ソードアート・オンライン~剣聖に至る道~   作:ほにゃー

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第4話  《コンプリートリィ・オール・アイテム・オブジェクダイズ》

「………は?」

 

目の前で、自身の《アニールシミター》が砕けるのを見て、カイはそうとしか言えなかった。

 

「す、すみません!」

 

ネズハはハンマーを放り捨て、土下座をした。

 

「手数料は全部お返ししますので………すみません!」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!」

 

謝るネズハに、キリトが叫ぶ。

 

「強化失敗ペナルティは《素材ロスト》《プロパティチェンジ》《プロパティ減少》の3つしかないはずだ!《武器消失》なんて聞いたことがないぞ!」

 

「あの……正式サービスで、4つ目のペナルティが追加された……のかもしれません。ウチも、前に一度だけ……同じことがあったんです。だから、確率は、すごく低いんでしょうけど……」

 

視線を下に固定したまま、ネズハはか細い声で言う。

 

その言葉に、キリトは思わず口を噤んだ。

 

これまでに、β版との違いはいくつかあった。

 

今回もその可能性があるし、何より、それが嘘だったとしても今のキリト達にそれを証明する証拠はない。

 

「本当にすみません………どのようにお詫びすればいいのか………」

 

「………いや、そんなに謝らないでくれ」

 

すると、先ほどまで放心していたカイがネズハにそう言った。

 

「強化失敗のペナルティなら仕方ない事だし、アンタに非はないさ。俺の運が悪かったと思って、受け入れるよ」

 

「………ッ!本当に、すみません………!せめて同種の《アニールシミター》をお返しできたらいいんですけど、《アニールシミター》は今在庫が無くて………」

 

「いや、それもいいよ。言っただろ、俺の運が悪かっただけだ。代わりの武器も、自分で何とかするよ」

 

そう言って、カイはその場を去る。

 

その後を、キリトとミト、アスナも追う。

 

宿屋への戻り道、全員が無言だった。

 

誰もが、カイに何と声を掛けたらいいのか分からず、ただただ街灯の灯に垂らされる夜道を歩く。

 

「正直さ、アスナの気持ちわかるんだよな」

 

すると、カイがそう言い出した。

 

「初めて《アニールシミター》を手に入れた時、すぐに自分の手に馴染んでさ、まるで昔から使っていた感じがしたんだよ。そっから強化していって、俺だけの武器になった。それが、俺の運の悪さでいとも簡単に消えちまった。せめて、戦って折れるなら、まだ俺も踏ん切り着いたかもな」

 

そう言い、カイは悲しそうに笑った。

 

「なぁ、キリト。悪いけど、明日は新しい武器の調達に付き合ってくれるか?」

 

「あ、ああ……もちろん」

 

「カイ君、私たちも付き合うよ?」

 

「そうね。2層でもそれなりの曲刀はあるし、値も張るだろうからコル稼ぎとか手伝うわ」

 

「アスナ、ミト………2人も悪いな。なら、明日は頼むよ」

 

宿屋へと向かい、キリトとカイ、ミトとアスナに別れる。

 

宿屋に入って10数分後。

 

ミトはこっそり部屋を抜け出し、外に出ようとしていた。

 

いつもつけているマントを外し、逆に黒いマントを装備し、付いてるフードを被る。

 

そして、今度はスキルタブから《隠蔽(ハイディング)》を使用しようとする。

 

「街中で、それを使うのはマナー違反じゃないのか?」

 

後ろから声を掛けられ、ミトは慌て気味に振り返る。

 

そこにはキリトが居た。

 

「街中での《隠蔽(ハイディング)》スキルの使用。まるで誰かを尾行するみたいだな」

 

「………分かるでしょ。武器の消失なんて明らかにおかし過ぎるわ」

 

「確かにな。だが、ネズハの言う通り、正式版からの追加ペナルティの可能性もある」

 

「それを確かめるのよ」

 

「バレたりしたらどうするんだ?」

 

「その時はその時よ」

 

