ソードアート・オンライン~剣聖に至る道~   作:ほにゃー

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第3話 砕ける愛剣

《タルラ》に着くと、カイ達は《トレンブル・ショートケーキ》の食べられる店へと向かった。

 

「さてと、それじゃあやるか」

 

席に着き、料理を注文し終えると、キリトはメニューウィンドウを開き、いくつかの操作を行う。

 

どんどんメニューの階層を下へと潜り、そこから更に一番奥へと降りる。

 

「最後にこれを、ポチッとな」

 

最後に何かのボタンを押すと、突如、大量のアイテムが現れ、レストランの床に散らばる。

 

その光景に、カイとアスナは瞬きを繰り返して、驚く。

 

そんな2人を他所に、キリトはアイテムの中を探る。

 

「あったあった!」

 

そう言って、アイテムの山の中から、キリトは1本の剣を取り出す。

 

「ほらな」

 

それは、正真正銘、崖下に落ちたキリトの剣《アニールブレード》+6だった。

 

「どういう事なんだ?」

 

カイがそう聞くと、キリトは《アニールブレード》を鞘に戻して答える。

 

「《コンプリートリィ・オール・アイテム・オブジェクダイズ》、簡単に言うと《所有アイテム全オブジェクト化》だ」

 

「早い話、自分が持ってるアイテムを全てストレージから取り出しオブジェクト化するのよ」

 

「それと、キリト君の剣が戻って来るのとどんな関係があるの?」

 

「つまりだな、あの時、俺の剣は俺の手元にはなかったけど、俺の所有物だったって事だ」

 

キリトの説明に、カイとアスナは疑問符を浮かべる。

 

「説明するより見て貰う方が速いな」

 

そう言い、キリトは自身の装備画面を可視モードにして、カイとアスナに見せる。

 

「俺の装備フィギュアの右手セルには、《アニールブレード》+6のアイコンがあるだろ?」

 

2人が頷くと、今度は剣を背中から鞘ごと外し、足元に置いた。

 

すると、ウインドウの右手セルに表示されてるアイコンが薄くグレーアウトする。

 

「これが、装備してる武器の《落下状態(ドロップ)》、戦闘中に手を滑らせ(ファンブル)したり、Mobの《武器落とし(ディスアーム)》属性攻撃を喰らったりすると発生する奴だ」

 

「慣れていないと、かなり焦るわね」

 

「落ち着いて次の攻撃を避けてから武器を拾えばいいんだけど、慣れるまでに時間が掛かるからね。1層の真ん中辺りで湧く《スワンプコボルド・トラッパー》が初の《武器落し(ディスアーム)》使いだけど、あそこでだいぶ犠牲者が出たらしいわね」

 

「攻略本にも、すぐに拾おうとするなって書いてあったのにね」

 

「ま、分かっていてもこの世界じゃ、武器が手元にないってのはかなり不安だからな。それも仕方ないだろう」

 

そう言い、キリトは再び説明に戻る。

 

「それで、《落下状態(ドロップ)》の剣を放置しておくと、《放置状態(リープ)》になって、耐久値が減ってくんだけど………カイ、俺の剣を拾ってみてくれ」

 

指示に従い、カイが剣を拾うと、キリトの右手セルから、アニールブレードの名前が消え、空欄になる。

 

「これが、《武器奪われ状態(スナッチアーム)》だ。《武器落し(ディスアーム)》と違って、スナッチ技は上層に行かないと出てこないけど、ソロで食らうと相当ヤバイ。だから、その前に、武器スキル発生Modの《クイックチェンジ》を絶対に取っておかないといけないって、話がズレたな」

 

脱線仕掛けるも、キリトは咳払いをして話を修正をする。

 

「戦闘中でも仲間に武器を渡したりするよな。その時は、スナッチじゃなくて《武器手放し状態(ハンドオーバー)》って呼ぶ。落したり、武器を直接渡したりすると、装備フィギュアの武器セルは空欄になる。で、重要なの、このセルは空欄で、何も装備してないように見えるけど、《アニールブレード》の所有権はクリアされてないんだ。例えば、俺が装備してないアイテムをカイに渡すと、所有権は300秒……たった5分でクリアされ、次に誰かのストレージに入った瞬間、そのプレイヤーのものになる。だけど、装備してるアイテムの所有権の持続時間は遥かに長い。放置もしくは手渡し状態になってから、3600秒、すなわち1時間経過するか、同じ手に別の武器を装備した時だ」

 

「なるほど。だから、あの時そこまで慌てて無かったんだな」

 

カイは納得し、キリトに《アニールブレード》を返す。

 

