ソードアート・オンライン~剣聖に至る道~   作:ほにゃー

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第10話 伝説の勇者

突如君臨した、第2層フロアボス“アステリオス(キング)”により戦況は混乱へと陥った。

 

「まずいぞ!本隊が!」

 

エギルの言う通り、アステリオス(キング)の出現位置は、部屋の中央。

 

対してバラン将軍と戦って居る本隊は、部屋の最奥。

 

バラン将軍とアステリオス(キング)に挟まれる形となり、撤退が難しくなった。

 

「どうする!?こっちを二つに分けて、王の方を抑えるか!?」

 

「いや、まだ王と本隊は距離がある!優先順位を間違えるな!」

 

エギルの提案に、キリトが素早く却下を出す。

 

「H隊!G隊!ナト大佐に総攻撃(フルアタック)!回避、防御不要!」

 

「要するにゴリ押しってことだろ!」

 

「その通り!」

 

キリトとカイが先に走り出し、エギル達H隊も続く。

 

ナト大佐と戦っていた、G隊《伝説の勇者達(レジェンド・ブレイブス)》がナト大佐の動きを抑え、ソードスキルを放つ。

 

全員でほぼ同時に、現時点での最強のソードスキルをなりふり構わず叩き込まれ、ナト大佐の残りのHPは全て吹き飛び、消滅する。

 

「次だ!このまま王が本隊と接触する前に、将軍を討ち取るぞ!」

 

そのままHPが残りバー1本の将軍も倒そうと走り出すが、その瞬間、アステリオス(キング)は大きく、息を吸い込む動作をする。

 

「まずい!」

 

キリトが叫んだ。

 

アステリオス(キング)のその動作が、何を意味するのかはβ出身のキリトならいざ知らず、カイやエギル、オルランド達も気づいた。

 

遠隔攻撃(ブレス)だ!」

 

キリトが叫ぶと同時に、アステリオス(キング)の口から雷が吐き出される。

 

SAOでは魔法は存在しないが、魔法要素が全て排除されてるわけではない。

 

装備するとステータスが上がったり、各種支援(バフ)を与えるマジックアイテムが多数あり、更には教会では武器に一時的な神聖属性を付与することもできる。

 

そして、多くのモンスターの特殊攻撃にもある。

 

その中でも、雷系の特殊攻撃は厄介だ。

 

放たれた瞬間には、最大射程距離まで届き、高確率で《一時行動不能(スタン)》や《麻痺》にされる。

 

そして、アステリオス(キング)の放った雷ブレスを食らったプレイヤーの殆どは《一時行動不能(スタン)》となり、既に《一時行動不能(スタン)》だった者は、《麻痺》となった。

 

「止まるな!」

 

誰もが固まり動けない中、キリトは動いた。

 

「H隊!それに、動ける奴は、麻痺者を安全圏へ!パワータイプなら、1人で2人ぐらい搔っ攫え!G隊(ブレイブス)!カイ!俺達で将軍を先に倒す!王はその後だ!」

 

「了解!」「応!」

 

キリトの指示に、カイとオルランドが返事をし、将軍へと攻撃する。

 

オルランドの仲間たちは返事こそないが、既に武器を構え、バラン将軍へと向かっていた。

 

だが、ナト大佐よりも高い身長のバラン将軍では、弱点への攻撃が届かない。

 

「キリト!ブレスが来る!」

 

キリトの隣で戦っていたカイが、そう叫ぶ。

 

キリトが背後を振り返ると、アステリオス(キング)が再びブレス攻撃のモーションへと入っていた。

 

(間に合わない……!)

 

ブレス攻撃が来る。

 

そう思った瞬間、ボス部屋の扉が開き、そこから2つの人影が飛び込んでくる。

 

その2つの影は、背を向けてるアステリオス(キング)の背を駆け上がり、無防備な頭部に向け、鎌と細剣(レイピア)の一撃を叩き込んだ。

 

「ア…アスナ!?」

 

「ミトも!」

 

突如現れた2人の攻撃を食らいアステリオス(キング)は、視線を上に向ける。

 

「アスナ!合わせて!」

 

「了解!」

 

そして、2人は同時に左足を前に出し、アステリオス(キング)を蹴り飛ばした。

 

「今のは!?」

 

「体術スキルの《弦月》だ!ってことは!」

 

