ソードアート・オンライン~剣聖に至る道~   作:ほにゃー

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第8話 苦労する相棒

(き、気まずい……!何か話をしないと………!)

 

カイ達4人+アルゴとネズハの計6人は、ある場所へと向かっていた。

 

それはエクストラスキル《体術》を習得するための、あの場所だった。

 

何故、6人がそこに向かっているかと言うとキリトがネズハに譲ろうとした武器は、《投擲》スキル以外に《体術》スキルがないと使えない物の為、キリトはネズハに《片手武器作製》スキルを捨てさせ、《体術》を習得させようとしている。

 

そこに向かうまでの間、女性陣は楽し気に話をしているが、男性陣は特に会話が無かった。

 

その沈黙に耐え切れず、ネズハは何か話題を探す。

 

その時、アスナの姿が目に入り、ある噂を思い出した。

 

「あ、あの、キリトさん」

 

「なんだ?」

 

「アスナさんとはいつからお付き合いを?」

 

ネズハの質問に、キリトは思いっきりこけそうになった。

 

無論、ネズハのその質問は前を歩いてるアスナの耳にも入る。

 

「付き合ってないけど!?」

 

否定したのはアスナだった。

 

それも即答だった。

 

キリトは「事実だが、そんな即答する程嫌なのか………」っと落ち込んでいた。

 

「すみません!SAOでの世間話となると、やはり数少ない女性プレイヤーの話題が鉄板なもので…………」

 

「ちょっと待て!それってつまり、そう言う噂が立ってるってことか?」

 

「噂どころか常識ですよ」

 

キリトの質問に、ネズハは当たり前でしょっと言いた気な表情で言う。

 

「キリトさんが部屋にアスナさんを連れ込んでるのを見たプレイヤーは大勢いますし、それにある情報筋でキリトさんの部屋の浴室から一糸纏わぬアスナさんが現れたとか………」

 

一糸纏わぬ姿でアスナが浴室から出てきたと言う話は、カイもミトも初耳だった。

 

それもそのはず、その事件が起きた時、カイとミトはフィールドに出ていたからだ。

 

詳しく言うと、カイがアルゴに頼み事をした後、アルゴはキリトに聞きたいことがあったのを思い出し、宿屋へと戻った。

 

聞くきたい事とは、カイとキリトの借りてる部屋の情報だ。

 

どうやら、宿屋の事で困ってるプレイヤーもいるとかで、アルゴはそう言うプレイヤーの為に宿屋の情報も集めていた。

 

その際、アルゴは目敏く浴室にも目を付けた。

 

キリトは、数少ない女性プレイヤーを自身の借りてる部屋の浴室に入れてるとアルゴに知られれば、それも情報として売られ、不名誉な噂が流れると思い、浴室は使えないと言った。

 

だが、そんなキリトの言動に怪しさを感じたアルゴは、強行突破。

 

そこでは、丁度湯上りで下着を身に着けた直後のアスナが居た。

 

そんな姿を見たキリトは、アスナから細剣(レイピア)の《リニア―》を食らい、吹っ飛ばされた。

 

それが真相だ。

 

「しかも、その時目測されたスリーサイズや下着の色がとんでもない高値で売られているとか」

 

ネズハがそう言うと、アスナはアルゴを睨みだした。

 

あの時、あの現場に居たのはアスナ以外だとキリトとアルゴ。

 

キリト自身がそう言う噂を知らない為、必然と噂の出所はアルゴとなる。

 

「ニャ…ニャハハハ、ハ…反省してまス。で、でも大丈夫!誰にも売ってはいないかラ!」

 

アルゴは、アスナに弁明する。

 

「いや、それは誤解だ!俺が組んでるのはカイだけだ!アスナとミトの2人とは、たまたま!一時的に!仕方なく組んでいるだけのことであって!そう言う関係じゃない!そもそも、その時はカイとミトもいたし、決して2人っきりって訳じゃない!」

 

キリトはネズハにそう熱弁する。

 

なお、アスナは「たまたま」「一時的に」「仕方なく」と言った、キリトの言葉にカチンっと来ているのを、キリトは知らない。

 

「あ、そう言えば、カイさんとミトさんも噂になってますよ」

 

「「え?」」

 

