ちなみに今回、文字数が3万字を越えました。前回のように分割も考えたのですが、それだと話としてのバランスが悪くなってしまうので、今回は所々に区切りを入れた上で1話でまとめることにしました。
長文ですが、皆さまのペースで読み進めて頂ければ幸いです。
CHAPTER1
5人の自衛官は学園に着任した翌日から早速業務に取り掛かった。と言っても最初からトレーナーとしての仕事を始めたわけではなく、最初の1週間は学園について知り、馴染む事を最優先に取り組んだ。いくら予習を済ませてあるとはいえ、自分の目で見たり知ったりしなければならないことは多岐にわたっていたからである。そのため、仕事をしているというより社会科見学中の学生のような気分で5人は最初の1週間を終えた。
そのような形で学園について大まかなことを知った彼ら彼女らは、翌週から早速本格的にトレーナーとしての業務に取り掛かった。
この学園に属するウマ娘たちは選抜レースを通じてトレーナーにスカウトされ、双方合意の下で契約を結び、トレーニングを行ってレースに出場する。だがこの時点では、その選抜レースの開催予定が決まっていなかった。
最もトレーナーによっては選抜レースの前から、露骨な場合には入学前から、これはと思ったウマ娘に唾を付けておくことも平気で行われていた。が、本職がトレーナーではなかった5人がそれを知るはずもなかった。そのため、部隊長である小島はこの期間を利用して育成やトレーニングの方針についてのあれこれを決めることにした。
まず手掛けたのは『チーム』についてである。この学園は基本的に(勿論例外もそれなりにあるが)1人のトレーナーが1人のウマ娘に専属するということは無く、1人のトレーナーが複数のウマ娘に対して指導を行うチーム制を敷いていた。指導の効率化を図るというのが名目であったが、それがトレーナー不足を補うための方便に過ぎないのはこの学園に属する者の多くが理解していた。とは言えチームを作らなければ育成以前の問題であることもまた事実であった。
そんなわけで分遣隊のメンバーはチームの結成に取り掛かり、一先ず分屯基地司令兼分遣隊長たる小島をチームリーダーとした後、チームを結成する際に必要な手続きを始めることにしたが、ここで彼は学園始まって以来前例の無いことを行った。
自分を含めた、トレーナーとして派遣されてきた幹部自衛官4人を全て1つのチームに所属させることにしたのである(遠藤准空尉については、トレーナーではないチームの後方支援担当として所属させた)。
これに対して学園側はざわついた。1つのチームに複数のトレーナーが属することは、経験の浅いトレーナーが十分な経験を積んだトレーナーの下でサブトレーナーとしての業務にあたる、という形で認められていたが、メイントレーナーが1つのチームに複数所属する、というのは前例の無いことであった。その真意を問いただすべく学園の職員が小島の下を訪れたところ、彼は次のように述べた。
「チームについて定められた規則の中に、1つのチームに複数のトレーナーを所属させてはいけないという規則はありませんよね」
彼の言うことは決して間違っていない。確かにチームについて定められた規則の中には「チームには必ずトレーナーが最低1人は所属していなければならない」との一文があったが、複数のトレーナーが1つのチームに属することを禁ずる条文はどこにも書かれていなかったことを小島は逆手に取り、1つのチームに複数のトレーナーを所属させることに成功した。
更にはサブトレーナーのことを持ちだして反論を試みた職員に対しても、チームにおけるトレーナーの役割について規定した規則はないですよね、だったら1つのチームに複数のメイントレーナーがいることに何の問題があるのでしょうかと述べて、彼の下を訪れた職員を閉口させた。
これを聞いた学園側は頭を抱えた。何しろ小島の言っていることはレースや学園の規則に照らし合わせても何の問題もないのだ。
彼のようなことを行うトレーナーが今まで現れなかったこともあって、対応に頭を悩ませながら小田原評定を行った結果、理事長に聞いてみるしかないとなり、理事長は同じように頭を抱えながらも「不問。規則に反していないのならば問題はない」と答えたことでこの件は一件落着かに見えたが、小島はそこに更なる爆弾を投下した。
慣例として「スピカ」「リギル」「シリウス」「カノープス」など、銀河や宇宙に関する言葉から取られることの多かったチーム名に「SDF」という、自分たちが何者であるかを如実に表す名前を付けたのである。
これについても、小島が命名基準はあくまでも慣例であり、チーム名についての規則が存在しないのだからどのように名付けても問題はないはずだという理屈を展開したことから、結局トレーナー数についての問題と同じことになった。
これらの一連の結果、学園の事務方は分遣隊(特に隊長である小島)のことを「屁理屈をこねくり回して自分たちのやりたいようにやる奴」と評価するようになり、その後しばらくは分遣隊と学園の事務方との間には微妙な空気が流れるようになる。
最も小島にしてみれば、自分たちのやり方を応用したまでのことだった。なぜならば彼が属している組織は規則について可能な限りの拡大解釈を行い、与えられた任務を(表面上は規則に従ったやり方で進めたことにして)遂行することが仕事である。従って彼にしてみれば与えられた任務を忠実に遂行しただけに過ぎない。
最もこれは彼ら彼女らが考え出した、ウマ娘の育成方針を実行するために必要な手段の1つに過ぎなかった。小島は他のメンバーと話し合いを行い、ウマ娘の育成方法についての基本方針をすでに固めていたからである。
彼はウマ娘の育成について素人同然である自分たちが、専門教育を受けたトレーナーたちと正面からまともに戦ったのでは分が悪いことを十分に承知していた。
そこで彼は戦の定石に従い、正面対決を避けることにした。相手の土俵に乗るのではなく、自分たちに有利なやり方を作り上げてその上で戦うことにしたのである。
そのための手段として、ウマ娘の育成について徹底したシステム化、機械・デジタル化を行い、経験や勘と言った俗人的な部分を徹底して排除し、個人の能力に影響されない、誰がやっても最少限の労力で最大の効果を上げることの出来る育成のシステムを構築することにした。1つのチームに4人ものトレーナーを配属させたのはその一環である。
練習についてもまた、徹底した数値化とデータ化、機械・デジタル化を行うことにした。必要最低限の練習で最大の効果を出すことが出来るよう、トレーニング時の体の動きを解析して効率的な練習メニューを作成するために必要な腕時計型の端末やシューズに張り付けるICチップ、それらから送られてくるデータを瞬時に解析して走行フォームをコンピューター上で三次元的に再現などが出来るソフトウェアと言った最新鋭の機材を導入することで効率化を図った。
さらには練習メニューについても、クラウドに保存しチームのメンバー全員で共有するようにして、トレーナーとしての業務を行う4人の誰かが欠けても(最悪トレーナーとしての業務を行わない遠藤のみになったとしても)練習に影響を及ぼすことが無いような仕組みを構築するなど、必要なシステムの作成に時間を費やした。
またシステム以外の部分では、どのような育成方針を取るかについてもメンバー全員で話し合ったうえで方針を決めた。
(もっともこれについては、森宮有沙の個人的な経験が大きな影響を与えていたが)
それらの甲斐あって育成システム(と育成方針)はどうにか形となり、あとは各自が担当するウマ娘を選んで実際に育成を行うだけというところまで来ていた。
選抜レース実施についての知らせが、出走するウマ娘のリストと共にメールで届いたのはそのようなタイミングである。日程と場所については2日後の午後、メイングラウンドと記されていた。
かくして当日、小島は他の3人(遠藤はトレーナーではないため留守番)と共にウマ娘をスカウトするべく、選抜レースを見に行くことにした。なお、全員がそれぞれの属する組織で使用される迷彩服を着ている。
下手なレース場よりも大きなグラウンドに入ると、オーバル型のコースを全て見渡すことが出来るスタンドで立ち止まり、コースを一瞥する。最外周には一周2千メートルある芝コースが敷かれ、その内側には砂が敷かれたダートコース、更には大小さまざまなトレーニングコースが置かれ、芝コースのさらに外側には外周に沿うような形でトレーニング用の坂路が設置されている。
スタンドとコースを隔てる柵沿いには、体操服に身を包んだ幾人ものウマ娘が緊張した面持ちで順番を待っている。彼女たちはこれから選抜レースに臨むのだ。
スタンドにはその様子を見ている大勢のトレーナーの姿があった。選抜レースの結果を見てこれはと思ったウマ娘を見定めてスカウトし、レースで勝利させるべくトレーニングを積ませるのである。トレーナーの中には男性も女性も、更にはウマ娘の姿まであった。
(莫迦莫迦しい)
その姿を見た小島は思った。物事の明るい側面だけを伝えて可能性があると思いこませ、勝ち目の限りなく低いレースという名のギャンブルへ引きずり込んでいるだけではないか。彼ら彼女らウマ娘ら自身は心の底から一生懸命なのだろう。それ自体は悪いことではない。