「コンビを組んでるアスナにだって迷惑が」

 

「そんなの分かってる!」

 

キリトの言葉に、ミトが怒鳴った。

 

「自分が今からしようとしてることが、ノーマナーなのは十分承知よ。それでも、納得がいかないのよ」

 

ミトは拳を握って言う。

 

「カイが時間をかけて鍛えた剣が、あんなにあっさりと無くなるなんて………それに、カイのあんな悲しそうな笑顔。あんな笑顔見るぐらいなら、ノーマナーだろうとなんだろうと、なんだってやって、真相を探ってやるわよ」

 

そう答えるミトに、キリトは頭を掻く。

 

「それに関しては俺も同意見だ」

 

「え?」

 

「いや、正直、俺もネズハの事を付けようと思ってたんだ。でも、ミトの様子を見て、冷静になれた。だから、今こうして落ち着いてる」

 

そう言うと、キリトはミトの前を歩き出す。

 

「実はアルゴにある事を調べて貰ってるんだ。ミト、ついて来てくれ」

 

「……分かった」

 

ミトはキリトの後に続き、夜道を歩く。

 

「実は、俺とカイは、少し前にネズハと会ってたんだ」

 

夜道を歩き、キリトはミトに言う。

 

「と言っても、直接話したわけでもない。SAO初の鍛冶師プレイヤー、その腕を見込んで俺とカイも剣の強化をしに、昨日行ったんだ。だけど、俺とカイがネズハの所に着くと、1人のプレイヤーが騒いてたんだ」

 

「どうして?」

 

「そのプレイヤーの《アニールブレード+4》が、強化に4回連続失敗して+0のエンド品になったからだ」

 

「それは………騒ぐ気持ちも分からなくないけど、それは仕方ない事じゃない?そもそも強化の失敗は鍛冶師のミスじゃないんだし」

 

「俺もそうは思った。だけど、その後、オルランドの剣は5回連続で強化に成功してる。そして、さっきのカイの剣の武器消失………ちょっと不自然じゃないか?」

 

「言われてみると確かに………」

 

強化を4回連続失敗した翌日には、5回連続で成功する。

 

そして、武器の消失。

 

《武器の消失》が強化失敗ペナルティに追加されていたとなれば、どうして強化に5回連続で成功する程のプレイヤーが前日に4回も強化に失敗するのか。

 

どうして、《武器の消失》などと言う失敗をするのか。

 

それも全部、たまたまそうだったとしか理由がないが、キリトにはどうしても拭いきれない違和感となり、結局アルゴにこの件について調べて貰った。

 

「こっちだ」

 

途中で道を外れ、裏路地に入り、キリトは辺りを見渡す。

 

「待ち合わせ場所はここのはずだが………」

 

「よぉ、お早いお着きだナ、キー坊。それに、ミーちゃんも一緒カ」

 

背後から突如、アルゴが現れ、2人は驚く。

 

「流石だな。《隠れ率(ハイド・レート)》高過ぎだろ」

 

「大事な商売道具だからナ。片手間のスキルで見破ろうなんざ、レベル10早いってもんサ」

 

「それより、例の件はどうだった?」

 

「随分と急かすナァ。なんか、らしくないゾ、キー坊」

 

「俺は冷静だ。いいから、どうだった?」

 

口調は穏やかだが、今にも誰かを闇討ちにしそうな雰囲気に、ミトはキリトもキリトでカイの武器消失の一件は納得がいってないのだと思った。

 

「ああ、バッチリ調べたヨ。裏付けの取れてない情報を売るのは主義じゃないし、今回は特別に無料(タダ)でいいサ」

 

「ねぇキリト。一体、アルゴに何を調べて貰ったの?」

 

ミトが、キリトに情報の内容を聞く。

 

「カイの他に、主武装を失ったプレイヤーが居るかどうかだよ」

 

キリトの返事に、ミトは驚く。

 

「まさか、カイの武器は意図的に破壊されたって言いたいの?」

 

「それを確認するために来たんだ。それで、どうだった?」

 