「まぁな。でもさ………」

 

「ん?」

 

「あの時、カイが俺の武器の為に走ってくれたの、凄く嬉しかったんだ。だからと言って、あんな無茶許すわけじゃないけど、その気持ちは嬉しいよ。ありがとうな」

 

恥ずかしそうに頬を掻き、礼を言うキリト。

 

そんなキリトに、カイは優しく笑った。

 

「当たり前だろ、大事な相棒の武器なんだからな」

 

仲良く笑い合う男2人に、アスナはいい友達だなって思い、ミトはだからと言ってあの行動は許さないと言った表情をする。

 

「でも、よかった」

 

すると、アスナは自分の腰にある愛剣《ウインドフルーレ》を優しく撫でる。

 

「ああ言う不注意でこの子とお別れするような事が無いんだね」

 

アスナは《ウインドフルーレ》に対し、かなり愛着を持っているらしく、剣を取って来たミト、そして、キリトも思わず笑みを零す。

 

だが、その笑みには申し訳なさも含まれていた。

 

「あのね、アスナ。酷いこと言うかもだけど、例え、+6にした《ウインドフルーレ》でも、3層終盤以降は通用しなくなるわ」

 

「…………え?」

 

「ミトの言う通りだ。SAOに限らず、RPGってのはそう言う物なんだ。俺の《アニールブレード》だって、4層の最初の街で新しい剣に更新しないといけない」

 

「そんなの………嫌だよ」

 

すると、アスナは声を振り絞る様に言う。

 

「この剣は、ミトが私の為にって取ってきてくれたもの。私、初めの頃は武器なんてどれも同じって思ってた。でも、この剣を手にした時、感動したの。羽根みたいに軽くて、狙ったところに吸い込まれるように当たって………まるで剣が意志を持って私を助けてくれるみたいだった………。この子がいてくれたら大丈夫、私、そう思った。ずっとこの子と一緒に戦おうって。例え強化に失敗しても、絶対捨てたりしないって」

 

「アスナ………そう言われるのは、私としても嬉しいよ。でも、この先 生き残ること、SAOをクリアしていくことを考えるなら強い武器に変えて行かないと」

 

《ウインドフルーレ》を手に入れたミトが、アスナを説得しようとする。

 

「………剣の魂を持って行く方法はある」

 

すると、キリトがそんなことを言い出した。

 

「古くなった剣をそのままストレージに保存する方法と、インゴットに戻して、それを材料に新しい剣を作る方法だ。俺としては、インゴットに戻して新しく剣を作る方が、前の剣の記憶や意思とかが残ってる気がするけど………って、流石に子供騙しかな」

 

「ううん、そんなことないよ。そうだね………この子と、この子の魂を受け継ぐ剣となら、最後まで戦い続けれるかな」

 

何処か安心した表情を浮かべるアスナ。

 

そこに、注文した料理が届き、食べ終わる頃には本日のデザート《トレンブル・ショートケーキ》が届く。

 

半径が18センチで、高さが8センチのケーキに、ミトもアスナも目を輝かせる。

 

「で、デカすぎるだろ………」

 

「これの何処がショートだよ………」

 

「知らないの?ショートケーキのショートって短いって意味じゃないのよ?」

 

「え?じゃあ、何なんだ?」

 

「ショートニングを使ってサクサクした(ショートな)歯触りのケーキって意味なの」

 

「アメリカだと、土台にクッキーとか使ってるけど、日本のは柔らかいスポンジ生地だから、本来の意味は全くないけどね」

 

アスナとミトの雑学を聞き、キリトとカイは、「へ~」っと言う。

 

2つに分けられたホールケーキを、ミトとアスナはフォークで早速一口食べる。

 

「うん、スポンジ生地だね。私はこっちの方が好きかな」

 

「私達的には、ケーキって言うとスポンジ生地ってイメージだしね」

 

ミトとアスナは互いに笑い合い、ケーキを食べる。

 

カイとキリトも、そのケーキを見て思わず、自分たちも頼もうかと考えるも、値段の所為で、いくら2人で割り勘と言っても今日の稼ぎの殆どが飛ぶことを考え断念する。

 

そんな2人の気持ちを察してか、ミトとアスナは吹き出す様に笑う。

 

「そんな顔しないでよ」

 

「ごめん、ちょっと意地悪しちゃった」

 

そう言うと、ミトは自分の分の半分をカイに、アスナは自分の分の半分をキリトへと分ける。

 

「いいのか?」

 

「折角美味しいケーキなんだから、皆で食べよう」

 

「悪いな、いただきます」

 

