闇の魔法を使える武偵っておかしいか?   作:トナカイさん

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装填25 バスジャック②

逆さ吊り……というか、ほとんどヒカリに抱きつくような体勢で車体下を見るとそこにはやはり爆発物が固定されていた。

カジンスキーβ型プラスチック爆弾。

俗に言うC4と呼ばれるものだ。

この世界では武偵殺しが使う爆弾として、今やすっかり有名である。

その爆弾が見えるだけでも______炸薬の容積が、3500立方センチほどのものが固定されていた。

過剰過ぎる量だ。

自動車どころか、電車を吹っ飛ばせるくらいの破壊力を秘めている。

 

「どうするの?」

 

俺を抱き抱えて地面スレスレを低空飛行するヒカリが聞いてきた。

どうするのか、そんなの決まっている。

 

「こんだけの量だ。もし、爆発したら尋常じゃない被害が出る。

……凍らせて使えなくしちまおう」

 

普通なら潜り込んで解体を試みる、というのが一般的だろうが。

だが、俺には爆弾の解体経験なんてない。

素人が下手に触れる危険性を考慮したら、考えられる手段は二つ。

知識や経験がある奴の到着を待つか、あるいは解体以外の対処をするか、だ。

幸いな事に俺にはその手段がある。

そう、魔法だ。

炸薬が使いものにならないくらいの温度まで冷却させてしまえばいいのだ。

 

「火属性の魔法をぶつけていっそ爆発させてしまう、というのも悪くないが場所が場所だしな。

爆発させたら吹っ飛んじまうからまずは冷却させて使いものにならなくしてから取り外す。

その後は海にでもぶん投げて、爆発させる……そんな感じでいこうと思うんだが」

 

「うん。いいと思う……けどこういうのってお決まりのパターンがあるんじゃない?」

 

「ん? 何がだ……チッ」

 

ヒカリの言葉に疑問を持ったその時。

俺達の背後に近づく、自動車のエンジン音が聞こえてきた。

ただの自動車なら問題ない。

だが、その自動車。

無人の真っ赤なルノー・スポール・スパイダー。

その赤いオープンカーの座席には見覚えがありまくるUZIを載せた銃座が付いていて。

その銃座が、こっちに狙いを______!

 

 

「飛び上がれ______ヒカリッ!」

 

俺が叫んだ直後、ヒカリは俺を抱き抱えたまま空高く上昇した。

そして、俺達が飛び立った直後、俺達の後を狙うかのように大量の銃弾が放たれた。

 

______バリバリバリバリッ!

 

放たれた銃弾はバスの後部窓を破壊した。

バスの中からは悲鳴や怒声が聞こえてきた。

恐らく今の銃撃により、ただでさえ不安定だった学生達は大混乱になっているだろう。

 

「クソっ、原作よりも襲撃のタイミングが早い! まだアリアやキンジがいないのに、もう仕掛けてくるなんて想定外だ」

 

「どうする? 邪魔ならみんな、石化させちゃうけど?」

 

物騒な事を平然と言ってくるヒカリ。

この子には一般的な常識とか、良心とかはないのだろうか?

普段なら宥めつつ、お説教だが。

まあ、今はその力に頼るとしよう。

 

「そうだな。あまり時間もないし、頼めるか?」

 

「うん、任せて!

じゃあ、まずはバスの真上に移動するよ〜」

 

そう言ってバスの真上に飛翔したヒカリ。

詳細は不明だが、ヒカリは高度な石化呪文を無詠唱で放てるようで、今回はそれを使ってバスに並走するオープンカーを石化させる作戦だ。

 

「それじゃ、いくよ〜!

っ⁉︎」

 

呪文を放つ為にヒカリが掌をオープンカーに向けたその時だった。

一発の銃声に似た音が聞こえて______

気が付いた時には遅かった。

 

「ヒカリ⁉︎」

 

銃弾はヒカリの翼を打ち抜いて真下の道路に着弾した。

そう、俺達は狙撃されたのだ。

俺やヒカリに気付かれる事なく、空高く飛翔していたヒカリの翼を打ち抜くくらいの高度から。

 

「これは……ダメ……力が失われてい……」

 

「なっ、おい、ヒカリ!

