(…はあ〜、またやっちまったよ…)
結局出れなかった始業式の後、《闇の魔法》が解けた俺とHSS《ヒステリアモード》が解けた金次は鬱々とした気分で
「おや、ミツル君とキンジ君じゃないか。
どうしたんだい?」
教務科の扉をノックし、弾が飛んでこないか身構えてると中から扉を開けられて中年の男性が出てきた。
眼鏡が似合うその男性は強襲科の担当教師で素行の悪い生徒達からは《デスメガネ》、《笑う死神》などと呼ばれているが奇人変人が多い武偵高の教師の中でも比較的マトモな教師だ。
「「おはようございます。高畑先生」」
挨拶をすると高畑先生は笑いながら挨拶を返してくれた。
「おはよう。
始業式は終わったよ?
クラスに早く行った方がいいよ」
「それが…チャリジャックにあいまして」
「朝から鬼ごっこし(UJI付きのセグウェイに追い回され)て最後は花火上がり(爆弾でチャリ吹っ飛び)ました」
「それは…災難だったね。
怪我とか大丈夫だったかい?」
「俺は平気ですが、金次は(精神的に)駄目そうです」
「…何がお姫にしてあげよう、だよ。
何お姫様だっこしてんだよ俺は…
ああ、もう死にてぇ…」
《あのこと》を思い出したのか頭を抱えて項垂れる金次。
「てなわけで…報告しにきました」
「…ああ、うん。
ご苦労様」
哀れみの視線を金次に向ける高畑先生。
「一応武偵殺しの模擬犯の線で捜査を始めるように伝えるけど…難しいだろうね」
高畑先生が俺達が書いた書類をチェックしながら自身の見解を述べた。
「今回の犯人は狡猾で計画性があると思うな。
セグウェイを遠隔操作して武偵を狙う事により自身の存在を武偵殺しに向ける手法といい、武偵殺しと同じ爆弾を使ってる事から武偵殺しを崇拝している愉快犯かあるいは
「さすがは高畑先生。
やはり愉快犯ですよね?」
金次は武偵殺しのことを完全に愉快犯だと思っている。
「先生。
本物という線は?」
真相を知っている俺はそう言ってみた。
「ないだろ」
金次は何言ってるのコイツはみたいな顔をしてるが俺は真剣な表情で高畑先生を見つめる。
「う〜ん。
その可能性は低いと思うんだけど、だけど個人的にはまだあの一連の事件は終わってないと思ってるよ」
「え⁉︎
何でですか?」
高畑先生が武偵殺しを疑ってる事に驚く金次。
「金次。
可能性事件って知ってるか?」
「可能性事件?
なんだそれ?」
俺がそれを口にした時高畑先生の目が僅かに開いた。
「ミツル君…それは」
「さあな。
武偵なら後は自分で調べろ」
高畑先生は何かに気づいたようだが《それ》を口に出さない。
「二人とももうすぐHRが始まるからもう行きなさい」
「あ、そうだ。
先生超研の実験室放課後に使ってもいいですか?」
「また、魔法の練習かい?
研究熱心だね。
うちの強襲科の生徒にも見習せたいね。
うん、わかった。
SSRの担当教師の先生には僕の方から言っておくよ。
壊さない程度に使ってほしいな」
「…善処します」
使う度に施設を破壊してきた前科がある身だからそう言うしかなかった。
掲示板に出てた二年A組の教室に入り適当な席に腰掛けると爽やかイケメンの不知火が話しかけてきた。
「おはよう。
今日はいつもより遅いね。
珍しく寝坊したのかな?」
「おはよう…ああ、おかげで人生初の貴重な体験ができたよ。
大人の階段を三段飛ばして上がれた感じだ」
「…な、なん…だ…と?」
金次に話しかけて一蹴された大男の武藤が大袈裟に言った俺の言葉に反応してきた。
「光お前、ま、まさか…星伽さんと。
お前は俺達の同胞だと思ってたのに…。
糞、金次のたらしが光までうつったか」
「いや、俺を金次みたいなたらしと一緒にすんなよ。
それと武藤、白雪とはなにもないからな。
俺と金次は白雪にとってたんなる友人と幼馴染(恋人?)の関係だ」
「そ、それじゃ俺にもチャンスが…」
「「いや、それはない(んじゃないか)な」」
重なる俺と不知火の声。
「ちきしょー‼︎」
泣き叫ぶ武藤。
そんな馬鹿騒ぎをしているとチャイムが鳴り、担当になる教師が入ってきた。
で、HRが始まり自己紹介がはじまったんだが…。
「先生、あたしはアイツらの隣に座りたい」
俺と金次がクラス分けされた二年A組の、最初のHRでー
気絶しそうな程不幸なことに
クラスの生徒達は一瞬絶句して、それから一斉にこっちを見て……
わぁーつ!と歓声を上げた。
俺はーただ呆然としていた。
ありえん。
ありえないだろ…これは。
何で金次だけじゃないんだよ⁉︎
先生は「うふふ。じゃあまずは去年の三学期に転入してきたカーワイイ子から自己紹介してもらっちゃいますよー」などと前置きをしたからてっきり原作通り金次の隣に座るものとばかり思ってたのに…。
「な、なんで…だよ!」
ようやく出てきた声で、呟く。
「よかったなキンジ、ミツル!
