「そうですか。確かにバーヴァンシーと仲良くなれる子ならば状況次第では助けても良いでしょう。良い判断です、アーロン」
堕天使の件は当然ながら母様にも伝えたけれど、もしかしたら怒られるかと思いきや上機嫌で承諾してくれた。
バーヴァンシーはちょっと言葉遣いに問題がある時が有るのは心配だけれど、それでも根っこは良い子なので友達はそれなりに居る。
只、全員普通の家の子だから魔法使いの家って事を隠しながらだし、ちゃんとそっち関係の事を話せる友達が居ても良いとは思う。
「教会内で悪魔を助ける位には考えが足りないけれど良い子ではあるみたいだからさ。ちょっと調べただけでも堕天使は勝手な行動をしているみたいだったよ」
予想通りに彼女は神器を抜き取る目的で騙され勧誘していたよ。
レイナーレって中級堕天使は癒しの力を持った至高の堕天使になってアザゼルに愛して貰えるとか言っていたけれど、それを伝えた途端に母様は吹き出した。
「ふふふ、馬鹿な話ですね。道具である以上は取り上げられるというのに。私ならば勝手な行動をする者ではなく元より優秀だと評価している者に与えるでしょうに。叶わぬ夢に浮かれているのですね」
「まあ、今直ぐ乗り込んでも向こうはこっちを怖い相手だと思うだけだし、ちゃんと追い詰められてからじゃないと……マッチポンプっぽくない?」
「気にしなくても良いのですよ。貴方が狙っている訳ではないのですから」
母様はそう言ってくれるけれど、僕としてはちょっと気になる。
……うん、そうだ。
「「バーヴァンシーにはその辺を気付かないようにしないと(せねば)!」」
こうやって二人揃って同じ事を言うくらいに良い子で可愛いバーヴァンシー。
尊重して一人前として扱うなら話すべきって考えもあるんだろうけれど、知らなくて良いことは知らない方が良いっていう僕達の我が儘だ。
「言っておくが、お前もバーヴァンシーと同様に可愛い子だと思っているぞ、アーロン」
「分かっているさ。母様の愛を疑った事なんて無いよ。妹を守るのは兄の役目だし、僕が守りたいから守っているのさ」
まあ、母様の愛ってぶっちゃけ分かり辛いって言うか、例えば”何故お前はそうなのだ、ヴァンシー(翻訳・どうしてお前はそこまで可愛いのだ)”てな感じに言葉が足りないし表情も固い……コミュ力が異常な母さんが居なければ僕もバーヴァンシーも変な風に誤解していただろうさ。
「所で母さんは元気?」
今は異世界に無限龍の封印に行っているけれど、母様は兎も角として母さんの方の戦闘力はそれ程高くない。
体力は凄いけれどね。
「ええ、元気ですとも。もしかしたらお前達に弟か妹が出来るかも知れませんよ」
「あっ、うん。それは良かった」
……親の惚気話とか正直キッツいけれど、母様が幸せそうだし言わないでおこう。
今度はどっちが生むのかとかは気になるけれど。
「所でアーロン、お前の方はどうなのだ? メリュジーヌとは仲良くやっているか?」
「いや、何度も言うけれど恋人は彼奴の自称だからね?」
「……これが思春期という物か。反抗期にも備えておくべきか? いや、しかし私と妻の子であるし……」
家族だからって相手の全てを理解出来る筈がないんだけれど、母様が何故かメリュジーヌ推しな理由は本当にサッパリだよ。
あの子の事は嫌いじゃないし、美少女だとは思うんだけれど恋愛感情ではないし、母様のイエスマンであるウッドワスでさえメリュジーヌ推しについては賛同しないって感じなのにさ。
「ああ、ちゃんと節度を持って接するように。未だ高校生なのですから。……いえ、妻がお前を生んだのもそう変わらない年頃だったか」
節度云々はメリュジーヌに言って欲しいな、強引な恋愛脳のメンヘラドラゴンに。
「……ドライグにも恋人との間に娘が居たんだよね? 矢っ張りメリュジーヌみたいな子?」
『殺すぞ、小僧。俺はあの子が育つ前に封印されたが、母親は気高い女だった。アルビオンの恋人のような性格破綻者の娘と一緒にするな。ノクナレアと俺が名付けた』
翌日、周囲に認識阻害の結界を張ってのイッセーとの昼食中、ドライグに話を聞いたけれど地雷だったみたいだね。
……メリュジーヌの話からアルビオンの方は分かっちゃいたけれどドライグも親馬鹿か。
所でノクナレアって母様が口にしていた気が……。
「でもよ、アーロン。あの子って普通に可愛いだろ。……俺はちょっと扱いがアレだから苦手だけれど」
「そりゃ入れ物の入れ物扱い……レジ袋と同等じゃねぇ。でもさ、結局覇龍に目覚めた方が勝って来たんだし、目覚める為の才能は兎も角として、それで得られる力からして所有者の才能の差なんて誤差でしょう。……先に発動されたら後から使う余裕なんて無いだろうし」
消耗が激しいから一旦引いて自滅を誘うとかはドラゴン系神器の影響で戦闘脳になった人が取らない選択肢だろうし。
「だよなあ。俺、才能無いらしいし」
「性欲が絡まなかったらね。……いや、本当に性欲が絡んだらラノベ主人公みたいな爆発的成長をするってどうなってるのさ? 長年頑張って若手最強になったバアル家の次期当主に謝れば?」
「あの人はあの人で努力の末に肉体が目覚めたってレベルだろ!? 俺が人間とはいえ、強化魔法使って貰って一時的に悪魔並の力を手に入れて禁手使っても押されるんだからなっ!?」
そんな事を話していると遠くで黄色い声援を浴びる男子生徒、グレモリー先輩の眷属である木場の姿が遠目に見えた。
「……ちっ。イケメンがよ」
「ドラゴンオーラでモテるよ、その内。学園内じゃ今は余計なトラブル防止に漏れないようにしているだけで。まあ、そのせいで教室での猥談によって嫌われてるけれどさ」
「ぐっ! てか、俺がモテないのはお前のせいかよ」
「いや、お前のせいだよ」
さて、もう少し友人を弄るとして、堕天使の様子でも……って、センサーに反応が。
アーシアに付けていたのは小さな蜘蛛、それがレイナーレ達の様子を探っているんだけれど、特定のキーワードを口にすれば反応が来るようにしていたら今まさに。
直ぐに会話を再生する。
「アザゼル様が興味を持っているという魔法使いだけれど、所詮は人間なんだから捕まえに行きましょうか。アーシアを待機させれば万が一も無いでしょうし」
飛んで火に入る夏の虫……か。
全く、部下の躾がなっていないな、結局は裏切り者が徒党を組んでる連中だな。