありますがあまりにも常識から外れているからです。博士が言っていたむちゃぶりというのは方法は分からないけど探られているからなんとかしろってって内容でした・・・その答えが今回の話です。まぁこんな外道な力技の解決法を思い付く辺り博士もどっこいどっこいですが。