「夜のフィールドで、2人が手を握り合ってたって話です。月夜で神秘的な雰囲気があって、間に割って入るのが無粋と思えて、まるで恋人同士が夜に逢瀬してる様だとか」

 

「カイと恋人ねぇ…………うん、悪くないかも」

 

ミトは口元に手を持って行き、考える仕草でそう言う。

 

「おい、ミト。冗談でも、そう言う事は言うな」

 

「あら?私は結構本気で言ったつもりだけど?」

 

「全く………そもそも、こんな嫌われ者と恋人同士なんて噂、ミトに迷惑だろ…………」

 

「迷惑がどうかは、私が決めることよ」

 

楽しそうに笑うミトと、そんなミトに諦めた様に溜息を吐くカイだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『フォフォフォ、なんじゃ小童ども入門希望か?』

 

いつぞやの、岩山の山頂に着き、カイとキリト、アルゴはネズハを仙人の前に案内する。

 

『我が試練を見事果たせば、お主らに我が武の真髄《体術》を伝授してやろう。フォフォフォ』

 

「よ、よろしくおねがいします!」

 

ネズハが頭を下げてクエスト受諾の意思を取ると、目の前にクエスト開始の選択画面が出現した。

 

『修業の道は長く険しいぞ?覚悟は有るか?』

 

「……ちなみに、何をさせられるんですか?」

 

《YES》を押そうとしたネズハは、経験者3名にクエスト内容を尋ねる。 

 

「大丈夫、やることはシンプルサ。この岩を割るだけだかラ」

 

「一応言っておくと、それ、かなり固いぞ」

 

「俺とカイも、割るのに3日掛かった」

 

3人からの情報に、ネズハだけでなくミトとアスナも戦慄する。

 

目の前にある岩のオブジェクトは、破壊不能オブジェクトの一歩手前の硬さを誇っている。

 

それを割ると言うのだ。

 

ネズハは、一緒に修行に付き合ってくれる人、もとい生贄が欲しそうにミトとアスナを見る。

 

その視線に気づき、アスナは慌てて首を横に振る。

 

「私はやらないわよ!確かに《体術》スキルは戦闘の幅が広がりそうだけど、今の私は少しでも細剣(レイピア)のスキルを…」

 

『なんじゃおなご、逃げるのか?フォフォ、それが良かろうて。所詮惰弱なおなご如きに我が武の真髄を極めることは出来なかろうて』

 

「………なんですって?」

 

あからさまな挑発に、アスナは苛つく。

 

普段のアスナなら、こんな挑発に乗る事は無いが、今のアスナは、キリトの言った「たまたま」「一時的に」「仕方なく」の言葉に苛ついていた為、機嫌が悪かった。

 

『なんじゃ不満か? それなら、ワシがもっとおなごに有用な《体術》を伝授してやろうかのぅ』

 

そう言いながら、アスナの傍に歩み寄り、仙人ははおもむろにアスナの胸を指で突っついた。

 

その瞬間、アスナは目にも止まらぬ速さで、細剣(レイピア)を抜き、《リニアー》を放つも、いとも簡単に避けられてしまった。

 

 

『フォフォフォ、なかなか活きがよい。よかろう、我が武の真髄とくと授けてしんぜよう。手とり足とり順繰りにのう』

 

エロ爺のような発言に、アスナはとうとう冷静の文字をかなぐり捨て、目の前に現れたクエスト開始の選択画面を睨みつける。

 

「いいわ、取得したらまずはその頭ぶっ飛ばす!」

 

そう啖呵を切り、勢いで《YES》を押す。

 

「ほら!あなたもさっさとなさい!速攻で終わらせるわよこんなの!」

 

「は、はい!」

 

アスナの気迫に圧され、ネズハも《YES》を押す。

 

「アスナがこうなった以上、私も一緒か」

 

やれやれと言いた気に、ミトも目の前に現れた選択画面の《YES》を押す。

 

これで、ミト、アスナ、ネズハの3人の《体術》習得クエストが始まった。

 

『フォーフォフォフォ、よかろう小童共。ならばこの大岩を一つ砕くのじゃ。ただし、武器を使うことはまかりならんぞい?』

 

そして、前にカイやキリトがやられたように、ミトとアスナの武器を、仙人は一瞬で奪い取った。

 