糞、何処だ!」

 

あっ、と思った時には……俺は空中に投げ出されていて。

銃弾を浴びたヒカリは気を失ったのか、頭から真下に落下していっている。

 

「ヒカリ____________!」

 

落下して行く、中。

俺に出来る事はヒカリの名前を呼ぶ事しか出来なかった。

そして。

 

「っ⁉︎ 上から……」

 

空中に投げ出された俺の、さらに上空から無数の銃弾が降り注いだ。

上空を見たが雨で視界が悪く見えない。

俺はなす術なく、その銃弾を身に喰らい……。

 

「がはっ……魔力が……抜けて……」

 

俺は気を失っていった、のだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ここは?」

 

『気__い______よ__っ__わ。

ち_____ちな___。』

 

目を覚ますと、目の前には心配そうな顔をしたアリアがいた。

アリアは全身をSATやSWATが着るような装備を身につけていて。

俺が目を覚ました事に安心したのか、無線で誰かとやり取りをし始めた。

 

「______⁉︎」

 

俺が目覚めた事に気付いたのか。キンジが話しかけてきたが騒音の為、何を言っているのか解らない。俺が首を傾げていると側に控えていたレキがインカムを渡してくれた。

俺はそのインカムを装着してみた。

 

「ここは……ヘリの中?」

 

俺が寝かされていたのは、ヘリの座席で。

外を見ると大雨が降り注いでいた。

 

『そうだ。学園島のビルの屋上に倒れていたのをレキが見つけたんだ』

 

「レキが⁉︎」

 

キンジの言葉に俺は驚いてしまう。

レキ。

俺達と同じ武偵高の二年で、Sランクに格付けされている狙撃科(スナイプ)の天才少女。

身長はアリアより、頭半分大きい程度だが腕は確かで外見もショートカットの髪型をしていて可愛らしい美少女だが、その無表情のロボットみたいな性格な為。

付いたあだ名はロボットレキ。

名字は誰も知らない。

原作では名前の漢字表記は蕾姫とされていた。

そんな無表情、無感情なレキが俺を助けてくれた……?

 

『八神さん……目を覚まされたようで何よりです』

 

「あ、ああ……悪い。助かった」

 

『ヒカリさんも無事ですからどうぞ安心してください。

救護科の電波を傍受したところ、先ほど武偵高の附属病院の方に緊急搬送されたという情報を掴んでいます』

 

「なっ、病院に⁉︎」

 

病院に運ばれるほど酷い怪我をした。

……という事だろうか?

 

『身体の方には深刻な外傷はありませんでした。

ただ……』

 

「ただ、何だ?」

 

『……聞きたいか?』

 

俺の問いに、レキではなくキンジが尋ねてきた。

 

「ああ。知りたい、どんな結末であれ巻き込んじまったのは俺だからな」

 

『……そう。ならわたしが話すわ。

ヒカリは失ったわ。

記憶を、ね……』

 

「なっ……嘘だろ?」

 

失った?

記憶を……。

 

『詳しい事は検査してみないと解らないみたいだけど……ヒカリに撃ち込まれていたのはあんた達、超偵を無力化する為の特殊弾。

今まで見た事もないものだったわ』

 

『数年前から市場に出ている魔法禁止弾に近い品物です。

ですが、その構造はこれまで流通したものより複雑で、より高度な技術力で作られてました』

 

「詳しいな、レキ」

 

『銃弾を作るのは得意ですから』

 

あれ? レキってこんなに喋る奴だったか?

もっと無表情、無感情な奴というイメージがあったんだが。

 

『あんた達が見た現場での状況を詳しく知りたいわ』

 

「まあ、そうだろうな。

さて。まずは何処から話したものか……」

 

『……思ったよりも冷静ですね』

 

「まあな。悔しさや後悔、怒りももちろんあるが……騒いだところでどうにもならないからな。

時間でも巻き戻せる奴がいるなら、もっと騒いで暴れるけどな。

だけど過ぎちまった事は変えられないからな……」

 