だがどれだけ鍛錬したところで、勝利の女神に接吻を賜ることが出来るのはごく一握りの幸運と偶然に恵まれたものだけ。そのことを伝えた上でスカウトし、鍛錬を積ませるのならばよい。だが彼が見たり聞いたりした限りでは、そのようなことをきちんと伝えているトレーナーは少ない。物事の明るい側面ばかりを強調するものが殆どだ。そのようなトレーナーと、奴隷の品定めを行うローマ人との間にどのような違いがあるというのだ。本質的には変わらないではないか。
だが、この場にいる限り彼らのことを嘲笑することは出来ない。なにしろ自分自身もその品定めを行う一人なのだから。小島は自分を嘲るように軽くため息をついた。
「それでこれからどうするの」
彼は妻が発したその言葉で現実に引き戻された。彼と同じ、濃いグレーを基調とした迷彩服を着こんでおり、襟には学園から支給されたトレーナーバッジが付けられていた。
「とりあえずは」小島は答えた。「レースを見て、これと思ったウマ娘をスカウトしてくれ。誰を選ぶかはそれぞれに一任する」
「スカウト出来たら」
「分屯基地に連れていってそこで待たせておけ。全員のスカウトが終わって勢ぞろいしたらチームの方針を説明して今日は終わりだ」
「有沙の旦那-じゃなかった、小島一尉。質問があるのだけど良いかしら」
生徒を諭す教師のように土井美咲が口を開いた。
「何だ土井さん」
「今日一日で全員がスカウトできなかったり、4人のうち一部のメンバーしかスカウトできなかったらどうするの」
「全員が出来なかったら改めてスカウトをやり直す。一部しか出来なかったら今日スカウト出来た奴にだけ方針を説明して、残りはスカウト出来たらその時々で説明していく」
何をかいわんやと言った声で小島は応じた。
「場当たり的だけどそれしかなさそうね」
仕方ないとでも言いたげに美咲は答えた。
「話は以上だ。これ以上質問がないならさっさとスカウトに行ってきてくれ」
その言葉を受けて全員が解散し、それぞれの形で選抜レースを見に向かうべく行動を開始した。
CHAPTER2
CASE1:小島隆史とマンハッタンカフェとアグネスタキオン
小島がグラウンドに目をやると、最初の選抜レースが始まったところだった。彼は何気なしにそれに目をやる。
自身の目を覆い隠さんばかりに長い黒髪の、薄幸そうな雰囲気を纏ったウマ娘がコースの最終直線で鋭い末脚を繰り出し、他のウマ娘を飲み込むような形で勝利する姿を見たトレーナーたちが感嘆の唸りをあげていた。
そのとき不意に、男女のトレーナーが2人で話をしているのが聞こえてきた。
「彼女がマンハッタンカフェですか」
「素質は素晴らしいものがあるんだけど、性格がなんだか不気味で-以前スカウトしようと思ったときも、お友達がどうこうとか、不気味なことを言われたので止めたわ」
「スカウトしようと思っていたんですけど、それを聞くとちょっと考えさせられますね」
その話を聞いて興味を持った小島は素早く手元にある端末で目の前の、勝利したウマ娘のデータを確認する。マンハッタンカフェ。高等部に在籍。距離適性に関しては不明。
レースを終えた彼女の方に目をやると、じっと虚空を見つめながら、そこに何かが居るかのように言葉を紡ぎ出している。その様子を見ていた他のトレーナーらは不気味そうに、まるで幽霊でも見るような目で彼女のことを見ていた。
それを見た小島はとてつもない違和感に襲われていた。近くにいるトレーナーの誰もが表面的にしか彼女のことを見ていない、そう感じたからだ。
確かに傍から見れば不気味だが-素人目に見ても素質はそれなりのものを持っている。そして何より、第一印象だけで人を判断してはいけない。他人の本質を理解するにはそれだけでは不十分だ。彼女のことをより深く知る必要がある。そのためには-
(スカウトするかしないかは別として、話だけでもしてみるか)
気がつけば、自然と彼女の元に近づいていた。彼女の方も他者が接近してきたことを感じ取り、警戒と猜疑の入り混じった視線を彼の方に向ける。どこかミステリアスな空気が感じられた。
小島は歩みを止め、口を開く。
「マンハッタンカフェと言ったか、君と話がしたい」
彼は普段から自分から他人に話しかけることが得意な人間ではないが、この時は不思議と声が出ていた。
「私をスカウトしにきたのですか」
カフェは距離を取るように答えた。体操着から伸びる、黒いストッキングに包まれた長い脚が脚線美を描き出している。
「そう受け止められることは承知している。だが、それが主目的ではない」
「ではなぜ」
「ただ君について色々と知りたいだけだ。例えば、そうだな-君の言うところの『お友達』とやらについてとか、な」
その言葉を口に出した瞬間、小島はすさまじく気恥ずかしい気分に襲われた。全く、これじゃあまるでナンパでもしているようじゃないか。
そう思ってカフェの方を見ると、軽く驚いたような表情を見せていた。だが眼だけは警戒を緩めていない。一呼吸おいて、彼女は口を開いた。
「言っても、信じてもらえないと思います」
「信じるか信じないかは君の話を聞いた上で決める。俺は第一印象だけで他人を判断するような、愚かな真似はしないことにしているんでね」
「そう言って下さるのなら、お話だけはしましょう。ですが、一つだけお願いがあります」
「なんだ」
「私の話を-少なくとも話の全てを聞き終えないうちに-否定することだけは、絶対に止めて頂けますか」
「それについては確約しよう。なんなら、今月の給料を全額賭けたっていい」
それを聞いたカフェはそこでようやく警戒の表情を解くと、まるでおとぎ話の朗読でもするかのように話し始めた。
「『お友だち』は、私が子供の頃から見えるようになりました。私によく似た後ろ姿で、顔
だけが見えないまま、ずっと私の前を走り続けています」
「続けてくれ」
「素晴らしいコーナー加速に速さ、まるで柳のように柔らかな走り。私はその走りに魅せられて、彼女に-『お友だち』-に追いつきたくて、この学園に来ました」
「今も見えているのか」
「はい-でもどちらかといえば」カフェは答えた。「夜の方が良く見えます。なので、夜によくこのグラウンドを走っています」
まるで幽霊みたいだな、小島がそう思ったとき-
(チ・ガ・ウ)
まるで巨大な感情の塊のような気配を背中に感じた彼は振り返った。だがそこには誰もいない。
(どういうことだ)
「今、『お友だち』があなたに話しかけました」彼が驚いた原因を見透かすようにカフェは答えた。「私は幼い頃から、他の人には見えないものが見えるんです」
「それについてはよく分かった、話の続きを頼む」
瞬時に平静さを取り戻した小島は答えた。
「はい、それでは」カフェは再び言葉を紡ぎ始める。「そのことを周囲から不気味だと言われて傷つき、部屋に閉じこもったこともありました」
「でもある日、私によく似た姿の女の子-『お友だち』が走っているのが見えて、その気持ちよさそうに走る姿を見て、とても羨ましくなって、外に飛び出したんです」
静かで、落ち着いた雰囲気の声。だがそこには嬉しさと楽しさが入り混じっている。
「そうしたら外はとても眩しくて-誰に信じてもらえなくても、楽しそうに走る彼女の姿を見ているうちに、私は何を気にしていたんだろうって、そういう気持ちになりました。それ以来、『お友だち』は私の前をずうっと走り続けていて、私は彼女に追いつきたくて、この学園にきました-これが、『お友だち』について話せることの全てです」
「ありがとう」小島はそう感謝の言葉を述べると、頭の中で考え事を始めた。
彼女の様子や聞いてみた感じを見る限り、嘘を言っているようには思えなかった。嘘にしては具体的すぎるし、加えて『お友だち』について話している時の彼女はなんだか楽しさすら感じられた-まるで、自分が好きなものについて語っているかのように。
(そのような)
自分の好きなものや大切なものを否定されるのは、だれにとっても苦痛以外の何物でもない。たとえそれがどのようなものであっても。
(それに何より)
-他人と違うことで否定されてきたのは俺も同じだからな。そのような経験があるからこそ、自分と異なるというだけで他者を否定しないようにしてきた。だから、今回もまたそのようにしよう。
そこまで思考を巡らせた小島は、カフェに再び視線を向けると、まるで子供をあやすような口調で言葉を紡いだ。
「良い友人を持ったな、カフェ。大切にしなさい」
優しく、諭すような、意外な言葉。カフェは驚いたように目を見開き、やがて口を開いた。
「そのようなことを言われたのは初めてです」
彼女はそこまで言ってようやく、目の前の男が何を着ていて、本来はどのような人間であるかに気がついた。
「まさか自衛隊の方に言われるとは思いもしませんでしたが-学園でトレーナーをなさっているのですか」
「そういうことになるな。一応、話くらいは聞いているだろう」
「ええ。ところで」カフェは答えた。「あなたに一つ、伺いたいことがあるのですが」
「なんだ」
「なぜ他の人のように、『お友だち』のことを否定しなかったのですか」
その言葉に小島は、自身の忌々しい過去を思い出しながら厭世的に答えた。
「他人と違うことで心無いことを言われてきたのは俺も同じだからな-暴力を振るわれたり、持ち物を壊されて捨てられたりしなかっただけ、君の方がましだともいえる」
その言葉を聞いた時、カフェは目の前の男の、目の輝きが少し薄くなったように感じた。
「なにをされたのですか」
「悪いが、それを言うのは控えさせてもらう-聞くだけで気分が悪くなるような内容だからね」