「クリアしたのか!?あのクエストを!?本当に2日で!?」

 

《体術》習得クエストを、本当に2日でクリアしてきたミトとアスナに、キリトが驚きの表情をする。

 

「こっちは私とアスナでタゲ取るから!そっちは将軍を頼むわ!」

 

ミトが《攻略組》全体に響き渡る様に、大声で叫ぶ。

 

「た、たった2人で!?」

 

「そ、そんなの無茶過ぎる……!」

 

《攻略組》の中から、そんな言葉が漏れる。

 

「くっ……ミト!」

 

カイは、自分だけでもミト達の応援に行こうとする。

 

「来ないで!」

 

だが、そんなカイの事を察してか、ミトが叫ぶ。

 

ミトは一目見て、やせ我慢してると分かる笑みをカイへと見せる。

 

(こっちは何とかする。だから、今するべき事をして)

 

ミトの目がそう語っているのを、カイは感じた。

 

《アニールシミター》を持つ手に力が込められる。

 

そして、助けに行きたい気持ちを振り払う様にミトから目を外す。

 

「キリト!さっさと将軍倒すぞ!」

 

「ああ!」

 

標的をバラン将軍へと戻し、カイは再び攻撃を仕掛ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アステリオス(キング)のタゲを取り、ミトとアスナの2人は一定の距離を保ちつつ回避行動をしていた。

 

どうやら、ブレス攻撃は一定距離を離れると放ってくるらしく、2人はアステリオス(キング)交戦距離(クロスレンジ)に居つつ、回避していた。

 

「アスナ、常に交戦距離(クロスレンジ)を意識して!私たちの装備とパラメーターじゃ、一発食らえばアウトだから回避に専念よ!」

 

「分かってる!」

 

ミトの言葉に返事しながら、アスナはアステリオス(キング)の攻撃を回避し続ける。

 

だが、その時、アスナはキリトと目が合った。

 

キリトはバラン将軍と戦いながらも、意識をアスナへと向けていた。

 

アスナの事が心配だからだ。

 

そんなキリトに対し、アスナは僅かに苛立ちを感じた。

 

そして、キリトへ見せつけるように回避を止め、細剣(レイピア)を抜いた。

 

キリトへの対抗意識とかではなかった。

 

(前を見なさい!私は大丈夫!だから、目の前に敵に集中して!足止めぐらい………私にも出来る!)

 

心の中で、キリトを安心させるかのような言葉を呟き、アスナはアステリオス(キング)に攻撃をする。

 

「アスナ、ダメ!」

 

ミトの声が響いた。

 

その瞬間、アスナは下から何かに弾き飛ばされ、体が上に飛ばされる。

 

そして、そこを待ち構えていたアステリオス(キング)が、手を上げ、地面へと叩き落した。

 

アスナを攻撃したのは、アステリオス(キング)の尻尾だった。

 

「ぐっ!?」

 

地面に叩き落された衝撃で、アスナは一時的に動くことが出来なかった。

 

「アスナ!」

 

ミトはアスナを助けようと走り出す。

 

だが、アステリオス(キング)はそれを許そうとはせず、ミトへと手刀を放つ。

 

ミトは、跳躍で回避し、アステリオス(キング)の腕を駆け上がる。

 

「邪魔よ!」

 

怯ませようとミトは、アステリオス(キング)の顔面を斬り裂こうとする。

 

アステリオス(キング)は、アスナと同様に尻尾でミトを弾こうとする。

 

だが、ミトは尻尾の攻撃が来る瞬間、体を反転させ、尻尾を払った。

 

一度見た攻撃の為、ミトは防げた。

 

そして、そのままソードスキルを放とうと、再度身体を反転させ、構える。

 

「はああああああああ!」

 

ソードスキルが放たれ、アステリオス(キング)は顔を斬り裂かれ、動きを止めるはずだった。

 

ミトがソードスキルを放った瞬間、アステリオス(キング)は驚きの速さで、体の上体だけを後ろへと下げ、ミトの攻撃を回避した。

 

「……嘘」

 

アステリオス(キング)が、これほどの速さがあるとは予想だにしていなかったため、ミトはソードスキル発動後の硬直で動けなくなる。

 

そこを狙い、アステリオス(キング)は、宙に居るミトを、まるで目の前を飛ぶ蚊を叩き潰す様に、両手で叩いた。

 

