◯◯◯◯があって今にも死にそうなんだがどうすればいい?   作:電脳図書館

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第五十九話になります!今回はほぼほぼ空気だった狩谷の高校生活の話になります。まぁ視点は狩谷とは別になりますが。



中野区で日常とコミュ10

【クラスメイト編】

 

「良く集まってくれた諸君」

 

放課後、本来なら下校か部活に行く時間だが今日は生徒達は誰も出ていく様子も無く、妙に芝居がかった台詞を言い、黒板前の壇上に立つ狩谷に私を含めた教室の皆の視線が集まる。

彼はこの3-A組の委員長(中学時代インフルに掛かって休んだときに押し付けられたらしい)だからか壇上に立つ姿は意外と様になっている。

 

「部活がある奴も多い中今日この時間を空けてくれたことに感謝を」

 

「・・・そんなことは良いじゃねぇか狩谷。前置きは要らないから本題を話そうぜ」

「確かに問題の対処に時間的余裕はないからな・・・ならば早速本題に入る!」

 

クラスメイトの意見を受け入れ、狩谷は黒板に議題を書き上げる。今回私達3-Aの生徒達が集った理由・・・それは

 

 

 

「これより転校のタイミングのせいで修学旅行に行けなかったゼノヴィア、イリナ達の為、あと折角だから皆との最後の思い出に卒業旅行も兼ねるか!的な動機で行なわれる『割り勘修学旅行』の候補地を決めるクラス会議を行う!思い至る候補地がある奴は手を挙げろ!!!但し予算的日程的都合により国内限定だぞ!!」

 

「「「「「「「「「「はい!はい!はい!はい!」」」」」」」」」」

 

狩谷の開始宣言に応える様に大半のクラスメイトが手を挙げる。ゼノヴィアさんとイリナさんは夏休みの後に編入して来たため夏休み前にあった修学旅行に参加出来ていなかった。それを可哀そうに思った狩谷が計画したのだけど・・・本当に学校から一週間の修学旅行期間を引き出したのね。

 

「ええい、煩い!順番に聞くから落ち着け!まずは甲児からだ!」

 

「おう!俺はやっぱ修学旅行でも行った沖縄が良いと思うぞ。行けなかった修学旅行の代わりなんだこの学校で体験出来たことをやれせてやることも出来るし、俺達だって沖縄を遊び尽くしたって訳でもないから退屈はしないだろ」

「うん、相変わらずキャラに似合わない滅茶苦茶模範的な回答だな!」

 

兜甲児、普段は熱血漢な所が目立つが世界的に有名な科学者である父親を持つだけあってか頭も回る。

 

「次は曹操!おら宣言通り一週間もぎ取って来たぞ!」

 

「まさか本当にもぎ取って来るとはね・・・幾らこの逢魔学園が進学校でこのクラスの大半がもう進学や就職が内定していることを考慮してもよくやったわ!」

「確かお前は大学卒業したら起業するんだっけ?」

 

「ええ、その時はこのクラスのメンバーにも声を掛けるつもりよ。そして私のおすすめは大阪よ!そもそも沖縄の最大の売りは海でしょう?この時期じゃ海開きしていないじゃない!それなら大阪城や本場のたこ焼き屋やお好み焼きを楽しんだ方が得ってものよ」

「むむ!た、確かに一理はあるけどよ!」

曹操、三国志に出て来る英雄と同じ名を持っているのは両親が大の三国志ファンだかららしい。彼女はその名を寧ろ誇っている節があり、その名に恥じない生き方を心掛けているので成績だけを見れば優等生なのだけど・・・。

 

「あ、ホテルは当然男女別よね。大部屋かしら?2人部屋かしら?どちらにしても大歓迎よ!複数でも、一対一でもそれぞれ違った魅力が「残念だが例年通りお前は俺と同じ2人部屋だ。まぁ部屋割りは皆2人部屋になると思うが」ちょなんでよ!?今回は学校行事じゃないでしょ!!!」

「お前を除いた女性陣の総意と許可を出してくれた学園長の意向だ。諦めろ」

 

「むぎゃーーー!!!」

彼女はレズなのよね。それだけならまだしも学校外に複数人の相手がいるやり手、幸いこの学園の女生徒は教師陣と狩谷を筆頭にした一部生徒達がガードしていたから被害はなかったけど。

