◯◯◯◯があって今にも死にそうなんだがどうすればいい? 作:電脳図書館
【ロスヴァイセ編】
「悪い悪いお待たせ」
「い、いえ大丈夫ですマスター!」
今日はマスターとのデートの日。以前のデートは皆さんから散々な評価でマスターに至ってはデートとすら認識されませんでしたが今回こそは少しでも意識して貰わなければ!
「お、今日はジャージじゃないのか。まぁデートでジャージで来る奴なんていねぇか」
「そ、ソウデスネ」
ジャージを着ていた前回もデートのつもりだったなんて言えない!今回は私がデートをしましょうとはっきり言ったお陰で勘違いされずに済んでいます。
「布から見て白織のスパイダーシルクか?デザインもいいし、結構掛かったんじゃないのか?」
「はい、本来なら普通の服でもそれなりのマッカが掛かるはずなのですが、ブランド化したときに売り出す商品の習作ということでお安くして頂きました」
「なるほど」
会ってそうそうお金の話もどうかと思いますが、どれだけ服に詳しくないものでもお高い布が使われているのが分かってしまうので気になってしまうのも当然ですね。デザインも白を基調としながら清楚感があって好みなのですが・・・少し胸の露出が大きいような気が。でもそれでも清楚に見えるってどういうことなんでしょうね?
「うーんデパートに来たから買い物もしようと考えてたけど流石にそれ以上の服は無いな・・・まぁ今回はデートにかっこつけた視察みたいなもんだからおいおい決めるか」
「は、はい!・・・はぁ」
え、普通のデートじゃないのかって?・・・最初はデートだけのつもりだったのですが、そのデートに行きましょうと言ってた後に恥ずかしさに耐えられずに『で、デートというなの視察です!』とか余計な言葉を付け加えたのです。これじゃ恋人のデートじゃなくてただ男女の友人で遊びに行くデートと判断されても文句が言えません、だって付き合いの長い恋人や夫婦ならいざ知らずこれから恋人になりたいと思っている本命とのデートを視察という仕事と並行してやろうなんて思いませんよ。
「にしても意外と盛況で驚いた」
「それだけフリーランスの方々に需要があったということでしょうね」
今回の視察でこのデパートを訪れたのはここのテナントに入っているお店の特殊性にあります。とはいえ別にここにある店はネオベテルの『ジュネス』と異なり100%表の店しかありませんがその店は一店舗残らず従業員がフリーランスのデビルバスター、サマナーなどの業界人なのです。というのもマスターはここ中野区に不埒を働く者達を悪魔、人間問わず排除して来ましたがそれ以外の方々、特にフリーランスには一種の安全地帯となっているのです。これには先の【中野区事変】の影響が大きく、五大勢力が争う中中野区を守り通したという実績があるからというだけでは無く非常に優れた立地条件にあるからです。そんな我らを制圧するには並大抵の戦力では返り討ちにあい、もっと戦力を向かわせようとしても戦力が大きすぎると日本への渡航の際にヤタガラスの監視網に引っかかってしまいます。かといって気づかれないギリギリの戦力では我らを制圧するに足りるのか分からず粘られでもされれば他のネオベテルの戦力や最悪ライドウが出張れる距離な為組織による干渉を嫌うフリーランスの拠点にピッタリになっています。それにマスターはフリーランスの方々にも依頼を回していて仕事にも困らない・・・はずだったのですが。
「まさか裏の依頼の供給を超える人数が集まるとはな」
「フリーランスの方々に配慮したルールを敷いたら口コミで広がって更に人を呼びましたからね。それで裏の依頼を逃した人が激増したのを『そうだ!丁度寂れたデパートがあったからそれを買い取ってフリーランスの奴らに店をやらせて表の仕事をさせよう』とか普通は考えませんよ」
「でもここまで当たるとか予想出来ねぇよ」
当初はあくまで裏の依頼が行き渡らない為の救済手段で、業界の仕事の報酬を考えると表の仕事はやりたがらないと高をくくっていたのですが『我らネオベテルや中野区に不利益を齎そうとしなければ経歴一切不問。希望すれば審査の結果次第で初期費用の融資もあり』という寛容すぎる条件でテナント募集を掛けた所、フリーランスにも色々あるようで中には諸事情あって裏に身を置くしかなかった人達やいずれ表の仕事を持って平穏を得たかった人達、経歴や脛に傷を持つ人達など"表の日常を諦めた&求めている"人達の心をがっちり掴んで離しませんでした。因みに裏の店こそ禁止しているが各店舗にはオカルト対策として霊的防御の仕掛けを作ることはこちらの監査こそあれど許可されています。それにこちらが把握している中野区のフリーランスの方々は折紙様にマーキングされているのでもしもの時も安心です・・・このことは彼らに言っていませんが、事前に裏切った場合の警告はちゃんとしているのでそうなったら自業自得ですね!
