私の名はレイナーレ。今は中級堕天使だけれど、アーシアの神器を手に入れて至高の堕天使になればアザゼル様達の愛を得る事が・・・・・・。
「ウッドワス、母様からの伝言だ。”血の一滴すら残さず食い尽くせ。我が子達を害そうとした報い、死の瞬間まで味思い知らせよ”だってさ」
そんな私は今、生きたまま貪り喰われている真っ最中だ。
早朝、アーシアを探しにいって帰って来ない部下が何かやらかしたのか気にし、悪魔にやられたのなら探し出して報復してでもアーシアを取り戻さねばと計画を練っている最中に響いた振動と轟音。
まさか襲撃かと悲鳴が聞こえる方へと向かった瞬間、私は巨大な犬に組み伏せられた。
何者だと叫ぼうとするけれど首に糸が絡み付いて締め上げるせいで声が出ない。
「悲鳴を上げられても煩いだけだしな。キャハハ!」
目だけ声の方に向けようとして、爪で両目が切り裂かれる。
そして、ゆっくりと食べられ始めた。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い・・・・・・殺して。
手足を、羽を、内臓を食べられても意識も痛みも途切れず、最後に頭だけになってかみ砕かれる瞬間まで私は・・・・・・。
「ちょっと強引になったけれど、堕天使には
「本当ですか!」
「まあ、卒業後は医者擬きとして働いて貰うし、お前の意思次第で悪魔になって貰うかもだろうけどよ」
ウッドワスの散歩ついでに朝ご飯を与えた後、僕はアーシアに今後の説明をするバーヴァンシーの様子を窓の外から眺めながらウッドワスの糞の始末をしていた。
そのままだったら肥料にはならないから魔法で加工して、朝食べて栄養を絞り尽くした物を土に返す。
うーん、臭くないのが幸いだけれど、こんなの可愛いバーヴァンシーにはやらせられない仕事だよね。
庭仕事は僕の仕事と趣味、だから問題は無いさ。
「それでお前が助けた悪魔の一族が近くのマンションに家政婦兼家庭教師を派遣してくれるそうだし、アルバイトとして怪我人の治療をしてくれってよ」
「はい、頑張ります! あの、それであの時の悪魔さんは……?」
「あー、ちょっと危険な仕事をしているから巻き込みたくないってよ」
まあ、二重スパイをやらしているし、会わない方が良いってのは正解だろうね。
ベルゼブブ派からすれば名誉の死を迎えさせる予定のお人形さんだしさ。
ベルゼブブ派の為に死すら恐れず行動する道具、それがディオドラ・アスタロトの現状だけれど、生かしてやってるだけ温情だろう。
例え中身は別物だとしても、生きているんだからさ。
「初めまして。アーシア・アルジェントです。皆さんより一歳上ですが仲良くして下さい」
数日後、駒王学園の一年生の教室にて転入の挨拶を行うアーシアの姿があった。
本来彼女の年齢を考えれば二年生になるのだろうが、今まで教会で聖女としての教育を受けて来た身だ。
会話こそ翻訳の魔法でどうにかなっても基礎的な学力は高校相当の物が必要となるし、彼女は日本語の読み書きさえ勉強中の段階、だからこその措置だ。
家庭の都合で学校に通えていなかったから一年生から始める、その様な表向きの理由となれば何らかの質問し辛い理由が有るのだと勝手に忖度してくれる。
それでも同級生が集まるのはアーシアの人柄も有るが美少女なのもあるだろうが……。
ベルゼブブ派に関係する人間としての地位の為か学園の支配に関わっているリアスとソーナの関わりも最低限、有能な能力持ちであっても眷属に誘われる事も無く……。
「アーシア。学校帰りにコンビニ行こうぜ。ファッション誌の新刊が出るんだよ。ついでにスイーツ買おうぜ、スイーツ」
「は、はい!」
アーロンからすればアーシアの立場はそれ程重要ではなく、ベルゼブブ派に恩を売れた事と、その恩がどれだけの大きさになりそうか、そしてアーシアがバーヴァンシーと仲良くやれているかどうかだ。
「あのバーヴァンシーが、わざわざ僕以外を校門の前で待って遊びに誘うだなんてね」
自分と一緒に帰らない日には少し寂しさを覚えるものの、可愛い妹が友達と仲良くやれている方が嬉しい。
だから微笑ましく思いながら、ふと旧校舎の方に視線を向けて……。
「面倒事かな? 飛び火しないと良いんだけれど」
旧校舎の一角、リアスが部長を務めるオカルト研究部の方から普段は感じない魔力を探知し、何か悪魔同士で揉め事でも起きているのかと勘ぐるアッシュだが、トップ同士が友人とはいえ別の派閥の相手の事だ。
関わる必要も無いのだとそのまま帰り、玄関を開けると……。
「お帰りー! 待ってたよ、アーロン!」
素肌の上にエプロンだけのメリュジーヌが満面の笑みを浮かべて待ち構えていた。
両手を前に伸ばし、抱き締めて欲しいとばかりのポーズ。
エプロンが大きいのか少しブカブカで時折見えてはならない部分まで見えそうで、アーロンは無言で中に入るなり扉を閉めた。
「ウッドワスは?」
「定期診断とかでモルガンが召喚したよ!」
「お祖父ちゃんも居たはずだけど?」
「パチンコ!」
「そっかぁ……」
ガクリと肩を落としたアーロンが思い浮かべるのは孫である自分にさえ借金をして遊興に耽る祖父の姿、その借金は返ってくる事は恐らく無いだろうと思い、小遣いを渡したとでも思うしかない。
当の祖父からはお小遣いなど一度も貰った事が無いのであるが……。
「それでこの姿はどうだい? 襲う? 襲っちゃう? アッシュなら良いよ?」
「じゃあ、僕は昼寝するから。あっ、鞄持ってくれるんだね?」
軽くピョンピョンと飛び跳ね、待ちかまえるその腕に鞄を持たせたアーロンは横を通り過ぎて自分の部屋へと入り、扉を閉める際に溜め息を吐きながら振り返った。
「そもそも襲うって……僕と君じゃあそんなの無理じゃないか」
「え? じゃあこっちが襲うね」
「……うん?」
咄嗟に扉を閉めて鍵を掛けようが問題ないとばかりに扉を引き剥がそうとするメリュジーヌ、結界でそれを必死に防ぐアーロンであったが……。
「半減させるね!」
「……やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい!」
「もー! 君がベルゼブブ派の悪魔に頼んでなかったら見た目の年齢の変化を使うのに」
アッシュの貞操の危機まで残り……。
「……フゥ」
「あっ、ウッドワス、帰って……」