それもあって外泊する行事では彼女を抑えられる狩谷が毎回同室になるのが暗黙の了解になっている。

 

「毎回毎回貴方と同室とか新鮮味が無いわよ!!良いじゃないの最後くらい!!」

「そう思うんだったらせめて節操というものを覚えろ!!!はい次アナスタシア!」

 

「私は福岡が良いと思うわ」

「福岡?・・・貴様さては本場の博多ラーメン目当てだな!?」

 

「そうよ!」

「言い切ったぞこいつ・・・!!」

 

アナスタシア・ニコラエヴナ・ロマノヴァ、ロシアから両親と共に日本に移住して来たロマノフ王朝の王家の親戚筋に当たるという正真正銘のお嬢様・・・だったのだけど見ての通りすっかり日本の食文化、特にラーメンに毒され残念な子みたいな感じになってしまっている。

 

「あの二人も美味しいラーメンが食べられて楽しい思い出が出来るはずよ!」

「ラーメン以外のアピール要素も出せや!あと会議中にインスタントラーメン食ってんじゃねぇ!?」

 

因みに彼女がラーメンに嵌ったのは、アナスタシアが日本にまだ慣れて居なかった中学時代に狩谷が行きつけのラーメン屋でラーメンを奢ったのが切っ掛けらしいので、自業自得な気もする。

 

「はぁ、何事かと集まりに応じて見れば、観光名所だの食事だのと下らぬ戯言をとんだ時間の無駄じゃな」

「相変わらずズバッと言うな羽衣」

 

会議が紛糾する中常に上から目線の物言いをする羽衣乙女が溜息と共に放った一言が場を一気に鎮める。そして憤慨の表情を見せながら席を立ち上がり、教室から去る・・・

 

「旅行地など京都以外にありえるものか!!無論宿は京都一の旅館と誉れ高い『狐の宿屋』じゃ!」

「「「「「「「「「「そこお前の実家じゃねーか!!!」」」」」」」」」」

 

などと言うことはせずちゃっかり自分の生家である旅館を宿泊地に押す辺り実に強かだ。この性格で旅館を継げるのか心配だが、お客の前では旅館の後継者としての仮面を被るのだから器用だと思う。

 

「本来なら宿泊費をこちらで全額持ってもいいのじゃがな」

「いや、それはダメだって計画立てる初期段階で決まったじゃんか!一部の奴に負担を掛けるのは不味いって!」

「分かっておるわ遊馬よ。じゃがあそこならわらわの顔は聞くのも事実、宿泊費用も抑えられよう。それにゼノヴィアは金閣寺と銀閣寺を見たがっておったぞ?」

「予算の節約とゼノヴィアさんの希望を同時に叶えられる案ですか、これは強いですね」

この学園で一番のカードゲームの腕を持ち、菩薩メンタルとも呼ばれる九十九遊馬と冷静に羽衣の提案を分析する面倒見のオニ、ペンチメンタルなどと言われる自称凡人こと三雲修。私は彼らとは違いそこまで煽り耐性が高い訳ではないので良く参考にしている。

 

「「「むむ!!」」」

 

意見を言った三人が思わずうなっているがこの様子だとまだ掛かりそうだ。

 

「うーん、お前はどう思う都?」

 

「私は・・・」

急に話を振られてどこに行きたいか考えて見る・・・京都とは不味いことが無い訳ではないが、表の事が裏から突き上げられることもあまり無いはずだ。とすると

 

「・・・私はどこでも良いわよ。このクラスで旅行に行けるなら」

「あー、俺は宴会場とかで演奏とか出来たら文句はねぇな」

「私も皆と過ごせればいい」

他のクラスメイトは私と怖い話させたら稲川淳二レベルの閻魔あいを含めたクラスで遊べればOK勢、プロ歌手を目指している熱気バサラの様に特定の希望が叶えられればどこでもいい勢に別れていた。

 

「そうか、それじゃ希望がある程度満たせる場所を選ばないとな。メアリ、いすずちょっと選定手伝って!」

 

「えぇ、複数県のチェックは一人だと大変よね」

「役割分担をした方が効率が良いわ。私が宿を調べるからメアリは観光名所、狩谷は移動ルートとそれに掛かる交通費の計算をお願い」

狩谷は自分一人では捌き切れないと感じたのか、副委員長のメアリ・クラリッサ・クリスティと高等部の風紀委員長を務める千斗いすずに応援を求める。基本的にこのクラスで生徒側が事務処理をするときはこの三人を中心に動いていたりする。

