ソードアート・オンライン~剣聖に至る道~   作:ほにゃー

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第12話 約束

「犠牲者ゼロ!完全勝利だ!」

 

レイドリーダーのリンドが声を高らかに上げ、そう言う。

 

歓声が鳴りやまぬ中、ネズハはカイ達へと駆け寄る。

 

「キリトさん!カイさん!アスナさんに、ミトさん!お疲れ様です!」

 

「ネズハこそ、お疲れ」

 

「ぶっつけ本番で、チャクラムをあそこまで使いこなすなんて流石ね」

 

「いえ、殆どシステムアシスト頼りですよ。それに、この武器だってキリトさんが譲ってくれたものですし」

 

「だとしても、それを生かすも殺すもプレイヤー次第だ」

 

「貴方は見事それを使いこなした。それは紛れもない事実よ」

 

カイ達から褒められ、ネズハは照れ臭そうに笑う。

 

「でも、これでもうネズハも、いや、ナーザも立派な伝説の勇者(レジェンド・ブレイブ)だ」

 

「ああ、今度は胸を張ってオルランド達と居られるな」

 

「…………いえ、僕にはまだやるべきことがありますから」

 

カイとキリトの言葉に、ネズハは何処か悲しそうな、だが、決意を持った目で4人を見る。

 

「キリトさん、カイさん、アスナさんにミトさん。ありがとうございました。最後に、なりたかった者になれました。これでもう、思い残すことはありません」

 

ネズハは4人に頭を下げ、そう言う。

 

「ネズハ、何を……?」

 

「最後って……なんだよ?」

 

ネズハの言葉に、カイとキリトは困惑する。

 

そんな中、エギルが5人に近寄る。

 

「大活躍だったな、Congraturation(コングラッチュレーション)……と言いたいが、アンタに聞きたいことがある」

 

エギルは険しい表情で、ネズハに近寄る。

 

「アンタ、ついこの前まで鍛冶師してたプレイヤーだろ?それが、どうして急に戦闘職に転向したんだ?そんなレア武器まで持って………鍛冶師ってのはそんなに儲かるのか?」

 

エギルの言葉に、カイとキリトは青ざめる。

 

そして、思い出した。

 

エギルも、強化詐欺の被害者かもしれないと言うことを。

 

「ま、待ってくれ!この武器は、俺が彼に譲ったもので!」

 

キリトはエギルとネズハの間に割り込み、事情を説明しようとする。

 

「いいんです、キリトさん」

 

だが、ネズハは説明をしようとするキリトを止める。

 

そして、ネズハは武器を置き、土下座をした。

 

「僕は、鍛冶師のネズハです。僕は、皆さんの武器をエンド品とすり替え、騙し取りました」

 

「そうか………騙し取った武器は、まだ持ってるか?」

 

「いえ、全て(コル)に替えてしまいました」

 

「………なら、(コル)での賠償は可能か?」

 

「もう、できません。お金は、全部高級レストランでの飲み食いや、高級宿屋で使い果たしました」

 

ネズハは、嘘を吐いた。

 

そして、それが何を意味するのかを、カイとキリトは気付いた。

 

ネズハは、この場を収めるつもりはなかった。

 

全ての矛先を自身に向けて、強化詐欺を自分だけが行った事とし、オルランド達《伝説の勇者達(レジェンド・ブレイブス)》を守ろうとしている。

 

「オマエェ!」

 

その時、1人のプレイヤーが、ネズハに掴み掛かった。

 

「分かってんのか!大切な剣を失くして!俺達がどれだけつらい思いをしたか!どれだけのもんを奪ったのか!…それを、うまいんもん食っただぁ!?部屋代に使っただぁ!?挙げ句に自分はレア武器仕入れてボス戦でヒーロー気取りかよ!!やっちゃダメだけどよぉ…俺は今、あんたをたたっ斬りたくてしょうがねえんだよ!!」

 

「分かっています。覚悟はしています。どんな裁きも受けます。どうか、お気の済むままに………」

 

もし、ここでネズハを処刑してしまえば、それは然るべき理由があればPKしてもいいと言う事になってしまう。

 

それは、PKに対する心理的ハードルを下げることに他ならない。

 

「くっ!」

 

カイはPKだけは何としても止めようと、ネズハを連れて逃げようと考える。

 