『お主らが見事この試練を果たすまで無用の長物は預かっておくぞい。この試練はあくまで徒手空拳にて挑むのじゃ、拳を使おうと蹴りで砕こうと自由じゃ。なんなら頭を使ってもよいがの。あとのう、大岩を割るまでこの山を降りることはならんぞい。じゃからお主らにはその証をたててもらうぞい』

 

仙人が懐から筆を取り出し、そのまま3人に一振り。

 

『その証はお主らが見事大岩を割り修行を終えるまで決して消えることはない。信じておるぞ我が弟子よ。フォーフォフォフォ』

 

そう言い残し、仙人は再び先程の岩の上に戻る。

 

「ああ!アスナさんに…、おヒゲが!!!」

 

「な、なにこれ!ってミトにも付いてるわよ!」

 

「ちなみに言うと、ネズハにもあるわよ」

 

驚くアスナとネズハ、対象に冷静なミト。

 

「あ、アルゴさん…こ…これ、キャンセル…」

 

「ムリ!それがβテストでオレっちの《鼠》キャラが定着した理由サ。……慰めになるかわからないケド、今の情報量はいらないヨ」

 

「早く言ってよお」 

 

「ナァ、元キリえもんと元カイえもんの2人からこの気の毒なお嬢さん方にアドバイスを…」

 

「バカーッ!何考えてるんだ!」

 

キリトはアドバイスをする所か、アスナに向かって怒鳴りつけた。

 

「だ、だって知らなかったんだもの、しょうがないじゃない!」

 

「しょうがないですむか!!俺とカイでも3日掛かったんだぞ!2日後には攻略組がボス部屋にたどり着く!奴らは待っちゃくれないぞ!次のボス戦も一緒に挑むんじゃなかったのか!?」

 

何処か焦るような言い方のキリトに、アスナは一瞬謝ろうかと思った。

 

だが、その瞬間、道中でのキリトの言葉が思い出される。

 

「………別に、一緒にやるとは一言も言ってませんけど」

 

「なぁ!?」

 

「それに、私とミトとは、たまたま、一時的に、仕方なく組んでいるだけなんでしょ?」

 

アスナがこんな物言いをすることに、ミトは驚き、目を丸くしていた。

 

「…知らないからな、ガンガンレベル上げてボス戦でもLA取ってあとでたっぷり自慢してやるからな」

 

「あらぁ?むしろ私の仲裁無しで仲間はずれにされたりしないかしら?心ぱっ……!」

 

アスナは思わず、言葉を詰まらせた。

 

キリトは、物凄く真剣で、何処か悲しそうな表情でアスナを見ていたからだ。

 

アスナは、その表情に「言い過ぎた!」と思った。

 

「……そうさ、俺は君のそういう所を買っていたんだけどな。ディアベルが居ない今、自意識過剰なリンドや視野の狭いキバオウに攻略組は任せられない。………でも、君になら……いや今はやめよう。俺はもう行く」

 

そう言って、キリトはフィールドへ戻ろうとする。

 

「キリト、良いのか?」

 

カイはキリトにそう声を掛けるも、キリトは何も言わずに足を進める。

 

「な…何よ!言いなさいよ!…………分かったわよ、ボス攻略に間に合わせれば良いんでしょ!待ってなさい!」

 

去って行くキリトの背中に向かって、アスナはそう叫び、岩へと向かう。

 

ネズハはアスナとキリトを交互に見て、最後は自身も岩へと向かった。

 

「驚いたわ………アスナがあそこまで怒るなんて………」

 

「キリトの言葉に苛ついたんだろうな。確かに、俺もキリトの「たまたま」「一時的に」「仕方なく」って言葉は、流石にどうかと思うけど、アスナもあそこまで言わなくても………」

 

「ま、そっちは私の方でフォローして、それとなくキリトに謝る様に言っておくわ」

 

そう言って、ミトは岩へと向かう。

 

「それじゃあ、私も行くわ。なんとかして、ボス戦には間に合わせるから。私もアスナも、それに、ネズハもね」

 

「ああ、待ってる」

 

カイは手を軽く上げてミトを見送り、キリトの後を追う。

 

ミトもカイに手を振り返して、アスナの後を追う。

 

((お互い、相棒には苦労するな(わね)))

 

心の中で、同じことを思い、それぞれの相棒の元へと向かった。

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