カイの剣が無事に戻って直ぐ、ミトはアスナを呼びに行き、カイとキリトの部屋に集まっていた。
カイの剣が戻って来たことに、アスナも驚くも、一先ずはカイの剣が無事だったことを喜んだ。
「それで、どうしてカイ君の剣は無事だったの?」
「早い話、カイの剣はそもそも壊れて無かったんだよ」
キリトの説明に、カイもアスナも疑問符を浮かべる。
「強化で武器が破壊されるって事は無いのよ。ただし、強化しようとした武器が強化試行回数を使い切ったエンド品の場合は壊れるけどね」
「それじゃあ、俺の剣はエンド品の奴とすり替わってたって事か?」
「ああ、そうだ」
「でも、いつどうやってすり替えたの?」
アスナの質問に、キリトもミトも口を閉ざす。
「従来のMMORPGなら、武器は鍛冶屋に預けた時点で画面から見えなくなるから、詐欺を行ったかなんてわからない」
「けど、これは世界初のVRMMORPG。ここでは、俺達が剣を渡してからもその場に存在する。だから、剣をすり替えるなんて簡単じゃない。というか、むちゃくちゃ難しいんだ」
「つまり、剣のすり替えについては分からないって事か」
「ああ。そこでなんだが、カイ、アスナ。2人はネズハに剣を渡してから、ネズハから視線を外したタイミングはあるか?」
「タイミングって言われてもな………」
カイは腕を組み、自然を外したタイミングもとい県のすり替えが可能だったタイミングを思い出す。
「ちゃんと強化できるか気になって、ずっと見てたし……」
「だよな……」
「そもそも、自分の武器を他人に預けるんだから、そう簡単に目を離したりしないわよね」
キリトもミトも、カイと同じらしく溜息を吐く。
「………あのさ、私、一度だけ視線外したかも」
すると、アスナが小さく手を上げてそう言った。
「ほ、本当か!?」
「どこで!?」
「強化素材が炉に入れられる時。青い光を放って綺麗で思わず見惚れちゃって」
「あ、言われてみると俺もその時、視線外したな」
「俺も見てた。まぁ、俺の場合はちゃんと強化素材が全て入ったかってのを確認するためなんだが」
「私もね。でも、それでも精々3秒程度よ。3秒で、ウインドウを開いて剣を仕舞って、別の剣を探してオブジェクト化するなんて短過ぎる」
結局、振出しに戻り4人はまた頭を抱える。
その時、部屋の扉がノックされる。
「来たか」
キリトがそう言い、部屋の扉を開ける。
「よォ、お集まりのようだネ」
現れたのはアルゴで、キリトは新しい椅子を用意し、アルゴを座らせる。
「今日は大変だったな、カー坊」
「まぁな。でも、お陰で剣は戻って来た。ありがとうな、アルゴ」
「礼はいいさ。それより、早速報告させてもらうゾ」
アルゴはテーブルの上で手を組み、調査結果を報告する。
「キー坊に言われて、あの鍛冶師クンの後を付けた。鍛冶師クンは、店を畳むとそのまま街の中を移動して、路地裏に入っタ。何かあると思って、更につけると………ビンゴだった」
「やっぱり、誰かと会ってたんだな」
「ああ。フーデッドマントを着た4人ダ」
「4人?5人じゃなくてか?」
「ああ、4人だ。5人じゃないとまずいのカ?」
「………いや、そうじゃない。違うならいいんだ」
キリト1人で納得し、キリトはアルゴに報告の続きを話させる。
「で、鍛冶師クンは何かをその4人組に渡そうとしてたみたいだけど、トラブルがあったのか、えらく慌ててたナ。その後は、三々五々。鍛冶屋クンは安宿に直行、4人組も何処かに行ったヨ」
「その慌ててた時間って、20時じゃないか?」
「ああ、そうだネ。鐘の直後だったし、間違いないナ」
「20時だと、カイの剣を取り返したのと同じぐらいね」
「恐らく、剣の所有権がクリアされるのを待ってたけど、時間が来る前にカイが取り戻したから慌ててたんだろう。……………取り敢えずは、カイの剣は戻って来たし一件落着だな」
「で、どうするんダ?」
話を締めようとした所で、アルゴがそう言い出した。
「………どうするって何をだよ?」