「キー坊から連絡を受けて、この短時間で返事があった中でも7件。強化されたレア武装を失ったプレイヤーが居たヨ。それも、SAO初の鍛冶師プレイヤー“ネズハ”に強化依頼を頼んだプレイヤーだ」

 

アルゴから情報に、キリトもミトも目を見開く。

 

「じゃ、じゃあ、ネズハはやっぱり意図的に武器を破壊してたって事!?それに、カイだけじゃなく他の攻略組プレイヤーの武器を破壊してたって………そんなことして何の意味があるのよ!」

 

「いや、そもそも強化失敗ペナルティに《武器の消失》なんて無いんだヨ、ミーちゃん」

 

再度のアルゴの情報に、またしてもキリトとミトが驚く。

 

「だが、カイの剣は実際俺たちの目の前で壊れたんだぞ!?」

 

「それなんだけど、武器強化で武器が壊れる条件が1つあるんだ」

 

アルゴは指を一本立てて言う。

 

「強化対象の武器が、武器試行上限回数に達していること。つまり、エンド品の武器は強化で破壊されるんだ」

 

「じゃあ、カイの《アニールシミター》はエンド品の《アニールシミター》にすり替えられたってことじゃないか!」

 

「ちょっと待って!それなら、カイの《アニールシミター》は、カイの手元にないだけで、所有権はカイにあるって事よね!」

 

「そうだ!ミト、今の時間は!」

 

「………19時50分ジャスト!」

 

「強化したのは、19時だから………残り10分!急いで戻るぞ!」

 

「ええ!」

 

「お、おい!キー坊、ミーちゃん!」

 

アルゴの声も聞かず、キリトとミトは猛スピードで裏路地を抜け出し、宿屋へと向かう。

 

キリトよりも、敏捷値が高いミトが先行し、宿屋へと突入する。

 

そのまま階段を駆け上がり、カイの部屋の前に着く。

 

そして、勢いよく部屋の扉を開ける。

 

「うおっ!?み、ミト……?」

 

カイはまだ起きてたらしく、窓際の椅子に座って夜空を眺めていたらしく、今は椅子からずり落ちそうになっていた。

 

「今すぐ、メニューウィンドウを可視モードにして!」

 

「お、おう」

 

ミトの気迫に押され、カイは言われるがままメニューウィンドウを可視モードにする。

 

「見せて!」

 

カイを押しのけるように、装備フィギュアを確認する。

 

「武器の装備は無し。第一条件はクリア!」

 

「なぁ、ミト。一体急にどうしたんだよ?」

 

「いいから!私の言う通りに、操作して!まずは、ストレージ・タブに移動!次にセッティングボタン……サーチボタン……マニュピレート・ストレージ」

 

ミトの指示で、次々と操作をしていき、メニューの階層をどんどん移動する。

 

「あれ?これって………」

 

「それ!今すぐ押して!YES!」

 

ミトの言葉に、カイは《YES》をタップする。

 

その瞬間、カイの所有アイテムが全てオブジェクト化され、床に落とされる。

 

《コンプリートリィ・オール・アイテム・オブジェクダイズ》

 

カイが今行った操作は、それをする為の手順だ。

 

「ミト、一体何を………」

 

「訳は後!」

 

そう言うと、ミトはアイテム群の中に手を突っ込む。

 

余計なアイテムを払い除け、一番の奥に落ちてると思われる、それを探す。

 

「あった………!」

 

目当ての物を見つけ、ミトはそれを引っ張り出す。

 

「ミト!カイ!」

 

そこに丁度キリトも到着する。

 

「どうだった?」

 

部屋のありさまを見て、キリトはミトに尋ねる。

 

ミトは安心した笑みを浮かべ、手にしたソレをカイへと着き出す。

 

「………なんでだ?」

 

カイはそう呟くも、何処か嬉しそうに自身の愛剣《アニールシミター+》5を手にする。




なんかキリトとミト、カイのこと大好きじゃね?って書いてて思いました
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