闇の魔法を使える武偵っておかしいか?   作:トナカイさん

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大変遅れました。
本当に申し訳ありません。
今後も遅れたり、エタる事もありますができる限り執筆していきますので今後ともよろしくお願いします。


装填23 父娘デート?いいえ、ただのお食事です!

______空から、女の子が降ってくるって思うか?

 

そんな奴はいない?

ああ、俺もそう思っていたさ。

そんなのは、映画とか漫画とかでよくある設定でしかないって。

仮に、もし実際に降ってきたらソイツは厄介なものを抱えた、ただの問題児(トラブルメイカー)だと思う。

そんな問題児(トラブルメイカー)相手に自分から関わりあおうと思う奴はよっぽどの暇人か、怖いもの知らずか、あるいは自分は絶対に大丈夫だと思っている過信家くらいだ。

どちらにしろ少人数だと俺は思う。

映画とか漫画とかならいい導入だ。

 

それは不思議で特別な事が起きるプロローグ。

主人公は正義の味方にでもなって、ドキドキワクワクな大冒険をそのヒロインと一緒にするんだ!

 

 

ああ、だからまずは空から女の子が降ってきてほしい!

……なんていうのは、浅はかってもんだ。

だってそんな子、普通なワケがないからな。

普通じゃない世界に連れ込まれ、普通じゃない価値観を押し付けられる。

そして厄介な出来事に巻き込まれる。

そして、大切なものを奪われる。

現実に起きるとそれはとても危険で、苦しく、辛い出来事なんだ。

 

 

だから俺、八神(ミツル)は______空から女の子なんて、降って来なくていい。

俺は厄介事に巻き込まれるのは……人を傷つけるのは本当は嫌なんだ。

だから、本当は戻りたくないんだ。あの、トチ狂った学校の……あの、『学科』には……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______空から女の子が降ってくる……なんて出来事が現実に起こった。

起きてしまった。

真上から両手を広げて、背中にある白い翼をはためかせて彼女はゆっくり、ゆっくりと俺の方に向かって降下してきた。

彼女が翼をはためかせる度に、白い翼から羽が舞い落ちて、その羽は風に吹かれて辺り一面に降り注ぐ。

セーラー服を着た黒髪美少女が頭に光輪を浮かべ、背から翼を展開させるその姿は、まごう事なき、天使が神々から遣わされて人々元に、天界から下界に降臨したかのような、神秘的な光景だった。

そんな、神々しく降臨した目の前の天使は俺の腕の中に飛び込むやいなや、俺の胸に顔を埋めてその小さな口から第一声を発した。

 

「やっと、見つけた〜!

パパぎゅー、して?」

 

「第一声がそれか⁉︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あかね色に染まる坂を下る……なんて事もなく、俺と俺の隣を歩く少女、ヒカリは学園島の歩道を共に歩き、モノレールに乗って移動して台場にある某ハンバーガーショップに辿りついた。

そもそも浮島の学園島に坂道なんて存在しないからな。

いや、あるのかもしれないが坂道があるなんて話を聞いた事はない。少なくとも俺はな。

ハンバーガーショップを物珍しそうに見るヒカリの手を取って注文カウンターに向かう。

今日は朝から大変だったから正直、夕飯を作る気力はなかった。

いや、さっきまでは少しはあったが……もうその気力はなくなってしまった。

主に隣にいる少女の所為で。

 

「うわぁ〜⁉︎ たくさんメニューがあるんだねー!

何にしようかな? ねえ、パパのお勧めは何?」

 

「そうだなー。無難に照り焼きとか、チーズがいいんじゃ……って、人前で『パパ』は辞めろ⁉︎」

 

あらゆる誤解を受けるじゃねえか!

……ほら、もう受付のお姉さんが明らかに変な人を見る目を向けているぞ。

何故か、俺にな。

 

違いますよ?

俺は(今世では)まだ、独身ですからねっ!

