フィールドボス《ブルバス・バウ》攻略戦
「あーもう!そうじゃないだろ!」
鍛冶師ネズハは、その様子を見て声を上げる。
現在、《ブルバス・バウ》はキバオウ派とリンド派の2パーティーが担当しており、それ以外が《ブルバス・バウ》が居る限り湧き続ける《ウインドワスプ》の相手をしている。
だが、キバオウ派とリンド派で、《ブルバス・バウ》のタゲを取り合い、戦局は混乱。
回復や防御が間に合わなく、何度も危ない場面に見舞われている。
「何やってんだよ!連携悪すぎるだろ!」
鍛冶師ではあるが、多少の戦闘の心得があるのかネズハはその様子に苛立ちを感じ、1人騒ぐ。
「それに引き換え、雑魚担当は事前の情報より数が多いのにうまく立ち回ってるな」
ネズハは、今度は《ウインドワスプ》達を相手している一団に目を移す。
「………いや、殆どはあの4人か」
ネズハの視線の先には、的確な連携で《ウインドワスプ》を何体も葬ってるカイ達が居た。
「よしっ!25!」
「26!」
「なっ!?」
キリトが25匹目を倒しガッツポーズをすると、その隣でアスナが26匹目を倒す。
「こっちは27!」
「くっキリトと同じく25だ!」
ミトはアスナより1匹多い27匹倒し、カイはキリトと同数だった。
何故、数を競い合っているのかと言うと攻略戦前に、アスナがあることを持ち掛けたのが始まりだった。
この先にある街《ウルバス》のとあるレストランにあるクソ高い《トレンブル・ショートケーキ》を掛けて、1番《ウインドワスプ》を狩った数が少ない組が奢ると言う取引を持ち掛けた。
その賭けに全員が乗り、こうして《ウインドワスプ》を乱獲してる。
「まずいぞ、カイ。このままじゃ、俺達であのお嬢様方にクソ高いケーキを奢ることになるぞ」
「向こうの合計は、53。こっちは50。ペース上げてかないとな」
カイとキリトが話している間、アスナとミトは、すぐさま次の《ウインドワスプ》へと向かう。
「27!」「28!」
ミトの鎌は扱いが難しいと言う点がある。
だが、回転を主軸にしたソードスキルが多いため、連続で攻撃を当てることが出来ると言う利点がある。
加えて、基本攻撃力も高い。
アスナの
だが、アスナは攻撃を弱点に当てることでその威力を上げている。
《リニア-》を正確に2発とも弱点に叩き込んでるため、2コンボで《ウインドワスプ》を倒せている。
一方、キリトは《バーチカル・アーク》《スラント》そして、通常攻撃の3コンボで倒しているので、時間は2人より掛かる。
そしてカイもまた、《フェル・クレセント》《リ―パー》、通常攻撃の為、同様に時間が掛かる。
「なら!手数で勝負だ!」
キリトは負けたくない一心で、最近入手した《体術》スキルを使うことにした。
《バーチカル・アーク》で斬り、次に体術スキル《閃打》を使い、殴りつける。
最後に《スラント》を使い倒す。
ここまでの動きで、時間はアスナが1匹を倒すのとそう時間は変わらない。
「何あれ!?」
ミトはキリトが見慣れないスキルを使ったことに驚きを見せる。
「あー、俺とキリトが今まで姿を隠してた理由かな?」
カイは《ウインドワスプ》を《フェル・クレセント》で斬り、体術スキル《閃打》からの《リーパー》で倒しながら答える。
「あとで教えて!」
ミトはそう言い、《ウインドワスプ》の胴を両断して言う。
その時、キリトは頭上を飛ぶ《ウインドワスプ》に気づく。
「あれ?あのMod、こっちに見向きもせずにどうしたんだ?」
キリトは気になり、その《ウインドワスプ》を目で追う。
すると、《ウインドワスプ》は《ブルバス・バウ》の背中に乗り、そして、勢いよく針でその背中を刺した。
「ブモオオオオオォォ!!?」
その瞬間、《ブルバス・バウ》は大絶叫し、暴れまわった。