ゲームとかみたいに何度もやり直しが出来るなら俺だって喚くさ。

「この糞ゲーが!」とか「ふざけんな!」とか言って八つ当たりとかもしただろう。

だか、今起きているこれは現実で。

怒りや憎しみをぶつける奴はまだ捕まっていないのだ。

武偵殺し。

一連の爆弾事件は確かにあの子の仕業だ。

だが、今回のヒカリや俺を狙って狙撃した犯人は別にいる。

彼女の他にも誰かがアリアを狙っている可能性がある。

それに……武偵殺しの正体を知っているが、俺にはヒカリを襲ったのが彼女とはどうしても思えない。

彼女ならもっと違うやり方で正々堂々、正面から来ると思う。

根拠なんてない。

ただ、ああ見えてプライド高い彼女なら姿を見せてから挑んで来ると思う。

なんせ彼女は証明しないといけないからだ。

自分が如何にアリアより優れているか、を。

そんな彼女が不意打ちを狙って俺達を襲うとはどうしても思えなかった。

 

『へえ、あんたもそれなりに考えていたのね?』

 

「その言い方は失礼だぞ!

ったく、それよりアリア。

バスの方はどうなってる?」

 

『状況は変わらずよ、今は青海南橋を渡って台場に入ったわ』

 

「そうか。ヒカリの事も心配だが、キリナも心配だな……」

 

『キリナ?

誰よ、それ』

 

「俺の従姉妹だ」

 

『へー、あんた従姉妹いるのね』

 

『……。

そうですか……従姉妹ですか……』

 

気のせいだろうか?

レキの表情が一瞬険しくなったかと思えばすぐにホッとしたかのように見えたのは。

その時だった。

インカムからキンジの声が聞こえてきた。

 

『警視庁と東京武偵局は動いてないのか?』

 

『動いてる。でも相手は走るバスよ。それなりの準備が必要だわ』

 

「アリアの言うとりだ。少なくともバスの真下に潜れるようにワイヤーやロープはあった方がいい。

それに全身を守る装備もな。

相手はバスだけじゃない。オープンカーや見えない敵もいるからな」

 

『先にバスに乗り込んでいた光がいる分、情報をよく知る俺達が有利か』

 

「当然よ。ヤツの電波をつかんで、通報より先に準備を始めたんだもの。

光がバスに乗り込んでたのは偶然だったけどね」

 

フン、と鼻を鳴らしたアリアは愛用の二丁拳銃のチェックをしながら言った。

アリアが持つガバメント。

その銀と黒の色が違う拳銃のグリップにはピンク色のカメオが付いていて。

そこに浮き彫りで描かれているのはアリアに似た美人の顔だった。

 

『見えました』

 

レキの声に、俺達は揃って防弾窓に顔を寄せた。

右側の窓には、台場の街並みや湾岸道路、りんかい線が見える。

だが、この距離からでは車はよく見えない。

 

『何も見えないぞレキ』

 

『ホテル日航の前を右折しているバスです。窓に武偵高の生徒が見えています』

 

キンジの言葉に無表情なまま、レキは答える。

 

『よ、よく分かるわね。あんた視力いくつよ』

 

『左右ともに6・0です』

 

サラッと超人的な数字を言うレキ。

視力6・0って……マサイ族とかと同じくらいあるって事だよな?

レキの発言に思わず顔を見合わせてしまう俺達。

するとヘリは降下を始めて、レキが言った辺りを低空飛行するとそこには。

 

『本当にいやがった⁉︎ まあ、いるとは思っていたが……規格外な奴だな。レキも……』

 

キンジといい、アリアといい、レキといい、ネギといい……超人が多すぎる。

周りはみんな超人だ! 超人のバーゲンセールでも開く気か⁉︎

そんな内心で一人突っ込みをしていると。

 

『空中からバスの屋上に移るわよ。あたしはバスの外側をチェックする。キンジは車内で状況を確認、連絡して。レキはヘリでバスを追跡しながら待機。

ミツルはあたしと来なさい!』

 

『内側……って。もし中に犯人がいたら人質が危ないぞ』

 

『あんた、話聞いてたの? 中に犯人はいないわ。

そもそも「武偵殺し」なら、車内には入らないわ』

 

『そもそも「武偵殺し」じゃないかもしれないだろ!』

 

『違ったら何とかしなさいよ。あんたなら、どうにかできるハズだわ』

 

