救われズの手 作:救われ⬜︎
世界には兎に角救われない話が溢れている。生まれが悪かっただとか、運が悪かっただとか、一般人が貰えるものが貰えずに、一般人を模して必死に生きてるヒトがいる。
時に、そんな同類に手を伸ばしてしまう阿呆も少ないがいる。
こんな阿呆は偽善者と呼ばれる。けども、貰えた貴方達はそんな人達を“良い人”と呼ぶのでしょう。
そんな有象無象の小話
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ある日の日が沈み切った頃、中学生の緑谷は夜の公園のベンチで座っていた。緑谷はヒーローに憧れた。しかし、力がなく、ヒーローへの道は重い扉で塞がれていた。
そんな彼は今日、憧れのヒーローに道を否定され、深い絶望に沈み、何をするわけでもなく、心の防衛本能が彼を動かし此処へ至った。
泣き喚く訳でもなく、世の理不尽への怒りに身を任せ暴力を振るう訳でもなく、ただその虚な目を公園の何処でもない何処かへ向けていた。
「……やっぱ、僕なんかじゃ」
「…悪い夢をみてるのかな…」
現実を受け入れられず、ぽつぽつと漏れる何百目かの呟き。誰もいない、ただ町の生活音と風の音。虫の声が聞こえるだけの夜の公園。
誰かが、来てくれる。誰かが、助けてくれる。そんな訳もある筈がない。
きっとヒーローが来てくれる。ヒーローが助けてくれる。そんな事がある筈がない。
そうして漏れた最低の言葉
「…僕なんて」
「君、大丈夫かい?」
は誰かの声によってかき消された。
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緑谷は声をナイーブなところにかけられ、驚きから鳥肌がたち、人がいるという認識が恥じらいを産んだ。
声をかけてき方向を見る。街灯の逆光で顔はよく見えないが、身長は緑谷より明らかに高く、スーツを着て黒革のバックを持っていることから、この人は仕事終わりの社会人だと推察した。
そんな社会人は緑谷の前まで来て告げた。
「小銭あげるから、水飲んで家に帰りな。ここら辺はヴィランが出やすいから危ないぞ」
ほれ、と社会人は屈んで百円玉を見せた。
突然すぎる事に思わず硬直する緑谷。
反応がないから首を傾げる社会人。
「え…?えっと…い、いや、大丈夫です!そんな、見ず知らずの方からお金なんて貰えません!」
我に帰った緑谷は腕を顔のまでばつ印をつくり、社会人の申し出を断った。
「そう?ならちょっと待ってな」
「え、あ、は、はい」
社会人は緑谷の横へ行き
ガシャコン
ベンチ隣に置いてある自販機で水を購入した。
下の方から500mlの天然水を取り出すと、緑谷に投げた。
「はい」
「うぇ!?あ!っと!?はっ!ふぅ…よかった…」
唐突な行動に、水を一度落としかけるが緑谷は手を躍らせてなんとか受け止めた。
「それあげるから飲みな」
「…ありがとうございます」
手に入ってしまった所、無理に返すのも逆に失礼だと考え緑谷は水を飲むことにした。
「いただきます」
キャップを開けて口を付け、飲むと自身が感じていた以上に喉が渇いていた事に気が付いた。一口、二口、三口分飲んだ所で一旦口から離しキャップを閉めた。
「よし、これで帰れるな少年。じゃ、私は帰りあっちだから。バイバイ」
社会人はすこし笑って公園の出口へ進み始めた。
「えっ、ちょ!ちょっと待って下さい!」
緑谷は、反射的に立ち上がって呼び止めてしまった。何故か、と聞かれてもなんとなくだ。何もかんがえていなかったのかもしれない。
その声の大きさに社会人は少しビクッとして歩みを止める。
「どうした少年?それはあげるから君も帰るんだ」
少し嫌そうな顔をして、帰宅の催促をする社会人。
「あ…その、すみません…ええと…」
緑谷は正直呼び止めてしまった事を悔やんだ。何を言えば良いのか、何かするのか、お礼は出来ない。なのに何故呼び止めたのか、頭の中でぐるぐる回る思考、漏れる音。
そんな思考の末
「その、僕も帰り道そっちなんです…だから、ええと、あの、少し話しませんか…?」