「まずい!カイ、アスナ、ミト!勝負はお預けだ!」
キリトがそう叫び、走り出したのを見てカイも走り出す。
その後に続いて、ミトとアスナも走り出す。
戦線は崩壊寸前で、キバオウ派、リンド派のパーティーの平均HPは既にレッドにまで落ちてた。
カイ達は必死に走るも、僅かに間に合わない。
「持ち堪えろ!今こそ力の見せ時ぞ!」
そんな中、強化された防具のお陰で比較的軽傷だったオルランド率いる《
「我ら、《
息を合わせ、《ブルバス・バウ》の突進を防ぐ。
そのお陰で、カイ達は間に合い、カイとミトは後右脚を、キリトとアスナは後左脚を斬りつける。
「
「かたじけない!」
キリトの言葉に、《
「弱点は額のコブって書いてあったけど………あんなの届かないじゃない!」
アスナが、遥か頭上にある《ブルバス・バウ》の弱点のコブを見て叫ぶ。
「本来なら、
ミトが後方にいる、まだHPの回復しきっていない
「後は、《投擲》スキルを当てるだけど、そんなに鍛えて無いしな………カイ、ミト、確か2人は取ってたよな?どうだ?」
「悪いけど、こっちもそんなによ。牽制とタゲ集めぐらいでしか使わないし」
「こっちも同じだ」
「なら、アレをやるか」
キリトは何かの策を思いつき、指示を出す。
「突進中の頭には気を付けろ!俺たちの装備じゃ、一瞬でHPを持ってかれるし、回避が出来なくなる!四人同時に、前脚を狙ってダウンを取る!アスナとミトは、向かって左!俺とカイで、右をやる!」
キリトが指示を出す中、《ブルバス・バウ》が突進の態勢に入り、カイ達に狙いをつける。
「チャンスは通り抜ける一瞬!
「「「了解!」」」
指示が出し終わると同時に、《ブルバス・バウ》が突進攻撃をする。
4人はほぼ同時に攻撃を躱し、そして、前脚に斬りかかる。
カイとキリトの一撃は、確実に《ブルバス・バウ》の左前脚を斬りつけ、ミトの攻撃も見事《ブルバス・バウ》の右前脚を斬った。
だが、アスナの攻撃だけは外れた。
「外した……!ごめん!」
決して、アスナが悪いわけではなかった。
事実、アスナの目は確実に《ブルバス・バウ》の膝関節を捕らえ、アスナはそこ目掛け
だが、《正確さ》の数値が足りず、クリティカルにまで至らなかった。
加えて、アスナ自身の成長がキリトやミトの思った以上に速く。既に《ウインドフルーレ》自体がアスナの足を引っ張ってる状態だった。
それでも、アスナは悔しそうに歯嚙みする。
「いや、十分だ」
すると、キリトは不敵に笑い走り出す。
「カイ!」
「おう!」
キリトに名前を呼ばれ、カイは《アニールシミター》を鞘に収め、走り出す。
そして、《ブルバス・バウ》の手前で止まり、背中を向ける。
「ちょっカイ!?」
武器も収め、フィールドボスの傍で背中を向けると言う自殺行為に等しい行動に、ミトが声を上げる。
ミトの心配を他所に、カイは手を組み、腰を落とす。
「来い、キリト!」
キリトはそのままカイへと向かって走り、カイの手前で跳躍。
カイの組んだ手に足を乗せる。
「「うおおおおおおおおおおおおおお!!」」
2人同時に声を上げ、カイが腕を振り上げる。
そして、キリトはカイの振り上げに合わせ、最後跳躍する。
「と……」
「跳んだぁ!?」
カイとキリトの行動に、ミトとアスナが声を上げた。
カイの筋力値とキリトの筋力値を合わせ、キリトの跳躍力をブーストさせ、キリトは通常の何倍も跳躍する。
「でも……まだ高さが!」
「キリト君、ダメ!」
ミトの言う通り、通常の何倍も跳躍しても、今のキリトは《ブルバス・バウ》の顔の前まで行ったぐらい。
弱点のコブには、例え剣を振り抜いたとしても、届かない。
「ふっ!」
だが、キリトは剣を抜き、そのまま片手剣突進技《ソニックリープ》を使う。