「無理を言って、申し訳ありません」
「気にしないよ」小島は答えた。「君は知らなかったことだったからな-俺が君の『お友だち』を知らなかったようにね」
(この人は)
その言葉を聞いたカフェは思った。他のトレーナーとは違う。自分と異なるものを否定しようとするのではなく理解しようとしている。『お友だち』についても、否定するのではなくただ静かに話を聞いて、その上で大切にしなさいと言ってくれた。その言葉を聞いた時、とてもうれしかった。初めて自分とは異なる他者が『お友だち』に理解を示し、まるで自分にとっての宝物に触れるように扱ってくれた。
(決めた)
この人に自分のトレーナーになってもらおう。そう思って言葉を発しようとしたところ、不意に聞こえてきた言葉にそれを遮られた。
「タキオンさん、アグネスタキオンさーん、おかしいな、次のレースに出ることになっている筈なのに、参ったなあ」
またあの人ですか、それを聞いた彼女は思った。同じことを聞いていた他のトレーナーらも、三々五々言葉を交わし始める。
「やっぱり今回も来ないんですか。『超高速』の末脚、見てみたかったのに」
「祖母はオークス、母は桜花賞、そして姉はダービー。あの一族の中でも最高傑作だと謳われていたんだけど、あの奇人っぷりじゃあねぇ」
「素質そのものは素晴らしいんですが、選抜レースにもトレーニングにも、更には授業にもまともに出ようとしないんじゃ、評価のしようがない」
あの人らしいですね。それらの言葉を聞いたカフェは思った。それにしても、今回の選抜レースは必ず出走するように言われていたはずですが。そうしないと、退学になってしまいますよ。
「まったくあの人は。しょうがないですね」
「アグネスタキオンのことを知っているのか」
いつの間にか声に出ていたらしい。小島が話しかけてきた。どうやら興味を持ったらしい。
「興味を持ったのですか」
「今の話を聞いてね。どういう関係なんだ」
「入学以来の知り合いのようなものです」
「友人か」
「彼女が勝手に思っているだけですよ-もし興味があるのなら、彼女に会ってみますか」
「出来るのか」
「ええ」カフェはまるで冥界にでも誘うかのような口調で答えた。「彼女はいつも怪しげな実験を行っているのですが、その実験を行う部屋-旧理科準備室の半分を、私が自分で集めているグッズを置く場所にしているんです」
「そりゃまたどうして」
「生徒会の方から、タキオンさん一人に部屋を独占されては、何をされるかわかったものではないと言われまして、それで丁度よくグッズ置き場を探していた私が」
「お目付け役として選ばれた、と。それにしても、怪しげな実験って何をやってるんだ」
「変な薬を作ったり、教室にピンクの煙を充満させたり、挙句の果てにはその薬の被験者を探そうとしたりして、他者に迷惑をかける有様で」
「マッドサイエンティストじみてるなそいつ」
小島は思った事を正直に答えた。
「と言うより、そのものだと思います」カフェは答えた。「彼女の倫理観について疑いたくなるようなことはこれまでに何回もありましたから」
「例えば」
「さっきも少し言いましたが-あの人は平気で他人を、自分の作った薬の実験台にしようとするんです。それも同意すら取らずに無理矢理一方的に」
そりゃひでえな。小島は思った。薬の治験をするときはきちんと同意をとった上でやれよな。
そのような彼の内心を感じとったのかは定かではないが、カフェは忠告するような口調で話を続けた。
「ですから、彼女-タキオンさんに会いたいということでしたら案内はしますが、私とあなた-」
「小島隆史だ。自衛隊での階級は一等空尉。尤もそれについてはこの場で気にする必要はない。苗字にさん付けでも、トレーナーでも、君の好きに呼びたまえ」
「では小島さん、と。彼女に合う時は私とあなた以外にもう一人-できればウマ娘を-連れていった方がいいと思います」
「どういうことかな」
「小島さんは、タキオンさんが薬の実験台として特に求めてやまない『健康な成人男性』ですから」
その言葉を聞いた小島は、瞬時にして全てを理解した。同時に、
「よし、遠藤
「その遠藤さんと言うのは、ウマ娘なのですか」
「いや」小島は答えた。「俺の部下で、普通の人間だよ」
それを聞いたカフェは懐疑的な表情を浮かべ、証人の証言の矛盾を指摘する法曹のような口調で応じた。
「あのう」
「なんだい」
「同じウマ娘ならまだしも、あなた方が仕事柄鍛えているとはいえ、ただの人間が私たちウマ娘に身体能力で勝てるとは到底思えないのですが」
「大丈夫だよ」小島は平然と答えた。「何しろ遠藤さんは、ウマ娘相手でも十分すぎるほどに太刀打ちできる人間だからな」
「その人、本当に人間なんですか」
「そうだよ。但し-」小島はそこで言葉を切り、続けた。「半分以上人間を辞めていると言っても過言じゃない人だが、ね」
半分以上人間を辞めているとはどういうことだろう、カフェはそう思ったが、結局目の前の男の言葉を信じることにした。ウマ娘を相手取ることの出来る人間とはどういう人物なのか、それに対する興味が彼女の中でふつふつと湧いてきたからである。
「そこまで言われるのでしたら」
「今からでも構わないか」
「構いませんが、先にシャワーを浴びて着替えさせてください。汗をかいたので」
「分かった。終わったら呼んでくれ。俺は遠藤さんを呼んでくる」
その十数分後、小島が遠藤を伴って-彼を見たカフェは、本当に身体能力でウマ娘に対抗できる人間なのか怪訝そうな表情を浮かべた-制服に着替えたマンハッタンカフェに案内されたのは、校舎の一角にある旧理科準備室だった。
「ここに例の-アグネスタキオンがいるのか」
「驚かないでくださいね」
そう言って彼女がドアを開けると、カーテンが閉じられ、照明も最低限で薄暗い部屋がそこにはあった。中に絵やステンシルなどが入った大小さまざまな額縁が、これまた不可思議な模様が描かれた壁にかけられ、妙に怪しげな雰囲気を放っている。近くにあるソファの周囲にはランプやコーヒーミル、サイフォンが置かれ、天井からは平面状の飾りが吊るされていた。
部屋の反対側に目をやると、それとは対照的に試験管にビーカーやフラスコといった様々な実験器具が置かれている。その点だけをみれば、普通の実験室と大差はない。
ただ普通の実験室と異なるのは、傍らに拘束具の付いた椅子と、点滴用のフィルムパックが掛けられた棒が存在し、更にはフラスコやビーカー、点滴用のパックなどの中身が全て、蛍光色をした怪しげな液体で満たされていることだった。
それらの中で白衣が揺れていた。正確には白衣を着こんだ、肩のあたりまである柔らかさを感じさせるような茶色い髪を持ち、頭頂部にはウマ娘特有の2つの耳があり、右側の耳には化学式を模した耳飾りを付けたウマ娘であった。彼女は人が入ってきたことに気がついたのか、こちらを振り返る。どこか他人を見下したような表情の顔は十分美人の範疇に入るが、赤みを帯びたハイライトの無い瞳はカフェの話の通り、ウマ娘というよりマッドサイエンティストと言った方がいい見た目と雰囲気をしていた。
こちらに振り向いたそのウマ娘は、カフェの姿を認めると口を開いた。
「やあやあ、カフェじゃないか、どうしたんだい」
生徒会長とはまた異なるベクトルで大人びた、年齢不相応な声が耳朶を打つ。その言葉にはどこかミステリアスささえ感じられた。
「あなたに興味があるという人を連れてきました」
カフェはそう言って小島を指さした。彼は答えた。
「カフェ、彼女が例のー」
「ええ、アグネスタキオンさんです」妖怪でも見るようにカフェは答えた。
タキオンは小島の姿を一瞥すると、彼の頭からつま先までをゆっくりと見渡し、興味深げに口を開いた。
「全く、ここのトレーナー不足もここまでとはねぇ。尤も、自衛隊の人間をトレーナーとして招聘すると聞いた時にはさすがの私も驚いたものだが」
不気味さと好奇心が入り混じったような奴だな。小島はタキオンにそのような第一印象を抱いた。
-だが面白そうだ。一癖も二癖もありそうだが、色々と話を聞いてみたい。そう思った彼の内心を察したのかは定かでは無いが、タキオンは座ったまま足を組みながら口を開いた。
「で、自衛隊の人間が私に何の用だい」
頭脳そのものは優れていそうだが、初対面の人間に平気でタメ口を使うあたり、所謂社会的な常識や倫理観というものが備わっているかは怪しいものがあるな。そう思った小島は、まず軽いジャブを入れて反応を見ることにした。
「アグネスタキオンとやら」小島は答えた。「カフェから話を聞いた時から薄々感じてはいたが-どうやらお前さんの頭脳には研究と実験のことしか存在しないようだな」
「どういうことだい」
「俺は初対面の人間に敬語も使わずに話しかけることが出来るほど、常識と倫理観が欠如しちゃいない人間でね」
教員が出来の悪い学生に問いかけるように小島は答えた。
「私はそう言うウマ娘だとでも言いたいのかい」
「今の話を聞いて理解出来ないようなレベルの頭脳を持っているわけじゃないだろう」
「まあ、薄々感じてはいるよ-ところで」タキオンはそこで、まるで自身のドッペルゲンガーと対面したかのように小島に語りかけた。「君、随分と狂った色の瞳をしているね」
「狂ったような瞳をしている、か」
彼女の言葉に軽い驚きと関心を覚えながら、シニカルかつ無表情に小島は答えた。
「具体的には」
「狂気と優しさ-相反する2つの要素が同居しているようだ」