「まあ、俺もサポートするし大丈夫だろう。

あ、そうだキンジ。何があってもヘルメットは外すなよ?」

 

俺がそう言うと、キンジは……。

首を傾げながらも頷いた。

 

 

強襲用パラシュートを使って俺達はバスの屋根に着地した。キンジは着地というより転がった、という表現の方が正しいが……。

 

風よ(ウェンテ)!」

 

俺は風魔法の一種。風を身に纏って体を保護することができる呪文を唱えた。

ふわりと着地した俺は先ず、辺りを見回す。

バスの周りには車は一台も走っていない。

先ほど俺を銃撃してきた真っ赤なルノー・スポール・スパイダーも今は見えない。

今はその姿は見えないが油断は出来ない。

爆弾を解体しようとしたらまた襲ってくるだろう。きっと。

 

「ちょっと本気でやんなさいよ」

 

「本気だって……これでも、今は(・・)……!」

 

これから(・・・・)、本気を出すんだよな?」

 

アリアとキンジの声を聴きながら俺はワイヤーを使って、リベリングの要領でバスの背面に体を落としていく。

 

アリアと共にバスの背面にきた俺は爆弾がある位置をアリアに教える。

 

「なるほど。確かにあんたの言った通りね、3500立方センチはあるわ。

車どころか電車が吹っ飛ぶ過剰な量ね。

一応、キンジに知らせとくわ。あんたはキンジのところに言ってサポートして!」

 

アリアにそう言われた俺はひとまずバスの屋根に戻った。

そして、呪文の詠唱を始めた。

 

来れ(ウェニアント)雷精(・スピーリトゥス) 風の(アエリアーレス)(・フルグリエンテース)!!

     雷を(クム)纏いて(・フルグラティオーネ) 吹き(フレット)すさべ(・テンペスタース)

南洋の嵐(アウストリーナ)

     (ヨウィス・)(テンペスタース)暴風(・フルグリエンス)!!!

     固定(スタグネット)!!!

     掌握(コンプレクシオー)

     魔力(スプレーメントゥム)充塡(・プロ)

     術式兵装(アルマティオーネ)

     疾風(アギリタース)迅雷(・フルミニス)!!!」

 

呪文の詠唱が終わったその時だった。

バスの後方にドン! という衝撃が走った。

 

来やがった!

 

後ろを振り返ると、そこにはやはり例のオープンカーがいて。

さらに上空からは……。

 

「っ⁉︎ これは、魔法の槍?」

 

無数の魔法の槍が降り注いだ。

形状からして電撃系の『雷の投擲』だ。

ただし、俺が使うものより威力も射程もあって色も黒い。

バスに当たりそうな槍を魔法の矢で逸らしながら上を見上げるがそこは雨雲に覆われた視界の悪い空で。

襲撃者の姿はおろか、飛行機の姿すら見えない。

 

「雲より高い位置からの魔法の行使だと⁉︎

どんな化け物だよ!」

 

俺が叫んだその時だった。

バスの後方にいるオープンカーから銃弾がばら撒かれて。

ぐらっ。

バスが妙な揺れ方をした。

 

「まさか……この揺れは?」

 

バスは左車線に大きくはみ出していく。

避けた対向車がガードレールに接触事故を起こし、火花を散らした。

大混乱だ!

恐らく原作通りに運転手が負傷してしまったのだろう。

徐々に速度が落ちていたバスだが、やがて速度を上げ______

バスは右側に急旋回して有明コロシアムの角を大きく曲がった。

曲がりきったところで俺はバスを後続してくるオープンカーに向けて火属性の魔法の矢を無詠唱で放つ。

オープンカーは左右に大きく揺れてガードレールに接触して止まった。

 

「__________やったか?」

 

フラグにならない事を祈りつつ、そう呟いた。

 

 

豪雨の中、バスは高速でレインボーブリッジに入っていく。

都心は目と鼻の先だ。

ブリッジの入り口付近の急カーブでバスは一瞬片輪走行になったが、何とか曲がりきれた。

猛スピードで入ったレインボーブリッジは車は一台もなかった。

警視庁が手を回したのか、道路が封鎖されている。

レインボーブリッジを止めるには手続きに時間がかかるはずなんだが。

東京、神奈川、千葉……その他もろもろの機関に断りを入れないといけないからな。

そんな事を思っていた時だった。

 

