メタルマン made by ギンギツネ   作:青色好き

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夏らしく本格的に暑くなってきました。暑さのあまり小説執筆が遅くなるぅ……


第2話:ギンアイ、起動

 拠点から少し離れた場所でメタルマンの機能テストをする事になった。ギンギツネがいるテーブルには何やら怪しそうな機材が置いてあり、少し離れた場所にはパークで使用されている車が置いてある。

 ついでに、このテストには多くのフレンズが見学している。パークで支給されるパワードスーツという事もあって興味津々な子が多いようだ。

 

「あれが隊長さんなんですか? 何だか変わった姿ですね?」

 

「う~ん、何だか硬そうだな~」

 

「光が反射してピカピカ光ってますわね……」

 

「正義のヒーローみたいでちょっとかっこいいわね!」

 

「噛み応えありそうな毛皮だね~」

 

 隊長が着ているメタルマンの姿を見て思い思いの感想を述べている。

 

「うぅ、皆に見られてるよ……」

 

「まぁまぁ、これからテストの様子を見せれば恥ずかしさは吹っ飛ぶわよ。まずメタルマンのマスクの調整をして…… よし! 先ずはこのジャパリパークの車を引っ張ってみて!」

 

「えぇ!? この車を!?」

 

 その車は隊長がよく運転しているものだが、それを引っ張るという内容。しかもその車をよく見ると紐で3台と連結してある。車1台で大体1トン位の重さなので、3台だと3トン! 到底人が引っ張れる重さではない。

 

「いくら何でも無理だよ!」

 

「大丈夫! 心配はいらないわ! 騙されたと思って引っ張ってみて!」

 

 本当に大丈夫かなぁ、と思いながら試しに引っ張ってみる事にした。軽く力を入れて引っ張ってみると、車が簡単に動いたのだ。しかも3台とも動いている。即ち3トンの物体を引っ張れる力があるのだ!

 

「す、凄い……!」

 

「どう? すごいでしょ?」

 

「隊長さん凄い! 物凄い力持ちになってます!」

 

「たいちょーすごーい!」

 

「まるで別人、いや、フレンズみたいな力ですわ!」

 

「Wow! まるでスーパーマンみたい!」

 

「隊長やるね~!」

 

 観戦しているフレンズ達はそれぞれ感想を口にしているが、皆隊長の怪力ぶりにかなり驚いている。人とフレンズの力の差は天と地の差であるが、それが縮まる程隊長は強くなってるのだ。これがメタルマンの力なのである。

 この調子でメタルマンの機能テストを進めようとした。

 

 その時だった。

 

「よ~し、次は…… きゃあ!?」

 

「!? ギンギツネ!?」

 

「あれは、セルリアン!」

 

「助けないと!」

 

 ギンギツネの背後から突然セルリアンが襲ってきた。セルリアンは大口を開けてギンギツネの全身を思いっ切り飲み込んだ! そしてギンギツネからサンドスターを吸い込んでいる。このままではサンドスターを吸い尽くされて動物の姿にされてしまう。

 

「やめろおおぉぉ!!」

 

 隊長はセルリアンに向かって渾身のパンチを繰り出そうとした。そのパンチはまるでライオンのような、いや、それ以上の力の強靭なパンチ。そのパンチが直撃したセルリアンはギンギツネを吐き出して思いっ切り吹き飛んでしまった。近くの机に激突したセルリアンは衝撃のあまり粉々に砕け散り、体を構成するサンドスターは霧散した。

 

「……!?」

 

「あ、セルリアンが一瞬で……!?」

 

 ドールを始めとするフレンズ達はセルリアンが一瞬で倒された事に驚いてしまう。現れたセルリアンは決して小さくない、中型位の大きさだ。フレンズと言えども一撃で倒すのは余程力が無ければ難しい。だがメタルマンを装着している隊長は一瞬で倒した。最早隊長はこの場にいるフレンズ達よりも強いのかもしれない。

 

「ギンギツネ! 大丈夫!?」

 

「う、たい、ちょ……」

 

「ギンギツネさん!」

 

「早く病院へ!」

 

 セルリアンが吐き出したギンギツネに近寄る。どうやらまだ無事のようだが意識は朦朧としている。輝きやサンドスターを大分吸われたようだ。

 