それから暫く私達はお店の視察に時間を費やしました。マッチョな店長が営むジム、少しイカレた科学者が暇つぶしに開いている薬局、凄腕ハッカーが趣味の結晶であるネカフェ、ダンディなおじ様がマスターの喫茶店兼バー、人見知りですが本物の魔女が占う占い屋、裏の依頼の報酬をプラモにつぎ込む生粋のプラモマニア自慢の品々が並ぶプラモ屋、覚醒するまではプログラマーをしていた店主が当時の伝手でレア物も仕入れるゲーム屋、元モデルである店主がデザインしたアクセサリーが販売されているアクセサリー店などど一般のデパートのテナントに比べれば濃い内容ですがそもそも店主は勿論デパート自体のオーナーも一般人ではないので当たり前なのかも知れませんが・・・あ、視察だけじゃ無くてちゃんとデートも頑張ったんですよ!そのお陰で関係が進んだのですから!
「ふふふ♪」
「ご機嫌だな・・・」
「デートですから!」
幸せを確かめるように右手をにぎにぎすると右手がとても暖かく柔らかい感触に包まれます。
そう!私は今、マスターと手を握っているんです!!
中々進まなかった私の恋人への道も大分進んだと言えますね!!
「手を繋いだだけなんだがな・・・(ボソ」
「何かいいましたかマスター?」
「ナンデモナイヨー」
よかったマスターも今回のデートを楽しんで頂けたようです!まぁこう見えてもオーディン様に生み出されてから軽く数百年は超えてますからね。大人の女性としてマスターをリードするのは当然「あ、そうそう」はい?
「折角のデートだからな。記念のプレゼントだ」
「・・・へ?」
私の頭に付けて下さったのは小さな白い花が連なっているデザインの髪飾り。明らかに今来ている服と合わせているのを見て視察で訪れたアクセサリーのお店で買って下さったのだと分かります。そのことに気付いた私は・・・。
「はう!?」
「え、髪飾りで!?」
嬉しさと気恥ずかしさのあまり顔を赤くして気絶しました。
【クベーラ編】
「小学生とデートしている気分でした」
「そうだろうな・・・ロスヴァイセは恋愛観が幼過ぎる」
とある個室で互いに溜息を吐く。ラ◯ュタ計画を主導しているクベーラだが実はロスヴァイセにデートを決行させた張本人であるまぁ元々デートを計画してたロスヴァイセの背中を押した感じだが。
「というか狩谷が襲えば解決なのだがな。ロスヴァイセの好意に気付いているだろう?」
「前も言ったがそれやったらロスヴァイセの為にならないんだよ。ただでさえそれだけじゃ足りないのに」
俺は色恋に敏感な方では無いが流石にロスヴァイセの露骨な好意には気づいている。しかし俺からでは無くロスヴァイセの方から告白して貰わなければならない事情がある。
「ロスヴァイセの好意はヴァルキリーの勇者に奉仕するという本能、いや機能による所が大きい。別にそれ自体は否定はしない、政略結婚みたいなもんだし一昔前は人間も似たようなことやってたからな。問題なのは俺の方から求めてしまえばあいつはヴァルキリーという規格から外れることが出来なくなってしまう。それこそ勇者であると定めた俺にただ従順な存在になってしまう可能性がある」
「なぜそう思う?」
「ヴァルキリーはオーディンに作られた云わば量産型の元祖神造魔人。ただ量産型ゆえ統一の規格を持って生み出されている。ある程度作成時期によってマイナーチェンジはしているみたいだけどな。その場合どうしても規格を逸脱した行動は取れなくなる。かのブリュンヒルデは愛だけではなく初期型故の不備が重なったバグに近い感じなのかもな」
「つまりそのブリュンヒルデ同様規格から外させたいのだな?」
「ああ、掲示板での情報だが高知での多神連合とメシア教過激派との衝突の際オーディンが多神連合の戦列に加わっていたそうだ。となるとネオベテルが多神連合と敵対する場合高確率でオーディンとぶつかるだろう・・・悪魔召喚プログラムがある以上裏切られることはないが、主神と敵対することでロスヴァイセに深刻なエラーを齎す可能性がある」
「オーディンが作った規格の強制力はそれほど強いということか」