恐らく帰り道が同じ方向な事に賭けた
「え、キミもこっち?」
「エ、ァハイ!」
ア、やっぱ嫌ですよね…ハハハ…と頭を掻く緑谷。
「…まぁ、良いよ。ただ、警察は呼ばないって事を誓えるかい?面倒事は嫌なんだ」
未成年と一緒だと警察に呼び止められそうでね。と、社会人はどうにも社会的に死ぬことだけはしたくないようだった。
「け、警察…いや呼びませんよ!水下さったのに…!」
そう言ってブンブンと首を横に振る緑谷をみて、なら良いよ、さ帰ろうか。と社会人は言い、帰りはじめた。
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公園から出た2人は悩んでいた。
「さて、何を話そうか」
「そ、そうですね…」
知らない人と話す事の緊張からか、緑谷はうっと顔を固める。しかし、緊張以外にも理由があった。
緑谷は、夕方ある事件から家に帰った後、運動できる服に着替えて、ただがむしゃらに走っていた。体力が尽きてなお、思考が纏まらずネガティブな思考に囚われ、ひたすら卑下しながら歩みを止めなかった。気付けば夜。そんな長い時間分の距離が公園から家まであった。
辛うじて道などはわかるものの、どのくらいの時間話す事ができるだろうか、この知らない大人と何処まで一緒に行くのか、行き先不明の電車にいるような気分だった。
「うーん、そうだ君の個性教えくれないかな。私は無個性でさ、人の個性を聞くのが好きなんだ」
「えっ…個性ですか…?」
緑谷が固まった事に、どうかした?と社会人が歩みを止めた。
何かに気付いたようで社会人は頭を掻いた。
「すまない、デリカシーがなかったね。別の話をしようか」
ごめんよ、と言って話を変えようとする社会人だがそれを
「…いえ、大丈夫です…」
緑谷が歩き始めた。
「僕も無個性なんです」
社会人は驚いた。そして
「そっか、良い個性だ。水奢って正解だったよ」
そう言って、微笑んで社会人は緑谷の歩みに合わせて、歩き始めた。
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2人は長い道を歩きながら話をした。
主に社会人は先立としてか、よく話を聞き、緑谷の気持ちを受け止め、コンビニに寄って、お菓子を2人で食べて、更に話をした。
学生の話、生活の驚き、個性への憧れ
ヒーロー達への憧れ
個性という救いを得られなかったもの同士の話は兎に角弾んだ。
そして、終わりが近づいていた。
「さて、私は次の交差点のを右に曲がった先の駅に行くから、そろそろお別れだ」
そう言って指す交差点は帰宅ラッシュが終わったのか、駅の近くにしてはやけに空いていた。
「残業のせいで、バス逃して長い道を歩くのかぁ…とか思ってたが、キミのお陰でいい時間を過ごせたよ」
話す社会人は歩きながら手を上に向け背伸びをした。
「い、いえ!お菓子や飲みもの下さってありがとうございました!」
顔を見て言う。緑谷は社会人に酷い隈が出来ている事に今更気がついた。
「いいよ、いいよ〜」
ヘラヘラと笑う社会人
「あ、そうそう、キミに一つだけ先輩として注意だ。良いかい」
唐突に話し出す社会人
「“本当に優しい人は、苦痛を知ってるいる人だ。だからこそ、壊れやすい”」
その声には感情が込められておらず、ただ事実を述べたようであった。
「だから、キミ。“幸せに”なれよ」
じゃぁ、バイバイ。社会人はそう言って手を振って人混みに消えた。
えっ、と緑谷は声を漏らすが社会人は早く帰りたいのだろうと思い。
「ありがとうございました!!!」
大きな声でお礼を言った。人混みから手を振るのが見えた。
2人はそれぞれの家へと帰り始めた。
緑谷は世界にはこんな優しい人も居るんだと
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その後、緑谷は何があれヒーローへの道を切り拓き進む日々を過ごしていた。
そんな日々の片隅で駅のホームで人身事故があったらしい。