ソードアート・オンライン~剣聖に至る道~   作:ほにゃー

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第6話 強化詐欺のトリック

翌朝7時。

 

予定通り、カイ達4人は朝一で迷宮区に乗り込み、出現するモンスター《レッサートーラス・ストライカー》を倒す。

 

《レッサートーラス・ストライカー》は、第2層フロアボスの《バラン・ザ・ジェネラルトーラス》と、取り巻きの《ナト・ザ・カーネルトーラス》が使用する麻痺の阻害効果(デバフ)効果付き専用スキル《ナミング・インパクト》を使用するため、カイ達は対ボス戦を想定し、攻撃の回避練習をしている。

 

「カイ、スイッチ!」

 

「おう!」

 

キリトが《トーラス》の攻撃を弾き、カイが空いた懐目掛け走り出す。

 

だが、《トーラス》は後に仰け反るのを踏み止まり、そのまま手にしたハンマーを頭上高く振り上げる。

 

「カイ!《ナミング》だ!距離を取れ!」

 

「チッ!どんな背筋してんだよ!」

 

カイは止むを得ず攻撃を止め、全力で後退する。

 

ハンマーが振り下ろされた場所を中心に、放射状に細いスパークが拡散し、僅かにカイのブーツの先を掠る。

 

その程度では、一時的行動不能(スタン)にはならず、カイは剣を握り直す。

 

そして、大技を出して隙のできた《トーラス》に向けて、曲刀スキル《ベア・ノック》を叩き込む。

 

HPが一気に削られ、止めにキリトが一太刀入れて、《レッサートーラス・ストライカー》は倒される。

 

「ナイス回避!」

 

「そっちこそ、ナイスアタック!」

 

互いにサムズアップで、称え合うと、少し離れた位置で別の《レッサートーラス・ストライカー》と戦っているミトとアスナを見る。

 

「アスナ、落ち着いて!《ナミング》の動作に注意し動けば、大丈夫だから!」

 

「いやあああああ!!来ないでぇぇぇぇぇ!」

 

ミトが冷静に指示を出す中、アスナは半狂乱になりながら攻撃を回避し、《リニア―》からの2連撃技《パラレル・スティング》で倒す。

 

「アスナ………大丈夫?」

 

肩で息をするアスナにミトが声を掛ける。

 

「なんでミトは平気なのさ!あんなの、顔隠したらもうほぼ人じゃん!半裸の男の人じゃん!」

 

「慣れって言うか一度見てるしね………」

 

どうやら、アスナは《トーラス》の姿格好に嫌悪感があるらしく、そう叫ぶ。

 

「まぁ、人が牛かって言われたら8割は人だけど」

 

「あんなほぼ裸みたいな格好セクハラだわ。ハラスメントコードで黒鉄宮送りにしたいわよ」

 

アスナの言う通り、《トーラス》は一応防具を着ているが、露出が高く、肌を守っている面より肌を晒している面が多い。

 

むしろ、そんなに肌を晒すならその防具いらないんじゃないかと言ってもいい。

 

「そうか……なら、このドロップアイテムは試着したらダメか?」

 

そう言い、キリトは先程の《トーラス》が着ていたのと同じ《マイティ・ストラップ・オブ・レザー》と言う防具を出す。

 

防御力もそこそこあり、おまけに筋力値にボーナスが付く装備なのだが、装備すると上半身に革帯を、各所に巻いただけの姿になり、その上からコートの類を着ることもできない。

いた物と同じ防具を取り出す。

 

キリトは、ダンジョンに居る間はこれを着ようかと考えていたらしく、アスナに確認を取る。

 

すると、アスナは笑みを浮かべ、キリトにビンタした。

 

カーソルが犯罪者(イエロー)にならなかったのが奇跡だった。

 

「なぁ、ミト。やっぱり、ミトもあれはダメか?」

 

「私は別に気にしないけど?なんなら、私が着てあげようか?」

 

ミトがにやっと意地の悪い笑みを浮かべる。

 

「遠慮しとくよ。あんな格好のミトが隣にいたら、戦いに集中出来なさそうだしな」

 

「カイは素直ね。そう言うところ、結構好きかな」

 

「誉め言葉として、受け取っておくよ」

 

カイはそう言って、自身もドロップした《マイティ・ストラップ・オブ・レザー》を見る。

 

(あのエギルって人に似合いそうだな…………)

 

そんなことを思いながら、カイはアイテムストレージを消す。

 

その後、後もう2、3回《ナミング》の対処練習をすると言う話になり、4人は更に迷宮区を昇って行く。

 

迷宮区3階へと上がると、下から戦闘音が聞こえ、丁度吹き抜けがあり、カイ達は下の様子を見る。

 

「あ、アレって……」

 

「《伝説の勇者達(レジェンド・ブレイブス)》か。早いな、もう下の階まで来たのか」

 

そこには昨日のフィールドボス戦に参加していた5人組のパーティーがいた。

 

レベルが低いと言うハンデがあるが、5人の連携が良く、またしっかりと強化された装備のお陰でなんとか《トーラス》と渡り合っていた。

 

「良い連携してるわね」

 

「英雄の名を名乗るだけあるわ。あれだと、いつか本当に英雄になりそうね」

 

アスナとミトは、その動きを称賛するも、キリトだけは何かを考えこんでいた。

 

「…………やっぱり、妙だな」

 

「キリト、妙って何がだ?」

 