なんかしらんがお前らにも春が来たみたいだぞ!先生!オレ、転入生さんと席代わりますよ!」
武藤の馬鹿が使わなくてもいい気を使って俺と隣だった席をアリアと代わろうとする。
「あらあら。最近の女子高生は積極的ねぇー。じゃあ武藤君、席を代わってあげて」
事情を知らない先生は馬鹿が出した案を即採用してしまう。
わーわー。ぱちぱち。
教室は拍手喝采を始めてしまった。
俺の隣に着席したアリア。
「キンジ、これ。さっきのベルト」
アリアがちっこい身長を伸ばして手に持つベルトを高く掲げた。
キンジの席は教壇がある列の後ろで俺とアリアからは離れている。
「理子分かった!
分かっちゃた!ーこれ、フラグばっきばきに立ってるよ!」
俺の正面に座っていた理子が、ガタン!と席を立った。
「キーくん、ベルトしてない!そしてそのベルトをツインテールさんが持ってた!
これ、謎でしょ謎でしょ⁉︎でも理子には推理できた!できちゃた!
あれ?でもそ〜するとミッくんは…あ、そうか。そっか。
キーくんは彼女の前でベルトを取る何らかの行為をした!
そこにミッくんが彼女を訪ねてきて修羅場になったんだね!
キーくんとミッくんが彼女を巡って対立、彼女は二人とも愛してたんだよ!
で、ケンカの後は仲良く三人で《いいこと》したんだね?
キーくんはその時彼女の部屋にベルトを忘れてきた!
つまり三人は熱い熱い、恋愛の真っ最中なんだよ!」
馬鹿理子。お前。
だがここは馬鹿の吹きだまり武偵高。
「キ、キンジがこんなカワイイ子といつの間に⁉︎」
「影の薄いヤツだとおもってたのに!」
「女子どころか他人に興味なさそうなくせに、裏でそんなことを⁉︎」
「フケツ!」
「光君はそういうタイプじゃないっておもってたのに!」
「ガッカリだよ!」
「サイテー!」
「先生、遠山君と席を代わります」
新学期なのに、息が合いすぎだろお前ら。こういうことになると。
不知火が気を使ったせいで金次もアリアの隣にさせられた。
ザマアみろ。
「「お、お前らなぁ…」」
ずぎゅぎゅん!
鳴り響いた二発の銃声が、クラスを一気に凍りつかせた。
真っ赤になったアリアが、例の二丁拳銃を抜きざまに撃ったからだ。
「れ、恋愛だなんて……くっだらない!」
翼のように広げられた両腕の先には、左右の壁に一発ずつ穴が空いていた。
チンチンチンチーン。
拳銃から排出された空薬莢が床に落ちて、静かさを際立たせる。
馬鹿理子は前衛舞踏みたいなポーズで、ズズッと着席した。
理子の馬鹿には朝の分も含めて後でお尻ペンペンしちょる。
武偵高では、射撃場以外の発砲は『必要以上にしないこと』となっている。
つまりは、してもいい。
だが、始業式の朝からいきなり撃ったのは彼女が始めてだろう。
「全員覚えておきなさい!そういう馬鹿なことを言うヤツには……」
それが、神崎・H・アリアが最初に発したセリフだった。
「風穴あけるわよ!」
「
五時限目、SSRの超能力実験室内で俺は魔法の練習をしていた。
今のは、取得中の
威力は中の上。
技のキレや発動までの時間が長くまだまだ実戦では使えそうにない。
「はあ〜。
なんか今日は疲れたな」
全ての授業と自主練習を終えて帰宅しようとSSR棟を出るとソイツはいやがった。
「遅い!
レディを待たせるなんて紳士失格ね」
夕陽を背に浴びて緋色に輝く…神崎・H・アリアがな。
高畑・T・タカミチ。
この世界に何故か存在する魔法教師の一人。この世界では何故か武偵高の教師として活躍中。
居合い拳(無音拳)を使う強襲科の敏腕教師。
蘭豹に密かに想われてる模様。