子持ちのパパとか、そういうプレイとかしてるワケじゃないですからねっ!

 

「ははっ、ふざけて変な事いうなよ。

ただの同級生とのお食事だろ?」

 

「えー、だってパパはパパだもん。

娘がパパにパパって言うのは『普通』でしょ?」

 

「その価値観は誰に教わった?」

 

男子高校生に向かって、人前で『パパ』と呼ぶのが『普通』とか……。

ないわ。それはないわ……。

 

「絶望したっ! お前の変な価値観に絶望したっ⁉︎」

 

「あ、そのネタ知ってる。女神様が好きだった漫画のネタだ!

『パパ◯き』とか、『ハヤテの◯◯◯!』とか、『さい◯まチェーンソー少女』とかよく読んでたよ。

あとは、アニメで『スクール◯イズ』とかも見て勉強してたよ」

 

おい、女神。

うちの子になんて物を教えてんだ!

『パ◯聞き』とかはいいが、『さい◯まチェンソー少女』なんて読ませるなよ。

うちの子が病んだらどうしてくれるんだ⁉︎

漫画読ませたり、アニメ見せるなら『まぶ◯ほ』とかにしとけよ。

え? それもヒロイン病んでるって?

……聞こえない。何も聞こえない。

 

「あの〜」

 

大体、うちの子が病んでるわけないじゃないか。

うん、ほら。きっとアレだよ。アレ。

今朝、雪姫とかに絡んだのは久しぶりに会った父親に、知らない人が近づいていたからちょっと驚いただけだよ。

うん。きっとそうだよ。

 

「あ、あの〜、お客様?」

 

「あん? 私のパパに話しかけないでもらえます?

パパに話しかけていいのは『娘』である私だけだから」

 

……うん。アレだよ。

アレ、アレ。

ちょっと寂しがり屋なだけだよ。

……多分。

 

「え? いや、その……お客様。ご注文が……」

 

「聞こえなかったの?

聞こえないならその耳切り落とすよ?」

 

「ひっ⁉︎ ナイフ⁉︎ も、申し訳ありませんー!!!」

 

……アレだよ。アレ、アレ……!

 

「うちの子がヤンデレてるよー⁉︎

畜生ーーー!」

 

慌ててヒカリを取り押えて、俺はすぐに店員さんに謝罪した。

その場はアメリカンなジョークという事でなんとかなった……というわけでもなく。後始末で(迷惑料として食べたくもないハンバーガーやナゲットを大量買いして財布が軽くなった事もあり)精神的に疲れた俺を他所に、ヒカリはニコニコしている。

 

「照り焼きハンバーガーって美味しいね!」

 

「……そっか。よかったな……」

 

「好きな人と食べると美味しさ100倍だねっ!」

 

「……」

 

夕暮れ空の下、俺とヒカリはハンバーガーを食べている。

……台場のハンバーガーショップのお洒落なオープンテラスで、な。

新しくて綺麗なこのテラスには、カップルも多い。

中身がちょっと残念な事を知らなければ単なる美少女にしか見えないヒカリと共に向かいあってハンバーガーを食べている俺達の光景も、パッと見、制服デートに見えているんだろうな。

世間の人には。

 

「んーいいお天気! 絶好の父娘(おやこ)デートだね、パパ!」

 

この自称、俺の娘ことヒカリさんは、どこにスイッチがあるのか解らないが、チャンネルが切り替わると______ナイフを人に突きつけたり、人の身体を石化させたりしてしまう、ちょっと困った少女だ。

 

(って何だよ、『父娘デート』って……)

 

前世では確かに親子だったが、今は血の繋がらない『他人』なんだから、そんな変な呼び方すんなよ。

あとハンバーガーには普通に炭酸飲料だろ!

シェイ◯なんて邪道だ!