「中らずと雖も遠からず、と言ったところだな」自身の過去を振り返りながら彼は答えた。「何しろ、今までにろくでもない経験を何度もしてるものでね」
自分の占有スペースにあるソファに腰かけながら2人の話を聞いていたカフェは、その言葉を聞いて、グラウンドでのやり取りを思い出していた。
-話を聞いた時から思っていましたが、小島さんも複雑な事情を抱えているようですね。だからこそ、私の話を否定せずにきちんと聞いてくれたのでしょう。そういう意味では優しい人と言って良いのかもしれません。
頭の中でそんなことを考えていると、不意にタキオンの表情が、まるで丁度良い
-やれやれ、タキオンさんに目を付けられてしまったようです。小島さんは果たしてどのように対処するのでしょうか。実際に、私も何度か被害を受けていますからね。お手並み拝見と行きましょう。
「まあいい、それよりも丁度良かった」
その言葉と共に、実験室のモルモットを見るような表情をするタキオンを見た小島は、嫌な予感を感じた。同時にこの後生起するであろう事態への対処法を(自身でも自覚していない)才能9割と普段の訓練や教育1割によって培われた能力で考え始める。
「丁度良かった、とはどういうことかな」
自身の思考をおくびにも出さないような口調で小島は答えた。
「君は健康で元気な成人男性、それも鍛え上げられた肉体を持つ自衛官-最高の素材だ」
「お前さんが何を言いたいのか、さっぱり理解できないのだが」
内心とは正反対に小島は答えた。
「端的に言えば」倫理観をどこかへ投げ捨てたように、舞台役者のような声でタキオンは答えた。「君はまさに
-成程、カフェが言っていたのはこういうことか。遠藤さんを連れてきてよかった。
彼の右側に立つ遠藤を見ながら小島は思った。遠藤もまた、今の彼女の発言を聞いた瞬間、表情を一切変えないまま警戒体制に移行している。
「そういうことで、君にはこれを飲んでもらおう」
タキオンはそう言って、怪しげな色をした液体の入った試験管を手にする。それを見た小島は遠藤に軽く目配せをした。遠藤はそれに答え、タキオンから見て左横の、彼女の視野の死角となる位置に移動する。無論タキオンはそれに気がついていない。
「断る」断固とした態度で小島は答えた。「生憎と俺は、ひ孫の顔を見るまで死ぬ気はないんでね」
「安心したまえ。最悪でも数時間、両足の皮膚が黄緑色に発光するだけさ。それ以外の影響は全く無いよ」
「それでも断る」小島は再び答えた。「俺はお前のモルモットになるつもりは全くない」
「なら、無理やりにでも飲ませるだけだよ」
タキオンはそう言うと椅子から立ち上がり、怪しげな色の液体が入った試験管を手に小島に迫った-次の瞬間、遠藤が一瞬のうちに彼女の背後へ回り込むと、左手でタキオンの左腕をつかんで彼女の背中に押さえつけ、自身の右腕を彼女の胴体に回して拘束した。
「遠藤准空尉、ありがとうございます」
表情を変えずに小島は答えた。
「正直、自分の娘くらいの年齢の子を拘束するのは気が進みませんが」
それに対して遠藤もタキオンを拘束しながら事務的に応じた。
「やれやれ。それで私を拘束したつもりかい」タキオンは一連の動きに驚きながらも不敵に答えた。「君たち人間が、単純な身体能力で我々ウマ娘に勝てるわけが-」
そう言うと彼女は体に力を籠め、遠藤の拘束を解こうとしたが-出来なかった。全力を込めても、まるで力そのものが吸い取られるかのように体を動かすことが出来ない。それなのに自分を拘束した男はまるで風船でも捕まえているかのように涼しい顔をしている。
-どういうことだい。
タキオンは混乱していた。人間を上回る力を持つウマ娘を、この男はなぜ軽々と拘束できる?訳が分からない。
見ると、カフェまでもが驚愕の表情を浮かべていた。当然である。彼女もまた、ウマ娘をこのように軽々と制圧できる人間を見たことがなかったからだ。
「人間がウマ娘にどうしたって、マッドサイエンティスト」
その光景を見た小島は軽く勝ち誇ったような表情を浮かべながら、遠藤に拘束されたタキオンに話しかけた。
「とりあえずこれは没収させてもらおう」
そう言うと彼は怪しげな色の液体が入った試験管を彼女の手から取り上げると、廃液捨てと書かれたゴミ箱に放り込んだ。かすかな落下音が響く。
「これに懲りたら、会ったばかりの人間を実験材料に使おうとするのはやめることだな」
「この後どうしましょうか」
遠藤がタキオンを拘束したまま答えた。拘束されている彼女の顔には相変わらず困惑の表情が浮かんでいる。
「とりあえず拘束したままでお願いします」
小島は部下の言葉に事務的に応じた。
「彼女の様子を見ていると、解放したとたんに何をされるかわかったものではありませんので」
「ちょ、ちょっと、離してくれたまえよ」
先ほどまでの図々しさをどこかへ投げ捨てたように、懇願するような口調で動揺しながらタキオンは答えた。
「条件がある」
小島はそう言うと視線をカフェに向け、口を開いた。
「カフェ、彼女の体を調べてくれ。隠し持っているものが無いか、徹底的にな。必要なら服をひん剥いても構わん」
「さすがにそれは」
ためらうようにカフェは答えた。
「だったらこうしよう。お前がタキオンを調べている間、俺と遠藤さんは部屋から出ている。終わったら声をかけてくれ。それならどうだ」
「そういうことでしたら」
「ああそれと、検査が終わってから俺たちが入ってくるまでの間に変なものを隠し持とうとしないかも見ておいてくれ」
「分かりました」
そう言うとカフェは遠藤に拘束されたタキオンの目の前に近づく。それを見た遠藤は拘束を解き、タキオンをカフェに引き渡すと、上官と共に部屋を出た。
「やれやれ、ひどい目に合ったよ」
「十中八九あなたが招いたことじゃないですか」
身体検査を終えてもなお自身の行為に反省の色を見せないまま椅子に腰かけるタキオンに対し、呆れたようにカフェは答えた。
「それよりも、先ほどのあれはどういうことだい。自分で体験しておいてなんだが、あのようにいとも簡単にウマ娘を拘束できる人間が居るというのは、そのなんだ、俄かには信じがたいものがあるね」
「私も-タキオンさんと意見が一致するのは不本意なのですが-同意見です」
タキオンとカフェ、2人は先ほどの出来事を信じられないといった風に口を開いた。
「見ての、そして体験しての通りさ」はぐらかすように小島は答えた。「遠藤
「空挺レンジャー課程に比べたら」遠藤は答えた。「ウマ娘を拘束することなんてお遊戯会みたいなものですよ」
「「くうていれんじゃーかてい?」」
タキオンとカフェは呪文を唱えるように応じた。
「端的に言えば、半分以上人間を辞めた連中がいくところさ-ウマ娘に言って通じるとは思わんがな」
「正直、万人にはお勧めできませんね」上官の的確な要約に遠藤は答えた。「自分も正直、よくあんなのを乗り越えられたなと思ってるくらいですから」
「その辺を聞くのはやめておくことにするよ」
「私もそうします」
「それよりもタキオン、お前さんに一つ聞きたいことがある」
「なんだい」
先ほどまでの態度をどこかに投げ捨てたような、おとなしい口調で彼女は答えた。
「そんな怪しさ極まりない実験をしてまで何をやりたいんだ」
「端的に言えば、『ウマ娘のその先が見たい』のさ」
子供のような純粋さと狂気を宿した目で彼女は答えた。
「ウマ娘のその先ぃ?」
小島は懐疑的に答えた。
「ウマ娘の肉体の最高のその先-限界速度を知りたい。レースに出走し、実力のある者たちと競い合うことは、私の研究を大きく前進させる。だからこそ私はこの学園に来た、というわけだよ」
好奇心と狂気を混ぜ合わせて煮詰めたような声でタキオンは答えた。
「そんなわけで授業にも必要な分しか出ず、トレーナーをつけてのトレーニングも行わずに研究や実験に打ち込んでいたわけだが-それが良くなかったらしい。この学園は生徒の自主性を尊重するようだが、トレーナーもつけず、公式戦にも出ようとしない者はどうやらその例外であるようでね。今回の選抜レースに出なければ退学、とまで言われてしまったよ。それでいて参加しなかったということはまあ、そういうことだ」
「お前さんはそれでいいのか」
小島は無関心に問いかけた。それに対し、タキオンはまるで宝探しにでも出かけるかのように答えた。
「トゥインクル・シリーズ以外にも、実力を持ったウマ娘が走るレースは存在する。そっちへ行きながら実験を続けるさ。そうだ、いっそ海外に出るのも良いな-欧州に
「そこまで言うのならなぜレースに出ようとしない。スカウトは今までにも受けたんだろう」
「彼らの提示するトレーニングスケジュールには無駄が多すぎてねぇ、いうことを素直に受け入れていたのでは実験に費やす暇がないんだよ。だからすべて断ったのさ-結局はそのツケを払うことになったがね」
軽い諦観を含んだようにタキオンは答えた。
「後悔はしていないのか」
「まあ、この学園から出ていったところで、私が自分の肉体を用いて最高速度のその先を見に行くことには変わりないさ。トゥインクル・シリーズへの出走権を失うのは惜しいし研究も停滞するだろうが-他者に研究そのものを邪魔されるよりは余程ましだ」
「そうかい」
そこまで話を聞いた時、小島は脳内でタキオンの計画に問題点があることに気がついた。
つまるところ、彼女の計画は自分の考えている物事がすべてうまくいくという前提で組まれている。だが計画というものは人生と同じで、全て順調に進む方が珍しい。彼はそれを過去の経験と幹部候補生学校で受けた教育から学んでいた。