「ええ、召し上がれ」

 

カイとキリトもフォークを手に、勢いよくケーキを頬張る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ケーキを食べ終わり、店を出ると外は完全に夜になっていた。

 

「おいしかった」

 

「本当にね」 

 

アスナとミトは満足そうに呟き、余韻を楽しんでいた。

 

「こんなにうまいケーキ、初めて食ったな」

 

「なんかベータの時より味がおいしかった気がする。それに、これだけはβの時には無かったな」

 

キリトはHPバーがある下を指差し言う。

 

そこには《幸運判定ボーナス》のバフである四葉のクローバーのアイコンがあった。

 

このバフは毒や麻痺への抵抗判定や《武器落下(ファンブル)》や《転倒(タンブル)》の発生率を下げたり、レアアイテムのドロップ率を上げるなどの効果がある。

 

だが、この幸運の効果は15分が限界らしく、今からフィールドに出て狩りをするのは間に合わない。

 

「この《幸運》、勿体ないな」

 

「何か使えないかしら」

 

キリトとミトは、ゲーマーらしくなんとか《幸運ボーナス》の使い道を考える。

 

「……あ」

 

すると、カイは何かを思いつき、声を上げる。

 

「カイ、どうした?」

 

「まぁ、ちょっとした思い付きだけど、強化試してみないか?」

 

カイが言うには、折角の《幸運ボーナス》を今できる限りの運試しと言えば、武器の強化なんじゃないかとのことだった。

 

「もしかしたら成功率が僅かに上がるかもしれないし、面白そうだろ?」

 

カイに言われ、3人も「じゃあ試しに」って事で武器の強化へと向かった。

 

向かったのは、《タラン》の東広場で、広場の北側の隅っこでは、昼間の鍛冶プレイヤー“ネズハ”が剣を作っていた。

 

「まだ10分あるし、言い出しっぺの俺がやるよ」

 

カイはそう言って、ネズハに近付く。

 

「すみません」

 

「は、はい」

 

ネズハは、鉄床(アンビル)から顔を上げ、慌てた様に挨拶をする。

 

「あ、貴方達は……」

 

「ん?俺らの事知ってるのか?」

 

「は、はい……今日のフィードボス攻略戦の時に、少しだけ」

 

「そうだったか。あ、それより頼みがあるんだがいいか?」

 

「はい。お買い物でしょうか?それともメンテナンスでしょうか?」

 

「いや、強化を頼みたいんだ。この《アニールシミター》を+5から+6に。種類は《正確さ(アキュラシー)》で頼む。あと、これが持ち込みの強化素材だ」

 

自身の武器《アニールシミター》と持ち込みの素材を取り出し、ネズハに見せる。

 

「この数ですと、強化成功率は90%になります。代金は2700コルになります」

 

カイは、指定された代金を支払い、剣と素材を渡す。

 

「《アニールシミター》の試行回数3回残しの、+5から+6ですね。内訳は《鋭さ(シャープネス)》+3に《正確さ(アキュラシー)》+2ですか。《正確さ(アキュラシー)》がもう1つ上がれば、今以上に凄い剣になるでしょう………では、始めます」

 

ネズハは携行用の炉を製造モードから強化モードに変え、素材を流し込む。

 

そして、素材は溶けはじめ、青色の光を放つ。

 

その中に、《アニールシミター》を入れ、細剣が青い光に包まれるとそれを鉄床に置き、ハンマーに手を伸ばす。

 

「………ッ!」 

 

ネズハは、丁寧にハンマーを1回1回振り下ろし、カイの剣を叩く。

 

強化素材持ち込みによる強化成功率90%。

 

NPC鍛冶屋より遥かに腕のいいプレイヤー鍛冶師。

 

そして、効果があるか分からないが《幸運ボーナス》。

 

失敗確立10%だが、仮に失敗してもペナルティは《+数値はそのままで強化素材のみ消費される》、《+数値の内容が入れ替わる》、《+数値が一つ下がる》のどれか。

 

強化素材のみの消費や、+数値の内容の入れ替わりも嫌だが、+数値が下がるよりはマシとカイは思う。

 

だから、平然を装いつつも、心の中では+数値の減少だけは勘弁と祈る。

 

キリトやミト、アスナは《幸運ボーナス》が効果あるのかが気になり、結果を見守る。

 

7回、8回、9回、そして、10回。

 

全工程が終了し、《アニールシミター》が目映い光を放つ。

 

そして、カイの愛剣《アニールシミター》+5はパリィィィィンッ!っとガラスが砕け散るような音を響かせ砕けた。




アスナのではなくカイの剣が砕けました
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