……まあ、あくまで俺の好みは某炭酸飲料だから、だが。

などと俺様ルールをボヤきながら俺はヒカリとの制服デートを無事に終えた。

 

 

……のならよかったんだが、そう簡単にはいかなかった。

 

 

 

俺とヒカリが学園島に戻ってきて、俺は自室として使っている寮への道を歩いていくと。

トコ、トコ、トコ。

当然のように、ヒカリが後を追てきた。

俺が止まれば、ヒカリも止まり。

俺が歩きだしたらヒカリも歩き始める。

試しに全力疾走してみたら……ヒカリは空を飛んで追いかけて来やがった。

……うん。どうしてこうなった?

 

「なあ、ヒカリさんや」

 

「なに、 パパ?」

 

「そういや聞いてなかったけど……お前、うちの学校の制服着てるって事は編入するんだよな?」

 

「うん。そうだよ〜」

 

「学科は?」

 

「もちろん、パパと同じ超能力捜査研究科(SSR)

あと、救護科(アンピュラス)も掛け持ちするよ!」

 

それは予想していた。

超能力……魔法の素質はあるだろう。

無詠唱で高度な石化魔法を普通に使えていたくらいだからな。

それに俺の身体を直したあの歌はなんだったのか、その答えはまだ聞いていない。

俺の知らない能力をヒカリが持っている事は予想ついた。

だが、それよりも切実な問題がある。

 

「そっか……で、何処で(・・・)寝泊りするんだ?」

 

 

そう。俺の側を離れたがらないこの少女が何処で寝泊りする気なのか?

その問題が今の俺にとっては切実だ。

 

「そんなの決まってるじゃん!」

 

ヒカリは何を聞かれているのか解らないというような、キョトンとした表情を浮かべながら告げた。

 

「パパの部屋が私の居場所だよ?」

 

 

 

神様一つ聞きたい。

俺が一体何をした?

あと、もう一つ。

娘のヤンデレはデフォですか?

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

信じられない事に、ヒカリとの同居許可は教務課からあっさりと降りていた事を知った俺というか、俺達、俺とヒカリは、雨が降る中、バス停の前でバスを待っていた。

7時58分発。武偵高行きのバスを待つ。

昨夜は運がいい事に同居人は小太郎以外に帰って来なかったし、何故か、アリアも帰って来なかった。

正直、ヒカリの事で頭が一杯でアリアが来なかった原因を気にする余裕はなかった。

だから解らなかったんだ。

思い出せなかったんだ。

今日、この日に起きるあのイベント(・・・・・・)の事を……。

バスがバス停に着き、乗り込むとバスは超満員だった。

ぎゅうぎゅう詰めにされ、早くもバスに乗った事を後悔し始めたその時。

聞き覚えのある友人の大声が聞こえてきた。

 

「やった! 乗れた! やったやった! おうキンジおはようー!」

 

友人の武藤剛気の声が響き、それと同時に、俺の頭の中でこの後起きる出来事が鮮明に映像となって脳内に流れた。

響く、悲鳴。

轟く銃声。

無機質な機械の声。

撃たれる少年、庇う少女……。

飛び散る血液……。

海中にあがる水柱……。

 

「ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ……!

今日は武偵殺しが起こす『バスジャック』事件の日じゃねえか⁉︎」

 

俺がその出来事に気がついた、その時。

 

「俺のチャリはぶっ壊れちまったんだよっ。これに乗れないと遅刻するんだ!」

 

「ムリなもんはムリだ! キンジ、男は思い切りが大事だぜ?

1時間目フケちゃえよ!

というわけで2時間目にまた会おう!」

 

薄情な武藤の声と、意気消沈するキンジの声が聞こえ、俺は現実を直視する事となった。

 

キンジが乗り遅れたバスに俺が乗り合わせている。

……現実はこんなもんか。

武藤の言うとおり、許されるなら1時間目の授業なんてフケてえよ。

バスジャックに巻き込まれるくらいならな!

 

いや本当。

……どうしてこうなった?

 

 

 

 

 

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