 

「私も手伝った方がいい?」

「悪いな都。なら書記を頼めるか?ちょっと黒板に書く余裕が無さそうだからさ」

 

「これぐらい大丈夫よ」

狩谷からチョークを受け取り、黒板に会議の内容を書いていく。

皆は知らないだろう。こんな平穏な営みが全て狩谷の尽力によるものだと言うことを、そして狩谷も私がヤタガラスの機関の一つ『ジプス』の長であることを・・・ましてや私が京都の老害共から彼を監視し、必要なら『処理』するように言われていることなど想像もしていないだろう。

 

京都のヤタガラスと関東で活動しているヤタガラスの仲の悪さは有名だ。その為情報が共有されないこともしばしばある。老害共は、神の右席の一人であるアックアを派遣したローマ正教のように事前に神殺しが誰かを特定していたが、その情報を秘匿していた。老害ではあるがなまじ能力は優秀なのが始末に負えない。

 

私はこの学園に転入する前にジプスを立ち上げる際、京都のヤタガラスの力を借りてしまった・・・大きな借りがある以上彼らからの『お願い』はある程度聞かなければならない。立ち上げた当時は根底に護国の心はあっても出世に拘って積極的にお願いを聞いて表の生活など煩わしいと思っていたが・・・今の私は表と裏どちらを煩わしいと思っているのだろうか?私自身のことであるがこっちと言い切れるだけの自信が無い。

 

「ん、どうした都。手が止まっているぞ?」

 

「え・・・ごめんなさい少し考え事をしてたわ」

「珍しいな、何かあったら言えよ。出来ることなら手を貸してやる」

 

だからどっち付かずの私にそんな笑顔を見せないで欲しい。貴方がこの町を守る為に日夜頑張っていることを知りながら手伝いもせず遠方からただ見ている私に、名義を隠しヤタガラスの指名依頼を貴方に出すことでしか支援出来ない私に・・・五勢力が十字架を巡って争ったときも監視者の立場を考えて何も出来なくて、貴方が命を掛けた特攻を見て漸くそんな考えを捨てて行動出来たときもその場に駆け付けるのではなくライドウに泣きながら救援を願う連絡をすることしか出来ない私に、自分可愛さしかない私に、こんな事情を言い訳にしてただ『嫌われたくない』という本心を押し殺している私に

 

「・・・ええ、ありがとう。大丈夫よ」

そんな優しさを向けないで・・・。

 

 

 

 

 

 

会議が踊る中、一人さまざまなものに押しつぶれそうな少女を教室外から見下ろす影が一つ。

 

「ホウツウインミヤコ・・・貴女がカリヤの利益になり続けるのなら私は貴女を尊重する。だから貴女の事情も正体もカリヤに伝える気はない。それは貴女自身の思いであり、私達にとっても一番利益になることだから」

神木兄妹は愛する存在とそれ以外の存在に対する対応の差があることは共通している。

そして例え後者であっても誠意を見せる相手のことを尊重する心も両者共持ってる。

ただ明確に違うのはその愛する存在の範囲と"尊重"するという行為が人間視点によるものか、天使視点によるものかということだけなのだ。




読了ありがとうございます!クラスは狩谷、ゼノヴィア、イリナを入れて男女15人ずつで計30人くらいいたりします。これはいずれやる割り勘修学旅行編で全員出す予定です。あとはジプスのトップである峰津院都がクラスメイトでめっちゃ絆されてるという中々に挑戦的な設定をぶち込みました。

桜花達と出会ったヤタガラスの指名依頼やライドウが救援に駆け付けたのも彼女のお陰です。まぁライドウはその内来たでしょうが、個人的に連絡して来た彼女の懇願を受けてもろもろの手続きを後に回して丁度ヤタガラス本部に顔を出していた寺生まれニキと共に急行したという経緯になっています。

狩谷が彼女の正体に気づかなかったのは書類などはヤタガラスが隠蔽しており、彼女自身覚醒者だということを隠す霊装を持っていてそれすらも見抜ける折紙が教えていないことが挙げられます。折紙的には彼女が監視者の役目から外れればそれこそこちらに情などが無い者が新たな監視者として派遣されるだけなので今の状況では、この形がベストだと考えているからです。
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