【杉波朱雀編】
東京の某所にあるとある高級レストランの個室で、男女の二人組が食事を取っている。これだけならただのカップルがデートで奮発したのかと思われるだろうが、場の空気はそう言ったものではない。かと言って剣呑な雰囲気でも無い。
まぁ俺達の事なんだけども。
「お味はどうですか?」
「うーん、流石アンタの目利きだけあって美味い!特にこのローストビーフ」
「それは何よりです!」
現在俺は傘下のアルケミスト社のCEOの杉波朱雀から会食という名の接待を受けている。彼女の娘である斑鳩達とは頻繁に会ってはいるが、彼女自身とはそんな頻繁に会っている訳では無い。そんな中会食をするということは何かあるのだろうか?
「で、そろそろ本題を聞いていい?」
「いきなりですね。こちらも気兼ねなく言えるのでいいのですが・・・かの黒き豊穣の女神を従わせたとか。それからご自身の異界を作ろうとしているとも」
「異界の方はまだ土地と一部施設を立ててるだけだけどな。ただシュブ=ニグラスが産み出した悪魔は従順だからCOMP枠を圧迫しない戦力としてはありがたい。黒い仔山羊と言った擬態能力のある悪魔で警備も出来るからな」
「平然と悪魔に警備させているとは中々にイカれていますね」
「あんたには言われたくないな魔女さん。何だ異界にも一つ噛みたいのか?」
「ふふ、いえいえ」
異界の利権に絡みたいのかと思ったが、あの笑みは少し違うのか?そう考えていると朱雀が立ち上がりこちらに一礼をして嘆願するかのように口を開いた。
「我らアルケミスト社一同神木狩谷様にお供させて頂きます」
「・・・本社をうちの異界に移すのか。元々支部に過ぎないあそこじゃ限界が来ているとは二人から聞いている」
「話が早くて助かりますわ。狩谷様のご支援やコネクションのお陰でこの国の霊能業界にも大分食い込めて来ましたが、それ故に嫉むものがいるのも事実。それに終末のことを考えると会社そのものを異界に隔離した方が安全ですし、勿論警備の協力は当然として、これまで以上に狩谷様達をお支えしますよ」
「それはいいな」
これが普通の霊能組織なら素直に喜べるのだけどな。もう一方の顔を知っていると素直に喜べない。
「CEOとしてのお前の理由は分かった。次は魔女としてのお前の理由を聞こうか?」
「・・・そう小難しい理由はありませんわ。ただ貴方の運命をより近くで見て見たくなっただけですから。同じ外なる神に見初められた者として私と違いどういう道を辿るのかを」
「それ破滅の道だろ。というかそういう奴を今までも見て来たんじゃないのか?」
「見て来ましたが、少なくとも契約した外なる神に『お前今日からうちの警備主任な!』とか言ったのは狩谷様が初めてなのですが?」
「だってあいつ産み出した悪魔と霊的ラインが繋がってて、連絡を相互に出来るから警備のトップに据えた方が色々やり易くて」
警備の悪魔が侵入者を発見した連絡とか命令送るのに便利だし、だったらわざわざ別系統の命令系統を作るよりも一本化した方がやり易いだもん!
「裏切りは考えないので?」
「その時は責任取って神殺しの出番だな」
「あ、はい」
身内だろうと裏切ったら制裁は受けて貰う・・・まぁその内容は裏切りの理由次第だけどな。
「にしても理由が俺への興味か、魔女という研究者らしいというか何というか。因みに支えると言っていたがどういうことを考えているんだ?」
「分かりやすいものだと狩谷様が社会人となった際に表向き顔として、相応しいポストをご用意いたしますわ。もっともこれは社会人になる前に終末が来てしまったらあまり意味が無いものとなりますが」
「終末来たら表向きも糞も無いもんな」
「ええ、ですので私の娘二人もお付けしますわ」
「(付ける?・・・ああ、部下としてって意味ね。有能な部下は助かるな)それはありがたいが、ただ朱雀に対する命令権も欲しいな。狂三とかお前を警戒している人に向けて首輪を着けているってアピールしないとな。CEOや研究とかもあるだろうし、頻繁には使わんからさ」
「なるほど、外部には逆に取り込まれた様に見えてしまいますのものね。お助けできるかは予定次第となりますがそれでよろしければ何なりと」
「おう、頼むぞ」
あ、そういえば今の朱雀ってレベル偽ってるんだっけ。本気はどれくらいなんだろうか?
「私の本気ですか?そうですわね一度お見せしましょうか」
【魔女 ギザイア・メイスン Lv95】
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割とあっさり偽装を解いてくれるのかって姿変わってね?というかレベル!?
「偽装を解くと姿も変わるようにしていますわ。戦闘用の身体ですわね、私の最初の身体を模しているので娘達とは似てはいないでしょうが」
「・・・いや割と似てると思うぞ?あとどう見てもレベルがおかしいのですが」
Lv95ってなんだよ!こんなん気軽に仕事頼めねぇよ!
「ふふ、それはそうと男性は胸に視線がいってしまいますわね。いっそ娘達と親子丼にしますか?」
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「はは!ナイスジョーク!」
怖くて抱けるか!?それに冗談とは言えこんなことで母親に売られる斑鳩達が哀れだ・・・あれ、あいつに親子の愛ってあるのか?
【翌日】
「お母さまにこっちに住めと言われて来たわよー!」
「言われた当日に引っ越し・・・まだやり残した仕事が!」
斑鳩達が俺んちに住むことになりました。やっぱあいつに親子の愛とか無いかも知れん。
「あ、私も定期的にお邪魔しますね!・・・もしよければこのまま親子丼でも「今夜の献立のリクエストは親子丼だな!分かった材料買ってくるぞ!!」可愛いですね」
早速弱みを握られたような気がするが、俺に飽きない間は変なことしないだろうし必要経費と思う様にしようと思いながらスーパーに駆け出す俺なのだった。