-彼女の計画はその辺りをあまりにも無視したものではないのか?そう思った小島はそのことについて問いただしてみることにした。
そしてその判断が、2人がコンビネーションを組む事を決定づけることになる。
小島は少しの思考の後、証人の発言の矛盾を見つけた弁護士のような口調でタキオンに問いかけた。
「その思い切りの良さに敬意を表して忠告してやるが、お前さんの考えには問題点があるぞ」
その言葉にタキオンはほう、とでも言いたげな表情を浮かべ、口を開いた。
「それでは、その問題点とやらをありがたく拝聴するとしよう」
「ならば言おう」小島は答えた。「お前さんはどうやら、この学園を出ていった後でも同じような研究や実験を続けられるという前提で話をしているようだがな、退学した後で今と同じように研究や実験を出来るという保証がどこにあると言うんだ」
その言葉にタキオンは一瞬はっとしたような表情を浮かべ、続けて頭を抱えた。
「まさか、考えていなかったのか」
「そこまでは-考えていなかったな、うん、実験が出来なくなるのは困るねぇ。研究が停滞どころか停止してしまう」
「だろう。なら退学するのはやめておけ」
小島は自分でも気づかないまま、狂気を浮かべた目で答えた。それを見たタキオンは困惑したように答えた。
「-全く、せっかく覚悟を固めたところだというのに。だったら一体どうすればいいんだい。教えてくれないか」
その言葉を聞いた小島は思った。彼女を自由奔放のままにさせておくのは危険がある。放っておけば何をしでかすかわかったのものではない。なら誰かがついて管理した方がいい。どうするべきか、と思ったところで、彼は現在の自分がどのような役割を担っているのかを思い出す。
そうだ、俺は今トレーナーじゃないか。ならば、するべきことは一つだ。そう思った彼は意を決して口を開いた。
「さっきお前さんは俺のことを狂った目をしていると言ったな。俺に言わせればお前さんも大概だと思うがね」
「随分と唐突だね。私が狂っていると、そう言いたいのかい」
「言われなくてもわかるだろう。そこで、だ」小島は言葉を切り、続けた。「狂った者同士で手を組まないか」
「つまりはスカウトかい-それなら」
タキオンはそう言って断ろうとしたが、それを半ば予想していた小島に期先を制された。
「断る前に理由を聞け、それからでも遅くはないだろう」
「ならば聞こうじゃないか-君が私のトレーナーになることで、私にどんなメリットがあるというのかを」
「少なくとも、研究時間と居場所は確保できるぜ」
「具体的には」
「俺は少ない労力で大きな果実を得ることをモットーにしていてな」小島は答えた。「だから、トレーニングについては効率化を図った上で必要最低限にしようと考えていてね。そうすればお前さんも好きな事に打ち込む時間を十分に確保できるのだから、悪い話ではないだろう」
「ふうむ」
タキオンは興味深げに応じた。
「そして何より、俺がつく事で退学を回避できる。お前さんは今まで通り実験と研究に打ち込みながら、空いた時間でトレーニングや公式戦に臨めばいい」
「随分と虫の良い話だねぇ。何か裏があるんじゃないか」
「裏はないが条件はある」
小島は当たり前だろ、とでも言いたげに答えた。
「レースへの出走や練習方法については俺の方針に従え。あと、実験や研究に打ち込むのは良いが、俺を含めた他人を薬の実験台にしようとするのは絶対にやめろ。この2つの条件を必ず守ってくれるのならば、あとはお前さんの好きにして構わん」
「悪くはないね。実際の肉体で実験を行う事が出来ない、という点は少し残念だが-まあいい、だったらこっちも条件を付けさせてもらおう」
「何だ」
「君が提示する練習カリキュラムに私が口を出す権利を寄こしたまえ。それを認めてくれるのならば、私は君の条件を呑んで、君の提案に乗ろうじゃないか」
「それくらいならお安い御用だ-交渉成立、ということでいいかな」
小島は満足気に応じた。
「ああ、これからもよろしく頼むよ、トレーナー君」
タキオンもまた、同じように答えた。
今まで黙っていたカフェが口を開いたのはその時だった。
「でしたら小島さん」
「なんだカフェ」
「私もあなたと契約させてほしいのですが」
「理由は」
「最大の理由は、先ほど『お友だち』のことを否定せずに話を聞いてくれて、信頼できると思った事なのですが、今のタキオンさんの様子を見ていて、もう一つ思った事がありまして」
「ふむ、聞こう」
「彼女を1人にしておくのはどうにも不安が拭えないので、私が目の届くところにいれば、彼女が何か起こした時のストッパー足り得るかと」
「要は
「そう思って頂ければ」
小島はその言葉に少し考え込むと、やがて口を開いた。
「構わん。一人も二人も同じことだ」
「おいおい、私のことをどこまで信用していないんだい」
「さっきの行動とその見た目で信用できると思う方が間違ってるだろ、このマッドサイエンティストめ」
「私のことをマッドサイエンティスト呼ばわりするのはやめてくれないか」
「それ以外にどう言い表しようがあるんだ」
「小島さんの言うとおりだと思います、タキオンさん」
「カフェまで」
「そんなのだから研究資料を燃やされたりするんですよ。これを機に、少しは自分を省みた方がいいんじゃないですか」
「失敬な」反省のそぶりすら見せずにタキオンは答えた。「常に疑いを持つことが科学じゃないか。私はそれに忠実たろうとしているのに」
「好奇心と倫理観の区別がついていないだけじゃないのか。研究や実験をするのは勝手だが、お前さんはもう少し倫理観というものを身に付けた方がいい」
「努力はするが結果には期待しないでくれたまえ」
「全く懲りてませんね、タキオンさん」
「もう一度遠藤さんに拘束されたいようだな」
「それだけは勘弁してくれないかい」
全くこいつは。小島は内心でそう思いつつも、目の前の光景にどこか面白さを感じていた。
CASE2:森宮有沙とライスシャワー
(スカウトって言っても、どうやろうかしら)
グラウンドに集ったメンバーと分かれた森宮有沙は思った。事前にウマ娘のトレーナーについての予習を済ませ、スカウトするウマ娘を選ぶときのコツについても十分に理解していた彼女であったが、それでもやはり不安をぬぐうことは出来ない。
そのような考え事をしながら歩いていると、いつの間にかグラウンドの外側にある茂みにまで来ていた。
そのとき視界の片隅で何かが動いたのでふと目をやると、そこには体操服を着て片隅でうずくまっている、長い黒髪の小柄なウマ娘がいた。頭の右側に小さな帽子が青い薔薇の頭飾りと共にちょこんとついている。両手で顔を覆っている姿からしてどうやら泣いているようだった。
あらあら、どうしたのかしら。彼女は思った。とりあえず話しかけてみましょう。
彼女は近づく。途端に、叫び声が彼女の耳朶を揺らした。
「こないでっ!」
有沙は一瞬驚いたが、そのまま目の前のウマ娘に近づく。当の本人は顔を泣き腫らしながら怯えたような、悲しいような表情で有沙を見つめてきた。それを見た彼女は幹部自衛官としての立場を本能で放棄すると、母親としての笑みを浮かべながらしゃがみこんでそのウマ娘と目線を合わせ、自分の長男をあやすような口調で話しかけた。
「どうしてこんなところで泣いているの?そのお話だけでも、お姉さんに聞かせてちょうだい」
目の前のウマ娘はその優しげな顔を見て、不安そうな表情を浮かべながらも落ち着きを取り戻した。少しの間をあけて、口を開き始める。
「ライスは・・・ライスは、みんなを不幸にしちゃうから」
「ライスちゃん、っていうのね。ゆっくりでいいから、どういうことか話してみて」
「この前だって、トレーニングに出掛けたら何度も何度も赤信号に捕まっちゃうし、そのせいで他の人にも迷惑をかけちゃうし、他にも一杯、悪いことが私や周りの人に起こっちゃうし・・・」
「ふんふん」
「だから・・・だから・・・ライスはダメな子なの・・・みんなを不幸にしちゃう、ダメな子なの・・・」
話を聞いている限り、彼女は頻繁に良くないことに見舞われているようだ。だがそれだけではなぜ泣いているのかが分からない。単なる偶然の結果とも取れる。そういうことは得てして起こり得るものだ
。
どれだけ努力しようと、本人には何の落ち度もない不運で地獄へと叩き落されることは枚挙にいとまが無い-そう、私の幼馴染のように。
有沙はそう思うとライスに、話を聞いていて疑問に思った事を聞いてみることにした。
「でも、どうしてここで泣いているのかしら?今のお話じゃ、そこがよく分からなかったわ」
「だって、頑張ったのに・・・いっぱい練習して、あんなに頑張ったのに・・・結局、怖くてレースに出られなかったから・・・」
「そうなの」
有沙は保育士のように答えた。
「ライスがレースに出たら、悪いことが起こって、みんなに迷惑かけちゃうんじゃないかって・・・だから、怖くてレースに出られなかったの・・・」
「大変だったわねえ」
「だけど、今回の選抜レースは頑張って出ようとおもって、グラウンドの前まで来たら急に怖くなって・・・・そのまま・・・・だから・・・」
彼女-ライスシャワーの言葉は後半になるにつれて次第に小さくなっていき、最後はほぼ小声になってしまっていた。
