「これどういうこと!?」
予想にしない展開に、アスナが声を上げる。
「諦めろ!」
そんなアスナに、キリトが言う。
「俺たちはもう巻き込まれたんだよ!《彼らの物語》にな!」
そう言うキリトは、どこか楽しそうだった。
「実は、肩入れした側のエルフを生かしたまま進行したら、こうなるって展開だったとか?」
「う~ん。可能性としてはなくはないけど………βの時は、相手の強さに絶対負けイベだって思ってたし」
カイの考えに、ミトはそう答える。
一方で、《鷹使い》は執拗にアスナを狙い続け、《狼使い》がそれを妨害する。
「くっ!邪魔だ、人族の女!」
《狼使い》は、後ろにいるアスナにそう言う。
「じゃ、邪魔って何よ!しょうがないじゃない!あの目つきのやらしーエルフがこっちを狙ってくるんだから!仇討ちだがなんだが知らないけど、勝手にヘイト稼いで、タゲって貰いなさいよ!」
《狼使い》の言葉に、アスナはそう言い返す。
だが、そんな言い方ではNPCには通じない。
曖昧な言い方や、遠回しな言い方などを適切に受け取ることが出来ず、返答できないからだ。
「アスナ、そんな言い方じゃ「なら、せいぜい囮になって貰おう」「なっ!ひどーい!」……へ?」
《狼使い》が返答したことに、キリトは驚く。
キリトだけでなく、ミトも驚いた。
アスナは、「タゲ」や「ヘイト」など、ゲーム用語を交えて話をした。
通常なら、そのような単語に反応できず、無言となるのがNPCだ。
だが、《狼使い》は当然のように言葉を理解し、アスナに返答をした。
「……冗談だ。俺が護ってやる」
さらに驚くことに、NPC側からプレイヤーにそんなことまで言い出した。
ますますキリトは訳が分からなくなり始める。
「許せ、
そんなキリトに、《
「え!?」
「雑兵を倒して退路を確保する!同時にかかるぞ!」
「あ、あんたら!本当にNPCなのかよ!?」
《狼使い》だけでなく、《近衛騎士》までプレイヤーに話しかけてくる状態にキリトはそう叫ぶ。
そこから、暫く戦いをしていると、突如《鷹使い》が声を上げる。
「あーもうやめやめ!イヌ臭くて興が削がれるってもんですよ。また今度にしませんか?」
「我々が貴様をここで逃がすとでも思っているのか?」
「あなたたちはそうかもしれないですけど、私たちはそちらにもう用はないんですよ。現に《秘鍵》はこちらにありますし…ねぇ?」
《鷹使い》がそう言い、《秘鍵》を取り出しで見せる。
「ねぇ、キリト君、ミト。さっきからきになってたけど、《秘鍵》ってなんなの?」
すると、アスナが《秘鍵》について尋ねてくる。
「ああ、あれは文字通り、このキャンペーンクエスト全体に関わるキーアイテムさ」
「《
「奪還クエストがあるのか、それともクエスト自体失敗になるのか………」
先の読めない展開に、キリトとミトは頭を悩ませる。
「つまり………あれは元々は《
アスナは何か含む言い方をする。
(嫌な予感……)(アスナ、また何かする気ね……)(フォローに回れるようにしとくか)
キリト、ミト、カイはアスナが何かをする気なのを察知する。
「ところで、質問なんですけど」
すると、《鷹使い》が指を鳴らし、鷹を呼ぶ。
「この《秘鍵》、もしこうしたらどうします?」
そう言い、上空を飛ぶ鷹に《秘鍵》を投げ渡す。
「どうします? このままでは我々の野営地まで飛んでいきますよ? 使命と私怨、どちらをお選びになりますか?」
「こいつ!」
《鷹使い》の行動に、《狼使い》は歯噛みする。
「させないわよ!」
アスナはそう言うと鷹を追いかけて走り出した
「「アスナ!?」」
ミトとキリトがアスナの名を叫ぶ。
アスナは、木を駆け登る。
(くっ!スピードが足りない……!このままじゃ……!)