そして、動こうとした矢先、ミトに止められた。

 

「ミト……!」

 

「駄目だよ、カイ。そんなことしたら、もうカイは本格的に《攻略組》には居られなくなる」

 

ミトはカイが何をしようとしたのか察し、カイを止めた。

 

「だとしても、PKなんて許される訳ないだろ……!今ならまだ間に合うんだ………!」

 

カイはミトの腕を振り解こうとした。

 

「待たれよ」

 

その時、オルランドが声を上げた。

 

そして、オルランドと仲間たちはネズハへと近づく。

 

「貴卿らが手を汚すには及ばない」

 

(やっぱりオルランドが黒幕か!この場でネズハを、トカゲの尻尾切りにするつもりだ!)

 

キリトは、そう結論付け声を上げようとした。

 

「この者は我らの………いえ、ネズハは俺達の仲間です」

 

だが、キリトの予想を裏切り、オルランドはネズハの隣に並び、武器を外し、その場に置く。

 

そして、周りでは他のメンバーも同様にしていた。

 

「ネズハに強化詐欺をやらしていたのは、俺達です」

 

オルランドとその仲間たちは、ネズハと一緒に土下座し、謝罪をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんでだ?」

 

第3層へと続く階段をのぼりながら、キリトが前を進むアスナとミトに尋ねる。

 

「え?何が?」

 

「だから!なんで俺達には黙ってたのかてことだよ!?」

 

あの後、オルランド達《伝説の勇者達(レジェンド・ブレイブス)》が謝罪をすると、オルランド達は自分たちの装備全てを差し出し、それを換金し被害者たちへの賠償をすることとなった。

 

だが、NPCの買取相場は通貨価値を一定に保つようにシステムされており、どうしても市場価格よりも抑えられてしまう。

 

そこで、《伝説の勇者達(レジェンド・ブレイブス)》の装備は、現在、最も(コル)を持っているプレイヤー、即ち《攻略組》の間でオークションにかけることになった。

 

それで得た(コル)で被害者への賠償をする。

 

あまりにも都合良く修羅場が収まった。

 

おまけに、荒れていたプレイヤーもいつの間にか怒りが収まっており、エギルも平然としていた。

 

そこで、キリトがエギルを問い詰めると、エギルは「本当に何も聞かされてないんだな」と言い、最後に「彼女らも性格が悪いな」と大笑いしていた。

 

「彼女ら」と言うワードにキリトは気付き、アスナたちへと振り返る。

 

そして、アスナとミト、アルゴの3人は笑っていた。

 

「政治の基本は根回しと演出」

 

「そして、情報通のブレーンを抑えておくと完璧」

 

その言葉を聞き、キリトは膝から崩れ落ちていた。

 

「だってキリト君、直ぐに顔に出るもの。その点、キバオウさんとリンドさんは上手くやってくれたわ。なんだかんだ言っても、キリト君よりはリーダー向きよね」

 

アスナにそう言われ、キリトは悔しそうに拳を握る。

 

「じゃあ、なんで俺にも黙ってたんだ?クエストの進捗具合見に顔出してる時に、一言教えてくれても良かっただろ?」

 

「だって、カイはキリトと一緒に居るでしょ?カイの事、信用してないわけじゃないけど、万が一カイからキリトに作戦が漏れたら大変だし、念には念を入れて黙ってたのよ」

 

「くっ………ミト、その言葉憶えておけよ。いつか、自分もその言葉で悔しい思いするからな」

 

「あら、ならその時を楽しみにしてるわ」

 

カイの言葉に、ミトはそんな時は来ないわよっと言いたげに笑う。

 

「それで、どうだったんだ?オルランド達は、ネズハに強化詐欺を強要していたのか?していなかったのか?」

 

「あら?彼らを一番に疑っていたのは、キリト君じゃない?」

 

「そりゃそうだけど、実際目の当たりにするとどうもそうとは思えなくて…………」

 

「多分だけど、強化詐欺はオルランドさん以外のネズハさん含めた5人で始めた事なんだと思う」

 

アスナはそう言い、アルゴ経由で手に入れた情報を話す。

 

アスナたちが《体術》習得クエストをやっている間、アルゴはオルランドと接触していた。

 