クベーラの指摘に頷くと脳裏に浮かぶのはガチャでロスヴァイセを召喚したときに判明した欠陥だ。ロスヴァイセは恋愛はクソ雑魚だが仕事が出来るそれなのに同期のヴァルキリーと違い攻撃ばかりで防御や補助が不得手という欠点をそのままにしておくはずがない。だが実際俺に召喚され改善する様に言われるまでその欠点を残したままにしていた。つまりヴァルキリーという種族は・・・。
「ヴァルキリーに成長という概念はあっても自身を改善するという発想がない、なぜなら全能である主神によって作られた以上生まれ持った能力こそがヴァルキリーとして最適の能力だと無意識に思ってしまうからだ。自分より多少格上程度なら集団で当たるか自身の能力を上げて対処する。しかし順当な成長でも勝てない相手の場合そもそも自分達が戦うことを想定されていないと判断して倒すのは英雄や北欧の神々だと割り切ってしまっている」
「思考や人格にも規格は影響を与える以上主神へ牙を向けるのは危ういか。そう言えば悪魔変化をしたヴァルキーの話は聞いたことが無いな」
「ああ、規格が定まっている分悪魔変化しずらいんだろうな。だがロスヴァイセは変異種、最初それは能力だけかと思っていたがそれ以外にも理由がある。それは・・・」
「愛だ!」
「なぜそこで愛!?」
「それがヴァルキリーについて調べたんだけどどうもブリュンヒルデ以降のヴァルキリーは基本的に男性から求められることで初めて相手に異性としての愛を覚えるみたいだ。仮設だけど初期型のブリュンヒルデが愛で色々かっとんだから愛そのものを制御しようとしたんだと思う。規格そのものに愛に関することを定めた感じだな」
「ん?だがロスヴァイセは狩谷が召喚する前は確か同期の友人に男を取られた負けヒロインでは無かったか?」
クベーラの言う通りロスヴァイセの恋愛がクソ雑魚だったばかりに意中の男性にアピールしていたことにすら気付かれず同期とデキコンされるという悲惨な過去を経験している。だが俺としては最近のアピールは"小学生"レベルとはいえ好意自体には気づくことが出来るレベルだと思う。あの恋愛クソ雑魚が何かを変えているとも思えないし相手である俺に理由があるのだ。
「恐らくロスヴァイセは"勇者と認める相手から求められたとき愛が芽生える"という機能が変質或いはバグを持って生まれたんだろう。だから相手から求められていなくても愛を持つことが出来た・・・が、奉仕する種族であるヴァルキリーの規格の縛りのお陰でそれが上手く行動に反映することが出来なかったと考えれば性欲旺盛であるはずの勇者ですら欠片もアピールに気づかなかったことに説明が付く」
「なるほど恋愛クソ雑魚になってしまったのにも理由があったわけか。そう考えれば同期の友人に男を取られたのも男の方から求めてそれを受け入れただけかも知れんな・・・だからデキコンでくっ付いたのか」
「夜戦に突入したら出来ちゃったんだろうな。まぁこの件は置いておくとして肝心なのはロスヴァイセが小学生レベルとは言え俺がちゃんと気づける程アピールが出来た理由だ。あの恋愛クソ雑魚が急激にレベルアップしたとは思えないから理由は俺にあると思う」
「ロスヴァイセの変化の理由・・・いや、狩谷で変化と言えばあの固有スキルか!」
「そう、俺の固有スキルの一つ【試す者】の効果の一つに悪魔変化の確率の上昇がある。恐らくそれがヴァルキリーの規格を変質させているんだ」
少し前にカーリーと折紙とで話したことを思い出す。『限界突破や悪魔変化の本質は当人の内側、自身の存在認識に自身や世界が合わせた結果よりその認識に相応しい存在に昇華する』この仮説が合っているのならヴァルキリーの本質であるオーディンが定めた奉仕する種族という規格に【試す者】の干渉が及ぶということだ。
「だからロスヴァイセが告白するだけじゃなくて規格を逸脱する行動・・・"もっと露骨過ぎるアピール"が出来るようになれば規格を本当に破る、なんならそのまま悪魔変化を起こす可能性が高い!」
「ようは狩谷を夜這いしたり襲ったり出来るようになれば解決だな!」
「そうだよ!?折角オブラートに包んだのに言うんじゃないの!」
「そういうことなら話は簡単だ!」
凄い自信満々に胸を張るクベーラ。なんか嫌な予感がするのは気のせいだろうか?
