◯◯◯◯があって今にも死にそうなんだがどうすればいい? 作:電脳図書館
テンカイを含めた防衛班がこちらに合流する為に向かっているというので少しの間この場で待機することになった。折紙に現場を任せると二亜を呼び止め少し話があると折紙達から少し離れた場所に連れ出した。
「急にお姉さんを連れ出してどうしたのかな少年?逢引かな!」
「違うわバカ、第一前世だと俺達大体同年代だろ流行ってた漫画的に考えて!・・・無理はするな」
「・・・なはは、やっぱり少年。いや狩谷には分かっちゃうか」
「慎次さんや折紙は気づいてたと思うぜ?まぁ俺も前世は商社の課長だから周りの人間の心の動きに敏感って所はある。上司の意図を察したり部下の指示やフォローとかで必要だしな」
「そっか」
納得したような顔をしてポツポツと話し始める。やはり今回のことはかなり堪えたようだ。
「狩谷に背中を押されて柄にも無くやる気になってたんだけどな」
「あれ、お前イケメン造魔の為に頑張るとか言ってなかったっけ?」
「勿論それもあるよ?でも自分なりの信仰を貫こうって思っていたのも本当・・【ラジエルの書】の力を使い続けてこうなっちゃったけどね」
「対策はされて当然だ。あいつらだって普通の探知や占術などを妨害する結界とかは試したんだろうが、【ラジエルの書】はそれらの効果は受けないからな。二亜の素性がバレなければ大丈夫と思っていたがそれが甘かったな」
相手は糞外道のメシア教過激派、もっと血も涙もない手法で対策することを想定していなかった俺達ネオベテルの失態でもあると言えよう。
「ねぇ狩谷・・・私このスキルを使い続けて良かったのかな?」
「当たり前だ。現地人は勿論俺達転生者だって散々助けられてきたしな、二亜の力で命を拾った奴も多いはずだ!」
思考が卑屈方面によっているので確かな功績を示す。功績を過剰に誇るのは問題だが自身の功績を忘れ自分を低く見積もるのも問題だからだ。
「でも!今回私のせいで実験で・・・何人、何十人が犠牲になったのかとかを考えると・・・震えが止まらない。私の信仰はただのエゴなんじゃないか、私が助けた人達はいてもそれよりも犠牲になった人達の方が多いんじゃないかって!これじゃ私は・・・悪戯に罪を重ねているだけなんじゃないかって!!」
二亜が普段は見せない強い語気で叫ぶ。物語の主人公とかならここで「悪いのは過激派だ!」「お前に罪は無い!」とか言えるのかも知れないが、いや前者は間違いなくそうなのだけど・・・俺に二亜には罪が無いとは言うことが出来ない。俺も前世で犯した罪があるからな。
「そうだな・・・元凶は過激派でも二亜に何の罪も無いとは俺にも言えない。勿論ネオベテルの失態でもあるから俺の責任もあるけどな」
「・・・こういう時って普通「お前に罪は無い」とか言って慰めるもんじゃないの?」
「残念ながら罪を犯したと思ってる相手にそう言っても実は全くの冤罪でした!とかでも無い限り慰めにもならないことは知っているからな」
「はは、手厳しいね」
「事実だろ?まぁ表裏の情報網でメシア教過激派による人間の大量拉致というのは噂すら流れていないことを考えると表裏にも情報が流れない様に実験で使った人達は其処らで拉致した人達では無くメシア教過激派の手中にあった人達なんだろうな。元々実験用に確保していたか或いは利用出来るように勢力圏に組み込んでいた土地からとかか、そうなって来ると正直二亜対策の実験が無かったとしてもいずれ消費された人達である可能性は高いが・・・だからと言ってしょうがないで割り切れないよな」
「・・・」
黙って俺の話を聞く二亜の目は罪悪感、不安、期待と言った感情は混じり合った目になっている。前者二つは言うに及ばず三つ目は・・・。
「悪いが期待されても俺は二亜の罪を許すことも紛らわすことも出来ないぞ」
「え?」
「その様子じゃ自覚は無かったか。俺如きが許せる罪なんざ俺自身が被害者になった罪くらいなもんだ」
「それは、そうだけど」
「だが道を示すことは出来る。罪を犯した先輩としてな」
「道?」
一つは何もかも投げ出し罪を忘れる代わりに今までの自分や関わった人達を見据える道、二つ目は進む歩幅は小さくても罪を償おうと足搔く道だ。俺と十香は後者を選んでここにいる。
「忘れるか、償うか」