そこで、強化詐欺の事を問いただすと、オルランドは「やっぱりか……」と悲しそうに、そして申し訳なさそうに呟いた。

 

鍛冶の稼ぎにしてはあまりにも金額が大きかった為、オルランドはネズハたちが何か良からぬことをしているのではと疑っていた。

 

だが、気づいていながらも、どうしてネズハたちがそのようなことをしたのか、その気持ちが分かってしまい、それを問い質すことが出来なかった。

 

「皆、オルランドさんの事を慕っているからどうにかして役に立ちたい。そんな気持ちに、足元が救われたんじゃないかな?」

 

「随分と持ち上げるな」

 

「……フィールドボス戦の時、ネズハさんをフィールドにまで連れて行って自らサクラを演じてたでしょ?やましい事させておいて、アレが出来る様なねじ曲がった人には見えないしね」

 

「……そうか。ま、これ以上意味のない詮索を止めておこう………でも、流石にアレは予想外だったんじゃないか?」

 

キリトがそう言い、空気が重くなる。

 

結果的に、強化詐欺の償い方法は、(コル)での賠償となったが、それに異を唱える者が居た。

 

そのプレイヤーは大声でこう言った。

 

『金銭的な賠償は出来るだろうが、死んだ人間は戻ってこない』

 

その言葉に、全員が凍り付いた。

 

そのプレイヤーが言うには、武器を騙し取られたプレイヤーの1人が、仕方なく店売りの武器で狩りに出て、今まで倒せたモンスターに殺されたとの事だった。

 

すると、また誰かが「それって、間接的なPKってことじゃないか」と言い、またしても修羅場となった。

 

間接的とはいえ、PKをした《伝説の勇者達(レジェンド・ブレイブス)》を許さないと言う者が現れ出し、その償いとして《伝説の勇者達(レジェンド・ブレイブス)》全員を処刑しようとし出した。

 

ボス部屋は、処刑を行おうとする者とそれを止める者と分かれ、阿鼻叫喚となり、このままでは殺し合いに発展しかねない勢いだった。

 

だが、それをレイドリーダーのリンドが仲裁に入った。

 

リンドは、オルランドにオルランドの剣を差し出し、「リーダーなら自分でケジメをつけろ」と言った。

 

オルランドは、リンドの言葉に迷いなく剣を取り、そして、ネズハに申し訳なさそうに微笑み、自らの胸に剣を突き刺した。

 

貫通継続ダメージが発生し、オルランドのHPは見る見る減って行き、残り数ドットとなった。

 

その瞬間、リンドが自身の剣を抜刀し、オルランドの剣を弾いた。

 

その衝撃で、オルランドの剣はオルランドの胸から抜け、オルランドのHP減少も止まった。

 

「悪の首魁、オルランドは死んだ!これからは、生まれ変わったつもりで一からやり直せ!死ぬ気で追い付いて来い!待ってはやらないが、《攻略組》は何時でも勇者達を歓迎しよう!」

 

リンドのその言葉に、キバオウが吹き出し、キバオウ派、リンド派のプレイヤーたちは大笑いをした。

 

間接的なPKがあったと報告したプレイヤーは、そんなことじゃ死んだ奴は浮かばれない!と猛烈に抗議した。

 

だが、その直後、キバオウから「強化詐欺にあうって事は、それなりに名のあるプレイヤーなんやろ?何処のパーティーのなんて名前や?」と尋ねられ、「噂で聞いたから名前までは……」と口籠りをし、「その程度の情報で場を混乱させるな!」とキバオウから折檻されていた。

 

最終的に、死んだプレイヤーが居るのかはアルゴが調べることとなり、事の真偽が分かるまでその問題はリンドが預かることとなり、オルランドはその上で出来る限りの償いをさせてくれと言った。

 

危なっかしい場面はあったものの、なんとかその場を収め、現在、第2層フロアボス部屋ではオークションが行われている。

 

そして、カイたち4人はリンドから、暇そうだから第3層の有効化(アクティベート)と、攻略成功の情報を新聞屋に流す様にと指示され。4人はこうして第3層へと向かっている。

 

「何はともあれ、最悪の事態は避けれた事だし、よしとしよう」

 

若干重くなった空気を払拭させる為か、カイは手を叩いていう。

 

「……そうだな。それこそ、意味のない詮索か」

 

