【書籍化作品】りゅうごろしようじょ~見た目が幼女で誰も信じてくれないので【冒険者】のふりしていますが本当は【黒竜騎士】です。竜を食べると強くなるユニークスキルで最強に至り、悪しき竜を滅します。包丁で。   作:くま猫

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第34話 国境通過

「ごちそうさまでした」

 

 美味しゅうございました。そう思いながらナプキンで口元を拭う。黒竜紋から光が放たれる。ここは聖王国行きの陸上輸送艦の一等客室。

 

 エル・ファミルの時は民家で黒竜紋が光りだしたので、ちょっとした騒ぎになったが、今回は個室なのでその心配はない。思う存分に光ることができる。

 

『うわ、眩しッ。小娘、その光って、なんとかならネェの? 部屋の外のお給仕さんが、「うああっ!」とか叫んでいたぜ?』

 

「無理。あきらめなさい」

 

 悪気は無かったのだが、部屋の外に漏れ出た光でお給仕さんを驚かせてしまったようだ。あとで謝っておこう。

 

 私としてもこの光はなんとかならないものかと思わなくもないのだが、私がどうこうできる現象ではないので諦めるしかない。

 

『うおお……なんか身体に力がみなぎってくるッ!!』

 

 ジャバウォックの肉を食べた時には引力操作(アトラクション)のスキルを獲得した。今回の海竜ハイドラの肉ではどんな能力が獲得できるのか。

 

『よーし。こりゃ、すげぇ良い感じのスキル手に入ったわ』

「どんなスキル?」

 

『剣に振動を付与することができる能力だ』

「それって、強いの?」

 

『小娘が危うく首を刎ねられそうになったハイドラの超指向性の音の刃、ヤバかったろ? アレと同じことができるようになったってこと』

「それは使えるわね」

 

『だろ? 更にこのスキルの長所は、エンチャント系の魔法と併用できるっつー点だ。例えば、ファイア・エンチャント状態でもこの能力は使える』

「それは、何というか。単純に戦力増強って感じで……良い感じね。で、名前は?」

 

『うーん。正直悩んでいるんだよナァ。直球で……超振動(スーパー・バイブ)とかは……。なんか……さすがになんかアレな感じだしナ?』

「えっ、なんでよ? 呼びやすいし、いいじゃない」

 

『う、うるさい。ダメなものはダメ。んで、小娘なんか良い案ある?』

超振動(ヴィブラシオーネ)とかどう? なんなら『エンチャント・ヴィブラシオーネ』みたいな感じで叫んでも良いわよ」

 

『じゃ、とりあえずそれで行きますか。このスキルは竜相手じゃなく、今後堅牢な機兵と戦う機会があれば、きっと役に立つぜッ!』

 

 私が倒すべき相手はあくまで竜であって、機兵ではない。

 

『竜は賢いから機兵に乗って戦うような場面も、今後はあるかもしれねぇゼ?』

「そうね。あいつら、何でもありだもんね」

 

 そんなことを考えた。

 

「あの船って沈没したけど、サン・リヴィア的には大丈夫なのかしら?」

 

『まあ、二百年前の船だったしいつかはオーバーホール修理しなきゃいけなかったろうから、いい機会だったんじゃねぇの?』

「そんなものかしらね?」

 

『ハイドラの肉は高く売れるだろうし、修理分くらいは賄えるんじゃねぇか?』

「あら、タダでくれたのはちょっともったいなかったかしら?」

『いやぁー。あの規模の大きさの生物を鮮度維持しながら管理するのは、小娘にも我にも無理だ。貰ったところで腐らせて、宝の持ち腐れになっていただけだ』

 

 世の中なかなかうまくはいかないものだ。もうちょっとサン・リヴィアに滞在できれば、組合からの報酬金も期待できたかもしれないが、手続きが定期船の来る日にち的に間に合いそうもなかったので、今回は諦めることにしたのだ。

 

(……まあ、金貨は百枚以上あるわけだし、当分はお金に困ることも無さそうだし、仕方ないか)

 

 実はあの事件のあとお祭り好きなサン・リヴィアの記者たちから逃げるのに一苦労だったのだ。というのも『海竜討伐に獅子奮迅の活躍をした謎の美少女戦士』の噂で盛り上がるというちょっとした事件があって、私は身を隠すのに精一杯だったのだ。

 

 美少女という評価はともかくとして、獅子奮迅の活躍をしたと認められたことは素直に嬉しい。正直、取材の一つも受けても良いかなと思ったが、黒竜騎士という肩書のことも考え、やめることにした。

 

(私が悪目立ちしたせいで、めぐりめぐってお師匠さまや他の黒竜騎士に迷惑をかかったりしかねないもんね)

 

 そんなことを考えていると船内アナウンスが鳴り響く。

 

『ただいま聖王国の国境を超えました』

 

 ここから先は、聖王国。私の所属する黒竜騎士団とは、あまり関係がよくない……というか、ほとんど冷戦状態にある国だ。

 

 ここから先は、自由都市のように気を抜くことはできない。そう思い、気持ちを新たにするのであった。

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