「メタルマンを…… 平和の為に、使って…… ぇ…………」

 

「ギンギツネ!」

 

 ギンギツネは担架に乗せられて急遽病院に運ばれた。隊長やドール達はギンギツネが心配なので共に病院に向かう事にした。

 

 

 

 

 

●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●

 

 

 

 

 

 ジャパリパークの病院の一室で隊長達はカコ博士による治療の結果を待っていた。病室がある廊下では隊長とドール達・ミライが待機していた。隊長はメタルマンを装着しているため表情は窺えないが、深刻そうな姿勢からやはり心配しているのが分かる。

 病室からカコ博士が出てくる。病室のベッドにはギンギツネが毛布を被らされて寝かされている。見たところ命に別状は無さそうに見える。

 

「カコ博士! ギンギツネは……」

 

「彼女は無事よ。サンドスターを大分吸い取られたみたい。何時目覚めるかは分からないわ」

 

「そんな……」

 

 隊長とドール達はカコ博士からの返答に一瞬安堵するものの、目覚めるか分からない事を聞くと再び深刻な表情となった。少なくとも命に別状は無いのが救いである。だが、彼女の救出が間に合わなかった事が悔しいのだ。隊長は拳を力込めて握っている事からもそれが分かる。

 

「もっと早く助けていれば…… ギンギツネは助かっていたかもしれない……」

 

「隊長さん……」

 

 隊長の後悔の様子を見てドールは声をかけようとしたが、隊長の様子を見て何を話せば良いか分からないからだ。ミーアキャットも、マイルカも、ハクトウワシも、ライオンも、言葉が出なかった。ミライもカコもどう言えば良いか分からない。

 

 沈黙が流れる。

 

 だが、その沈黙が破られた。

 

 隊長の視界がブレ始めた。涙で滲んでいるのではない。まるで、映像機器のブレのような……

 

「え? 何だ……?」

 

 ブレは暫くすると収まっていき……

 

『隊長! 聞こえるかしら?』

 

 目の前の光景にある物、それは紫色の枠・伸び縮みする妙な棒・右上にある変な数字、そして……

 

 

 

 

 

 ギンギツネの姿が映ったのだ。

 

 

 

 

 

「え? 何これ!?」

 

『これを見ているって事は、私のメタルマン計画が最終段階に入ったか、私の身に何かが起きたかのどちらかの筈よ』

 

「え!? えぇ!?」

 

「あの、隊長?」

 

 突然の事態に隊長は困惑しているが、ドール達はその隊長の変わりように困惑していた。端から見れば突然隊長が変な事を言い始めたように見えるからだ。

 

『これは私の存在を模して作られた人工知能よ。ギンギツネのAI、略して“ギンアイ”よ!』

 

「人工知能……!?」

 

『良い? 隊長はジャパリパークで、いや、地球で最も進化した生命体になったのよ!』

 

「ど、どういう事……?」

 

『その様子だと何か大変な事が起きたのかしら? 本物の私に何か起きたとか……』

 

「そうなんだよ、ギンギツネがセルリアンに襲われたんだ。何時目を覚ますか……」

 

『そうだったのね……』

 

 どうやら隊長に話しかける謎の声はメタルマンに内蔵されている人工知能である事が分かった。隊長との話でギンギツネのAI、ギンアイは本物のギンギツネの身に起きた事を把握した。

 

「た、隊長さん!? どうしたんですか!?」

 

「一体誰と話してるの!?」

 

「もしかしてトーメイニンゲンとか? でも音で探っても何も無いよ?」

 

 その様子を見ているドール達は隊長の不審な行動を問いていた。流石に聞きたくなったのだろう。

 

『あ、周りに誰かいるのかしら?』

 

「うん。ドール達やミライさん達が……」

 

『彼女達に私の事を知っておいた方が良さそうね。ちょっと近くの機器を借りるわよ』

 

「え? 借りるって?」

 

 この会話の直後、病室に置いてあるプロジェクターが作動して壁に映像が映し出される*1。そこには今隊長が見ている画面がはっきりと映し出された。この事態にはドール達も驚いてしまい、目が〇〇となってしまう。

 

「ひゃあ!? ギンギツネさん!?」

 