キリトも納得し、笑みを浮かべる。

 

「それより、私はカイに言いたいことがあるんだけど」

 

ミトは振り返り、カイの方を見る。

 

そのミトの表情は、僅かに怒りを帯びていた。

 

「え?ミト………なんか怒ってる?」

 

「怒ってるかって?当たり前でしょ!」

 

大きな声で言われ、カイは驚く。

 

「キリト君、ミトはカイ君にお話があるみたいだし、私たちは先に行ってようか」

 

「そうだな。それより、アスナ。この先は気を引き締めて行けよ。なんせ、SAOは第3層からが本番なんだからな」

 

「どうして?」

 

「それはだな――――」

 

先に進んでいくキリトとアスナの背を見つめ、カイは呆然とする。

 

「カイ、私が何で怒ってるか分かる?」

 

「えっと……ネズハを連れて逃げ出そうとした事か?」

 

カイは記憶を辿って、ミトが怒ってるであろう理由を探り、そう言った。

 

「それもあるわ。あんな事したら、カイの立場がなくなるし、下手したらカイが強化詐欺の首謀者だなんて言われかねなかったんだよ」

 

「でも……それでも、ネズハを見殺しにするよりはマシだ………目の前で、理不尽に命が消えるぐらいなら俺が犠牲になるぐらい些細な問題だ………」

 

「些細なわけないでしょ!」

 

ミトは、先程よりも大きな声で言う。

 

「あのね、カイ。私が一番怒ってるのは、カイが自分の身を顧みないような事をするからなんだよ。第1層のボス戦でも、カイはそういう事してた」

 

ミトはそう言って、カイに近付き、カイの手を握った。

 

「きっと、それはカイの性分なんだろうし、カイの長所だと私は思う。でも、それ以上に、私はカイに自分の事を大事にしてほしい」

 

「………すまない、ミト」

 

カイは、ミトに対してそう謝った。

 

「俺は、多分この先も似たような事が起きたら、同じことをすると思う。性分だとか、長所だとか、そんなカッコいい物じゃない。俺がそうしたいからそうしてる。ただそれだけなんだ」

 

カイは、ミトを真っすぐ見つめて言う。

 

「だから、もしまた俺が同じような事したら、仕方ない奴だって笑ってくれ」

 

申し訳なさそうに笑うカイを見て、ミトは何を言ってもカイはその行動を改めようとはしないんだろうなと思った。

 

「………カイがそう言う人だってのは良く分かった」

 

「すまないな」

 

「だから、今度からカイが無茶するようなら私が止める」

 

「……え?」

 

ミトの発言に、カイは驚いた。

 

「さっきみたいに、カイが無茶しそうになったら私が止める」

 

「なんでそうなるんだよ!そんなことしたら、どんな目に合うか分からないんだぞ!」

 

「それでも、カイがまたいなくなることに比べたら、些細な問題よ!」

 

「些細って、そんな訳……」

 

そこまで言ってカイは、今のミトの言ってることと、自分の言ってることが先程のやり取りと似ていることに気づく。

 

そして、ミトを見るとミトは絶対にこれだけは譲らないと言う意思を瞳に宿していた。

 

そんなミトの目を見て、カイは気圧され、そして、溜息を吐いた。

 

「……分かったよ。何処までできるか分からないけど、自分の事を大切にするよ」

 

「……本当?」

 

「ああ。少なくとも、もう自分の事を些細な物扱いはしない。約束だ」

 

「……わかった。それならいいよ」

 

そう言うと、ミトはカイの手を離した。

 

「でも!カイが無茶しそうになったら止めるからね!それとこれは別よ!」

 

「……分かったよ。そうならない様に、努力する」

 

「うん、よろしい」

 

ミトは満足そうに頷く。

 

「それじゃあ、3層に向かいましょう」

 

「そうだな。そう言えば、キリトの言ってた3層から本番ってのはどういうことだ?」

 

「ああ、それはね———-」

 

カイはミトの説明を聞きながら、一緒に第3層へと向かった。




儚き剣のロンド編、終了です。

名残惜しいですが、本編の焔の剣聖の方に戻り、GGO編をやろうかと思ってます。

が、その前にとある人とまたコラボをすることになったので先にコラボをします。

誰とのコラボか、お楽しみに
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