随分と自責の念が強い子ね。有沙はそう思った。それでも話を聞く限り、本人もどうにかしようと頑張っているようだ。だが、こういう時に無理をさせるのは長い目で見れば却ってよくない。そのままぽっきりと折れてしまう。
そう考えた有沙は、傍から見れば無責任ともとられかねないような言葉をライスシャワーに投げかけた。
「いいじゃないの、別に出なくても」
「ええっ・・・」
戸惑うようにライスは答えた。
「頑張ってグラウンドの前まで来れたんでしょう。今回はそれで十分よ。選抜レースなんて、次の機会に出ればいいのよ」
「でも、次のレースもこんなことになっちゃったらどうすればいいの?そんなことになったら、もうトレーナーさんだってついてくれないよ?せっかくレースでデビューして、いっぱい活躍しようと思ってたのに・・・・」
参ったわねえ、ここまでネガティブ思考が強いとは。物事をネガティブに考えるのは、裏を返せば慎重さがあるってことだからそれ自体は悪いものではないのだけれど。どうにかしてあげなくちゃね。放っておくわけにはいかないわ。
そのような論理と言うより母親としての本能の部分で意を決した有沙は、目の前のウマ娘を見つめ、微笑みながら口を開いた。
「じゃあ、私がそのトレーナーさんになってあげましょうか」
「えっ、それって」
「そう。あなたのことをスカウトさせてちょうだい」
ライスシャワーはそこで目の間の女性が着ている服の胸に、真新しいトレーナーバッジがついていることに気がついた。
「あなた、トレーナーさんなの?」
「そうよ。本職は違うけど、ね。着ている服を見れば、分かるでしょう」
「本当だ、なんだか不思議な模様の服を着てる」
ライスシャワーは迷彩服のことをそう評すると、今度は戸惑ったような表情を浮かべ、有沙に尋ねた。
「でも、本当にライスでいいの?いっぱい迷惑かけちゃうかもしれないし、レースに出られるかも分からないのに」
「いいのよ」有沙は答えた。「迷惑なら、これまでにいっぱいあったから。少し増えたくらい、どうってことないわ。レースに出るのだって、無理しないであなたのペースでゆっくりやっていけばいいのよ」
「それでいいの?」
「急いては事を仕損じる、っていうじゃない。一緒にゆっくりゆっくり、進んでいきましょう」
その言葉を聞いたライスシャワーは、ぎこちないながらも精一杯の笑顔を浮かべると、口を開いた。
「ええと・・・そ、それじゃあ、よ、よろしくね、トレーナーさん」
「ええ、よろしく」
有沙はそう言いながら、ライスシャワーの頭を優しく撫でてやった。
CASE3:土井美咲とマヤノトップガン
土井美咲は解散後そのままスタンドにとどまり、いくつかの選抜レースの模様を見ていた。
その中で友人の亭主が黒い長髪のウマ娘-マンハッタンカフェと言うらしい-と何やら話し込んだ後でどこかへ行く様子も遠目に見てはいた。だが彼女はこれ、と言ったウマ娘を見いだせずにいる。防大を席次3位で卒業した才媛である美咲だが、ウマ娘をどう選べばいいのか分からずにいるのだ。
(そもそも私たちにウマ娘のトレーナーをやれ、と言う方が無茶苦茶なのよ)
美咲は思った。たく
はあ、こんなことなら輝男がJAXAの宇宙飛行士訓練生になって海自を辞めた時に一緒に辞めておけばよかった。私なら次の仕事も簡単に見つかったろうし、いっその事家庭に入ることも考えておくとか、色々と選択肢はあったはずなのに。
そんなため息をつきながら何気なしにグラウンドの方を見ていると、唐突に聞こえてきた、駄々をこねるような声が彼女の耳朶を打った。
「やだやだやだ~!マヤもレースに出たいー!」
美咲が何かとぶつかったのはその時だった。軽くよろめきながらも受け止める。
見ると相手は茶色-というよりはオレンジ色に近い髪の毛を後ろで2つに束ねた、小柄なウマ娘だった。その様子を見た係員が駆け寄ってくる。
「丁度良かった」
「どうしたんですか」美咲は係員に問いかけた。
「この子、レースに出られないのに勝手に出ようとしたんです。すみませんが様子を見ていてもらえませんか」
「別に構いませんが」
面倒くさいわね、美咲は内心でそう思いつつ答えた。
「ちょ、ちょっとー!」
小柄なウマ娘が吠える。その様子を見た係員は、頼みましたよと彼女に言って離れていった。
さて、これからどうしましょうか。美咲は自分の目の前で不機嫌そうな表情を浮かべながら時折足を動かし、名残惜しそうにグラウンドを見つめるウマ娘を見ながら思った。
(一先ずは)
名前を聞かなくちゃね。そうしないと、面倒の見ようがないわ。そう思った美咲は前かがみになって目線を合わせながら答えた。
「お嬢ちゃん、お名前は」
「マヤノトップガン」
目の前のウマ娘は機嫌の悪さを隠そうともしない声で答えた。
-その名前を聞いた途端、彼女の脳裏にある男のことがいきなり浮かんできた。半舷上陸した呉の港で出会った、空と宇宙の話ばかりしていた男。実家は幕末以来の海軍一家で、父親は現役の一等海佐。そして気がつけば、いつの間にかその男と男女の関係になり、結婚して子供まで生んでいた。
美咲がなぜそのことを思ったのかは本人にも分からない。ただ、目の前のウマ娘の名前を聞いて、興味を惹かれたのは確かだった。
まるで保育士のように、美咲は彼女に話しかけた。
「マヤちゃんね。私は土井美咲って言います。美咲ちゃんと呼んでいいわよ」
「じゃあ美咲ちゃん」
「なあに」
「マヤをレースに出して」
「それはできないわねえ。だってあなた、レースに出られないんでしょう」
美咲は自分の長女をあやすように答えた。
「やだ、それでも出たいの」
マヤノトップガンは頬を膨らませながら、駄々をこねるような言葉で返した。
「一緒に見ましょう。見るだけでも、色々と分かると思うわよ」
「えー、だってつまらない」
「どうして?」
「だって、一回見ればぜーんぶわかっちゃうんだもの」
その言葉を聞いた時、美咲の脳裏に友人のことが思い浮かんだ。防大時代、自分が勉強する傍ら、試験前でも平気で遊びほうけていたルームメイト。そのくせ全科目満点で学年首位を独走する彼女をうらやましく思い、何気なく聞いてみた時に帰ってきた言葉は今でも忘れられない。
(どんなことでも一回見たり読んだり聞いたりすれば全部頭に入っちゃうの。だから勉強なんてしなくても大丈夫)
-この子、まるで有沙みたい。美咲はそう思った。そして、彼女はこの手のタイプをどのように扱えばいいかを、ルームメイトとの4年間の付き合いで学んでいた。
「じゃあマヤちゃん」
「なあに美咲ちゃん」
美咲は聖母のように微笑みながら目の前のウマ娘に向き合い、言葉を紡ぎ出す。
「レースを見ながらお姉さんの知らないこと、色々教えてちょうだい。あなたのこと、もっと知りたいわ」
その言葉に、マヤノトップガンはふてくされながらもやや朗らかさを取り戻した、年相応の声で答えた。
「うん、分かった」
やがて、グラウンドではこの日何度目かとなる選抜レースが開始された。十数人のウマ娘がコースの上を駆けてゆく。やがてレースは終盤に入り、後は最終直線を残すのみとなった。
その時マヤが、コースの方を眺めながら呟いた。
「あ、あの黒い髪の子、バンって行きそー」
やがてその言葉通り、そのウマ娘は集団の間を縫うようにして先頭に躍り出る。
(偶然かしら)
それを聞いた美咲は思った。でも、偶然にしてはタイミングが良すぎる。そんな彼女をよそに、マヤノトップガンは独り言を喋り続けていた。
「うーん、あの2番目の子、いい感じの時にビュッて踏み込んで、後はバビューン!って行けば何とかなりそー・・・あっ、今!」
彼女がそう呟いたとおり、2番目の子は先頭のウマ娘を追い抜くために仕掛けたが-惜しくも失敗してしまった。そのまま黒い髪のウマ娘が一着でゴールする。
「あー、惜しかった。でもいいなあ・・・あーあ、マヤもあんな風にレースに出たいよー」
マヤノトップガンは手すりに体をもたれ、足をぶらぶらさせながら呟いた。
(ひょっとしたらこの子、凄いんじゃないかしら)
羨むように言うマヤノトップガンを見た美咲は思った。言語化能力こそ高くはなさそうだが、彼女はレース展開を-それこそ素人目に見ても完璧と言っていいレベルで-読んでいた。どうしてこんな子がレースに出れないんだろう。
美咲はそこで先ほど聞いた、一回見れば全部わかってしまうという彼女の言葉を思い返す。
ひょっとして、そのせいかしら。そう思った美咲はマヤに尋ねた。
「ねえマヤちゃん」
「なあに、美咲ちゃん」
「ひょっとして貴女がレースに出られないのは-すぐに何でも分かっちゃうからなのかしら?」
「そうだよ」彼女は愚痴を言うように答えた。「だって、一回やれば全部わかっちゃうのに、練習なんて出る必要あるの?どうしてもやらなきゃいけないっていうから最初の一回は出たよ。でも、すぐにできるようになっちゃってつまらないんだもん」
「それで、レースに出られなくなっちゃったわけね」
「うん。そうしてたら、どのレースにも出ちゃダメって言われたの。マヤも、他の子みたいにちゃんとトレーニングしなきゃっていうのは分かってるよ。でも、出来るようになってることを何回も繰り返すのは、つまらないし意味ないって思っちゃう」
「うんうん」
美咲は何度も肯きながら、マヤノトップガンの話を聞いてやる。こういう時は相手の話を否定するのではなく、ただ聞いてやることが最善であることを彼女は理解していた。それをよそに、マヤノトップガンの口調は徐々に自分を否定するようなものに変化していく。
