災厄(アルバトリオン)の少年はヒーローを目指す 作:アママサ二次創作
御伽噺にすら謳われぬ禁忌がかつて存在した。
わずかに伝承に残るはその姿。
曰く。
煌めく炎のように赤く輝き。凍てつく氷の青い輝きを湛え。全てを飲み込む闇のように暗く。全てを照らす太陽の如く明るい。
全身を覆うは逆巻く逆鱗。自然の理に反して生える逆鱗が群れを成して鋭い甲殻を形成する。
逆立つ鱗と巨大な棘を備えた尾は見るものを夢幻の世界へと誘う妖気を帯び。
美しいながらもおぞましいほどの禍々しさを誇る翼は時空すら切り裂くが如く。
頭部より生える角は天を貫くが如く鋭く、大きく。
御伽噺としてすら滑稽すぎて。
実在するとすればあまりに恐ろしすぎて。
ついぞ謳われず、記録からも抹消された禁忌の存在。
煌黒龍、あるいはアルバトリオン。『神をも恐れさせる最強の古龍』と後の狩人達がうたう災厄の化身。
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鏡に映る角の生えた自分の姿を見た直後に流れ込んできたそんな説明に首を傾げたのは8歳の頃だった。
個性の発現は一般的に0歳から4歳。生まれつき個性の発現している異形型を除いても早い子は2歳ぐらいには発現している中、俺の個性は5歳の誕生日を迎えても発現していなかった。
当時かかっていた医者が言うには、無個性の特徴である足の小指の関節は無個性の特徴を示しておらず、個性の条件を満たしていないためにわからないのではないのかと。少なくとも統計的には、この特徴を満たさずに無個性であったことはほとんど無いらしい。
「りゅうとまだ個性無いんだろー!」
「無個性! 無個性!」
「だっせー! 個性の無いやつって人権ないんだぜ、知ってるか?」
そんな専門的な説明がまだ小学校低学年の子供に理解できるはずもなく。はみ出した者に対するいじめは毎日繰り返された。
それでもそれが辛くなかったのは、寄り添ってくれた両親がいたからだった。
「個性があってもヒーローにならないと意味が無いからな。何なら父さんの事務所の事務員になるか?」
「そうね。個性が無くても出来ることはたくさんあるもの。それでもヒーローになりたいなら、まずは身体を鍛えてみる? 個性がなくても戦うのがとっても強ければヒーローになれるわ」
自分たちの経験からこちらの思いを汲み取って語りかけてくれる両親。小さい頃から本を薦め、論理的に考え話すことを教えてくれていたからこそ、両親のその言葉にも感情的に反発すること無く前を向くことが出来たのだと思う。
それに俺の個性については両親は内心発現が遅くて当然だと考えていたと個性が発現した後に聞かされた。
何でも父も母も、俺と同様に個性の発現が4歳以降だったそうだ。そのため一時期は荒れたこともあったらしく、俺に話すのもその時の経験が生きていたのだとか。
そんな中での8歳の誕生日。その日は稀に見る快晴で。半月は晴れが続くような暑い夏の日だった。
そんな中両親はヒーローとしての仕事に呼び出されて出ていった。どちらも水が無ければ本領を発揮できない個性であるにも関わらず、である。どうやら危険なヴィランの集団が出現して暴れていたらしい。
1人家に残された俺は、それを心配して家で待っていたのを覚えている。そしてヴィランが街を破壊していく映像をテレビで見たのも。
そうだ。俺はその時願ったのである。
『雨よ降れ』と。
そう考えたと同時に、頭部に鈍い痛みを感じた。頭をキリキリと苛むような頭痛。頭を抑えると何かそこに固いものがくっついていて、慌てて鏡の前に駆け寄ったのである。
そしてその言葉を聞いた。
鏡の前で呆然とする俺をよそに、外では突如として振り始めた雨が地面を濡らしていた。カンカンに照っていた太陽は分厚い雲に覆い隠され、絶え間なく振る雨が大地を潤していく。
それを見ると同時に、頭の中にイメージが浮かんだ。
自分の頭、おでこから頭の前半分ぐらいにかけて生えている角と同じものを持つ巨大な存在。あの言葉を信じるならば『古龍』と呼ぶべき存在を取り巻くように、天候が悪化していく様を見て俺はなんとなく気づいたのだ。
この角が雨を降らせているのだと。
両親を助けたいがために降らせた雨だが、直前の梅雨で発生した大雨にビビっていた俺はむしろ自分のせいで降る雨を恐れ、それを止めようと必死になった。
結果として出現した角を消し、流れ込んでくる知識に震えながら両親が帰ってくるのを待っていた。
あれから7年。発現が遅かった個性を制御するために2年ほど学校を半不登校となりつつも訓練をし。その中で俺の中にいるこの個性、『煌黒龍』に関するどこから来たともわからない知識とも向き合った。
「よし、行くか」
おかげで今こうして、俺は高校入試。ヒーロー科の実技試験の会場に立っている。
若干肌寒い季節に合わせて長袖長ズボンのジャージ姿。人本来の身体を壊さないようにと入念なストレッチを終え、開放されたゲートの前に立つ。
今から始まるのは雄英高校ヒーロー科の実技試験。高校側が用意したロボットを破壊し、そのポイントを競うというものだ。
「加減がいらないってのは楽だな」
人を相手するならば必要となる加減。それもぶっ壊していいロボット相手ならばいらなくなる。
『ハイ、スタート!』
ぬるっとアナウンスされたスタートの合図に合わせてゲートを飛び出し、未だにざわざわしている他の受験者を置き去りにする。
『敵ハッケン! ハイジョ!』
「はいはいハイジョハイジョ」
『もう試験は始まってんぞ!! 実戦には合図なんてねえんだ!』
正面から出現した2種類のロボット、おそらくは2ポイントと3ポイントのロボットに、無数の逆鱗で覆われた腕を叩き込んで破壊する。全力を解放するつもりはないしまだ制御しきれないので普通の俺の腕を覆った程度のサイズしかないが、それでもターゲットの装甲を大きく凹ませ小さなショートの音とともに機能を停止させる。
「もうちょい強くいってもいい、かな!」
言葉の最中で角から出現した新たなターゲットに回し蹴りを入れて破壊し、そのまま2歩で近くのビルの屋上まで飛び上がる。
「あっちの方が多いな」
そのままビルの上を飛び移っていき、多数のターゲットがいる場所へと勢いよく飛び降りた。勢いのまま3ポイントのターゲットを踏み潰し、そのまま地面に着地すること無く隣のターゲットに飛び蹴りを入れる。近くの壁まで吹っ飛んでいったターゲットはその先にいたターゲットを巻き込み、大きな音を立てて倒れ込む。
「おし、次」
続けざまにその場のターゲットを無力化し終えたので、今度は上だけ羽織っていたジャージを脱ぎ去り腰に巻き付ける。直後背中から生えてきた一対の翼をはためかせ、俺は空中に飛び上がった。
知識にある厳しき世界とは違う。優しく、穏やかな世界。
それでも、これが。今俺が立っている場所こそ、俺のいる場所。それ以上でもそれ以下でもない。個性についてきた知識はあくまで別のどこかの知識で。憧れるものでも恐れるものでもないのだ。
主人公はB組。というかB組の描写を練習したくてどんな主人公にしようか考えた結果コレが出来上がったので、実はB組に通う描写の方がメイン。