「私を抱けばいい!」
「急にどうした」
意味不明なことを言われ困惑する俺にクベーラが畳み掛けて来る。
「ロスヴァイセの変化を促す為に規格から逸脱させる行動を促すのだろう?ならばそれ相応の出来事による刺激を与える必要がある」
「うん、それは分かる」
「そしてロスヴァイセにとって意中の男が自分以外の女を抱いた事実はこの上ないほどの刺激になるはずだ!」
「待て待て待て!!そりゃ確かにこの上ない刺激になるけど恋愛クソ雑魚なロスヴァイセがそれ受けたらショック死しちゃうじゃないか!?」
ある意味同僚の友人の一件よりもトラウマになるわボケ!!とツッコミを入れるがそんなことお構え無しにクベーラは話を続ける。
「安心しろロスヴァイセには『お前の席も空けている』と話せば問題はない。どの道狩谷はいずれ複数人の女と関係を結ぶことになると言っていただろう?」
「そりゃ言われたけど」
クベーラは他の仲間、仲魔が敢えて触れていない俺の婚姻について積極的だ。ヤクシャ族の王故婚姻の重要性を俺達の中の誰よりも理解しているからだろう。実際俺もロスヴァイセの件も含めその手の話題を相談していて余程な相手に問題が無ければ政略結婚も致し方なしとも思っているし、ネオベテルの幹部兼地元霊能コミュニティのトップとして将来的に身を固めたる必要性も分かる。それに業界では重婚は良くあることも考えると他の組織からの結婚相手の押し付けを躱す為に気心知れた女性達を娶り脇を固めるというクベーラの考えももっともだと思う。でもこれは無いだろ!
「私情を挟まずに考えてもラ◯ュタを制御する私を含めて仲魔を嫁に貰うのはやって置いた方がいいぞ?幸い全員女性だし他の者達も拒否しないと思うしな。特に終末後となれば尚更だ」
「それは・・・そうだけど」
「だから私で慣れておけ♪」
「ちょっお前絶対楽しんでるだろふごおおお!?」
く、ヤバい俺も何だかんだで一人の男。胸を押し付けられて何も感じない訳がない!というかあそこの反応がヤバいって!!
「ちょうど個室なのだ遠慮する必要は「・・・がみ」ん?」
「おーりーがーみー!!!」
大声で愛する義妹兼我が家のセコムを呼びよせる!
「ふ、この部屋の窓とドアは既に私の結界でふさいでいるし転移や念話も「カリヤ来た!」ぐはぁ!?通気口からだと!?」
通気口からこの部屋に突入して来た折紙の飛び膝蹴りでクベーラを吹き飛ばし俺を解放してくれた!俺が叫べば家の中限定だがいつでもどこでも折紙は駆け付けてくれるのだ!俺達の中では通称折紙セコムと呼んでいる。クベーラは新人だから気が付かなかったようだな!!
「よく来てくれた折紙!クベーラを抑えるぞ!!」
「了解、制圧する!」
「く、止められるものなら止めて見るがいい!」
この後神木兄妹vsクベーラの俺の貞操を掛けたバトルが巻き起こった・・・最後は暴れている所をエイナに見られ三人共正座させられて説教を受けてうやむやになったのだけど。あと折紙の要注意警戒リストにクベーラが乗ったそうな。
読了ありがとうございます!ロスヴァイセの回がちょっと短いですがクベーラの回でも話題に出してるのでトントンですね!