アスナは木を駆け昇って、鷹に接近し、《秘鍵》を取り返そうとした。
だが、スピードが足りず、もう少しと言う所で失速し始める。
「アスナ!」
その時、アスナの背後からカイ「が呼びかける。
カイも、アスナ同様に木を駆け上がっていた。
「行けるか?」
「お願い!」
その言葉のやりとりだけで、カイは武器を抜く
そして、剣を振り、アスナの靴の裏に、剣の峰が当たる。
筋力値に物を言わせて、渾身の力で剣を振る。
それと同時に、アスナは跳躍し、《ウインドフルーレ》を抜く。
「はああああああああああああああ!!」
鷹に二連撃の攻撃が当たる。
攻撃を食らった鷹は、《秘鍵》を手放してしまい、それをアスナがキャッチする。
「よし!」
《秘鍵》を取り戻せたことに、アスナは喜びの声を上げる。
だが、その直後、鷹はアスナその強靭なかぎ爪で掴み、そのまま地上に向かって急降下をした。
(まずい!あの鷹、アスナを地面に叩きつけるつもりだ!)
カイは、鷹が何をしようとしてるのか気づく。
だが、位置関係的にカイは自分がアスナを助けるのが間に合わないと判断する。
しかし、キリトとミトも、《
「そこを退け!」
すると、《狼使い》が《
剣を鞘に納める。
そして、狼が鷹へと食らい付く。
そのため、アスナが解放され、落ちてくるアスナを《狼使い》がキャッチした。
「あ、ありが――」
アスナがお礼を言おうとすると、途中で言葉が止まった。
何故なら、《狼使い》が剣で貫かれていたからだ。
「愚かですねぇ、馬鹿ですねぇ。何の縁もない小娘1人のために、仇に背を向けるなんて」
《鷹使い》はそう言い、《狼使い》を馬鹿にする。
「くっ……に、逃げ……ろ……!」
アスナを降ろし、《狼使い》は声を絞り出して言う。
「それを持って………早くっ!」
《鷹使い》が《狼使い》から剣を引き抜く。
「くっ…おおおおおおおおおおおお!!」
《狼使い》は剣を抜いて応戦しようとし、狼も《鷹使い》の背後から襲い掛かる。
「往生際の悪い」
だが、《鷹使い》の鷹が狼を捕まえ、抑える。
「さっさとそこを、どきなさい」
《鷹使い》の剣が、《狼使い》の身体を両断しようとする。
その瞬間だった。
《鷹使い》に飛びかかる様に、カイが動いた。
「なっ!?」
アスナを上に飛ばした後、カイは《アニールシミター》を木に突き刺し、落下から免れていた。
そして今、《アニールシミター》を木に突き刺したまま、《鷹使い》へと飛び掛かった。
《鷹使い》はまさかカイが上から来るとは思わず、驚く。
「うおおおおおおおお!!」
《鷹使い》に肉薄したカイは、《鷹使い》の腕を掴み、蹴りを放つ。
体術スキル《弦月》が発動し、《鷹使い》の顔が蹴られる。
「がっ!?」
この攻撃に《鷹使い》はよろめき、後ろに下がる。
そこに《近衛騎士》が《鷹使い》に切りかかったが剣で防がれ、キリトが死角から斬るも、懐を浅く斬るだけに終わった。。
ミトは狼を抑えてる鷹に斬り掛かったが、状況が不利と見るや否や、狼を解放し、飛んで逃げた
《鷹使い》は、身軽な動きで木の枝の上へと着地する。
「うちの一個分隊が全滅ですか、敵ながらやりますねぇ。それに引き換え……」
《鷹使い》は溜息を吐く。
「ウチの連中は、こうも役立たずなんですかねぇ……ま、仕方ないですね。ここはひとまず撤退しますか。厄介者の命を取れなかったとはいえ、当面は動けないぐらいにはしましたし、良しとしますか」
「待て!逃がしてなるものか!」
《近衛騎士》が大声で叫ぶも、《鷹使い》は鷹を呼んで足に掴まる。
「《秘鍵》はいずれ、必ず頂戴します。それまでは、そちらに預けておきます ですが仇討ちごっこの方は他をあたってください。何せ…そちらと違って、ワタシはあなた方に用事はございませんので」
そう言い残し、《鷹使い》は去って行った。