「マヤ、みんなと違うからダメなのかな。みんなみたいにレースに出てキラキラしたいのに・・・なれないの・・・?」
やれやれ、このあたりでお姉さんが一肌脱ぐことにしましょうか。そう思った美咲は口を開いた。
「気にすることないわよ」美咲はあっけらかんと答えた。「お姉さんの友達にもマヤちゃんみたいな人がいるけど、そのことをマヤちゃんみたいに気にしていないわ。みんなと違うことで、思い悩む必要なんてどこにも無いの」
それを聞いた途端、マヤノトップガンの表情が一瞬にして興味の対象を見つけた子供のようなものに-実際子供と言っていい外見だが-なり、言葉も朗らかさと好奇心を混ぜ合わせたようになっていた。
「えっ、マヤみたいな人が美咲ちゃんのお友だちにいるの?」
「そうよ。その子は勉強もスポーツもお稽古事も、一回やればすぐに完璧に出来るようになっちゃうの。だから、他の人から色々言われてたのよ」
「それでそれで、その子はどうしたの」
マヤノトップガンは新しい玩具を見つめる幼児のように答えた。
「ばっさり切り捨ててたわ。『努力で才能の差を埋められると信じている愚か者の戯言なんて聞く価値もないわ』って言ってね」
「うわー・・・・でも面白そう。ねえねえ、その美咲ちゃんのお友だちに会わせてよ」
うーん、どうしようかしら。彼女も今はスカウト中でしょうし、すぐには会えないわよねえ。
そこまで考えた美咲の脳裏にある考えがひらめいた。
そうだ。だったらこうしちゃいましょう。そうすれば、
「じゃあ、マヤちゃん。その人に会わせてあげるけど、その代わりに一つだけ、お姉さんの言うことを聞いてもらえるかしら」
「いーよー、なになにー」
それを聞いた美咲は、単刀直入に答えた。
「マヤちゃんのことを、スカウトさせてちょうだい」
その唐突な言葉を聞いたマヤノトップガンは一瞬驚いた後、戸惑うような声で返事を返した。
「えっ、別にいいけど・・・でもマヤ、トレーニング好きじゃないよ」
「別にいいわよ」安心させるように美咲は答えた。「楽して結果を得るのが一番だって、
「そんなこと言っちゃうの?」
「そんなこと言っちゃうのよ。面白いでしょう」
笑いながら美咲は答えた。
「面白そうな人たち。じゃあこれからよろしくね、美咲ちゃん」
「こちらこそよろしくね、マヤちゃん。一緒に頑張りましょう」
CASE4:広瀬彩香とグラスワンダー
(結局、これと言う子は見つけられなかったわねえ)
広瀬彩香はこの日最後の選抜レースを見ながら思った。有沙の亭主も有沙も美咲もいつの間にか姿が見えなくなっちゃってるし、どうしようかしら。
そんなことを考えながらレースを見ていると、目の前で走る一人の栗毛のウマ娘に目が行った。中団を走っている所を見ると脚質はどうやら、先行もしくは差しのようだ。その子のことが気になって前回の選抜レースのデータを手元の端末で見ていると、彼女の名前があった。そこには穏やかそうな風貌とは裏腹に、実力はかなりのもので以前から有望視されていたこと、さらには前回のレースで2着に終わって以来すべてのスカウトを断っていることが記されていた。
途端に歓声が上がる。見ると、例の栗毛のウマ娘が最終直線で一気に抜け出し、そのまま1着でゴール板を駆け抜けていた。
レースを終えて一息つく彼女の下に何人ものトレーナーが近づき、様々な言葉でスカウトを試みている。その中には学内最強と言われるチームを率いる女性トレーナーの姿もあった。その様子や途切れ途切れに聞こえてくる話の内容から察するに、今回もまた数多のスカウトを断っているらしい。
まあ、あんなものを見せられちゃ夢中になるのも無理はないわね。彩香は前任地-防衛省情報本部に勤めていた頃の情報幹部としての態度を前面に押し出し、目の前の光景をどこか冷めたような様子で見ていた。
それにしてもみんな、目の前の結果に惑わされ過ぎじゃないかしら。何事も最大瞬間風速だけで判断すると、ろくな目に合わないと思うのよね。前いたところの上官がその典型例だったわ。どこか不真面目な第一印象をしていたのに、要点だけはきっちり締めてくる人だった。一般幹部候補生上がりで元々は戦車乗りだったけど、どこで道を踏み外したのか情報畑を歩むことになった人。だがこちらが転属したのと同じタイミングで、どうやら本職に戻る-何故そうなったのかは知らないが-ことになったらしく、富士教導団の教導機甲連隊長として転属していった、飄々としていた男。
ふと一瞬彼女と目が合う。穏やかながらも何か秘めたものを感じさせる雰囲気を纏っていた。まあ、私は関係ないしね。トレーナーと言っても、本職は違うし。そう思っていたところ、その栗毛のウマ娘が彼女の下に近づいてきた。
えっ、どういうこと。戸惑いを隠せない表情で見つめる彩香をよそに、そのウマ娘が目の前に来て、微笑むように口を開いた。
「チームSDFのトレーナーの方でよろしかったでしょうか」
穏やかで物静かな、少女そのものといっていい声。しかし、どこか闘志を感じさせる声だった。
「正確には4人いるうちの1人だけどね。それで、何かご用かしら」
彩香の言葉を聞いたそのウマ娘は凛とした表情で彼女を見つめると、真っすぐな声で答えた。
「私を、貴女方のチームに入れて頂きたいのですが」
「どうしてうちに?あなた、他のトレーナーから引っ張りだこだったじゃない。見ればわかると思うけど、私の本職は違うし、トレーナーとしては素人同然よ。あなたほどの実力があるなら、他の人についてもらった方がより良い結果を得られると思うわ」
彩香は彼女の言葉に懐疑的に応じた。
「そのことは、存じ上げております」彼女は答えた。「それでも、貴女方のチームに入りたいのです」
強引ねえ。彩香は思った。見ると、他のトレーナーたちが羨望と驚きとやっかみの入り混じったような視線でこちらを見てくる。無理もない。素人に毛が生えたような-しかも本職は幹部自衛官と言う余所者の-トレーナーに、実力のあるウマ娘が逆指名をしたのだ。そんな目で見られない方がおかしい。
そのような視線を気にしながらも、ぱっと見はそんなことを気にもしていないような外見と態度で彩香は応じた。
「そこまで言うなら理由を教えてちょうだい。あなたの逆指名を受けるかどうかはそれ次第よ」
その言葉に対して、穏やかに見えるものの、はっきりとした意思を込めた言葉で彼女は応じた。
「私は己の意志と、実力で頂点に立つことを目的にこの学園に入りました」
「立派な心がけね」
それが出来ればいいけど。そう思いながら彩香は内心とは正反対の態度で答えた。勿論心の内側を表に出すことはしない。
「そのためには自身も強くあらねばなりません。それを考えた時にふと思ったのです-強くなるためにはどうすればよいのか、と」
「その自分の問いに対して、あなたはどう思ったの」
彩香は問答を行うソクラテスのように答えた。それを聞いた目の前のウマ娘は表情を変えずに応じた。
「最初の内は、実力のある方や強いチームの下で指導を乞うことが一番だと考えたのですが-ある疑問が頭に浮かびまして」
「どんな風に」
幹部自衛官よりも、女性としての魅力を用いた職業に就いた方がより稼げそうな作りをした顔に不敵な笑みを浮かべながら彩香は答えた。
「もともと強いものに教えを乞うて強くなったところで、それは果たして本当の意味で強くなったと言えるのか、ということです。それではただ、強者の肩に乗っただけのこと。己の力で強くなったとはとても言えません。私はそう思いました」
先ほどよりも強い意志を込めた表情で彼女は答えた。
「貴女方のチームのことを聞いたのはその時です。自衛隊から来られた方がトレーナーを勤める、実力が未知数のチーム。そのことを知ったとき、私はこれだと思いました」
「よく分からないわね。具体的に言ってくれないかしら」
彩香は大企業の社長秘書のような態度で答えた。
「先ほど申し上げましたが、元から強いチームに入ったり、実力のあるトレーナーの指導を受けて強くなっても、ただ強者の肩に乗っただけのことで、強くなったとは言えません。それならばー」彼女はそこで言葉を切り、一呼吸置いて続けた。「実力が未知数のチームに入って、強くなることこそ真の意味で強くなったと言えるのではないか、そう思ったからこそ、私は貴女方のチームに入ることを決意したのです」
にこやかな笑みを浮かべながら彼女は答えた。その見た目とは裏腹に、彼女の目は十分以上の闘志を宿していることがはっきりとわかる。
良さそうね、彩香はそのウマ娘の姿を見て、友人とその亭主のことが頭に思い浮かんだ。
自分で一度決めたことは頑として譲らなそうな態度に、穏やかそうに見えて闘志を秘めた目つき。あの2人が好きそうな子だわ。
それに、あの硬い意思を曲げるのは難しそうだし、断っても面倒なことになりそうだわ。それならさっさと終わらせてしまいましょう。そうすればこっちの手間も省けるし。そう思った彩香は目の前のウマ娘と向き合い、口を開いた。
「あなたはさっき強くなりたいって言ったけど、私達はトレーナーとしては素人同然だから、あなたのことを確実に強くしてあげられる保証はないわよ。それでもいいって言うんなら-」
「問題ありません。そのことは覚悟の上です」
腹をくくった目で彼女は答えた。
「そこまで言うのなら、あなたと契約しましょう」
「ありがとうございます」
それを聞いた彩香は、一つ大事なことを聞き忘れていたことに気がつく。
「そう言えば、名前を聞いていなかったわね」