「忘れようとするのは碌でも無いことだが、償い自体も碌でも無いぞ?償うと決めればそいつに後退は許されない、偶に立ち止まったり仲間に支えられたりすることはあっても前に進むことを余儀なくさせる」
「償いって私はどうすれば?」
「簡単だ。その力で戦え、一人でも多く救って見せろ!そしていつの日かこんな馬鹿げたことを考えた奴をぶっ飛ばせ!命は同じ命以外に等価は存在しない。だったら等価の命を救ったり、犠牲者を出ない様にすることが二亜が行える償いだ」
「戦って救う」
「ああ、お前の罪は俺にも誰にも背負えない。だがお前の背中を支えたり、罪自体は無理でもその重みの一部を一緒に背負うことは出来る」
二亜の罪そのものを如何にかすることは俺には出来ない、出来ることと言えば懸命に償おうとする奴を支えたり手助けしてやることくらいだ。
「突き放して置いて手伝いはするって卑怯じゃない?」
「確かにそう見えるがそれじゃ俺がお前の罪を引き受けるとかいうのも違くないか?」
「それは、うん」
頷くと再び黙る二亜。心が弱い人間なら理不尽に背負わされた罪を突き付けられれば精神を病んでしまったとしてもおかしくは無い。だが俺は彼女は見た目に似合わずタフなことを知っている。そうじゃ無ければあの大天使の実験で理性を残すことは出来なかっただろう。
「二亜、お前の中には無いのか?また立ち上がる理由は」
「立ち上がる理由?」
「深く考える必要は無い。頭を空っぽにして真っ先に思いついたものとかでもいいし」
「そんな適当でいいの!?」
それでいいのだと頷いて応えて二亜に手を伸ばす。
「お前はどちらを選ぶ?」
「・・・私は狩谷みたく覚悟も決まってないし、狩谷が言った償いを達成しても罪を償えたと思えるかは分からない。でも」
少しの間考えていた二亜が俺の手を掴む。その目は二亜なりに覚悟を決めた強い目だった。
「このままで終わるのは・・・私は嫌だから!」
「うん、立ち上がるには十分な理由だな」
理屈云々は関係無くただ納得いかない、嫌だからという如何にも【俺ら】らしい理由を二亜は自身の覚悟に据えた。容易に諦めが付き安く貫き通すのは難しい理由を・・・やっぱりタフだよお前は。
「まぁ俺が今回やったこと何て罪と向き合うか如何かで揺れている二亜に罪を突き付けて、償うという決断と立ち上がる理由をあいつの中から引き出しただけなんだけどね!」
「そうなの?」
十香達に心配を掛けたと謝りながら元気におしゃべりをしている二亜を折紙と一緒に眺めている。折紙は不思議がっていたが下手をすれば前回した信仰の話よりも俺がした仕事は些細なことだ。
「そうなの。だって二亜あの時と違って泣かなかったしな。罪を突き付けられるという衝撃的なことをされても驚きはしては涙を流すことが無かったということは心のどこかで自覚があったということの証左だ。そして罪を認めているということはよっぽどのクズじゃ無ければそれを償うことにも思考が向かう。俺はその思考を本人が自覚するくらい表に出してやっただけだ」
「もう一方は?」
「立ち上がる理由か?それこそ殆ど何もしてないぞ。さっきのと違って本人も自覚してたし、とはいえニ亜はもっと上等な理由を探したりそれを理由にしていのか分からなかったりしていたようだけどな」
【ラジエルの書】の件で失敗したからか自分で物事を決めるのを怖がってしまったのだろう。でも複雑に考えるよりシンプルに考える方がやり易いことはある。
「つっても俺なんかが色々語る資格はないけどな。俺も前世でやらかしてるし」
「カリヤ・・・」
苦笑していると折紙に何かしら思う所があったのか俯く。心配かけちゃったかな。
「さて、気を取り直して最後の仕事をやりに行きますか。おーい十香ちょっと付いて来て」
「む、何かあったか?」
「あったかってお前が来たのそれが目的だろうに」
「あ!」
「おい!?」
忘れていやがったなこいつ!?十香の首根っこを掴んで先程合流したテンカイの元に行く。
「テンカイ、少し話を聞いて欲しい・・・同じ『必殺の霊的国防兵器』の玖番の所在と十香のことについてだ」
読了ありがとうございます!ニ亜のお話でしたね。若干あっさりした解決でしたが、それだけでいいと言える程ニ亜も精神的に成長しているということですね!