「流石アーロン君、今回の仕事も素晴らしい。……所でこれってどうしたら良いと思う?」
今日は魔王アジュカとの面談の日、僕が今回差し出した研究成果は悪魔に使える回復アイテム、フェニックスの涙には劣るけれど、アーシアの
フェニックスの涙程の回復能力は無いから兼ね合いは出来るだろうけれど、売り上げ自体は下がるだろうね。
「即効性はフェニックスの涙が上だし、フェニックス家と敵対はしたくないんだけれど」
「ああ、グレモリー公爵家……ルシファーの実家と政略結婚が決まっていますし、政治的発言力が高まるって時に冥界内での影響力が下がるとなれば…‥政治って大変ですね」
「正直、私はサーゼクスが魔王をやるから付き合いで魔王に就任したからね。君、本当に悪魔にならない? 今なら魔王の権力で即上級悪魔、最上級悪魔の地位だって約束するし、好きな相手を嫁にさせてあげるよ? 何ならセラフォルーだって言いくるめて……」
「いや、彼女への印象は”うわぁ、キッツ!”ですから。それとメリュジーヌに聞かれたらどうなる事やら。って言うか、彼女と貴方が結婚すれば政治的発言力が高まるのでは?」
「はっはっはっ! 君だって彼女への印象がアレだろう? 君の御陰で親戚の馬鹿同様に老害の三割がベルゼブブ派に協力してくれるし、彼女と私って同年代、サーゼクスって子どももいる歳だけど?」
「こりゃ失礼」
レヴィアタン本人に聞かれたら氷漬けにされそうになるだろうなあ、そんな風に思いつつ僕達は笑う。
まあ、公開メイドプレイ夫婦もアレで、魔王少女とか名乗ってる常時アニコス成人も端から見ればキッツイ。
ベルゼブブも結婚相手に挙げたのを謝ってくれたよ。
しかし、本当に魔法少女アニメのコスプレ姿はなあ。
母さんの実家に遊びに行った時、母さんが押し入れで見つけたらしいセーラー服を着ていたのを見ちゃった時の記憶が戻って精神的に追い込まれそうだ。
あの時の事は誰にも話さない。
一緒に目撃した村正お祖父ちゃんがこっそりお小遣いを沢山くれた時に黙ってろって言われたけれど、口止め料だよなあ。
「もう三割じゃなくって全員同じにしておきます?」
それはそうと残った老害七割、これが面倒なんだ。
「流石にサーゼクスも怪しいと思うからね。幾ら平和ボケした彼奴でも老害の殆どが急に味方になれば調べるだろうし、それが切っ掛けになって二重スパイの馬鹿に悟られたら面倒だ」
え? 辛辣な意見にも程があるって?
ベルゼブブは身内故のジョークだし、僕はベルゼブブ派に所属するから、自分に利益をもたらしてくれる相手とは違う派閥とは積極的に仲良くしたいとは思えないし…‥あの魔法少女のコスプレで日々を過ごして魔法使いに変な誤解を与え続けている奴には思う所が有るからさ。
基本的に僕は利益が大事な人間で、大昔にご先祖様一族が教会側に付いてエクスカリバー(アーサー王のとは違う)を提供したのも、ご先祖様がエクスカリバー破損の責任を押し付けられて追放されたのも結局はそれが利益になるからだし、一族の傾向がそうなんだろう。
「さて、もう少し話をしたいが、君の所の忠犬が夜も更けたと文句を言いに来たみたいだし、また今度」
振り返れば時計を咥えたウッドワスが床に寝そべって瞳で早く寝ろと訴えて来ている。
忠犬……まあ、母様には正に忠犬その物で、僕達が言いつけを破って夜更かしをしていると察したらセーブする暇もなくゲームの電源を切ってコンセントを隠したり、脳天に前足を振り下ろしたりして来る。
時刻は就寝時間の十五分前、さっさと寝る準備をしろって事か…‥。
「じゃあ、次の報告日に」
逆らっても良い事は無いし、此処は大人しく従おうとベルゼブブとの会談を終えた僕はパジャマに着替えて寝室へ。
読みかけの本を少し読む時間は有るのだと思っていたら、毛布の膨らみがそれを否定する。
「今日は潜り込むのが早いんだね、メリュジーヌ」
毛布をめくれば予想通りにメリュジーヌ。
僕が寝ている間に入り込んで暖まったら自分のベッドに戻るまでは許可していたけれど、これは寝るのが時間ギリギリになる予感……。
ウッドワス……バーヴァンシーがワゴンセールのDVDをまとめ買いした三流ホラー映画の一気見をするって言っていたし、時間が過ぎた途端にプレイヤーの電源を切る為にもう居ない。
メリュジーヌに気が付いただろうに、僕でどうにかしろって事かい?
「うん。今日は君に抱きしめて貰いながら眠る予定だからさ。じゃあ、早く来てよ」
ウキウキとした様子で当然とばかりに微笑みながら両腕を伸ばし、抱きしめて欲しいのを表す。
可愛い強い格好良い、魅力的な所は多いし、小さい子じゃなければ僕だって流されていたかもね。
でも、僕はロリコンじゃないから!
「寝るのは自分のベッドね。ほら、もう少し奥に行って」
「うん!」
だから素直に受け入れるのはメリュジーヌを恋人扱いしているからじゃなく、この居候は言っても無駄だから。
正直、未来視をドラゴンとしての能力で行った結果の恋人判定だけれど、出会って即座に長年の恋人としての対応をされてもね。
「嬉しいなあ。ママは最期の方、僕と一緒に寝てくれなくなったもの」
「あー、まあねえ」
恋人の興味が自分より娘に向かっているからって娘に毒盛って封印する母親だしね。
その挙げ句に恋人を怒らせて死んじゃったとか。
メリュジーヌからすれば母親が自分を裏切った上に父親に殺されたって事だし…‥多少甘える程度は大目に見ているのもそれを知ったから。
尚、本人はそれを妖精眼で察してる。
それで利用するから甘く見るのは止めようか…‥。
これもメリュジーヌのだと疑いながらも抱き締めれば体は柔らかく心地良い冷たい体温が伝わって眠気を誘う。
「お休みのキスはしてくれないの? ……恋人なのに」
「恋人じゃないからね」
「……むぅ。まあ、その辺はおいおいとして、僕からして良い? って言うかするよ。恋人だから問題無いもん」
「駄目。無理にしたら暫く出禁」
「けちー! 甲斐性なし!」
メリュジーヌの抗議を受け流し、どうせ抜け出せるのだからと少し強めに抱き締めながら僕は眠りに落ちて行った。
「あっ、やっぱり」
翌日、開いていた窓から外を眺めれば木に引っかかった状態でメリュジーヌが寝ている。
結局出て行かなかったか……。
堕天使はおいおいねー