「ちぐはぐなんだよ。本来、SAOに限らすRPGってジャンルは装備とレベルは比例するもんなんだ。強ければ、効率よくお金も経験値も稼げるからな。だけど、彼らはレベルもスキル熟練度も《攻略組》の平均より下。なのに、装備だけ最上級。おかしくないか?」

 

キリトのその言葉に、ミトが声を上げる。

 

「キリト、貴方まさかアイツらとネズハが関係してるって言いたいの?」

 

「流石に短絡的すぎるかも知れない。だけど、もし関係していたとして、詐欺で強化された剣を1日で2本も3本も手に入れたら、その稼ぎは俺達が1日で得るコルの額を遥かに上回る。それに、一致してるんだ」

 

「一致って何が?」

 

「《攻略組プレイヤーの武器が強化失敗で破壊される事件》と《 《伝説の勇者達(レジェンド・ブレイブス)》が前線に顔を出す様になった時期》、更に《SAO初の鍛冶師プレイヤーが現れた時期》がだ」

 

「彼らの事、調べてみる必要があるわね」

 

「なら、アルゴさんに彼らのことも調べてもらいましょう」

 

そう言ってアスナはメッセージウィンドウを開き、アルゴにメッセージを送ろうとする。

 

だが、急にメッセージを打つ手を止めた。

 

「……いえ、違うわ。見て彼らの動き。確かにレベルは低いかもしれないけど今いる攻略組のパーティの中を見ても彼らほど連携のいいパーティーはそうはいない。どうして実力も装備も有るのに今まで最前線で見かけなかったんだと思う?」

 

「っ!そうか!」

 

アスナの言葉に、カイが声を上げる。

 

「《装備が良いのにレベルが低い》んじゃなくて、《腕も装備も良いのに、レベルだけ低い》んだな」

 

「うん。多分、違和感の正体はそこにあると思う」

 

アスナがそう言い終えると、丁度、《伝説の勇者達(レジェンド・ブレイブス)》も《トーラス》を倒した。

 

「このままだと追いつかれるな。アスナ、ミト、今日はもう1フロア付き合ってもらえるか?」

 

「別にいいけど、どうして?」

 

「実は、俺とカイもうすぐ片手剣と曲刀のスキル熟練度が100になるんだ」

 

「出来れば、今日中には100にしたいんだよ」

 

「「100!?」」

 

スキル熟練度が100に達すると聞き、ミトとアスナは同時に声を上げる。

 

「いつの間にそんな………」

 

「こっちはまだ90になったばっかなのに……」

 

ミトとアスナは、羨ましそうに2人を見る。

 

「そう言えば、キリト。次のスキルMod(強化オプション)は何が良いんだ?」

 

スキルMod(強化オプション)は、スキル熟練度が50の倍数に到達した時獲得できる物で、得られるスキルMod(強化オプション)は多岐に渡る。

 

どれを取るかを考えるのも、1つの醍醐味でもあるので悩み処ではある。

 

「そうだな、《クリティカル率上昇》かな。熟練度50の時は《ソードスキル冷却時間(クールタイム)短縮》優先で取れなかったしな」

 

「それ以外だと、他にお勧めは?」

 

「う~ん、《クイックチェンジ》だな。あれも結構便利なんだよな」

 

「なにそれ?」

 

キリトの出した《クイックチェンジ》と言う言葉に、アスナが反応する。

 

「この間俺がやったみたいに、武器を落としたり取られた時、予め予備の武器を設定しておくと、ワンタッチで再装備できるスキルなんだ」

 

「他にも、装備していた武器と同じものを再装備するって設定にもできるわ。もっとも、こっちは同じ武器がストレージにないと無理だけど…………」

 

ミトがキリトの説明に補足を入れると、突然、口が止まった。

 

ミトだけでなく、キリトの話を聞いてたカイとアスナ、そして、どのスキルMod(強化オプション)を取るか考えていたキリトも止まる。

 

そして、沈黙して数秒後。

 

「「それだ!」」「「それよ!」」

 

4人同時に声を上げた。

 

「強化する武器と同じエンド品の武器があれば、《クイックチェンジ》で入れ替えることが出来る!」

 

「《クイックチェンジ》なら、3秒も時間があれば十分!これがすり替えのトリックね!」

 

カイとミトは謎が解けて、喜ぶ。

 

「いや、だとしても難しいな」

 

だが、そこにキリトが待ったを掛ける。

 

「職人クラスのプレイヤーが、一朝一夕で取れる様なスキルじゃない」

 

キリトの言葉に、カイとミトは「そっか」と言い、先程の喜びが嘘のように沈黙する。

 

《クイックチェンジ》を取るには、何かしらの戦闘スキルを鍛えないといけない。

 

だが、鍛冶師と言う生産職のプレイヤーのネズハがそれを取るのは難しい。

 

取るだけなら出来るか、鍛冶スキルを鍛える傍らで、戦闘スキルを鍛えるなど片手間では無理な話。

 

トリックの正体は、まだ0に戻った。

 

「それだけど……」

 

だが、そこでアスナが声を上げる。

 

「もしかしたら、クリア出来るかも」

 

「なっ!?本当か?」

 

「うん。もっとも、アルゴさんの調査次第だけど………」

 

その瞬間、アスナに元にアルゴからメッセージが届く。

 

「もしかして、噂をすればってやつ?」

 

「そうみたい。待っていま確認するわ」

 

そう言ってカイ達は画面を食い入る様に見つめた……。

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