引っ張られるようにキリトの剣は、《ブルバス・バウ》の弱点のコブを斬り、そのままHPを0にする。
「な、なに今の………?」
「空中ソードスキル、簡単そうに見えて結構発動がシビアなんだぜ」
見たことない技に、ミトが尋ねると、キリトはニヤッと笑い答える。
「す、すごい………!」
その光景を見ていたネズハは、興奮し目を輝かせ、はしゃぐ。
「突進系のソードスキルに、あんな使い方があったなんて!で、でも、発動タイミングが一瞬でもズレたら大ピンチだよな………それに、あっちの赤い曲刀使いの人、あの黒い片手剣使いの人と組んでるのかな?あの黒い人があの技を使うのを知ってたとしても、あんなにモンスターに接近して、背中を向けるなんて危ない真似、そんなことができるなん…………一体何者なんだ?」
ネズハはカイとキリトの方に視線を向ける。
そこでは、丁度キリトが
「へ~、これは中々……」
珍しいアイテムが手に入った為か、キリトは意識をそちらへと向けたまんまにする。
「キリト!危ない!」
その時、カイが声を上げた。
「え?」
キリトが呆けた声を出した瞬間、キンッ!と金属音が響き、キリトの持っていた《アニールブレード》が吹き飛ばされる。
どうやら、近くを飛んでた《ウインドワスプ》が、キリトへと突進し、キリトの武器を運悪く弾き飛ばしたようだった。
弾き飛ばされた《アニールブレード》は回転しながら遠くへと飛び、崖へと向かう。
「くそっ!」
するとカイは走り出し、キリトの《アニールブレード》が崖から落ちる前に取ろうとする。
「うおおおおおおおお!」
《アニールブレード》がもう少しで崖から落ちる瞬間、カイはダイビングキャッチするかのように飛ぶ。
だが、カイの手は《アニールブレード》を掴むことなく空振り、おまけに飛んだ為、カイもそのまま崖から落ちそうになる。
「「カイ!」」
カイが落ちる寸前で、キリトとミトの2人が間に合い、カイのコートを掴んで落ちるのを防ぐ。
「この馬鹿!もう少しで落ちる所よ!」
「で、でも、キリトの剣が………」
カイは悔しそうに、崖下に落ちて行ったキリトの《アニールブレード》の事を考える。
「あのな、カイ。俺の武器の為に、そこまでしてくれるのは素直に嬉しいけど、武器ならまた買い直すかクエスト受け直せばいいだけだ。強化だって同じ。やり直せばいいだけだ。でも、お前の命は一度きりなんだ。だから、こんな無茶な事、もうしないでくれ」
「キリト………分かった」
「それに、別にスナッチされた訳じゃないんだ。後で回収するよ」
「後でって、キリト君どうやって回収するのさ?剣、崖下なんだよ?」
アスナの言う通り、キリトの剣が落ちた場所はかなり深く、底が見えない程だった。
街でロープを大量購入したとしても、そこに届くのか分からない。
「まぁ、ちょっとした裏技みたいなものがあるんだよ。ここは、フィールドのど真ん中だし、安全地帯も無いから、次の街で説明するよ。だから、次の街の《タラン》まで護衛頼むな、カイ」
「あ、ああ、分かった………」
先に進むキリトの後に続き、カイも歩き出す。
「全く、カイったらあんな危ない事して………」
ミトはぶつくさとカイが危険なことをしたことに不満を漏らしながら、後に続く。
「キリト君、ちゃんと説明してもらいますからね。最後のソードスキルの事とか、
「そう言えば、そう言う勝負だったわね。お預けになったけど、最終結果はこっちの数が多いんだから、奢ってよね」
「あ、勝負の事覚えてたんだな………」
「仕方ないし、素直に奢ろう、キリト」
様々なハプニングがありながらも、フィールドボス攻略を終え、カイとキリトはミトとアスナにクソ高いケーキを奢ることが決定した。