「分かってるダロ?一時的とはいえ、カー坊の剣が騙し取られていたのは事実ダ。これ以上、被害が出る前に公表するべきじゃないカ?オイラの
「いや、それは止めておこう。下手に追い込んで厄介な事になったら大変だしな」
「厄介な事?」
「騙し取った武器の事だ。まだ隠し持ってるなら取り返しは付くが、換金でもしていようなものなら………」
「その武器は永遠に失われたことになル。そうなったら、武器を奪われたプレイヤーの怒りは沈めようが無いナ」
「そうね、今のSAOで装備は自分の命を守る大事な存在。それが奪われ、永遠に帰って来ない。そして、それに対する
「いや、1つだけある。ことが公になれば、誰もが思いつく罰…………PKだ」
PK
その言葉に、カイは驚き、ミトとアルゴは、やっぱりかと言いた気な表情をする。
「ねぇ、PKって?」
唯一、ゲーム用語に疎いアスナが、PKの意味を尋ねて来る。
「プレイヤーキル、略してPK。つまり、プレイヤーがプレイヤーを殺す事よ」
「この場合だと、鍛冶師“ネズハ”の処刑だ」
「ふざけるな!」
そこでカイが立ち上がって叫んだ。
「いくらなんでもそんなのやり過ぎだ!確かに武器を騙し取ったことは許せないけど、だからってPKをしていい理由にならないだろ!」
「そうだよ!それに、この世界でそんなことしたら、それって………人殺し………」
「ああ、そうだ。だからこそ、慎重に動くべきなんだ。それだけは、絶対にやってはいけないから」
「そのためには真相を知る必要があるナ。強化詐欺のトリックに動機、盗られた武器の行方もナ」
「そして取り返しのつく形で償い、か」
キリトとミト、そしてアルゴのβテスト出身者3人は罰によるPKではなく、それ以外での償いを考えており、それが分かったカイは安心したように、椅子に座り直す。
「でもさ、私、どうしてもそう思えないな」
すると、アスナがそんなことを口走った。
「武器を取られたカイ君の前で言うのもどうかと思うけど、私、あの人が好き好んで他の人の大事な物を奪う人には見えないの」
「………いや、正直な話、俺もアスナと同じだ。ネズハが剣を打つ時の表情………とてもこれから剣を騙し取ろうとするって言う人間には見えなかった」
アスナが、それに、剣を騙し取られた張本人であるカイが、ネズハを擁護する様な事を言うので、キリトもミトも驚く。
「気持ちはわかるけど、彼の罪は動かし難いと思うぞ」
「どんな事情があるにせよ、彼のやったことは決して許されることじゃないわ。それとも何か情状酌量の余地が有るの?」
「うん、もしかしたらだけど……………アルゴさん、調査のついででいいんだけどこれについて調べてもらえないかしら?」
そう言って、アスナはアルゴにある物を渡した。
それを受け取ったアルゴは、「了解ダ」と言って、宿屋を後にした。
「剣も戻って来たし、明日は迷宮区に行くか」
夜も更けて、そろそろ寝ようかと言うタイミングで、カイがそう言った。
「そうだな。他の攻略組と会うのも嫌だし、朝一で迷宮区に乗り込むか。対ボス戦を想定した練習もしておきたいし」
「ああ、《ナミング》ね。確かに、アレは初見だと結構焦るし、いいんじゃない?」
「じゃあ、明日は6時起きで7時には迷宮区に着いてる様にしようか」
アスナの言葉に、全員が賛成し、解散となる。
「なぁ、キリト」
寝ようとするキリトに、カイが声を掛ける。
「本当にありがとうな。俺の剣の為に。動いてくれて」
「…………当たり前だろ、大事な相棒の武器なんだからな」
何処かでカイ自身が言った様なセリフを言うキリトに、カイは思わず笑う、
「おい、笑うなよ」
「悪い悪い……でも、本当にありがとうな。やっぱ、お前と組んで正解だったよ」
「あー、その、なんだ………ミトにもお礼言っとけよ」
褒められ慣れてないキリトは、そっぽを向き、布団に潜り込んで言う。
「ああ、分かってるよ。今日はもう遅いし、明日伝える。じゃあ、おやすみ」
寝る前の挨拶をし、カイもベッドへと入った。