【書籍化作品】りゅうごろしようじょ~見た目が幼女で誰も信じてくれないので【冒険者】のふりしていますが本当は【黒竜騎士】です。竜を食べると強くなるユニークスキルで最強に至り、悪しき竜を滅します。包丁で。 作:くま猫
ここは従属都市シュタインガルドの地下監獄。私の目の前でヘラヘラしている男は、牢の看守だ。つまり私は牢屋の中に収監されている。
「おいガキ。さっきから何ブツブツ言ってんだ?! 黙らねぇと殺すぞッ!」
不機嫌そうに警棒で牢を思い切り叩く。カァン――。乾いた音が監獄に響き渡る。
「……に……夢魔……我の……現……」
「おいおい。まさかもう気が触れちまったかァッ? まあ、後悔してももう遅いがな。はははっ!」
既にこの男の命運は決した。詠唱の半分は終わっている。それに気づけなかった時点でこの男の敗北は決定していた。
「――安息の眠りをもたらし給へ 【レム】」
「……なッ!? まさか……睡眠、魔ほぅ……ぅっ……」
私の前の看守は膝からガクリと倒れた。魔力抵抗力のない相手ならこの通り。睡眠魔法はつくづく便利な魔法だ。
「看守に魔力抵抗が無い奴を配置するなんて、ここの人材も大したことないわね」
あのカクテルに毒が含まれていることは唇を微かに触れさせただけで明らかだった。それを察した私は、わざと飲んだふりをしてこの地下監獄に連れていかれるようにした。
ここはシュタインガルドの地下監獄。正面突破で潜入するのは困難だ。だが、ターゲットとして連れ去られるのは非常に容易。
「さては、まずは潜入完了。まずは荷物を回収しなくちゃね」
(……さすがに徒手空拳で脱獄をするのは無謀が過ぎる。まずは竜殺し包丁を取り戻さないと)
私は眼の前でグッスリと死んだように寝ている看守から鍵束を剥ぎ取り、地下監獄の倉庫へ向かう。
『イヒヒッ。小娘、考えたな』
「リューの考えそうなことを真似しただけよ。さ、行くわよ」
倉庫に無造作に放置されていた竜殺し包丁を手に取り、倉庫を去る。
「リュー、早速で悪いけど監獄の構造を共有してくれる?」
『了解ッと。地下空間の構造イメージをリンクするぜ』
脳内にリューがソナーで把握しているこの監獄の構造が立体地図として映し出される。この監獄、一件単純な構造に思えるが目の錯覚を利用した物のようだ。
(へぇ。よく考えられているわね。平面の地図では出口のない迷路としてしか描けない。だけど、立体的な地図であれば迷うことはないわ)
「ここの構造、さながら悪質な騙し絵といった感じね。危うく同じ場所を何度も歩く羽目になっていたわ」
『御役に立てたようで何より。我のソナーも捨てたもんじゃねぇだろ?』
(監獄に配置された看守の数の少なさは、ここの特殊構造を把握する者を最小限にするためといったところか)
これで装備は元通り、あとはこの狭苦しい監獄を正々堂々と正面から出ていくだけだ。