「失礼致しました」穏やかな大和撫子そのものの表情で彼女は答えた。「グラスワンダー、と申します」
「広瀬彩香よ-これからよろしくお願いするわね、グラスちゃん」
そう答えた彩香はアップにまとめた髪を揺らしながら、実に楽し気な笑みを浮かべていた。
CHAPTER3:分屯基地にて
「これから話すことは、君たちにとって決して愉快なものではない」
分屯基地のミーティング兼休憩スペースに集った5人のウマ娘を前に、小島はそう言い放った。彼女たちは集まった当初こそ自己紹介や雑談をして過ごしていたが、彼が5人の前に出てきた頃には会話の材料を消費し尽くしたらしく、静寂と微妙な空気が空間を支配していた。小島はそのことについて一言二言述べた後で、上記の言葉を発したのだった。
彼の言葉を聞いた5人は息をのんだ。その中で、アグネスタキオンだけが相も変わらず不敵そうな笑みを浮かべている。
小島は話を続けた。
「だが、俺たちのチームに属する以上は絶対に話しておかなくてはならないことだ。もしその話を聞いて、やはりこのチームとは合わないと判断したら遠慮せず契約解除を申し出てくれ。責任をもって次のトレーナーを探してやる」
向けられる10個の瞳。その中の赤い2つが声を発した。足を組み、頬杖をついている。
「とりあえず本題に入ってくれないか、トレーナー君」
「ならば、端的に言おう」意を決した表情で彼は答えた。「このチームは君たちをレースで勝たせることを目的にはしない」
この学園に漂う空気と真っ向から対立するようなことを小島が述べた瞬間、部屋の空気が変わった。タキオン以外は戸惑いを隠せていない。当の彼女は面白いものでも見たような表情を浮かべている。
「それは、どういうことでしょう」
5人を代表したかのようにグラスワンダーが答えた。返答次第では、という表情をしている。
「グラスワンダー、と言ったか」
彼女を睨むように小島は答え、話を続けた。
「お前さんが何を考えてこの学園に来たのかは知らん。だが、このチームは君たち全員が長い期間走り続けた上で、無事に現役生活を終えられることを第一の目的としている。故にどんなに大事なレースであっても-たとえG1レースであっても-大怪我をしてその後の人生を棒に振るリスクが高いと判断したら出走させることは絶対にしない。たとえ君たちが泣こうが喚こうがだ。勿論、結果としてレースに出て勝つことが出来ればそれは喜ばしい-だがあえて言わせてもらおう」
小島は細君を通じて知り合った、彼女の幼馴染の、生涯を車椅子で送らざるを得なくなった-かつてレースで活躍していた-ウマ娘のことを思い出しながら答えた。
「その後の一生を棒に振ってまで得る勝利に何の価値があるというのだ。俺はそんなものを認めん。そのようにして手に入れた勝利など、紙切れ一枚程の価値もない」
それを聞いたグラスワンダーは広瀬の方を見る。だから言ったでしょとでも言いたそうな視線が返ってきた。他の4人も目の前の男の強い意志を感じたらしく、何かこもったような表情をしながら静かにしている。
その様子を横目に見ながら、小島は話を続けた。
「現役生活よりもその後の人生の方が長いのだぞ。何が何でも、たとえ体を壊してでもレースに勝つ、という考えを持っているのなら今ここでそれをゴミ箱に放り込め」
マンハッタンカフェが静かに口を開いたのはその時だった。
「一つ聞いても良いでしょうか」
「なんだ、カフェ」
「小島さんはなぜ、そのような方針を定められたのでしょうか」
それを聞いた小島は、彼から見て左奥にいる細君に視線をやる。彼女は軽く首を縦に振り、肯定の意志を示す。しばしの沈黙ののち、彼は口を開いた。
「過去にそれをやって、結果として二度と自分の足で歩くことが出来なくなったウマ娘を知っているからさ」
小島が発した言葉に、部屋が苦しい空気に包まれる。それを見た彼はより強い意思を込め、懇願するように語った。
「だから君たちにはそんな目に合って欲しくはない。故に、俺たちは勝利を至上とする考えとは明確に決別する。無事之名馬、と言うだろう。君たちがレースに勝つことよりも怪我なく無事でいてくれることを我々は喜ぶ」
そのことを聞いたタキオンは思った。
最初に勝利を目的とはしないと聞いた時は面白さ(と、少々の反発)を感じたものだが、そういう理由ならまあ、納得できないでもない。レースに勝ったはいいが、その後の人生を全て棒に振ることになった、と言うのでは勝利というものについていろいろと考えさせられるからね。ましてや知人がそのような目に遭ったと言うのであれば、勝利を最優先としない方針を掲げるのも無理からぬことだ。
(それに何より)
-彼が述べたウマ娘の末路は、明日の私かもしれないのだから。
彼女はそう思いながら、周囲に気がつかれないようそっと自身の足を撫でた。小島の話はまだ続いている。
「だからこそ、自分の体の調子については-たとえ自分にとってネガティブなことであっても-嘘をついたり隠し事はするな。正直に俺か、他のトレーナーに言え。俺はそれを聞いてもマイナスの評価はしない。むしろ伝えなかったり隠したりしたことの方を咎める。そして俺や他のトレーナーが、俺が今言ったことに反するようなことを言ったり、行うようなことがあれば遠慮なく言え。必ず適切に対処する」
自分と他の4人に言い聞かせるような口調で小島は話した。
「俺の話はこれで終わりだ。言いたいことや質問があるのなら遠慮なく言え。今の話に納得や共感が出来ないというのなら、この場で契約解除を申し出ろ。最初に言った通り、責任を持って次のトレーナーを探してやる」
彼が話を終えた後、部屋はしばしの沈黙に包まれる。その沈黙を打ち破るかのように、グラスワンダーが口を開いた。
「正直に申し上げて」彼女は記者会見にでも臨むかのように答えた。「小島トレーナー、あなたが今おっしゃったことは、聞いていて決して心地よいものではありませんでした。ですが-」
小島は無表情のまま何も言わず、腕を組みながらグラスワンダーの話を聞き続ける。彼女は話を続けた。
「たとえ私たちの反感を買うと分かっていることであっても、本音を包み隠さずきちんと話してくださった事で、私はあなたに信頼を置くことが出来ると感じました-ですので、これからもご指導ご鞭撻の程、よろしくお願い致します」
彼女はそう言うと、小島に向けて丁寧にお辞儀をして見せた。それを聞いた彼は顔を緩め、安堵とも取れる笑みを僅かに浮かべた。
続けて口を開いたのはタキオンだった。
「私は別に、今の言葉には何も思ってはいないが-どちらかと言えば、都合の悪いことでもはっきりと言ってくれる方があり難い。何分私はこういう性格なものでねぇ。それに」
まるで演説でもしているかのような声で彼女は言葉を紡いだ。
「君との契約を解除してしまえば、私はこの学園にいられなくなってしまうからね。安定した研究環境のためにも、私は君がどのような方針を掲げようがこのチームに残るつもりだよ、トレーナー君」
「私は」続けてカフェが答えた。「小島さんは、私の大切なものを否定しませんでしたから。このチームを離れたところで、そのようなトレーナーに出会えるという保証はどこにもありません。ですので、私はこのチームに残ることにしますし、小島さんとの契約を解除するつもりもありません」
か細いながらも芯の通った言葉で彼女は語った。
「え、ええっと、ライスは」ライスシャワーがたどたどしく答えた。「難しいことはよくわ、分からないけど、お話を聞いてみたら、私たちのことをとっても大事にしてくれそうだとお、思ったから」
落ち着いてライスちゃん、ゆっくり話すのよと有沙が声をかける。それを聞いた彼女は言ったん口を閉じると、少しの間を置いて再び口を開いた。
「だ、だから、これからもよろしくお願いします」
「美咲ちゃんから聞いてたけど、面白そうな人だね」
マヤノトップガンのその言葉を聞いて、有沙と美咲と遠藤が苦笑した。そんな彼女を穏やかな表情で小島は見る。
「さっきの話にはちょっとムッとしたけど、でもこれでマヤもようやくレースに出れるんだもん。せっかく勝っても怪我しちゃったらキラキラすることができないし。だからよろしく、トレーナーちゃん。マヤのこと、いっぱいキラキラさせてよね」
それを聞いた小島はまるで実の子を目にしたような笑みを浮かべると、軽くうなずいて見せた。
「話を聞いた限り、どうやら5人とも契約を解除する意思はない-ということで良いかな」
小島の発言に5人全員がうなずく。それを聞いた彼は一呼吸置くと、芝居がかった声で応じた。
「ようこそ、我らが倶楽部へ。我々は君たちを歓迎しよう」
長文をお読みくださりありがとうございました。
なお今回、誰が誰を担当するかについてはほぼ好みで決めましたが、土井さんがマヤノを担当することは早くから決まっていました。
その理由についてはまあ、「征途」をお読みの方なら大体理解できると思われます。
ちなみに我がトレセン学園にはライスとカフェは未実装なので(主に私のガチャ運が原因)、youtubeでそれぞれのストーリーを見た上で書きました。色々と至らない面があるかもしれませんがご容赦ください。(ほんと、執筆中に来てほしい・・・・)
それ以外の3人についてはいずれも在籍しており全員星4以上になっております。その中でもタキオンは現状、我がトレセン学園唯一の星5です。そんなわけなので、チャンミやレースで見かけたら宜しくお願いします。
第4話は・・・1万字くらいで納めることが出来るように頑張ります。