「がっ!?」

 

強烈な衝撃がミトの身体を襲い、ミトは受け身を取ることも出来ず、頭から床に落ちる。

 

ミトのHPは今の攻撃で半分を切っていた。

 

その状態で頭から床に落ちれば、HPが全損するのは分かり切ったことだ。

 

薄れる意識の中、ミトが見たのは自分目掛け、ブレス攻撃をしようとするアステリオス(キング)の姿だった。

 

そして、その直線上にはアスナも居た。

 

(守れなかった……か。ごめん、アスナ………ごめん、カイ………)

 

ミトは死を覚悟し、目を閉じた。

 

「ミトォォォォォォォォォ!!」

 

「アスナァァァァァァァァ!!」

 

2人の声が響いた。

 

カイとキリトは、ミトとアスナ目掛け走り出していた。

 

少しでも早さを上げる為、武器を放り捨て、全速力で走り、手を伸ばす。

 

キリトはアスナを抱きかかえ、カイは落ちるミトをキャッチし、あらん限りの力を籠めてブレスの攻撃範囲から逃れる。

 

そして、4人がブレスの攻撃範囲から出た瞬間、雷ブレスが放たれた。

 

「ぐっ!」「がっ!」

 

ブレスが直撃することは免れるも、僅かにカイとキリトの身体を掠め、カイとキリト、そして、ミトとアスナの4人は《麻痺》状態になった。

 

「どうして……来たの………?」

 

身体がしびれて動けないミトは、床に倒れたままカイの方へと顔を向け尋ねる。

 

「死ぬ所だったのよ………」

 

カイのHPは、バラン将軍との戦いで半分になっており、もしブレスが直撃していたら全損は免れなかった。

 

それでもカイは、ミトを助けるために動いた。

 

カイは痺れる身体を無理矢理動かし、ミトへと近寄る。

 

そして、ミトへと覆い被さり、ミトの身体を隠す。

 

「死なせたくないんだ………」

 

カイはミトを見つめて言う。

 

「これ以上……俺の大切な人を、死なせたくないんだ………だから………」

 

今にも泣きそうな顔をして言うカイに、ミトは何かを感じ取る。

 

「………馬鹿」

 

ミトはそう言い、カイへと手を伸ばし、頬に触れる。

 

「それで、カイは死んだら意味ないじゃない……でも、ありがとう………」

 

ミトは優しく笑った。

 

そんなミトの笑みを見て、カイも自然と笑みを浮かべた。

 

そうしてる間にも、アステリオス(キング)は止めを刺そうと近寄り、そして、ブレス攻撃をしようとする。

 

その姿を見て、カイは無理と分かっていながらも、ミトを守るために、ミトを強く抱きかかえる。

 

キリトも、無理と分かりながらアスナを守ろうと、庇う。

 

「離せ!離すのだ!」

 

その時、オルランドの声が響いた。

 

「無理ですよ!」

 

「馬鹿な事は止めてください、オルランドさん!」

 

「馬鹿で何が悪い!戦友と姫君の盾となって斃れることこそ、騎士の本懐!」

 

どうやら、オルランドはカイ達を助けようと動こうとして、仲間たちに止められている様だった。

 

「真の勇者であるならば、今()かんでなんとする!」

 

「はい、オルランドさん」

 

オルランド達の背後で声が聞こえる。

 

そして、声と共に何かが一筋の光となって、アステリオス(キング)へと向かう。

 

それは、綺麗な弧を描き、アステリオス(キング)の王冠に当たる。

 

甲高い金属音が鳴り響き、アステリオス(キング)は頭を押さえ、体をふら付かせる。

 

「あ、あれは………チャクラム!?」

 

飛んで来た物の正体は、チャクラム。

 

それは、フィールド・ボス《ブルバス・バウ》のLA(ラストアタック)ボーナスでキリトが手に入れた物で、つい2日前にあるプレイヤーに譲っていた。

 

「すみません!遅くなりました!」

 

その譲ったプレイヤーの名は、“ナーザ”

 

「誰か!4人を安全圏へ!それ以外の皆さんは将軍へ!《(コイツ)》は、()が引き受けます!」

 

アステリオス(キング)の前に立ち塞がり、鍛冶師“ネズハ”は、伝説の勇者“ナーザ”へと戻り、チャクラムを構える。

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