「これは一体どういう事ですの!?」

 

『私はメタルマンに内蔵されている人工知能、ギンアイよ! ちょっと此処のプロジェクターを借りて、今隊長が見てる画面を映し出してるのよ』

 

「人工知能…… Wonderful! そんなものまで入ってるとは驚きだわ!」

 

「てっきりギンギツネが復活したと思ったよ……」

 

「まさか、メタルマンを作るように依頼してましたけど、まさか人工知能まで作ってるとは……」

 

 ドール達は映像で映し出されたギンアイに皆驚いてしまう。ミライとカコは流石に人工知能まで作ってるとは思わなかったのか、結構驚愕している。

 

『流石に私一人じゃ今後大量生産される予定のメタルマンを管理するのは大変だから、人工知能である私が作られたのよ!』

 

「そうなんだ……」

 

「確かにパークの人数でメタルマンの管理は難しいという課題はありましたけど、ギンギツネさんはそれを解決しようとしてたんですね!」

 

『流石本物の私! 天才だわ!』

 

(自画自賛…… してるなぁ……)

 

 ミライとギンアイの会話を聞いた隊長は心の中でそう呟いた。ギンアイとギンギツネは別人なので自画自賛と言えないかもしれないが。

 

「あ、そういえば前から気になってたんだけど、このメタルマンはどうやったら脱げるの?」

 

『あら? 脱ぐの?』

 

「ま、まぁ流石にずっと着てるのは恥ずかしかったから……」

 

『脱ぐには専用の装置が必要よ。赤いリモコンみたいな「ヌゲールメタルマンZ」という装置を使うのよ*2

 

「それは何処に…… あ……」

 

 ギンアイの「赤いリモコン」という発言に隊長はある事を思い出した。隊長がメタルマンの力でギンギツネを襲ったセルリアンを倒した時、吹っ飛ばされたセルリアンは机に当たったが、そこに()()()()()()があった事を。

 

「あの…… あの現場を調べた時にバラバラに壊れていた赤いリモコンと思しき物があったんですけど……」

 

『あ、それだわ』

 

「………… 壊れてるって事……?」

 

 残酷な推測に隊長は嫌な予感を感じてしまう。そのせいか、隊長の沈黙は少し長くなっている。

 

『残念だけど、本物の私が目覚めてヌゲールメタルマンZを直すまではそのメタルマンを着続けるしかないわね』

 

「えぇ!?」

 

 肝心の着脱に必要な装置が壊れているというとんでもない状況。それにより現在メタルマンを外す事が不可能となっているのだ。つまり、ギンギツネが目覚めて装置を直すまではメタルマンを装着したままでいなければならない。

 

「予備も無いの!?」

 

『申し訳ないわ。その通りよ』

 

「うそぉ……」

 

「あの、パークの研究員に頼めば直してくれるんじゃあ……」

 

『残念だけど、私しか知らない技術が沢山使われているの。多分パークの研究員でも難しいわね』

 

「じゃあ隊長さんは暫くの間はこのままですか!?」

 

『その通りよ』

 

「えぇ…………」

 

 追い打ちを掛けるかの如し予備無し・他の人にも直せないという事実。これにより隊長はメタルマンを着けたまま過ごす事になってしまった。哀れである。

 

「うぅ、この格好じゃあ恥ずかしいよ……」

 

「私はかっこいいと思うけど?」

 

「ハクトウワシはともかく僕はなぁ……」

 

『これからその姿で活動する事を考えると慣れる必要があるわよ? という訳で慣れなさい』

 

「でも……」

 

『仕方無いわ。隊長、その恥ずかしさを克服する方法を教えるわ。先ず、恥ずかしいという言葉を思い浮かべて頂戴。そして次はこう唱えるの。存在しない、と』

 

 流石にメタルマンの姿で活動するのは恥ずかしいのだが、ギンアイによるとどうやら恥ずかしさを克服する手段があるのだが、それが何がしたいのかと聞きたくなるようなやり方だった。これで克服出来る? どういう事なのだ? 隊長から、というより周りの人から見れば意味不明だった。

 

「そ…… 存在しない」

 

 ギンアイの言う通り、存在しないと言った。

 すると、変化が起きた。

 それは外面の変化ではなく、内面の変化である。

 