「おいアリア、大丈夫か!」

 

キンジが屋上に上がってきた。

俺の忠告を聞かずにノーヘルでな。

 

「「キンジ!」」

 

ワイヤーを伝って上がってきたアリアと俺の声が重なった。

 

「アリア! ヘルメットをどうした!」

 

「さっき、ルノーに衝突された時にブチ割れたのよ! あんたこそどうしたの!」

 

「運転手が負傷して……いま、武藤にメットを貸して「馬鹿野朗!」……光⁉︎」

 

「何でわかんねえんだ! 危機管理無さ過ぎだ!

そんな状態で上がってくるなんて……死にてえのか!」

 

「そうよ。危ないわ! どうして無防備に出てきたの! なんでそんな初歩的な判断も出来ないのよ!

すぐに車内に隠れ_______後ろっ! 伏せなさいよ! 何やってんのバカっ!」

 

アリアは突然二丁拳銃を抜き、真っ青になってキンジに突進した。

俺は瞬動を使い、アリアの前に出る!

キンジの背後、アリアの正面には黒いルノー・スパイダーがバスの後方に走っていて。

そのルノーの銃座にあるUZIが銃弾をぶっ放すのが見えた。

俺は咄嗟に魔法障壁を展開して防ごうとしたが……。

 

「がはっ……?」

 

障壁を貫通した銃弾は俺の腹に被弾した。

魔法障壁をまるで発砲スチロールのように軽々と貫通するだと⁉︎

 

「ミツル⁉︎」

 

「バカっ! 危ない、キンジ!」

 

キンジの声と焦ったアリアの声が聞こえ。

そして驚く事にこの場にいないはずのヤツの声まで聞こえてきた。

 

「銃声⁉︎ ちょっと大丈夫なの、むのー?

って、アンタそのお腹⁉︎」

 

「バカっ、何で……お前まで来たんだよ、キリナ」

 

バスの窓から上がって来たのかキリナは息を乱しながら近寄ってきた。

その頭にはヘルメットはなく、唯一の救いは防弾制服を着ている事だけだ。

俺は腹部を負傷したが防弾制服を着ていたおかげか、重症ではない。

バットで殴られたような強い衝撃はあるが。

 

「危ねえだろが! 何でお前やキンジは俺の言うことを聞かねえんだ!

死にてえのか!」

 

「だって……心配で……あっ、危ない」

 

「っ⁉︎」

 

キリナが動いたと思ったその時。

バスの周りは3台のオープンに囲まれていて。

その内の一台、ルノーが放った銃弾は俺に狙いを付けられていて。

あっ、と思った時には既に遅く。

俺を庇うよに前に出たキリナはその身を銃弾に貫かれた。

 

 

「キ、キリナあああぁぁぁ____________!」

 

俺は魔法の矢を放ち、キリナを撃ったルノーを破壊したが、残っていた別のオープンカーに狙われ。

そのオープンカーに搭載されているUZIによって、銃弾を身体に浴びてしまった。

 

「……魔力が……クソっ」

 

放たれた銃弾が魔法禁止弾だったのか。

身体中から魔力が抜けていき……。

俺はキリナの隣に倒れてしまった。

俺が倒れたのを見たキンジが駆け寄ろうとして、アリアにつき飛ばされた。

銃声が響き渡り、アリアが倒れてキンジの叫び声が聞こえて。

そして。

俺はキリナの囁き声を聞いた。

 

「手……握……」

 

「……手?

握ったところで何の……」

 

何の意味がある。

そう思っていたが……。

 

「……早く」

 

キリナの切迫詰まったような声を聞いた俺は、薄れ行く意識の中で必死で手を動かしてキリナの手を握ようとした。

 

その瞬間。

 

複数の銃声が聞こえ。

空を飛んでいたヘリが墜落するのが見えて。

そして。

 

俺達を乗せた武偵高行きのバスが轟音を上げて爆発するのを俺は感じていた。

焼けるように熱い暑さをその身に感じて……。

必死に伸ばした手がキリナの手を握った感触を感じながら。

そう、俺は短い二度目の人生に幕が降りるのを確かに感じたのだ。

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