「あれ? 何か…… 恥ずかしさを感じなくなった?」

 

『人間の脳には恥ずかしさを感じる領域が存在するわ。メタルマンに内蔵されたナノロボットがそこに入って「恥ずかしい」という感情を削除したのよ』

 

「マジ!?」

 

『マジよ』

 

 サラリととんでもない機能で一部の感情を消すという荒業を成し遂げたのだ。ナノロボットという名前からして極小のロボットの事だろう。それが脳内に侵入して感情を消す…… 痛みを感じないとはいえ考えると物凄く恐ろしい事に感じてしまう。

 

『言っとくけど健康に問題無いように造ってあるわ! そもそも健康に問題が出るような仕様なら本物の私が隊長に着ける訳無いじゃない』

 

「だとしても凄く怖いんだけど……」

 

「よく分かりませんけど、メタルマンには凄い機能が付いてるって分かりました!」

 

 ドールは結構目を輝かせながらメタルマンを装着している隊長を見ている。どうやら凄い機能が付いていると分かってかっこいいと思っているようだ。周りを見ていると、マイルカもハクトウワシもライオンも目を輝かせている。彼女達もカッコいいと感じてるようだ。よく見るとミーアキャットやミライも目を輝かせていた…… ような気がする。

 

『もう少しメタルマンの詳細を教えてあげるわ! 私の言う通りに従って移動して! 別の研究所があるわ』

 

「え? もう一つ研究所があるの?」

 

『そうよ。メタルマンの量産や整備を想定した研究所があるの。そっちに向かうわよ』

 

「は、はぁ…… でも恥ずかしくなくなったとはいえ、この姿で歩いてるところを見られたら変な噂が立ちそうだよ。ここまでギンギツネを連れて来た時は空いていたけど、今の時間帯だと誰かいそうだしなぁ……」

 

 恥ずかしさは消えたものの、メタルマンの姿を誰かに見られて変な噂を立てられる恐れがある。何れ正式採用されて色んな人が着るかもしれないが現状着ているのは隊長だけ。他の隊長やパークの職員にコスプレ? とかの噂を立てられるのではと心配している。

 

『それもそうね…… よし、メタルマンの機能を使うわよ! 隊長、「ステルス」と唱えてみて!』

 

「どれどれ…… ステルス」

 

 ギンアイの言う通り「ステルス」と唱えると、体が一瞬光った。光が収まると、そこにはメタルマンを装着していない隊長の姿があった。

 

「!? スーツが消えた!」

 

「え!? 隊長さんのメタルマンが消えちゃいました!?」

 

「もしかして、別の場所に瞬間移動したのでしょうか!?」

 

 メタルマンの装備だけが消えた現象を見て隊長だけでなく周りの一同は驚き一色に染まる。

 

『メタルマンの装備だけを透明にしたのよ。消えた訳じゃないわ』

 

「あ、ホントだ! タイチョーさんの周辺で音が反射してるよ!」

 

「さすがはマイルカだね~」

 

 ギンアイが言うにはメタルマンのスーツを透明にしているようだ。その証拠にマイルカのエコーロケーションを使うと、隊長の周辺の空間で音が反射している。即ち透明となったメタルマンのスーツに反射しているのだ。全く見えない程透明に出来る技術は正に驚愕だ。

 

『これなら安心よ♪ さぁ、行きましょう!』

 

「まぁ、これなら大丈夫か……」

 

 メタルマンのスーツを透明にした事で取り敢えず問題は解決したので、ギンアイの指示の通りにその研究所に向かう事にした。隊長は恥ずかしがるような様子も無く歩いていき、探検隊も興味津々でついて行った。

 

「大丈夫かしら?」

 

「いろいろな意味で心配ね……」

 

 ミライとカコはその様子を大人しく見守っていた。あのパワードスーツがパークで支給されたらデザインとか変わりそう。そう思った。

*1
今作オリジナル機能です。ドール達にギンアイを説明しやすくするためです。

*2
今作オリジナル機能です。原作だと装着してパスワードを言うと脱げなくなりますが、流石にそれは恐ろしすぎるので脱げるようにしました。




次回は2022年7月1日19時00分に投稿予定です。
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